渡邊義弘@東北行脚の時に漁業再開をお手伝いしたホタテ貝を素材に相可高校の生徒さんがグラタンを作っていただきました。
さて、『海洋国家日本の構想』高坂正堯著(中央公論新社)2008。
国際政治学者である著者による「現実主義者の平和論」と「海洋国家日本の構想」の二つの論文を中心にした論文集。
著者の本は、これまでも代表作である『文明が衰亡するとき』をはじめとして、『国際政治―恐怖と希望』、
『世界史の中から考える』、『世界地図の中で考える』、『世界史を創る人びと』などを読んできたけれど、
その理想と現実とのバランス感覚にいつも感銘を受けて来た。
この論文集でも・・・
☆手段と目的との間の生き生きとした会話の欠如こそ、理想主義者の最大の欠陥
→問題の解決は、まず目的を定め、次にその手段を見出すという思考法によってではなく、
目的と手段との間の生き生きとした会話を通じて設定された政策によってのみ得られる
<現実主義者の平和論>
・・・として、理想と現実、目的と手段の生き生きとした対話の必要性を述べている。
その上で・・・
☆文明と文明との間の交渉こそ歴史を規定する最大の要因
→その交渉を支えるコミュニケーションの構造こそ、ある文明やある国家の国際政治的位置を決定するもの
<海洋国家日本の構想>
☆偉大さを引き出しうるのは、慎重さと冒険、「非英雄主義」と「英雄主義」をつなぐことができる政治の技術であり、さらに慎重さを単なる慎重さに終わらせない視野の広さ
→その水平線こそ日本の未来がある
<海洋国家日本の構想>
・・・として、慎重さと冒険との間をつなぐ政治の技術(現実的に言えば「権力」)を軸に海洋国家日本のあるべき姿を提案している。
この本の原著は1965年初版だけど、この論述の流れはまったく色あせていない。
加えて・・・
☆真実に見るとはそれを行動につなぐ意欲を持ち、したがって共感と責任を持っていなくてはならない=水平線
<海洋国家日本の構想>
・・・という風に著者が定義する「水平線」の言葉の重みも感じた。
今も変わらず海洋国家日本のあり方を強く訴えかける一冊。
以下は、その他でチェックした箇所(一部要約含む)・・・
○重要なことは、未来のいつか意見が分かれるということではなくて、現在なすべき共通の仕事があるということ
<現実主義者の平和論>
○第2党とは明日にでも実現できることを語る政党であり、異端とは、いつ実現できるか判らない理想を語る人々
<外交政策の不在と外交議論の不毛>
○政策と世論をつなぐという政党の基本的役割を、陳情=利益の環流というパイプ一本に頼っている自民党のアキレス腱は外交問題にある
→自民党が外交と世論をつなぐ働きをしていないために、政府はその昨日をマスコミに頼っている
<外交政策の不在と外交議論の不毛>
○人間が完全に善人でもなく、また完全に悪人でもないところに政治の必要とその可能性が生まれる
<核の挑戦と日本>
○日本史における二つの大きな悲劇、鎖国と満州事件は、ともに、日本の外に開いた部分と内を向いた部分が接触を失い、均衡を失ったときに起った
→とくに、日本の内にいるエリートたちが、外に開いた部分に対する共感を失ったとき、悲劇が訪れた
<海洋国家日本の構想>
○われわれは東洋と隣り合っているが東洋ではなく、「飛び離れた西」ではあるが西洋ではない
→それは悩みであると同時に、日本が世界政治で活躍する可能性でもある
<海洋国家日本の構想>
○「勘」は「読み」という合理的な計算を通じてしか生かされえない
<あとがき>
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2012 11/18
国際政治、外交政策
まろまろヒット率5