フランス・ドゥ ヴァール、西田利貞訳 『チンパンジーの政治学―猿の権力と性』 産経新聞出版 2006

渡邊義弘@知多市・常滑市合同新規採用職員後期研修「自治体職員のための情報活用術」の講師をつとめました。

さて、フランス・ドゥ ヴァール、西田利貞訳 『チンパンジーの政治学―猿の権力と性』 産経新聞出版 2006。

チンパンジー集団の観察を通して権力構造と競争を明らかにし、「政治の起源は人間性の起源よりも古い」という仮説を打ち立てる一冊。
共感(empathy)が人類の本能として備わっていることを唱える著者(『共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること』)の原点として位置づけられている。
原題は“Chimpanzee Politics: Power and Sex Among Apes, Revised Edition” (1982)。

○人間をチンパンジーに当てはめた訳では無く、チンパンジーを観察して人間を振り返った
<第6章 政治の起源>

・・・と述べているように、あくまでもチンパンジーの観察を主軸にしながら・・・

○オスたちは、威嚇されたものは誰にでも、保護をあたえ、その見返りとして尊敬と支持を得る
→人間の場合でも、物質的な気前のよさと社会的な寛大さは、ほとんど区別できない
<第5章 社会の機構>

☆チンバンジーの集団生活は、権力・性・愛情・支持・不寛容といったものの市場のようなもの
→二つの基本的なルールは「恩に報いるに恩をもってする」と「目には目を、歯には歯を」
<第5章 社会の機構>

○マキャベリが競争や衝突を否定的要素としてでなく、建設的要素として提示したように、
チンパンジーの間でも、権力政治は集団生活に、その論理的な一貫性と民主的な構造をさえ与えた
<第6章 政治の起源>

○階層序列は、競争と衝突を制限する、一つの<凝集的な>要素
→子供の世話、遊び、性、そして協力といったことは、この結果である安定性の上になりたっているが、水面下ではいつも状況は流動的
<第6章 政治の起源>

・・・と、解説している。
思弁的になりがちな政治への生物学的手法からのアプローチとしても興味深い一冊。

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2013 11/26
生物学、政治学
まろまろヒット率3

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