林富士馬訳 『六韜』 中央公論新社 2005

年内は大阪にいることになるかもしれない、まろまろ@もしよかったらまろまろお願いにご協力くだしさいな。

さてさて、『六韜』林富士馬訳(中央公論新社)2005。

「韜(りく)」とは秘蔵や秘策という意味で、文韜、武韜、竜韜、虎韜、豹韜、犬韜の6巻・60章から構成されている兵法書。
太公望が書いたという伝説があるけれど、『三略』と同じく実際は著者、成立年ともに不明の一冊。
ちなみに「虎の巻」という慣用句はこの本の虎韜から来ている。

内容は周の文王と武王の質問に太公望が応えるというスタイルになっていて、
戦略論だけでなく権謀術数やリーダーシップ論について語られている。

人間の生々しい心理について語られている部分が多くて・・・
思いやりが深い将軍は疲労を待て
清廉潔白な将軍は侮辱して怒らせろ
意志が強い将軍は事を多くして疲労させろ
他人まかせの将軍は欺しやすい
・・・などと語っている部分(竜韜)は太公望のイメージを借りていると感じた。

また、人間の二面性についても・・・
1:相手に質問して回答を観察
2:言論で追求して臨機応変を観察
3:誘惑させて忠誠心を観察
4:率直な質問をして徳行を観察
5:財貨の職につけて精錬を観察
6:美女を近づけて貞節を観察
7:難事を知らせて勇気を観察
8:酒に酔わせて態度を観察
・・・の8つの方法でその人の本性を確かめろ(竜韜)としているのは、
極端だけどある意味で人間学として読み継がれてきたこの本の本質を垣間見た印象を持った。

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2007 9/16
戦略論、リーダーシップ論
まろまろヒット率3

ビアトリクス・ポター、いしいももこ訳 『ピーターラビットのおはなし』 福音館書店 2002(新装)

まろまろ@大阪にいる間は大阪市立中央図書館を活用しています。
(空いていれば研究個室も使えて便利です)

さてさて、『ピーターラビットのおはなし』ビアトリクス・ポター著・絵、いしいももこ訳(福音館書店)2002新装。

森に住むウサギのピーターは、お母さん(ママラビット)の言いつけを破ってマグレガーさんの庭にもぐり込む。
そこでマグレガーさんに見つかってしまったピーターは必死で逃げようとするが・・・

世界一有名なうさぎの絵本。
僕は何かとうさぎと縁があるのに、これまで兎本は読んだことは無かったので手に取った一冊。
読んでみるとハラハラ・ドタバタ系の脱出冒険物語で、いたずら好きなピーターが活き活きとえがかれていた。
また、冒頭でいきなり「肉のパイにされてしまった」(お母さん談)とあっさり片づけられていたお父さんラビットも気になった(w

ちなみに原題は“The Tale of Peter Rabbit”(1902)なので、「ピーターうさぎのお話」と訳する本もあるらしい。

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2007 9/15
絵本
まろまろヒット率3

真鍋呉夫訳 『三略』 中央公論新社 2004

サイトはもちろん、色々なものを隠して今までやったことがないバイトをしてみようと思う、
まろまろ@気分は特命係長です(^_^)v

さて、『三略』真鍋呉夫訳(中央公論新社)2004。

著者も成立年も不明の兵法書。
伝説上は太公望が書いて黄石公が編集したことになっているけれど、これは事実ではない。

内容は上略、中略、下略の文字通り三略から構成されている。
戦略としてだけでなく君主や将軍としての心得にかなりの分量がさかれているので、
どちらかというとリーダーシップ論として読み継がれて来たらしい。

老荘思想影響が見え隠れしていて、たとえば・・・
「もし人がその柔弱という要素の特性を大切にすることに努めれば、必ずやその生命を大過なく保全することができるだろう」、
「時に応じて柔と剛とを使いわけることができれば、その国はますます繁栄し、時に応じて弱と強を使いわけることができれば、その国の評価はますます高まるであろう」
・・・など、強弱・剛柔点の両面に注目する柔軟さを強調した箇所が目についた。

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2007 9/11
戦略論、リーダーシップ論
まろまろヒット率3

尾崎秀樹訳 『呉子』 中央公論新社 2005

祖母が認知症になり、仕事の合間に看病していた母が膝を痛めてしまって介護の意味を感じている、
まろまろ@ただいま実家の大阪です。

さて、『呉子』尾崎秀樹訳(中央公論新社)2005。

中国史の戦国時代初期に活躍した呉起の兵法をまとめたとされる戦略論の古典。
正確には今のところ作者不詳で成立年もよく分かっていない。

「孫呉の兵法」というように『孫子』と同じく読み継がれてきた兵法書として有名だけど、
これまで通読したことはなかったので手に取ってみた一冊。
訳文と漢文の書き下し文の両方が掲載されているので対比しながら読むことができる。

内容の方は図国、料敵、治兵、論将、応変、励士の六篇から成っていて、
一問一答のような形で魏の武侯の質問に呉氏が応えるスタイルになっている。

訳者も「演習問題として読むのが正しい」と述べているように、
個別具体的な場面での話が多いので『孫子』のような本質的な話は少なかった。

そんな中でも「真の師を見出して臣下にすることができた者は王となり、
友となる資格のある者を臣下にできれば覇者になれる」という部分に興味を持った。
(呉氏が楚の荘王の言葉として紹介している)

また、実に生々しい呉子の生き方も諸子百家っぽくて興味を持ったりもした。

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2007 9/9
戦略論
まろまろヒット率3

畑村洋太郎 『失敗学のすすめ』 講談社 2005

まろまろ@ただいま大阪市の大国町近辺にいます。

さて、『失敗学のすすめ』畑村洋太郎著(講談社)2005。

失敗学の創設者による失敗学本。
読んでみると、以前読んだ『失敗学』(ナツメ社)の方がよくまとまとまっていると感じた。
この本は一番最初に出た概要書だけに、失敗に目を向けることの意義について分量を割いている。

ただ、前書にも書かれてあったことでも、「創造力で第一に必要なのは、自分で課題を設定する能力」(プロローグ)と述べている点。
「失敗情報で大切なのは、その人が何をどう考え、感じ、どんなプロセスでミスを起こしてしまったかという当事者側から見た主観的な情報(中略)、
客観的な情報は、経験者と同じ立場の人が見ても、そこから新しい何かを生み出すまではいたらない」(第3章)などの点はあらためて読んでも重要な部分だと思った。

また、失敗者の実名公開について「1:聞く人にリアリティを与える、2:本人に直接聞くことができる、3:失敗は隠すものではないという文化をつくる」(第1章)
という三点のメリットがあるとしているのが印象深い。

以下は、その他にチェックした箇所(一部要約含む)・・・

○失敗の定義=「人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること」
<第1章 失敗とは何か>

○小さな失敗を不用意に避けることは、将来起こりうる大きな失敗の準備をしている
<第1章 失敗とは何か>

○失敗情報で大切なのは聞き手が失敗者を決して批判しないこと
→責任追及ではなく失敗の知識化が必要
<第3章 失敗情報の伝わり方・伝え方>

○他者の失敗から学ぶには、目的意識が強く、高い科学技術の基礎能力があなければ不可能(山本善之)
<第4章 全体を理解する>

○真の科学的理解とは、ある現象の因果関係がきちんと理解できる状態をいう
<第4章 全体を理解する>

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2007 9/6
失敗学、工学
まろまろヒット率3

クロード・レヴィ=ストロース、大橋保夫訳 『神話と意味』 みすず書房 1996

「メーン」と「ディスる」がまわりで流行っている、まろまろです。

さて、『神話と意味』クロード・レヴィ=ストロース著、大橋保夫訳(みすず書房)1996。
(原題“Myth and Meaning”)

文化人類学者・思想家のレヴィ=ストロースによるCBC(Canadian Broadcasting Corporation;カナダ放送協会)ラジオ講話を元に書かれた一冊。
フランス語を母国語にする著者が「英語で説明するのは面倒なので、うんと単純化した」と述べているように、とても読みやすい。
訳者も「格好のいい聴かせどころを探す人はがっかりするだろう」と書いているほどで、代表作の『悲しき熱帯』とは比べものにならないほどの簡明さがある本。

文学的要素は無いけれど、その分、彼の構造主義アプローチのエッセンスがシンプルに語られているという点で入門書として最適な本だと思う。

以下はチェックした箇所(一部要約含む)・・・

☆構造主義的アプローチ=普遍なものの探求=外見上の相違の中に普遍の要素を求めるもの
<神話と科学の出会い>

○科学には二通りの方法がある=簡単にする還元主義的方法&関係に注目する構造主義的方法
<神話と科学の出会い>

☆「意味する」とは、ある種類の所与が別の言語に置きかえられる可能性
<神話と科学の出会い>

☆人類の知的業績を見わたすと、世界中どこでもその共通点は決まって何らかの秩序を導入すること
<神話と科学の出会い>

○神話的思考(野生の思考)の特徴=可能な限り最短の手段で宇宙の一般的理解に達することを目的
→一般的に加えて全的理解に達することも目的
<”未開”思考と”文明”心性>

○文字をもたない社会における神話の目的=未来が現在と過去に対してできる限り忠実であることの保証
<神話が歴史になるとき>

○神話と音楽の共通点・・・
・言語;音素○ 語○ 文○
・音楽:音素○ 語× 文○
・神話:音素× 語○ 文○
→音楽も神話も言語から発したが、別々の方向に分かれて生長している
→神話は音楽の総譜と同じく一つの連続シークェンスとして理解することは不可能
<神話と音楽>

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2007 9/5
文化人類学、神話学、宗教、文化論
まろまろヒット率4

日本博学倶楽部 『世の中の「意外なノウハウ」―知って得 使って便利』 PHP研究所 2006

長年使っていたAirH”(willcome)からEMOBILEに乗り換えた、まろまろ@今のところはかなり快適です(^_^)v

さて、『世の中の「意外なノウハウ」―知って得 使って便利』日本博学倶楽部著(PHP研究所)2006。

雑学的なノウハウを紹介する一冊。
たとえば・・・
・プチトマトを見ればそのスーパーの良し悪しが分かる
・陶器のヒビはカルシウム豊富な牛乳で煮込むと目立たない
・海の見える部屋は”ocean view”ではなく”ocean front”で予約する
・夕食後が一番自白しやすい
・・・などはちょっと感心してしまった。

ただ、タイトルには「世の中の」とあるものの、シーラカンスを飼う方法や南極で温泉に入る方法などの
日常ではまず使わないようなノウハウが半分以上だったので実用的というより娯楽的な本。

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2007 9/4
雑学本、実用書
まろまろヒット率2

アーシュラ・K・ル=グウィン&S.D.シンドラー、村上春樹訳 『空飛び猫』 講談社 1996

もろもろの事情でしばらく関西にいることになった、まろまろ@関西ごはんというコンテンツもつくりました(^^)v

さて、『空飛び猫』アーシュラ・K・ル=グウィン著、S.D.シンドラー絵、村上春樹訳(講談社)1996。

4匹の兄弟猫は、なぜか翼をはやして生まれてきた。
街から田舎へ飛び立った猫たちはそこで動物たちと悶着を起こす。
そんな中、人間の兄妹と出会う・・・

SF作家として有名なアーシュラ・K・ル=グウィンの絵本。
原題は“CATWINGS”

読んでみると、想像していたものよりもずっとほんわかした内容だった。
挿絵の猫の目がちょっと怖いけれど、それを可愛いと思う人もいるだろう(w

また、この本は日本人小説家の村上春樹が翻訳をおこなっている。
物語の中で・・・
「いんげんを見たのかい?」とジェームズが言いました。
「それを言うならにんげんだろう」とロジャー。
・・・というシーンを読んだ時に、原文はどんな風なんだろう?と思っていたら、脚注に原文が載っていて・・・
“A human bean ?” said James.
“A human being ?” Roger said.
・・・さらに「ちょっと苦しいけど、まあいちおうは豆が絡んでいるので、勘弁してください」と書かれているのには少し笑ってしまった。

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2007 9/3
絵本
まろまろヒット率3

河合隼雄・村上春樹 『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 新潮社 1996

北海道から帰ってきたので北海道ごはんというコンテンツを創造した、まろまろです。

さてさて、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』河合隼雄・村上春樹著(新潮社)1998。

小説家の村上春樹と心理学者の河合隼雄の対談本。
二人の本を何冊か読んだことがあったことと、二人の間に共通点を感じたので手に取った一冊。

読んでみると、その分野の主流派コミュニティには属さなかった、安易な首尾一貫性を求めないなど、
やはり本人たちも共通点があると感じているらしく、盛り上がった話の様子が伝わってきた。

たとえば・・・
村上春樹:「小説にとってバランスというのは非常に大切である。でも、統合性は必要ないし、整合性、順序も主要ではない」
河合隼雄:「ストーリーというのは背後にイメージを持っていなかったら絶対に成立しない(中略)イメージとの関連にコミットしていくことが課題」
・・・と述べている点などは、彼らのスタンスを示すものとして納得してしまった。

他にも・・・
河合隼雄:「物語というのはいろいろな意味で結ぶ力を持っている」
村上春樹:「事実とフィクションは永遠の補完関係にある」(勝ち負けではない)
・・・という語りは物語の力をどうとらえるかについて参考になると感じた。

さらに・・・
河合隼雄:「矛盾の存在やその在り方、解消の方法などについて考え、言語化していく。しかし、決して解決を焦らない。
そうしているうちに、最初は矛盾としてとらえていた現象が、異なるパースペクティブや、異なる次元のなかで矛盾を持たない姿に変貌する」
・・・というのは人生訓としても印象深い。

また、この対談では全般を通して『ねじまき鳥クロニクル』がトピックスとして取り上げられることが多かった。
ちょうどこの本を今月読み終えたところだったので(まったくの偶然)、ありありとその場面が思い浮かんだ。
また、箱庭療法についてもよく話題になっていたが、これまたたまたま箱庭療法の本も何冊か読んでいたので理解も早かった。

ちなみにこの対談は1995年におこなわれたものをまとめている。
1995年というのは、阪神大震災、阪神大震災、オウム事件、エヴァンゲリオン公開、インターネット元年、とういう風に大きな出来事があった年でもある。
僕個人も読書日記をつけはじめたのがちょうど1995年だったので、二人の対談から当時の自分が思い出されたりもした。

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2007 8/27
対談
まろまろヒット率3

是本信義 『図解 不敗の兵法―「負けない」ことは誰にでもできる!』 ダイヤモンド社 2001

今週から学会発表で札幌行きな、まろまろ@引き続き札幌でオススメのごはんやスポットあれば教えてください(^^)v

さて、『図解 不敗の兵法―「負けない」ことは誰にでもできる!』是本信義著(ダイヤモンド社)2001。

勝つことより負けないことに力点を置いたタイトルに惹かれて手に取った一冊。
ただ、読んでみると不敗の戦略についてはほとんど書かれていなくて、タイトルと内容にギャップがあるように感じた。

ただ、アメリカ陸軍の9原則・・・
1:目標の原則→目標を堅持する
2:主導の原則→敵を自分のペースに巻き込む
3:集中の原則→戦闘力を集中させる
4:経済の原則→兵力を経済的に使用する
5:機動の原則→迅速に対応する
6:統一の原則→勢力を分散させない
7:保全の原則→防御を怠らない
8:奇襲の原則→意表を衝いて攻撃する
9:簡明の原則→簡明に行動する
・・・は網羅的な原則として記録した。

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2007 8/13
戦略論
まろまろヒット率2