ジャレド・ダイアモンド、楡井浩一訳 『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』 草思社 上下巻 2005

いま発売中の『日経マネー』8月号に載っている、まろまろ@推奨人として出た先月号とは違って、
今月はスクリーニング・チャレンジャーとして出たので突っ込まれ役ですが興味ある人はどんぞ。

さて、『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』ジャレド・ダイアモンド著、楡井浩一訳(草思社)上下巻2005。

人類の歴史上、繁栄を誇った文明社会が短期間で崩壊して滅亡した例はいくつかある。
なぜその文明社会は崩壊したのか?
似たような環境下でも崩壊しなかった文明社会との差はなんなのか?
その疑問に、1:環境被害、2:気候変動、3:近隣の敵対集団、4:友好的な取引相手、5:環境問題への社会の対応、
の5つの視点で『銃・病原菌・鉄』の著者が切り込む一冊。
原題は“Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed”
ちなみに厳密なタイトルは「環境に関する要素を含み、時に気象変動や近隣の敵対集団や友好的な交易相手を付随的な要因とする、
また常に社会の対応という論点をはらむ崩壊」だと著者は述べているが、確かにこれだと長すぎる(^^;

内容はまず過去の事例として太平洋のイースター島、同じ太平洋のピトケアン諸島(ピトケアン島、マンガレヴァ島、ヘンダーソン島)、
北米のアナサジ、中米のマヤ、そしてノルウェー領グリーンランドを取り上げている。
特に興味深かったのは閉じた社会であるイースター島の文明社会の崩壊と、逆にネットワーク化されていたピトケアン諸島の崩壊の対比だ。
また、イヌイットは生き残れたのにヴァイキングは生き残れなかったノルウェー領グリーンランドにも興味を感じた。
ヴァイキング(ノルマン人)のグリーンランド社会が、自分たちのバックボーン文化に固執するあまり、
現地の環境変化に適応できずに崩壊した様子が生々しくえがかれていて迫力があった。

・・・という風に過去の事例研究が中心の上巻はとても面白かったけど、
成功事例や現代の事例・問題点を扱っている下巻はいまいち説得性に欠けるものだった。
成功事例として紹介された江戸時代の日本の記述に突っ込みをいれたくなるのは我慢しても、
前半の緻密さや迫力と比べて、後半は強引さやダレダレ感を感じてしまった。
(前後を二つに分けて別々の本にすればよかったと思うほど)

ただ、通して読めばやはり前半部分の迫力はピカいちで、『銃・鉄・病原菌』と同じく著者の視点には納得できるものがあった。
たとえば過去の文明社会の崩壊を扱う時に出てくる先住民への差別主義と賛美主義との対立については、
「どちらも過去の先住民を(劣っているにしろ優れているにしろ)現代先進国の住民と根本的に異なる人間と見る過ちを犯している」
としてどちらも退けているのは共感を持てた。

また、読み終えて思い返したのは、前から感じていた「汗水たらして働く」という言葉への違和感だった。
社会構造の変化もあって、最近「汗水たらして働かない人間はダメだ」みたいなことを耳にすることがある。
振り返ってみれば僕の母方は祖父母の代までは農家だった。
彼らや先史時代の人々からすれば、自分が実際に口にする食べものを生産しない人間は結局は社会の寄生虫でしかない。
五十歩百歩な立場同士の反目や僻みにイースター島やアナサジ崩壊の姿を重ねてしまった。

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2006 6/23
歴史、自然科学、環境学
まろまろヒット率3

松本清張 『点と線』 新潮社 1971(原著1958)

社会派推理小説の原点とされる本を読んだので社会派な用語「弊社」をアップした、まろまろです。

さて、『点と線』松本清張著(新潮文庫)1971(原著1958)。

昭和32年(1957年)、九州で男女二人組の心中死体が発見された。
ありふれた情死に小さな疑問点を見つけた捜査員は、汚職事件との関連と他殺の可能性で捜査を進めるが、
容疑者は犯行時に北海道にいたという完璧なアリバイがあった・・・

日本推理小説の最高傑作の一つと言われる一冊。
容疑者のアリバイを崩して破っていくという、いわゆる「アリバイ破り」ものとして、
突飛なトリックや荒唐無稽な動機の多かった推理小説に衝撃を与えた作品。

読んでみるとすでに50年近く前の話だし、時刻表を駆使したトリックはこの作品以降
よく使われているのでオチは簡単に想像できた。
ただ、電報が重要な役割を果たしていたり、青函連絡船があったりと、
当時の交通手段・通信手段を考えてみると感慨深いものを感じた。

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2006 6/9
推理小説
まろまろヒット率3

リチャード・F. バートン、大場正史日本語訳、古沢岩美イラスト 『船乗りシンドバッドと軽子のシンドバッド』 ちくま文庫『バートン版 千夜一夜物語』第七巻より 2004

まろまろ@いま書店に並んでいる幻冬舎『世界の山ちゃん伝説』に僕のインタビューが載ってマッスル。

さて、『船乗りシンドバッドと軽子のシンドバッド』リチャード・F. バートン原典訳、大場正史日本語訳、古沢岩美イラスト
(ちくま文庫)『バートン版 千夜一夜物語』第七巻より(2004)。

シンドバッドの原典が読みたくて手に取ったバートン版千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)の第五百三十七夜から第五百六十六夜まで。
もちろん原典と言っても、シンドバッドの物語自体が色々な海洋物語・伝説を集約したものだし、
派生型も多くて本当の意味でのオリジナル原著に当たるものは無い。
ただ、このバートン版はかなり原形を留めているとされていて、第七回目の航海についてはカルカッタ版も載せられているので信頼性も高い。

実際に読んでみると・・・原典のシンドバッドは人を殺しすぎ(笑)
確かにこのままでは子供向けにはできないのがよくわかる。
ただ、その分生々しいシンドバッドの冒険伝説が活き活きとえがかれていて躍動感があった。
また、解釈や考察を加えているバートンの注釈も興味を持てた(この本で竜涎香などの希少品のことを知った)ので、
169ページにわたる長編物語なのにあっという間に読むことができた。

読み終えてみると毎回苦難に遭って「二度と航海には出ない」と心に誓いながらも、
その都度航海に出てしまうシンドバッドに微笑ましさを感じたし、
どこか親近感のようなものを感じたりもした。

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2006 6/1
小説、寓話、海洋もの
まろまろヒット率3

ルドミラ・ゼーマン 『ギルガメシュ王さいごの旅』 岩波書店 1995

今回から改名した、らぶナベ改めまろまろ@新生まろまろとしてどうぞよろしくです。

さて、『ギルガメシュ王さいごの旅』ルドミラ・ゼーマン文・絵(岩波書店)1995。

絵本版「ギルガメシュ叙事詩」三部作の完結編。
この世で最も滅ぼすべき怪物=死を克服するため、ギルガメシュは永遠の命を求めて旅に出る。
さまざまな困難を乗り越えたギルガメシュは、ついに箱船で大洪水を生き残り不死となったウトナピシュティムに出会う。
しかし不死は得られず、ようやく若さを保つ海草を手に入れたがそれもイシュタールの蛇に食べられてしまう。
挫折と絶望の末にギルガメシュが得た永遠の命とは・・・

人類の永遠のテーマである死との戦いを軸にして、成長と友情をえがいている。
この物語が語り継がれてきた理由が理解できる最終章。
他の古代の物語や神話に影響を与えたギルガメシュ神話のプロットが味わえた三部作。

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2006 5/26
絵本
まろまろヒット率3

ルドミラ・ゼーマン 『ギルガメシュ王のたたかい』 岩波書店 1994

明日の誕生日に改名しようと思っている、らぶナベ@候補は「まろまろ堂」と「まろまろ」です。
(前者は形容詞と名詞の分離ができる、後者はブランド名統一というそれぞれのメリットがあります)

さて、『ギルガメシュ王のたたかい』ルドミラ・ゼーマン文・絵(岩波書店)1994。

ギルガメシュ叙事詩をもとにした絵本『ギルガメシュ王ものがたり』の続編。
友達となったギルガメシュとエンキドゥが、恐ろしい怪物フンババと戦う。
その直後に降臨した女神イシュタール(イシュタル)の誘いをギルガメシュが拒絶することから大きな争いが生まれる。
イシュタールが遣わせた天の雄牛との戦い、親友エンキドゥの病死を通して、
ギルガメシュは「死」こそがこの世で一番の滅ぼすべき怪物だと悟る・・・

ギルガメシュ神話の大きな部分を占めるイシュタールの拒絶と死への戦いを中心にえがいている。
絵本化されていても人類最古の神話のダイナミックさが伝わる一冊。

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2006 5/25
絵本
まろまろヒット率3

ルドミラ・ゼーマン 『ギルガメシュ王ものがたり』 岩波書店 1993

らぶナベ@っと名乗っても最近は誰もこうは呼んでくれないのでHNを変えようかと思っています。

さて、『ギルガメシュ王ものがたり』ルドミラ・ゼーマン文・絵(岩波書店)1993。

人類最古の物語とされるメソポタミアのシュメール文明の「ギルガメシュ叙事詩(神話)」をもとにして、
著者なりのアレンジで再構築しためずらしい絵本。
同じ著者の『シンドバッドの冒険』を読んだ時に評価が高いのを知って手に取った一冊。

内容はウルクの王ギルガメシュがエンキドゥとの戦いの末、友情という人間の優しさを知る過程をえがいている。
歌姫シャマトが重要な役回りを演じるのが元祖神話らしい内容。

ちなみに小さい時に親の目を盗んで観た「ギルガメッシュないと」はこのギルガメシュから取られているらしい。

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2006 5/24
絵本
まろまろヒット率3

BUBKA編集部 『へんなせっくすのいきもの』 コアマガジン 2005

らぶナベ@いま発売中の『日経マネー』7月号「メキメキ出世株」特集(30ページ目)でサイト紹介と共に僕のコメントが載っています。

さて、『へんなせっくすのいきもの』BUBKA編集部・編(コアマガジン)2005。

さまざまな生物の交尾を紹介する本。
『へんないきもの』とまったく同じレイアウトのいわゆるパクり本で、編著がアイドルお宝写真で有名なBUBUKAというのがさらにキテる。

便乗本だけど、コピー元の元祖『へんないきもの』を超えるほど引用されているのを眼にすることがあるので試しに読んでみた一冊。

中には・・・って具体例は生々し過ぎるので本書を読んでください(笑)

思えば「性」が生まれて有性生殖をするようになってから、生命の進化は劇的に変化した。
有性生殖をする生物にとって遺伝子の交配(せっくす)は決定的に重要な行為で、オスとメスそれぞれの性戦略の攻防戦が進化のスピードを速めてきた。
だからこの本に紹介されている交尾の多様性は、生命の多様性の表現とも言える。

そんな興味深いコンセプトの本だけど、紹介文が少し古めかしい例えが多かった点と、イメージを与えてくれるはずのイラストがいまいちで単なるキワモノ本になっているのが残念。

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2006 5/21
自然・科学本
まろまろヒット率2

ルドミラ・ゼーマン、脇明子訳 『シンドバッドのさいごの航海』 岩波書店 2002

人生で一番やってはいけないことの一つ=お財布を洗濯してしまった・・・
「そして、僕は途方にくれる」の金色鍋生です(T_T)

さて、『シンドバッドのさいごの航海』ルドミラ・ゼーマン文・絵、脇明子訳(岩波書店)2002。

シンドバッド最後の航海の部分を絵本にした『シンドバッドの冒険』シリーズ三部作の完結編。
原題は” Sindbad’s Secret “。
原題にあるようにシンドバッドの謎が明らかになる。
シンドバッドが持ち帰った最大の宝物とはいったい何だったのか?
・・・1作目より2作目が、そして2作目よりこの3作目の方が面白く、尻上がり的に楽しめた。

もともとシンドバッド物語はさまざまな地域で語り継がれてきた冒険物語なので、
『千夜一夜物語』にまとめられている話の中でもいろいろな派生型がある。
(一説にはシンドバッド物語は中国発祥の物語という説まである)
いろんな人たちが自分たちの夢や希望をつめて語り継いだ、シンドバッド物語の性格が感じられる絵本三部作だった。

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2006 5/11
絵本、海洋もの
まろまろヒット率3

ルドミラ・ゼーマン、脇明子訳 『シンドバッドと怪物の島』 岩波書店 2002

らぶナベ@文京ごはんをblog風に変更してみました→http://maromaro.com/archive/category/gohan
先月の文京ごはんデリシャスランキングを配信するメルマガもやってます→http://mixi.jp/view_community.pl?id=779245

さて、『シンドバッドと怪物の島』ルドミラ・ゼーマン文・絵、脇明子訳(岩波書店)2002。

絵本『シンドバッドの冒険』の続編。
シンドバッド第3回目の航海を取り上げている。
原題は”Sindbad in the Land of Giants”。

前作よりも面白くて、大蛇や怪物の危機をくぐりぬけるコミカルさが楽しめる。
「もう二度と航海には出ない」と心に決めたシンドバッドが再び航海に出るおちゃめさが伝わってくる一冊。

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2006 5/10
絵本、海洋もの
まろまろヒット率3

ルドミラ・ゼーマン、脇明子訳 『シンドバッドの冒険』 岩波書店 2002

バートン版の『千夜一夜物語』がちくま文庫で再版されたらしいので読んでみようと思う、
らぶナベ@しかしブックカバー必須の表紙ですな(^^;

さて、『シンドバッドの冒険』ルドミラ・ゼーマン文・絵、脇明子訳(岩波書店)2002。

『千夜一夜物語』(アラビアンナイト)の中でも一番有名な話の一つ、「シンドバッドの冒険」の絵本。
原題は”Sindbad: From the Tales of the Thousand and One Nights”。

この本ではシンドバッド7回の航海のうち第1回と第2回の航海をまとめて一本化している。
大型絵本なので、細密画を意識して書かれた絵も含めてはっきりと読める一冊。

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2006 5/9
絵本、海洋もの
まろまろヒット率3