早川いくを・寺西晃 『またまたへんないきもの』 バジリコ 2005

そんなに深い意味はないけど”Cambrian Explosion”(カンブリア大爆発)という響きが好きな、らぶナベです。

さて、『またまたへんないきもの』早川いくを著、寺西晃絵(バジリコ)2005。

『へんないきもの』の第二弾。
両生類ではめずらしい一夫一妻制を採用して相手の浮気には報復するセアカサラマンダーや、
鯛などの魚の口の中に夫婦で寄生するタイノエなど、今回もめずらしい生き物たちが紹介されている。

たとえばタイノエについての「(魚の口の中なので)狭いながらも楽しい我が家、海の中だけど水入らず」
という紹介文には思わず笑ってしまった。

ただ、総じて現代社会と政治を皮肉るという話の流れが完全にワンパターンになってしまっているように感じた。
コラムもちょっと説教臭くて長いのが鼻についた。

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2006 5/7
自然・科学
まろまろヒット率2

アンヌ=マリ・デルカンブル、小林修・高橋宏訳、後藤明監修 『ムハンマドの生涯』 創元社 改訂新版2003

らぶナベ@隠しページごはん日記を「まろまろごはん日記」として公式コンテンツ化しました。
隠しページ期間は実に3年にわたっていたのでちょっとした感慨です(*^_^*)

さて、『ムハンマドの生涯』アンヌ=マリ・デルカンブル著、小林修・高橋宏訳、後藤明監修(創元社)改訂新版2003。

イスラーム教の創始者ムハンマドの生涯をたどった一冊。
後半ではイスラームの法概念や慣習も紹介されているし、日本ではあまり見る機会の無い図版も使われている。
(ただ、監修者も書いているように誤解のある部分も少しあるので注意)

読んでみて興味を持ったのが、イスラーム歴元年に当たる622年のヒジュラ前後でムハンマドの役割や性格が変化している点だ。
もちろん地位が変わったという面も大きいけど、それにしても預言者としての宗教活動を中心にしていたメッカ時代と、
政治家としての役割も担ったマディーナ時代では、ムハンマド自身の性格もかなり変化しているように感じた。
たとえばクルアーン(コーラン)も、メッカ時代のメッカ啓示は短く詩的なものが多いのに、
マディーナ時代のマディーナ啓示の部分は長くて行政的なものが多いという大きな違いがある。
卵が先か鶏が先か、環境の変化か個人的な因子か・・・少し考えさせられた。

また、ムハンマドがウカーズの市場で、砂漠では金より言葉が価値があることを知ったというエピソードにも興味を持った。
ムハンマドの生きた時代は詩人が語る詩には霊鬼(ジン)が宿るとされて大きな影響力を持っていた。
その詩の力に影響を受け、自身でも活用したムハンマドのメディア戦略にも関心を持った。

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2006 4/30
歴史、宗教、イスラーム教
まろまろヒット率3

「大菩薩峠の湯」 (温泉)

泉質:アルカリ性単純泉 (PH10の高アルカリ泉質)

山梨と奥多摩を結ぶ青梅街道(国道411号線)沿いにある温泉。
市営で正式名称は「甲州市塩山交流保養センター 大菩薩の湯」。

なんといってもPH10の高アルカリ泉質なのがめずらしい。
公共施設の割には大きめの露天風呂もあるし、源泉浴槽もある。
隠れ湯的に使えて気に入ったお風呂。
(何しろ帰り道で野生の鹿と二度も出会ったほどの場所)

2006 4/28
ぷかぷかお風呂日記
まろまろヒット率4

桜井秀勲 『戦後名編集者列伝―売れる本づくりを実践した鬼才たち』 編書房 2003

らぶナベ@今日(金)の日経新聞夕刊に僕のインタビューが載るそうだす。

さて、『戦後名編集者列伝―売れる本づくりを実践した鬼才たち』桜井秀勲著(編書房)2003。

女性誌「女性自身」や「微笑」の編集長を歴任し、祥伝社の創立メンバーでもある著者が、
自分と接点があった編集者たちを中心に、戦後活躍した名編集者たちを紹介する同時代記。

伝聞や推定も多いのでどこまで信じたらいいのか分からない点も無いわけではないけど、
名物編集者たちそれぞれの人生、編集エピソードが生々しくえがかれてあって躍動感を感じた。

中でも印象深かったのは名編集者とされる人たちは物議をかもし出すことを恐れない、反骨精神あふれる人たちが多かった点だ。
これは、まだ”雑”誌が”良”書”と比べられてB級メディアとして見られていた時代の人たちであり、
編集者の多くが紆余曲折の経歴を持っていたこと、そして出版社側の採用過程も多様であったことが原因かもしれない。
(結果的に権威をつくってしまった人と、できあがった権威に入ろうとする人の違いか?)
現在を振り返れば、物議を醸し出しているメディアは出版ではなくネットである点にも時代の流れを感じた。

ちなみにレイアウト的には、列伝の最初に略歴がまとまっていると、もっと読みやすかったのにとも思った。

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2006 4/20
メディア史
まろまろヒット率3

ゲオルク・ジンメル、清水幾太郎訳 『社会学の根本問題―個人と社会』 岩波文庫 1979(原著1917)

全くの偶然で日経新聞と日経マネーからのインタビュー依頼が重なった、らぶナベ@経済系には縁遠いだけに巡り合わせの奇遇を感じてます。

さて、『社会学の根本問題―個人と社会』ゲオルク・ジンメル著、清水幾太郎訳(岩波書店)1979。
原題は“Grundfragen der Soziologie: Individuum und Gesellschaft” (1917)。

まだ社会学が学問として認められていなかった頃に、形成社会学を提唱した著者が書いた、社会学の本質を述べた一冊。
読んでみると社会学も科学なんだと弁明している第一章よりも、具体例として社交と芸術&遊戯との共通点を述べている第三章の方が面白く読めた。

以下はチェックした箇所・・・

☆すべて科学というものは、或る特定の概念に導かれて、諸現象の全体や体験的直接性から一つの系列乃至一つの側面を抽象するもの
<第1章 社会学の領域>

○存在しているものは、認識が到底直接に捕ら得ない統一体であり、私たちが事実内容と呼んでいるものは、或る一面的な範疇によって理解したもの
<第1章 社会学の領域>

☆芸術は、完全に生命から離れたもので、芸術に役立ち、芸術によって再び生産されるようなものだけを生命から取り出す
<第3章 社交(純粋社会学即ち形式社会学の一例)>

○(芸術と遊戯の)両者は、生命のリアリティから生まれながら、このリアリティに対して独立の国を成す諸形式を共有する
→両者の意味と本質とは、生命の目的や生命の実質から生まれた諸形式がそれらから身を解き放って、
諸形式それ自ら独立した運動の目的になり実質になり、あのリアリティのうちから、この新しい方向に従い得るもの、
諸形式の独自の生命のうちに現われ得るもののみを取り入れるという、この断乎たる回転のうちにある
<第3章 社交(純粋社会学即ち形式社会学の一例)>

○社交は、具体的な目的も内容も持たず、謂わば社交の瞬間そのものの外部にあるような結果を持たない(略)
それゆえ、この過程は、その条件においても、その成果においても、この過程に参加する人間だけに限られている
<第3章 社交(純粋社会学即ち形式社会学の一例)>

○社交というのは、すべての人間が平等であるかのように、同時に、すべての人間を特別に尊敬しているかのように、人々が「行う」ところの遊戯
→リアリティを全く離れた遊戯や芸術が嘘でないのと同じように、社交も嘘ではない
<第3章 社交(純粋社会学即ち形式社会学の一例)>

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2006 4/18
社会学、学問一般
まろまろヒット率3

田中芳樹 『中国武将列伝』 中央公論新社 上下巻 1996

らぶナベ@せっかくクリーニングに出したのにあまりに寒いのでコートを取り出しました(涙)

さて、『中国武将列伝』田中芳樹著(中央公論新社)上下巻1996。

「史記と三国志だけが中国の歴史じゃない」という著者の思いから、
春秋時代から清代後半までの中国史を代表する99人の武将たちを取り上げている一冊。

特に中国では英雄視されていたり物語にもなるほど人気があるのに、
日本ではあまり馴染みのない歴史上の武将たちが取り上げられている。

中でも面白いなと思ったのは京劇の題材で言えば宋代を舞台にしたものが一番多いことを強調している点だ。
確かに英雄物語として有名な岳飛や、武将ではないけど名判事物語として有名な包拯(ほうじょう)など、
中国では人気があるのに日本ではあまり知られてない人物や物語が多い。
もちろん庶民文化の勃興や異民族との対立激化などの歴史的背景が違うからという理由はあるけれど、
そのギャップの大きさに興味を持った。

また、唐代にチベットとネパールの兵を率いてインド(マガダ国)の内乱を平定したという王玄策にも興味を持った。
(散逸した『中天竺行記』を読みたいと思った)

ちなみにこの本は口述筆記のようで話言葉で書かれてある。
それはそれでいいんだけど「○○だったかな?」とか「いま思い出せないけど」などと述べている箇所がいくつかあった。
簡単な事実関係くらいは本にする時に調べて補完して欲しかった。。。

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2006 4/16
歴史
まろまろヒット率2

ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰訳 『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』 草思社 上下巻 2000

らぶナベ@喜寿(77歳)を迎えようかという人の活躍ぶりを見て僕も奮起しています(^_-)

さて、『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(草思社)上下巻2000。

16世紀、アメリカ大陸を侵略したヨーロッパ人たちはごく少数だったのに、先住民たちに大打撃を与えて支配した。
その直接的な原因は銃、病原菌、鉄に代表される政治・文字システム、感染症の抵抗力、技術の差だった。
では、なぜ同じ人類にそこまでの決定的な違いが生まれたのか?
その究極的な原因は何なんだろうか?

・・・かつてその違いは人種間の生物学的な差だと思われていた。
でも、いまは人種間に生物学的な優劣は無いことが判明している。
では、銃・病原菌・鉄に代表される文明の違いはどうして生まれたのか・・・

この本は生理学と進化生物学を専門にする著者が、人類が同じスタートラインに立っていた1万3千年前から、
生物学や地学、言語学などの研究成果を取り入れながら、それぞれの地域で起こった歴史をたどっている。
原題は“Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies” (副題が違う)。
原副題にあるようにそれぞれの運命を変えることとなった、違いを生み出した究極的な要因にアプローチしている。

読んでみると、読み物として単純に面白い(^_^)v
そしてユーラシア大陸が東西に長いのではなく、南北に長かったらどうなっていたのか?と考えさせられる一冊でもある。
もちろん最新の研究結果を使っている分、新しいデータや知見が出てくればすぐに古めかしいものになるのは必然の本だけど、
それでも現時点で挑戦しようとする姿勢に共感をおぼえた。

ちなみにエピローグでは文系に分類されている歴史学と、理系の進化学地学、天文学、進化学との共通点を述べている。
再現実験ができない点、構成要素が複雑な点、個体がユニーク(唯一無二)な点などの共通点をあげながら、
直接要因と究極要因を結ぶアプローチの方法論についても言及している。
この点が佐倉研究室必読文献に指定された原因でもある。

以下はチェックした箇所(重要と思われる順&一部要約)・・・

☆アメリカ大陸とアフリカ大陸が南北に長いのに対して、ユーラシア大陸が東西に長いので食料生産の伝播が早かった
→人類の歴史の運命はこの違いを軸に展開していった
<第10章 大地の広がる方向と住民の運命>

☆歴史学、天文学、気象学、進化生物学などは程度の差こそあれ、
実験的に操作して再現実験をおこなうことができない分野、構成要素が非常に多岐にわたる分野、
個々がユニーク(唯一無二)であるため普遍的な法則を導くことができない分野、
どのような創発的属性が登場するかや将来何が起こるかを予測するのが難しい分野、という共通点がある
<エピローグ>

○歴史科学は直接要因と究極要因の間にある因果関係を研究対象とする
<エピローグ>

○世界史では、いくつかのポイントで、免疫のある人たちが免疫のない人たちに病気をうつしたことが
その後の歴史の流れを決定的に変えてしまっている
<第3章 スペイン人とインカ帝国の激突>

○実際の発明の多くは人間の好奇心の産物であって何か特定のものを作りだそうとしたわけではない
→「必要は発明の母」ではなく「発明は必要の母」
<第13章 発明は必要の母である>

○有名は発明家とは、必要な技術を社会がちょうど受け容れられるようになった時に
既存の技術を改良して提供できた人であり、有能な先駆者と後継者に恵まれた人
<第13章 発明は必要の母である>

○人類の科学技術史は大陸ごとの面積、人口、伝播の容易さ、食料生産開始のタイミングの違いが、
技術自体の自己触媒作用によって時間の経過とともに増幅された結果
→ユーラシア大陸がリードできたのは知的に恵まれたわけではなく地理的に恵まれていたから
<第13章 発明は必要の母である>

○中国がヨーロッパに逆転された理由は、中国の長期統一とヨーロッパの長期不統一にある
→技術は地理的な結びつきが強すぎず(中国)、弱すぎず(インド)、中程度のところでもっとも進化スピードが速かった
<エピローグ>

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2006 4/13
歴史科学、自然科学、学問一般
まろまろヒット率4

マイケル・クック、千葉喜久枝訳 『世界文明一万年の歴史』 柏書房 2005

75歳という最高齢まろみあん記録を更新した人がまろまろ掲示板に遊びに来てくれた
らぶナベ@そのチャレンジ精神に「おそれ入谷の鬼子母神」と感銘しきりです。

さてさて、『世界文明一万年の歴史』マイケル・クック著、千葉喜久枝訳(柏書房)2005。

原題は“A Brief History of the Human Race”
「世界が今の状態になったのはなぜか?」、「人類史は他の歴史になる可能性は無かったのか?」という問いで書かれている人類一万年史。

文字の資料をたどる一般的な”歴史”では人類の歴史はせいぜい5000年前までしかさかのぼれないけど、
この本では文明史を語る上で5000年前からはじめるのは逆に無理があるとして、
現在の完新世が始まる1万年前までさかのぼってスタートさせている。
だから手法も歴史学だけでなく遺伝学や地質学、気象学などの学際的な研究成果をふんだんに使っている。
分厚い本だけど、歴史学の世界では一般的なヨーロッパ近代史の比重を落としているのも含めて勇気ある一冊。

ただ、前半は面白いし説得力もあったけど、後半がぐっとパワーダウンしたように思えてしまった。
この本ではヨーロッパが世界の標準になったのはまったくの偶然だったとしているが、その偶然がどうして起こったのかもっと知りたかった。

ちなみに著者は『銃・病原菌・鉄』に影響を受けてこの本を書き始めたと書かれてある。
(他にも9.11同時多発テロの影響も受けていることは明らかだけど)
最初から『銃・病原菌・鉄』を通読しとけばよかったなとちょっと反省。

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2006 4/11
歴史、人類史
まろまろヒット率3

生田昌弘 『Webブランディング成功の法則55』 翔泳社 2005

最近わりとオフィシャルなメールもmixi経由で来るようになった、
らぶナベ@確かにSPAMと紛らわしくないしこれも時代の流れですかな。

さて、『Webブランディング成功の法則55』生田昌弘/株式会社キノトロープ著(翔泳社)2005。

成功するWebブランディングの法則を55項目にして紹介している本。
・・・のはずだったんだけど単なるWebサイト制作進行本と変わらない気がした。

そもそもWebブランディングで成功した実例が示されていないので、どれも当たり障りの無い抽象論に聞こえてしまった。
(たとえばコラムでちらっと紹介されている「BMWの事例」などの方が説得力があった)
55の法則それぞれを当てはめた成功モデルを仮にでもつくるか、もっと実例が欲しかった。

また、根拠となるデータも詳細を公開していない自社調べのものが多くて信頼性に疑問だし、
参考にした参考文献や資料の一覧も無いので資料性もとぼしく感じた。

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2006 4/10
情報・メディア、ブログ・HP関連、ブランディング
まろまろヒット率1

守屋洋 『十八史略の人物列伝』 プレジデント社 1992

昔はテレビっ子だったのに今ではテレビの無い生活に慣れてきた、
らぶナベ@久しぶりにゴールデンタイムの番組見ると妙に白けますな(^^;

さて、『十八史略の人物列伝』守屋洋著(プレジデント社)1992。

周代の周公旦から清代の李鴻章まで、中国史を代表する67人を扱っている人物列伝。
各列伝の最初にその人物を特徴付ける名言や評伝の句と略歴が書かれてあり、その後にその人生と人となりを紹介している。
中国史らしい生々しい人物伝は迫力があり、分厚い一冊なのに思ったより早く読み終えた。

中でも興味を持ったのが「寛以て猛を救い、猛以て寛を救う」と言われた春秋時代の鄭の宰相・子産や、
「人を対象とせず、時の動きを洞察してその流れに乗ること」を第一にして、
宰相の地位まで登りつめた後はあっさり辞めて大商人になった春秋時代の越の宰相・范蠡(れい)だ。
柔軟なバランス感覚、身の処し方を考えさせられた。
また、老子の「足るを知れば辱められず、止まるを知れば殆からず」は力みがちな時には思い出して心がけたいと思う一句だった。

ちなみに古典「十八史略」は宋代までのものだけど、この本は清代までの人物を取り扱っている。
中国史の別名という意味で十八史略の言葉をタイトルに使ったということだけど、
ややこしいので(僕も間違えた)「中国史の人物伝」にした方が良かったように思える。
また、なぜか元代の人物は耶律楚材だけで他の人物たちがすっぽり抜けているのも不思議に思えた。
多民族国家として魅力的な人物が多い時代なのに残念に思えた。

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2006 4/9
歴史
まろまろヒット率3
売れ筋 歴史本