百瀬明治 『時代を変えた祖師たち―親鸞、道元から蓮如まで』 清流出版 1995

暮れに宿坊に泊まった流れで年始もお坊さん系の読書をした、まろまろ@でも信仰心はありません(^^;

さて、その『時代を変えた祖師たち―親鸞、道元から蓮如まで』百瀬明治著(清流出版)1995。

不安の混乱の時代に新たな生きる指針を創り出した祖師たちとして、
親鸞、道元、日蓮、一遍、蓮如の5人の軌跡を取り上げている一冊。

読んでみると、道元の孤高さと一遍の潔さが印象深かった。
どちらもその徹底ぶりに惹かれるものを感じた。

ただ、そもそもこのタイトルでなぜこの5人が選ばれたのか分からなかったし、
特に親鸞と蓮如の二人を書いていることに偏りも感じた本でもある。

この本をamazonで見ちゃう

2007 1/4
歴史、宗教、仏教
まろまろヒット率2
スピリチュアル

百瀬明治 『名僧百言―智慧を浴びる』 祥伝社 2005

まろまろ@宿坊に泊まったのでお坊さん系の本を読み積んでます。

さて、『名僧百言―智慧を浴びる』百瀬明治著(祥伝社)2005。

宿坊に泊まるということで、持って行った名僧による名言集。
名僧・高僧たちも本質的に私たちと変わらない凡人だった→彼らが漏らした言葉には生きる智慧がある
・・・というこの本の姿勢にひかれて手に取った一冊。

行きの高速バスの中から読み始め、お風呂めぐりで乗った身延線の中などで読書、
ちょうど帰りの高速バスの中で読み終えることとなった。

読んでみると、名僧たちの言葉はそれぞれ迫力があって引き込まれるものもあった。
ただ、名言に対してその解釈は違うんじゃないかと思うようなところもあり(愚痴に聞こえる箇所も多かった)、
もっとその言葉が生まれた経緯や文脈に集中して解説してほしいと思った。

以下はチェックした箇所(印象深い順)・・・

☆こころよりこころをえんと意得(こころえ)て 心にまよふこころ成(なり)けり
一遍『一遍上人語録』

☆生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し
空海『秘蔵宝鑰』

○志しの至らざることは無常を思わざる故なり
道元『正法眼藏随聞記』

○道は人を弘め、人は道を弘む
最長『顕戒論』

○然れども、時至らずして、素意未だ果たさず 今、事の縁によりて年来の本意を遂げん事、頗る朝恩ともいふべし
法然『法然上人絵伝』

○災難に逢う時節には災難に逢うがよく候 死ぬる時節には死ぬがよく候 これはこれ災難をのがるる妙法にて候
良寛『書簡』

○よりて善人だにこそ往生すれ、まして悪人はと仰さふひき
親鸞『歎異抄』

この本をamazonで見ちゃう

2006 12/30
名言集、宗教、仏教
まろまろヒット率3
スピリチュアル

佐藤弘夫 『日蓮―われ日本の柱とならむ』 ミネルヴァ書房 2003

宿坊に泊まってきた、まろまろ@17時に夕食で18時にはすでに布団がしかれていました・・・

さて、『日蓮―われ日本の柱とならむ』佐藤弘夫著(ミネルヴァ書房)2003。

日蓮宗(法華宗)の開祖・日蓮の伝記。
友達から誘われた宿坊が身延山久遠寺にあったので、久遠寺を開いた日蓮の伝記を読もうと手に取った一冊。

日蓮は鎌倉仏教の始祖たちの中でもとりわけ評価が難しい人物だ。
強烈な個性の持ち主で、戦後の新宗教などに見られるように現代にもその影響は強く残っていている。
そんな日蓮の生涯をえがいた本となるとなかなか難しいけれど、この本はこれまでの日蓮研究の先行研究を踏まえて、
できるかぎり事実に即して日蓮の足跡を再現しようとしている信頼性の高い研究書ということで読んでみた。

読んでみると、確かに多くの先行研究を比較しつつ持論を述べる姿勢は冷静さを感じると共に説得力があった。
中でも一番興味を持ったのは、「鎌倉での辻説法を裏付ける資料は皆無」としているところだ。
日蓮と言えば強烈な辻説法のイメージがあるけれど、「不特定多数の人々にやみくもに法を説いたというよりは、
知己のルートをたぐって一対一の対話を重ねながら着実に理解者を増やしていったというのが、この時期の布教活動の実態」、
「日蓮教団の教線は、これ以降も血脈と人脈に沿ってひろがっていく」としているのには興味を持った(第二章:立正安国の思想)。

もちろん、「比叡山での疎外感と孤独感が、日蓮を妥協のない一途な真理追究の道へと押しやったのである」(第一章:立教開宗への道)という部分や、
「共通点の多い天台と日蓮を隔てるものは、数々の体験に裏打ちされた、法華経を正しく読み切った人間は自分一人であるという強烈な自負」(第四章:佐渡の開眼)などのように、
日蓮の人生には終始その強烈な個性と主張が感じられるけれど、信者への細やかな手紙に見られるように、不特定多数ではなく、
自分の手の届く範囲の関係から広げていった姿は、これまでの日蓮のイメージとは違っていたので興味深かった。
(ソーシャルネットワーキング的と言ってもいいかもしれない)

ちなみにこの本は宿坊に行く前に読み始め、ちょうど行く途中の高速バスの中で読み終えた。
読書の直後に訪れた久遠寺では、年始の準備でくじ引きの看板が用意されていて、「二等:任天堂DS」という張り紙があった。
ちょっと安心するとともに時代の流れの残酷さも同時に感じたw

この本をamazonで見ちゃう

2006 12/29
歴史、宗教、仏教
まろまろヒット率3
スピリチュアル

ジャック・D. シュワッガー、横山直樹訳 『マーケットの魔術師 – 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』 パンローリング 2001

友達に誘われて年末は宿坊プレイをしようかと思っている、まろまろ@オススメあったら教えてください(^_-)

さてさて、宿坊にいこうかと言った矢先から世俗の生々しさ本をば(^^;
『マーケットの魔術師 – 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』ジャック・D. シュワッガー著、横山直樹訳(パンローリング)2001。
原題は“Market Wizards: Interviews With Top Traders”(1989)。
1980年代に活躍し、成功をおさめていたトレーダーたちに対するインタビュー集。

初版の時期を考えてみれば個々の事例や状況はさすがに古いものがあるけれど、インタビューで語られている内容は投資の心構えや姿勢に関することがメインなので考えさせられるものが多かった。

中でも興味深かったのは、取り上げられている投資家たちはみんな個性的ということもあって、それぞれまったく違う手法を採用しているけれど、共通点として誰もが過去に大失敗を経験している点だ。
そして、もう一つの共通点、自信と忍耐力によってその大失敗から学び、乗り越えて来た姿にはちょっと親しみを感じてしまった。
また、自分が関わっているからということもあって先物や為替よりも株式トレードについてのインタビュー、特にマーティ・シュワルツのインタビューはヒントになると感じるものがあった。

思うに人文・社会学系のネタは中途半端にまとめるより、生に近いインタビュー集の方が得られるものが多いときがある。
特に市場を相手にしているトレード名人たちが、なぜ名人になったのかについては一般化するよりもインタビューの方が説得力がある。
この本は市場の難しさ、そしてそれに立ち向かう人たちの熱さを感じさせてくれるものでもあった。

ちなみにこの本は新大塚の朝オフでよく投資の話題が出る若旦那から一押しと貸してもらった一冊でもある。
読書日記アーカイヴを見直してみると、1999年以来の通読した投資本だった。
あれからITバブルやライブドアショックなど、いろいろあったことを思い返すとちょっと感慨深かった。

以下はチェックした箇所(一部要約&重要と思われる順)・・・

☆トレードで成功するためにはいかに損失をしないようにするかであって、損を恐れることではない
<第四章 フロアからの視点:ブライアン・ゲルバー>

☆損切りを覚えなさい(略)もう一つ、資金が二倍、三倍と増えるまでポジションのサイズを大きくしないこと
<第二章 株式トレーダー:マーティ・シュワルツ>

○トレーダーの差をわける能力は、今日とはまったく異なった世界のことについて想像できる能力とそれが現実的にあり得ると考えられる能力
<第一章 先物と通貨:ブルース・コフナー>

○間違いを受け入れることができるようになった時から勝者になった(略)
勝利はいつも目前にあるという信念で臨めば、損も痛くはなくなる
<第二章 株式トレーダー:マーティ・シュワルツ>

○損を一気に取り返そうとすれば、ほとんどの場合大失敗する
<第二章 株式トレーダー:マーティ・シュワルツ>

○強烈に稼いだ後は、むしろ小さなポジションで軽く流すようにしている
→大きな損はいつも大きな利益に続いて起こるものだ
<第二章 株式トレーダー:マーティ・シュワルツ>

この本をamazonで見ちゃう

2006 12/23
投資、経済
まろまろヒット率3
確実 投資

京極夏彦 『邪魅の雫』 講談社ノベルス 2006

ごはん&麺類好きだけど、最近ふとしたことからパンを勉強中のまろまろです。

さて、『邪魅の雫(じゃみのしずく)』京極夏彦著(講談社ノベルス)2006。

1953年(昭和28年)、江戸川、大磯、平塚で次々に不可解な毒殺事件が発生した。
一見、何のつながりも無いように思える各地の事件を、捜査本部は早々に「連続」殺人事件と認定した。
各地でバラバラに発生した毒殺事件に関連はあるのか?
・・・京極堂シリーズ第8弾。

内容はタイトル通り、邪(よこしま)なことの魅力、そのひと雫に魅了された人々の物語がストーリーの中心となっている。
個々に出てきた場面がパズルのピースのように、最後に一枚の絵としてつながることを期待して読んでいたのに、
結末の絵はこれまでのピースとのつながりが弱いもので、印象が薄い一枚でしかなかった。
そのために読み終えてみると物足りなさが残ってしまった。

この作品では、自分が世界の一部なのではなく、世界が自分の一部だという錯覚にとらわれてしまった人々、
砂漠と砂一粒の大きさを逆転させてしまった人々の切なさがテーマとなっているだけに、
謎解きよりも内面的な描写が多いのは仕方ないんだろうけど、途中の退屈さが解消されずに終わったように思えてしまった。

前作の『陰摩羅鬼の瑕』と同じく、期待が高かっただけに迫力に欠ける印象を感じてしまった。
次回作にはこれまでのシリーズのように最後に大きな絵を見せてくれることを期待したい。
(読者はどんどん欲深くなってしまうものなのか(^^;)

この本をamazonで見ちゃう

2006 11/29
小説
まろまろヒット率3
売れ筋 本

リリー・フランキー 『増量・誰も知らない名言集イラスト入り』 幻冬舎文庫 2006

この前、弊社のある一角で「倖田來未はアイドルかどうか?」で議論している場面をかいま見て、
日本って平和だなとあらためて思った、まろまろ@misonoは未だにアイドル路線なのは疑いの無いところですな(w

さて、『増量・誰も知らない名言集イラスト入り』リリー・フランキー著(幻冬舎文庫)2006。

名言集・・・と言っても偉人による言葉ではなく、「日常生活の中で無意識のうちに口をついて出たような言葉(略)
荒削りなまま、ためいきと一緒に押し出されたような、本心のかたまり」(まえがき)としての39個の”御言葉”と、
それをめぐる人間模様をエッセイ風に紹介している一冊。

読んでみると、まず読み物として面白い。
痛いものコレクター的に興味深い痛々しいエピソード集と、その顛末で出てくる人々の言葉は、生々しい力強さを感じるものが多かった。
また、各エピソードの最後にはその”御言葉”に英訳も添えられているけれど、それが文脈を組み込んだもので笑えてしまった。

面白いなと思ったのは、著者は人にインタビューする時には必ず
「今まで、誰かに言われた言葉の中で、一番傷ついた言葉は何ですか?」と聞くようにしているらしい。
こう聞かれると、誰もが一拍あく瞬間がある。その一拍あいた時の表情に漂う、その人の素を顕微鏡でキャッチし、心の深淵を覗きたいらしい。
自他共に認める人間研究家だけあって面白いやり方だと思った。
(著者自身は自分でも嫌なやつだと自覚しているようだけどw)

ちなみに「もし、本当に才能というものがあるのだとして、その最低限の才能とは自分に出来ることを見つけることではなく、
自分には出来ないことを発見できる目である」と述べていたのは妙に納得してしまった。
そして「最後に残ったものに全神経を集中すればなんとかなるものなのである」と言っている箇所は、
この本の中で一番の教訓めいたものとして受け取った。

総じて面白かったけれど、最後の方の名言はあんまりインパクトが無い、パワーダウンしたものが続いたのが少し残念だった。

この本をamazonで見ちゃう

2006 11/15
名言集、エッセイ
まろまろヒット率4
癒し

「宮の湯」 (銭湯)

根津の言問通りと不忍通り交差点近くの路地裏にある銭湯。
お風呂の温度は総じて高めで、沸かし湯浴槽より薬湯浴槽の方が温度が高かったのは驚いた。
番台前のソファーにゆとりがあったので、待ち合わせでも館内で落ち合えて湯冷めしないのがGood。

2006 10/29
ぷかぷかお風呂日記、文京お風呂
まろまろヒット率3

塩野七生 『ローマ人の物語27,28 すべての道はローマに通ず』 新潮社 上下巻 2006

最近は朝が早いので「早起きは前向き」ということを実感している、まろまろです。

さてさて、『ローマ人の物語27,28 すべての道はローマに通ず』塩野七生著(新潮文庫)上下巻2006。

ローマのインフラストラクチャーを専門に取り扱っているシリーズ第10段。
通史をたどるこれまでのシリーズとは打って変わった特別編という感じで、構成も・・・
第1部ハードなインフラ→1:街道、2:橋、3:それを使った人々、4:水道
第2部ソフトなインフラ→1:医療、2:教育
・・・という風に別冊のような感じになっている。
(図解や写真も多い)

著者がなぜ通史のシリーズの中にこの特別巻を挟んだかというと・・・
「社会資本と訳そうが下部構造と訳そうが、インフラストラクチャーくらい、
それを成した民族の資質を表わすものはないと信じていたから」らしい。

確かに大プリニウスは「ピラミッドは、無用で馬鹿気た権力の顕示にすぎない」と言い、
フロンティヌスは「ギリシアの美術品の素晴らしさは有名だが、人々の日常生活への有効性ならば皆無」と言ったように、
ローマ人のインフラはどれも生活に密着した実用的なものばかりで、他の古代史と比べて特徴的だ。
こうしたローマのインフラを総覧しながらローマ人の特質をえがきだそうとしている。

また、キリスト教支配後にはソフトなインフラが変化した点について・・・・
「ある一つの考え方で社会は統一されるべきと考える人々が権力を手中にするや考え実行するのは、
教育と福祉を自分たちの考えに沿って組織し直すことである」と述べているのは、
今後のシリーズ展開の行く先を暗示しているものだと感じた。

この本をamazonで見ちゃう

2006 10/19
歴史、政治
まろまろヒット率3

追記:全巻へのリンク(☆は特に印象深い巻)・・・

『ローマ人の物語1,2 ローマは一日にして成らず』

『ローマ人の物語3,4,5 ハンニバル戦記』

『ローマ人の物語6,7 勝者の混迷』

『ローマ人の物語8,9,10 ユリウス・カエサル~ルビコン以前~』

『ローマ人の物語11,12,13 ユリウス・カエサル~ルビコン以後~』

『ローマ人の物語14,15,16 パクス・ロマーナ』

『ローマ人の物語17,18,19,20 悪名高き皇帝たち』

『ローマ人の物語21,22,23 危機と克服』

『ローマ人の物語24,25,26 賢帝の世紀』

『ローマ人の物語27,28 すべての道はローマに通ず』

『ローマ人の物語29,30,31 終わりの始まり』

『ローマ人の物語32,33,34 迷走する帝国』

『ローマ人の物語35,36,37 最後の努力』

『ローマ人の物語38,39,40 キリストの勝利』

『ローマ人の物語41,42,43 ローマ世界の終焉』

『塩野七生「ローマ人の物語」スペシャル・ガイドブック』

杉本苑子 『風の群像―小説・足利尊氏』 講談社文庫 上下巻 2000

ペットが飼えない一人暮らしなので野良猫の手懐け方を教わっている、まろまろ@目下まふまふ練習中です。

さて、『風の群像―小説・足利尊氏』杉本苑子著(講談社文庫)上下巻2000。

室町幕府を開いた足利尊氏の生涯をえがいた歴史小説。
足利尊氏が生きた南北朝時代は、僕にとって関心の高い時代の一つだ。
権威が崩れ、悪党などの異形の新勢力が台頭し、婆娑羅文化に代表される闊達な文化が生まれた興味深い時代。
そんな南北朝時代だけど、この時代を取り上げた物語は南朝側の視点に立つものが多い。
特に足利尊氏に関しては南北朝時代の主役の一人なのに、物語に取り上げられることが少ない。
たとえば歴代の武家政権を開いた源頼朝(鎌倉幕府)、足利尊氏(室町幕府)、徳川家康(江戸幕府)の三人の中でも、
足利尊氏は一番マイナーな存在になっている。
・・・っと思っていたら足利尊氏を取り上げた歴史小説を発見したので手に取った一冊。

この本を読む前の足利尊氏に対しては「とても複雑でとらえどころのない人物」という印象を持っていた。
器量が大きくて大盤振る舞いな一方、とても小心で精神的に不安定だというイメージがあったが、
読んでみるとこの小説でもそのイメージそのままになっていた(w

中でも観応の擾乱での迷走ぶりと立ち回りの醜さは、読んでいて気持ちが悪くなるほど良く表現できていた。
「これでよく天下取れたな」という印象が、この小説でも生々しくえがかれている。
また、この小説では弟の足利義直の評価が高く、加えて『太平記』ではいつも悪役にされる高師直がカッコ良くえがかれているのが好感が持てた。

足利尊氏が物語の主役になりにくいのは、やはり歴史的な評価が戦前と戦後で揺らいだということだけでなく、
この複雑怪奇な性格(一説には精神疾患説がある)から来ているんだろうとあらためて感じた一冊。

この本をamazonで見ちゃう

2006 10/6
歴史、小説
まろまろヒット率3
歴史