森谷公俊・鈴木革 『図説 アレクサンドロス大王』 河出書房新社 2013

渡邊義弘@常滑市消防本部「ソーシャルメディア研修」の講師をつとめました。

さて、森谷公俊・鈴木革 『図説 アレクサンドロス大王』 河出書房新社 2013。

『アレクサンドロス大王―「世界征服者」の虚像と実像』などで知られる、日本を代表するアレクサンドロスの研究者と写真家による共著。
内容は、アレクサンドロス大王(3世)の東方遠征の様相を解説しながら、進行ルートについて検証を試みているのが特徴。
ただ、白黒写真ではイメージが沸きにくかったり、現在の写真では当時の名残を想像しにくいものもあり、”図説”というタイトル通りの再現図がもっと欲しかった。

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2014 2/8
歴史、戦略論
まろまろヒット率2

谷岡一郎 『データはウソをつく―科学的な社会調査の方法』 筑摩書房 2007

渡邊義弘@妹の結婚式に出席して来ました。
(「パセリくらいの存在感」)

さて、谷岡一郎 『データはウソをつく―科学的な社会調査の方法』 筑摩書房 2007。

『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』で知られる著者による、より具体的な社会調査法の解説書。
読んでみると、自然科学と社会科学の対比を通して社会調査の特徴を説明しながら、
ウソを見破る方法とその素養=リサーチ・リテラシーについて解説する流れが分かりやすかった。

また、「つっこみ力」という表現を使っているように、辛辣な表現が多いのも特徴的で、例えば・・・

○人間関係を気にして、正しいと思うことを言えない人は、会社で言えば部長止まりの人間
(命令を実行する側のトップ)
<第5章 リサーチ・リテラシーとセレンディピティ>

・・・と表現しているところなどは、自然と顔を思い浮かべた人もいて思わず笑ってしまった。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・

○社会科学界における事実=蓋然性(確実性)の世界
<第1章 社会における「事実」認定プロセス>

☆自然科学と社会科学の事実認定の差違・・・
・社会科学の事実=常に蓋然性を含み、ピュアな証明ができない点
・社会科学の理論=時間、空間、文化の差違による制限が加わる点
<第1章 社会における「事実」認定プロセス>

○相関関係があることは因果関係があることの必要条件だが、それだけでは因果関係については何も言えない
<第2章 マスコミはいかに事実をねじ曲げるのか>

○統計的に有意=社会科学では偶然の範囲が20回に1回(5%)以内なら蓋然性を持つと結論を出すのが慣例
<第3章 実際にデータを分析してみよう>

☆リサーチ・リテラシー=数字を利用してウソをつく人を見分ける能力
→自分で数字を操作したり、一定の結論を導き出そうと苦労した人は他人のウソやごまかしを見破るのがより上手くなる
<第5章 リサーチ・リテラシーとセレンディピティ>

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2014 2/5
社会調査法、統計的社会調査、リサーチ・リテラシー
まろまろヒット率3

佐藤賢一 『フランス革命の肖像』 集英社 2010

渡邊義弘@ごはん日記の中にフランス料理カテゴリを設けています。

さて、佐藤賢一 『フランス革命の肖像』 集英社 2010。

『小説フランス革命』の著者が、フランス革命期に活躍した80人の肖像を取り上げて評論する一冊。
印象的だったのは、フランス革命の時系列に沿ってそれぞれの時期に活躍した人々の肖像を・・・

虚構→異端→逡巡→失墜→楽観→本音→悲観→狼狽

・・・とまとめ、それがフランス革命の推移そのものだと指摘しているところだ。
胸が痛くなることが多いフランス革命について端的に表現しているものとして印象に残った。

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2014 1/26
歴史、フランス革命、人物伝
まろまろヒット率3

レイ・オルデンバーグ、忠平美幸訳 『サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』 みすず書房 2013

渡邊義弘@文京区(2006年~)で始めた朝会は、松阪市(2012年~)、常滑市(2013年~)と拡がっています。

さて、レイ・オルデンバーグ、忠平美幸訳 『サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』 みすず書房 2013。

自宅(first place)と職場(second place)だけでなく、集いと憩いの場(third place)の重要性に光を当てる一冊。
スターバックスの理念や、まちづくり活動の根拠として引用されることが多いことでも知られている。
原題は“The Great Good Place: Cafes, Coffee Shops, Bookstores, Bars, Hair Salons, and Other Hangouts at the Heart of a Community” (1989)。

内容は、現代のアメリカ社会で無くなりつつあるサードプレイスの重要性を述べながら、戦前のアメリカ、オーストリア、フランスなどの比較を通してその特徴を解説している。
ただ、都市計画への批判が中心で、なぜサードプレイスに人々が集わなくなったのかについての言及が少なく、踏み込みの甘さを感じた。
そのような点は気になるけれど、カフェやバー、コーヒーハウスなどの集いと憩いの場の重要性を整理したという点では歴史的な意義がある本ではある。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・

☆人がサードプレイスに何度でも戻って来たくなる基本的な動機は楽しさ
→そこにいる人々自身が娯楽の提供者
<第二版へのはしがき>

☆サードプレイス(第三の場所)の定義=インフォーマルな公共生活の中核的環境
→家庭と仕事の領域を超えた個々人の、定期的で自発的でインフォーマルな、
お楽しみの集いのための場を提供する、さまざまな公共の場所の総称
<第1章 アメリカにおける場所の問題>

☆サードプレイスは中立の領域に存在し、訪れる客たちの差別をなくして社会的平等の状態にする役割を果たす
→こうした場所の中では、会話が主な活動であると共に、人柄や個性を披露し理解するための重要な手段となる
<第2章 サードプレイスの特徴>

○現代社会がサードプレイスを増やし損ねたせいで失いつつあるものは、形式ばらない気軽な帰属によって生じるお手軽版の友情や意気投合
→肩の凝る友達付き合いを補完するものとして、他の友好関係には不可欠な出費や義務を免れ、人々がただ楽しむために集う場を設けるべき
<第3章 個人が受ける恩恵>

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2014 1/24
社会学、サードプレイス、コミュニティ論、まちづくり、都市計画、空間論
まろまろヒット率3

佐藤賢一 『小説フランス革命』 集英社 全12巻 2013

渡邊義弘@『てくてく松阪』が合併前の全市町を網羅しました☆

さて、佐藤賢一 『小説フランス革命』 集英社 全12巻 2013。

18世紀後半、財政破綻寸前のフランスでは身分制議会、「三部会」の招集が決定された。
先駆けて開かれたプロヴァンス議会では、特権階級でありながらフランス革命を主導し、「革命のライオン」と呼ばれたミラボーが咆吼する・・・

三部会招集直前(1788年)からテルミドールのクーデター(1794年)までのフランス第一革命を描く長編歴史小説。
『王妃の離婚』『カエサルを撃て』などの西洋史を舞台にした小説を手がけて来た著者がライフワークと位置づけた作品だけあって、資料の裏付けも多く、読んでいて迫力がある。

中でも印象に残っているのは、第1巻「革命のライオン」でミラボーがロベスピエールに対して・・・

「よく覚えておきたまえ、男は保身だ。女でも、金でも、名誉でもない。男にとって、本当の大事は保身なのだ」
「そのままで自分の身が立つようだったら、ひとつの譲歩もしないし、ひとつの侮辱も許さない。どんな誘いも軽蔑して捨ててしまう。
だから、不安を与えてやらなければならないのだ。このままでは立てないようになるのじゃないかと」

・・・と諭しているところだ。
最終巻の第12巻「革命の終焉」では、保身による恐怖からテルミドールのクーデターが起こることと合わせて、物語の主軸のように思えた。
また、第11巻「得の政治」でギロチンに向かうダントンが・・・

「正しくいるためには、自分のためには生きられない」(中略)
「幸せな人間てえのは、よっぽどのことがなければ、起き上がりゃしないんだよ。
政治のために行動できるってことは、つまりは自分がふこうだってことなんだよ」(中略)
「義憤を語る輩ってえのは、相場が淋しい男と決まっていやがるぜ」

・・・とフランス第一革命が終了する理由を述べているのは、ロベスピエールの哀しさを思い起こさせて胸に来るものがあった。

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2013 12/25
歴史小説、歴史
まろまろヒット率4

フランス・ドゥ ヴァール、西田利貞訳 『チンパンジーの政治学―猿の権力と性』 産経新聞出版 2006

渡邊義弘@知多市・常滑市合同新規採用職員後期研修「自治体職員のための情報活用術」の講師をつとめました。

さて、フランス・ドゥ ヴァール、西田利貞訳 『チンパンジーの政治学―猿の権力と性』 産経新聞出版 2006。

チンパンジー集団の観察を通して権力構造と競争を明らかにし、「政治の起源は人間性の起源よりも古い」という仮説を打ち立てる一冊。
共感(empathy)が人類の本能として備わっていることを唱える著者(『共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること』)の原点として位置づけられている。
原題は“Chimpanzee Politics: Power and Sex Among Apes, Revised Edition” (1982)。

○人間をチンパンジーに当てはめた訳では無く、チンパンジーを観察して人間を振り返った
<第6章 政治の起源>

・・・と述べているように、あくまでもチンパンジーの観察を主軸にしながら・・・

○オスたちは、威嚇されたものは誰にでも、保護をあたえ、その見返りとして尊敬と支持を得る
→人間の場合でも、物質的な気前のよさと社会的な寛大さは、ほとんど区別できない
<第5章 社会の機構>

☆チンバンジーの集団生活は、権力・性・愛情・支持・不寛容といったものの市場のようなもの
→二つの基本的なルールは「恩に報いるに恩をもってする」と「目には目を、歯には歯を」
<第5章 社会の機構>

○マキャベリが競争や衝突を否定的要素としてでなく、建設的要素として提示したように、
チンパンジーの間でも、権力政治は集団生活に、その論理的な一貫性と民主的な構造をさえ与えた
<第6章 政治の起源>

○階層序列は、競争と衝突を制限する、一つの<凝集的な>要素
→子供の世話、遊び、性、そして協力といったことは、この結果である安定性の上になりたっているが、水面下ではいつも状況は流動的
<第6章 政治の起源>

・・・と、解説している。
思弁的になりがちな政治への生物学的手法からのアプローチとしても興味深い一冊。

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2013 11/26
生物学、政治学
まろまろヒット率3

西口大輔 『本当においしく作れるイタリアン』 世界文化社 2012

渡邊義弘@もこみちほどではないけれど、僕もオリーブオイルは多用しています。
(まろまろレシピ)

さて、西口大輔 『本当においしく作れるイタリアン』 世界文化社 2012。

僕が一番美味しいイタリア料理店だと思っている、Volo Cosiの西口シェフによる料理本。
(ごはん日記にも折々で登場:ランチ・コースディナー・コースディナー・コース白アスパラガスのサフラン・ソース)

内容は、それぞれの料理について「Chef`s Voice」として美味しく作るコツが明確にされているので分りやすい。
ペペロンチーノにはイタリアン・パセリを後がけせずにオリーブオイルに入れて香りを移す、粉チーズをパスタとソースのつなぎにするなど、すぐに実践できるものも多くて便利。
また、「教えて西口シェフ!」という特集では食材の解説などの解説があるので、イタリア料理の全体像を把握できるようになっている。

これまで読んだことのある料理本・レシピ集の中では一番解説が丁寧で、西口シェフの人柄が伝わってくる一冊。

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2013 11/25
料理本
まろまろヒット率4

仲島陽一 『共感の思想史』 創風社 2006

渡邊義弘@東北に四たび目の行脚をさせていただきました。

さて、仲島陽一 『共感の思想史』 創風社 2006。

思想史の中で共感はどのように位置づけられて来たのか、に迫ろうとする思想書。
自分のテーマである「情報のかけ橋」や、方法論としてのソーシャルメディア利活用では「共感」が重要なキーワードだと考えているため手に取った一冊。
読んでみると、著者も認めているように、もともと別の論文を合わせたもので形式が統一されておらず、内容も主観が述べられている章とそうでない章があり、まとまりが無くて読みにくい。
(せめて各章の最後にまとめが統一されていると読みやすかった)

そんな中でも・・・

☆共感=他人の感情に対して同じ感情を持つこと
<第1章 日本語における共感ー「共感」は新しい言葉>

・・・と定義しているところ。
また、共感の問題を・・・

○共感の問題性=
1:共感という現象がどのように起こるのかの解明=事実問題、心理的研究
2:共感という現象をどう評価するか=価値問題、倫理的研究
<第6章 デカルト・ホッブズ・スピノザー近世の情念と共感>

・・・と事実と価値の二つに分けているところ。
さらには感情移入については・・・

○「共感」と「感情移入」とは異なる概念
→「感情移入」=1(原義):感情を持たない対象に感情を移し入れて、これを対象のあり方として感じること、
2(一般的意味):他者に自己の感情を移し入れて、これを他者の感情として感じること、
<第14章 リップスとフロイト>

・・・と、その違いを明確にしているところ。
最後にアレント(Hannah Arendt)の思想を批判的に解読しながら・・・

○対立の克服は望ましいものと認めるとしても差違の尊重を忘れてはなるまい
→同情は大切であるが、同情が世界を救うとまでするのは、過大な、時には危うい思い込み
<第16章 アレント>

・・・と著者の主観を述べているところなどは興味を持った。

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2013 11/8
思想史
まろまろヒット率3

奥村倫弘 『ヤフー・トピックスの作り方』 光文社 2010

渡邊義弘@常滑市ソーシャルメディア利活用宣言と常滑市ソーシャルメディア・ガイドライン策定により、常滑市公式Facebookページ「ええね!常滑市」が開設されました☆
(2013年10月1日 『中日新聞』朝刊・第17面 「フェイスブック 常滑の魅力満載 市ページきょう開設 観光、政策、災害・・・情報幅広く 『いいね!』県内自治体最多目指す」)

さて、奥村倫弘 『ヤフー・トピックスの作り方』 光文社 2010。

ヤフー・ジャパン(Yahoo!JAPAN)のトップページにあるニュース・リンク集、ヤフー・トピックスの編集者が、仕事内容や気を付けているポイントなどを解説している。

著者は新聞記者出身なので、新聞とインターネット、新旧メディアのニュースの取り扱い方の違いについてかなりの分量を割いているのが特徴的。
中でも商業主義と社会的意義とのバランスを取る難しさについての記述が多く、最終章では杉玉の解説をしている酒店のホームページを事例にして・・・

企業が発信している情報が、単なる金儲けの「売らんかな」の宣伝ではなく、
「世の中を良くしたい、いい方向に変えていきたい」という情熱や信念に支えられている価値あるものではあれば、
その思いは報道機関の記者にも届くことでしょうし、トピックス編集部もご一緒したいと思っています。
<第5章 トピックスに載るニュース載らないニュース>

・・・と結んでいる。

著者は新聞記者としてのアイデンティティがあるようで、既存メディアの方に倫理上の軍配を上げているのはやや疑問ではあるけれど、
日本でもっとも影響力のあるニュース・サイトの裏側と担当者の苦労が伝わってくる一冊。

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2013 10/25
情報・メディア
まろまろヒット率3

藤代裕之 『発信力の鍛え方』 PHP研究所 2011

渡邊義弘@常滑でのウォーキング・コースにコストコが出来たので会員になりました。

さて、藤代裕之 『発信力の鍛え方』 PHP研究所 2011。

「ガ島通信」などで知られる著者による、情報発信の指南書。
著者は新聞記者出身なので、その経験と知見を基にして・・・

○情報の仕入れ先
・マスメディア=百貨店、スーパーマーケット
・雑誌、衛星チャンネル=専門店
・ソーシャルメディア=市場、フリーマーケット
<第2章 発信力は自分力>

・・・と、各メディアを比較・分類したり・・・

○ニュースの六元素
1:時間的近接性:同じ規模の事件なら新しい方に引きつけられる
2:距離的近接性:あまり知らない遠い国の出来事よりも身近な出来事に関心
3:著名性:同じ交通事故でも首相、芸能人などの著名な人はニュースになる
4:異常性:異常性が高いほど関心を引かれる
5:進展性:一回で終わらず、次々と新しい局面が展開
6:情操性:人の感情に訴える
→「!」と「?」に注目
<第2章 発信力は自分力>

・・・と、ニュース性を構成する元素を紹介しているのが特徴的。
新規性やインパクトは無いけれど、マスメディア、ソーシャルメディアの両方の経験を持つ著者ならではの手堅い一冊。

以下は、その他でチェックした箇所(一部要約含む)・・・・

○自分の関心事と相手の関心事が重なっているところがコミュニケーションのかけ橋になる
<第4章 差がつく情報活用術>

○自分自身が間違った場合の態度も読者に見られている→間違いに対応する態度こそが評価につながっていく
<第6章 トラブルに対処する>

○場の価値を享受するだけなのか、共に価値を創造できるのかが、良い経験になるかどうかの分かれ道
→これまでオフ会や勉強会に参加してきたのに仲間にめぐり会っていないという人は、
貢献せず、場合によっては単なる批判者になってしまっているのではないか
<終章 人とつながる>

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2013 9/18
情報・メディア、ソーシャルメディア、実用書
まろまろヒット率3