メアリー・リン・レイ&バーバラ・クーニー、掛川恭子訳 『満月をまって』 あすなろ書房 2000

卒業式の定番ソング「旅立ちの日に」が実はかなり新しい曲(1991年)だと最近知った、まろまろです。

さて、『満月をまって』メアリー・リン・レイ文、バーバラ・クーニー絵、掛川恭子訳(あすなろ書房)2000。

山奥でカゴ(篭)をつくって暮らす家に生まれた8歳の”ぼく”は、満月の日にカゴを売りに行くお父さんについて行きたいと願う。
ある満月の日、ついに望みがかなってハドソンの町まで行くと、そこにはカゴ売りに対する偏見の目が待っていた・・・

原題は”BASKET MOON”。
100年ほど前に、ニューヨーク州ハンドソンからそれほど遠くないコロンビア郡の山間で実際にカゴを作っていた人々をモデルにした絵本。

いくつかの読み方ができる絵本だけど、僕は自分を見失い、取り戻す少年の物語として読めた。
「風が、ぼくのなまえをよんでくれたんだ」という一節にちょっと切なくなる一冊。

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2007 6/27
絵本
まろまろヒット率3
絵本

畑村洋太郎 『失敗学』 ナツメ社 2006

最近「どんだけ~」という感嘆詞が流行っているというので使ってみたら通じなくて凹んだ、
まろまろ@まさに失敗学の実例(w

さてさて、そんな『失敗学』畑村洋太郎著(ナツメ社)2006。

様々な失敗から共通項目を抽出して、創造につなげることを目的とした失敗学の本。
単なる精神論や抽象論ではなく、積極的に失敗に目を向ける姿勢に共感を持って手に取った一冊。

失敗原因の分類(第1章)や失敗情報の性質(第2章)がまとめられているのがかなり参考になった。
中でも創造においては「問題発見能力よりも、課題設定能力の方が重要」(第4章)だとしているのは、
ここしばらくのプロジェクトの中で感じていたことだったので印象に残った。
「課題設定のメリットは、同じ課題を持つ他人の行動を参考にできること」(第5章)というのも納得。

また、「失敗による傷み、悔しさが新たな知識を受け入れる素地ができる」(第2章)というのは、
失敗による挫折感の真っ直中にいる今の僕にとって響くものが多かった。

ただ、読んでいてその比率や数値はどっから出てきたんだ?というのもあったし、
それは単に主観だけではないかと思われる部分も目についた。
でも、この本は読みやすさに重点を置いているだけかもしれないので、もう一冊読みたいと思った。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

☆失敗原因の10分類
未知、無知、不注意、手順の不順守、誤判断、調査・検討の不足、制約条件の変化、企画不良、価値観不良、組織経営不良
<第1章 失敗を知る その基礎知識>

☆失敗情報の性質
減衰、単純化、歪曲化、ローカル化、組織内を上下左右に移動しない、神話化、伝承されにくい
<第2章 失敗情報が伝達されるとき>

○当事者から見た主観的な情報もとても重要
<第2章 失敗情報が伝達されるとき>

☆失敗情報の伝達項目
事象、経過、原因、対処、総括、知識化
<第2章 失敗情報が伝達されるとき>

☆失敗による傷み、悔しさが新たな知識を受け入れる素地ができる
<第2章 失敗情報が伝達されるとき>

☆失敗情報の伝達方法
記述、記録、仮想演習、体得、教育、雰囲気
<第2章 失敗情報が伝達されるとき>

○想定外の事態にぶつかるのはフロントランナーの証
<第3章 失敗に学ぶということ>

○アイデアを得る方法
水平法、思考演算法、対話法、ブレインストーミング法
<第4章 失敗が創造を生む>

☆(創造では)問題発見能力よりも、課題設定能力の方が重要
<第4章 失敗が創造を生む>

○課題設定のメリットは、同じ課題を持つ他人の行動を参考にできること
<第5章 失敗と向き合う~組織のなかの個人~>

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2007 6/22
失敗学、工学
まろまろヒット率4

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(映画)

文化祭の準備に追われる友引高校の面々は、文化祭前夜が繰り返されていることに気づいた。
それは彼らの”日常”だけが取り残された世界だった・・・
1984年公開の押井守監督作品。

「もし、竜宮城に行ったのが浦島太郎だけでなく村人全員だったら、帰ってきた時に彼らは時が経っていることを感じられるのだろうか」。
原作の『うる星やつら』とはだいぶ違うテイストで、内省的な世界が終始展開されていくという、ある意味でセカイ系の源流とでも言うべき作品。
押井守監督の代表作(最高傑作と評価する人もいる)だけあって、原作の雰囲気を許されるギリギリまで変えているのも特徴的。

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2007 6/22
もろもろ鑑賞、映画
まろまろヒット率3

陳舜臣 『チンギス・ハーンの一族』 集英社 全4巻 2000

要望にお応えしてまろまろごはん日記の中にスイーツ・カテゴリをつくった、まろまろ@自他共に認める甘党です(^_^)v

さてさて、『チンギス・ハーンの一族』陳舜臣著(集英社)全4巻2000。

1巻:「草原の覇者」
2巻:「中原を征く」
3巻:「滄海への道」
4巻:「斜陽万里」
・・・の四巻から成るチンギス・ハーンとその一族の興亡史。
テムジンがチンギス・ハーンと名乗って他国の記録に登場する前後から、フビライ・ハーンの死までを中心にえがいている。

歴史小説だけど、物語性より淡々とした記述の方が多い。
たとえばチンギス・ハーンの物語では必ず出てくる、長男ジョチ(ジュチ)の出生をめぐる話があっさりとしていた。
これはチンギス・ハーンの正妻ボルテが妊娠した時期とメルキト部に奪われていた時期がかぶるため、
長男ジョチは自分の子供ではないかもしれないとチンギス・ハーンが生涯悩み続けるという話で、
井上靖の『蒼き狼』ではこの点が物語の根幹部分になっている。
(『元朝秘史』より)
でも、この『チンギス・ハーンの一族』では、メルキト部に奪われた時期にはボルテはすでに妊娠していたので、
チンギス・ハーンは長男の出生を別に疑っていないという『集史』の方の説を採用して普通に流していた。

このように歴史小説といっても、三世代以上にわたる通史をえがいているということもあって、淡々としている。
ただ、それだけにメリハリを感じられない部分もあった。

ちなみにこの本は、「世界の覇者になったチンギス・ハーンだって何度も負けているんだから」と言ってすすめてくれた本でもある。
見た目がそんなに憔悴していたのかなと読みながら反省(^^;

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2007 6/21
歴史小説
まろまろヒット率3

村上春樹 『スプートニクの恋人』 講談社 1999

セカンドライフを薦められているけれど、そもそもファーストライフでいっぱいいっぱいな、まろまろです。

さてさて、『スプートニクの恋人』村上春樹著(講談社)1999。

ぼくは小説家志望のすみれに恋をする。
恋愛という感情を知らないすみれは、ある時、年上の女性ミュウを愛してしまった・・・
コメディ小説のような、ミステリー小説のような、恋愛小説のような、そんな村上春樹らしい一冊。

中でも印象深かったのは・・・
「この女性はすみれを愛している。しかし性欲を感じることはできない。
すみれはこの女性を愛し、しかも性欲を感じている。
ぼくはすみれを愛し、性欲を感じている。
すみれはぼくを好きではあるけれど、愛してはいないし、性欲を感じることもできない。
ぼくはは別の匿名の女性に性欲をかんじることはできる。しかし愛していない。」
・・・というぼくが関係をまとめるシーンだ。
「人はお互いに近づくことはあっても決して交わることのない人工衛星のようなもの」とする、
この小説のテーマ(孤独)をプロットとして表現していて面白かった。

今まで読んだ村上春樹小説の中では一番しっくりきたけれど、主人公が何だかんだでモテまくるのがやっぱり気になった(w

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2007 6/12
小説
まろまろヒット率3

村上春樹 『ダンス・ダンス・ダンス』 講談社 上下巻 1991

ナニゲに自分のまわりには村上春樹ファンが多いと気づいた、まろまろです。

さて、そんな『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹著(講談社)上下巻1991。

空虚な日々をおくる”僕”は、ある時期をすごした”いるかホテル”を再訪した。
そこには”ドルフィン・ホテル”という名前の、全く違うホテルが建っていた・・・

不安定な現実と消耗する日常、そこでステップを踏みながら踊る”ダンス”をテーマにした村上春樹の長編小説。
友達から『アフターダーク』を貸してもらったら、今度は別の友達が「再起の話だし」ということで貸してくれた一冊。

読んでみると冒頭からの陰鬱な雰囲気に辟易させられたけど、150ページ前後からようやくエンジンが入った。
特に下巻の”僕”と”ユキ”とのハワイのシーンには、そんな陰鬱さとコントラストをなす印象を受けた。
また、ところどころにバブル時代の匂いがして、それが何だか微笑ましくもあった。
(原本の初版は1988年)

ちなみに村上春樹の小説の主人公はどんなにダメな時期でもかなりモテるのが、
彼のテーマの一つである”リアリティ”に欠けると思う(w

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2007 6/5
小説
まろまろヒット率3

北海道大学CoSTEPサイエンスライターズ・宮本拓海・遊磨正秀・丑丸敦史 『シンカのかたち 進化で読み解くふしぎな生き物』 技術評論社 2007

ニコニコ動画は動画自体よりコメントが面白いと思う、まろまろです。

さて、『シンカのかたち 進化で読み解くふしぎな生き物』北海道大学CoSTEPサイエンスライターズ著、宮本拓海イラスト、遊磨正秀・丑丸敦史監修(技術評論社)2007。

不思議な生物たちを進化論の視点で解説する一冊。
僕たち人間から見れば、へんてこりんで魅力的な生物たちが紹介されている。

たとえば若返りをおこなって永遠に生きることができる「ベニクラゲ」(Turritopsis nutricula)や、
しっぺ返し戦略の互恵的利他行動で助け合いをする「ナミチスイコウモリ」(Demodus rotundus)などの
こうした本ではレギュラー的(?)なお馴染みの生物から、
植物なのに歩くことができる「ウォーキングパーム」(Socratea exrrhiza)や、
擬態をおこなってシロアリを欺すカビの「ターマイトボール」(Athelia)などの興味深い生物が取り上げられている。

中でも馴染み深い「タラバガニ」(Paralithodes camtschaticus)は、実はカニではなくてヤドカリの一種だということは知らなかったので面白かった。
カニに似ているのは進化における「収斂」の結果で、そもそもカニとは足の本数からして違うらしい。

読んでいると『へんないきもの』に影響を受けたと思わしきシニカルな文体の箇所もあったけれど、『へんないきもの。』よりも科学的正確性が高い一冊。
(その分、断定を避ける記述も多い)

ちなみにこの本の執筆者の一人は研究室の後輩が入っていたりする(^_^)v

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2007 6/3
進化生物学
まろまろヒット率3

小林章夫 『コーヒー・ハウス―18世紀ロンドン、都市の生活史』 講談社 2000

最近、コーヒー・ハウスではココアやチョコレートも主流の飲み物だったと知った、
まろまろ@男がカフェでココア注文しても別に恥ずかしくないのですな(^_^)v

さて、『コーヒー・ハウス―18世紀ロンドン、都市の生活史』小林章夫著(講談社)2000。

ロンドンのコーヒー・ハウスが全盛期だった17世紀半ばから18世紀にかけての、
コーヒー・ハウスとそれを取り巻く政治、経済、文化を紹介する一冊。

具体的には・・・
第1章:一八世紀イギリスの生活史―ロンドン、ペスト、大火
第2章:ジャーナリズムの誕生―クラブ、政党、雑誌
第3章:ウィットたちの世界―文学サークル、科学実験、チャップ・ブック
・・・の三章構成で、代表的なコーヒー・ハウスとその果たした役割が書かれている。
たとえば、ロイド保険組合を生み出した、ロイズ・コーヒー・ハウス。
ドライデンなどの文化発信の中心となった、ウィル・コーヒー・ハウス。
ジョン・デザグリエルスによて科学実験を客の前で見せた、ベッドフォード・コーヒー・ハウスなどが取り上げられている。
また、情報センターであったコーヒー・ハウスからジャーナリズムが生まれていった経緯も紹介しつつ、
コーヒー・ハウスがいかに政治、経済、文化の拠点となっていたのかを紹介している。

このよう18世紀ロンドンでコーヒー・ハウスが盛んになった理由に興味を持ったが、
当時から、1:値段が安い、2:酒が無いので真面目な雰囲気、3:楽しめる、という点が指摘されていたらしい。
著者はこれに加えて、当時のイギリスの住宅事情が悪くて家で人と会うのが難しかった、という点を挙げている(第1章)。

また、これと対をなして、コーヒー・ハウスの衰退した理由については、
1:数が多くなりすぎた、2:酒も出すようになった、3:客の多様性が失われた、4:ジャーナリズムの発達、
5:植民地政策の変更によって紅茶が中心となった、6:個人の家の構造が良質化した、という点を指摘している(第3章)。

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2007 6/1
歴史、グルメ、カフェ本
まろまろヒット率3
カフェ 開業

さそうあきら 『神童』 双葉社 全3巻 2003

まろうさバースデーケーキをもらった、まろまろ@人生の冬の時代に人情が身に染みます(TT)

さて、『神童』さそうあきら著(双葉社)全3巻2003。

音楽大学受験に失敗してに浪人中の和音は、小学五年生のうたと知り合う。
野球に打ち込むうたはピアノの天才だった・・・

音が出せない漫画なのに音楽の迫力が表現されていて、うたの神童ぶりが伝わってくる。
映画版のキャッチにもなった、うたのセリフ「わたしは音楽だから」が印象深い作品。

音楽漫画の最高傑作の一つとして評価されているらしいけれど納得の一冊。

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2007 5/27
マンガ本
まろまろヒット率4

村上春樹 『アフターダーク』 講談社 2006

凹んでいる僕に友達が貸してくれて村上春樹小説をはじめて読んだ、まろまろです。

さて、『アフターダーク』村上春樹著(講談社)2006。

真夜中のファミレスで本を読んでいたマリは、高橋から声をかけられる。
それをきっかけにして、ラブホテルでの騒動に巻き込まれながら様々な人生ドラマが交錯していく・・・

深夜0時から夜明けまで、そこには昼とはまた別の世界が展開されている。
その真夜中のドラマたちを時系列にえがいている村上春樹の小説。

この物語の雰囲気は好きだったけど、僕は伏線の種明かしを期待して読んだので物足りなさも少し感じた。

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2007 5/22
小説
まろまろヒット率3
村上春樹