塩野七生 『ローマ人の物語14,15,16 パクス・ロマーナ』 新潮社 上中下巻 2004

まろまろフラッグ放浪記がついに東北の仙台まで達した
らぶナベ@フラッグをお持ちの方やお見かけの方は随時報告を待っています(^^)

さて、『ローマ人の物語14,15,16 パクス・ロマーナ』上中下巻
塩野七生著(新潮文庫)2004年初版。

内戦終了後にローマの平和(パクス・ロマーナ)と帝政への移行に取り組んだ
34歳から77歳までのアウグストゥス(オクタヴィアヌス)をえがくシリーズ第6段。

病弱で派手さは一切ないけど、慎重でしつこいほど周到な上に野心もある・・・
一つ間違うとだいぶん嫌なやつだけど、誰もが認める真摯で寛容な姿勢で
巧妙に平和と帝政への布石を打っていくというアウグストゥスの静かな魅力が溢れる巻。
(「感動より感心を与える人物」という評がぴったり)

ちなみに著書はアウグストゥスが持っていた強烈なプレッシャーの中で生き抜く資質を・・・
1:自らの能力の限界を知ることもふくめて、見たいと欲しない現実までも見すえる「冷徹な認識力」
2:一日一日の労苦のつみ重ねこそ成功の最大要因と信じて、その労をいとわない「持続力」
3:適度の「楽観性」
4:いかなることでも極端にとらえない「バランス感覚」
・・・という風に挙げているのは興味深かった。(第三部 統治後期)

また、「平衡感覚とは(略)中間点に腰をすえることでないと思う。
両極の間の行き来をくり返しつつ、しばしば一方の極に接近する場合もありつつ、
問題の解決により適した一点を探し求めるという、永遠の移動行為ではなかろうか」
・・・と述べているのも考えさせられた。(第二部 統治後期)

アウグストゥスによってこの巻からいよいよ帝政がスタートするけど、
「帝政」と言っても古代ローマの帝政は専制君主制とはだいぶ違う。
著者は共和制時代=自由、帝政時代=圧政、という先入観に縛られすぎるのは良くないと主張する。
そういう警鐘も説得力を感じるのはアウグストゥスの人生を見た後だからだろう。

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2004 11/9
歴史、政治
まろまろヒット率4

追記:全巻へのリンク(☆は特に印象深い巻)・・・

『ローマ人の物語1,2 ローマは一日にして成らず』

『ローマ人の物語3,4,5 ハンニバル戦記』

『ローマ人の物語6,7 勝者の混迷』

『ローマ人の物語8,9,10 ユリウス・カエサル~ルビコン以前~』

『ローマ人の物語11,12,13 ユリウス・カエサル~ルビコン以後~』

『ローマ人の物語14,15,16 パクス・ロマーナ』

『ローマ人の物語17,18,19,20 悪名高き皇帝たち』

『ローマ人の物語21,22,23 危機と克服』

『ローマ人の物語24,25,26 賢帝の世紀』

『ローマ人の物語27,28 すべての道はローマに通ず』

『ローマ人の物語29,30,31 終わりの始まり』

『ローマ人の物語32,33,34 迷走する帝国』

『ローマ人の物語35,36,37 最後の努力』

『ローマ人の物語38,39,40 キリストの勝利』

『ローマ人の物語41,42,43 ローマ世界の終焉』

『塩野七生「ローマ人の物語」スペシャル・ガイドブック』

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