岸見一郎・古賀史健 『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』 ダイヤモンド社 2013

渡邊義弘@最近、護国寺によく行っています。

さて、岸見一郎・古賀史健 『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』 ダイヤモンド社 2013。

文京区友の会の方からご紹介された一冊。
タイトルになっている「嫌われる勇気」の他にも、「トラウマは存在しない」、「不幸な状況は自分が選択しているだけ」、「幸せになるには勇気が必要」などの刺激的な言葉が散りばめられているアドラー心理学の本。

読んでみると、身につまされて痛いと感じるところも多くあった。
特に、哲人の友人で小説家になることを夢見ながら、作品を書き上げられない人に対して…

「実際のところは、応募しないことによって「やればできる」という可能性を残しておきたいのです。
人の評価にさらされたくないし、ましてや駄作を書き上げて落選する、という現実に直面したくない。
時間さえあればできる、環境さえ整えば書ける、自分には才能があるのだ、という可能性のなかに生きていたいのです」
<第一夜 変われない理由について>

…と哲人が評しているところは、自分のことのように思えてとても痛いと感じた。

また、この本の根幹部分になると思ったのが下記…

☆あらゆる人間関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことーあるいは自分の課題に土足で踏み込まれることーによって引き起こされます。
(中略)「ここから先は自分の課題ではない」という境界線を知りましょう。そして他者の課題は切り捨てる。それが人生の荷物を軽くし、人生をシンプルなものにする第一歩です。
(中略)あなたにできるのは「自分の信じる最善の未知を選ぶこと」、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか、これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。
(中略)他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない。
<第三夜 課題の分離について>

…この自分と他人との課題を分けることを述べている部分だ。

このような身につまされる内容だけでなく、青年と哲人との対話によって成り立っている構成面も興味を感じた。
「対話による気づき」については、この4月から13年ぶりに東京に戻り、旧交を温める過程で感じていたところなので、共感するところがあった。

以下は、その他にチェックした箇所(一部要約含む)…

○人は、いろいろと不満はあったとしても、「このままのわたし」でいることのほうが楽であり、安心
<第一夜 変われない理由について>

○単純に、一歩前に踏み出すことが怖い。また、現実的な努力をしたくない。いま享受している楽しみーたとえば遊びや趣味の時間ーを犠牲にしてまで、変わりたくない。
(略)ライフスタイルを変える”勇気”を持ち合わせてない・
<第二夜 劣等コンプレックス>

○権威の力を借りて自らを大きく見せている人は、結局他者の価値観に生き、他者の人生を生きている。
<第二夜 優越コンプレックスについて>

○相手の言動によって本気で腹が立ったときには、相手が「権力争い」を挑んできているのだと考えてください。
(中略)権力争いを挑まれたときには、ぜったいに乗ってはならないのです。
<第二夜 権力争いについて>

○アドラーの行動面の目標=1.自立すること、2.社会と調和して暮らせること
心理面の目標=1.わたしには能力がある、という意識、2.人々はわたしの仲間である、という意識
<第三夜 人生のタスクについて>

○自由とは他者から嫌われることである
<第三夜 嫌われる勇気>

○問題はわたしが決心するかどうかであって、対人関係のカードは常に「わたし」が握っていたのです。
<第三夜 対人関係のカードについて>

○対人関係のなかで困難にぶつかったとき、出口が見えなくなってしまたっとき、まず考えるべきは「より大きな共同体の声を聴け」という原則です。
(中略)関係が壊れることだけを恐れて生きるのは、他者のために生きる、不自由な生き方です。
<第四夜 複数の共同体について>

○人は、自分には価値があると思えたときにだけ、勇気を持てる。
(中略)「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できる。
<第四夜 勇気づけについて>

○60点の自分をそのまま60点として受け入れた上で、「100点に近づくにはどうしたらいいか」を考えるのが自己受容
(中略)「肯定的なあきらめ」
<第五夜 自己受容について>

○人生とは、いまこの瞬間をくるくるとダンスするように生きる、連続する刹那
(中略)ダンスを踊っている、「いま、ここ」が充実していれば、それでいい
<第五夜 人生について>

○人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないことです。
<第五夜 人生について>

○「他者に貢献するのだ」という導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、なにをしてもいい。嫌われる人には嫌われ、自由に生きてかまわない。
<第五夜 人生について>

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2020 11/19
アドラー心理学、心理学
まろまろヒット率4

安藤俊介 『[図解] アンガーマネジメント超入門 怒りが消える心のトレーニング』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2018

渡邊義弘@千葉で中学生向けのワークショップのファシリテーターをつとめました。

さて、安藤俊介 『[図解] アンガーマネジメント超入門 怒りが消える心のトレーニング』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2018。

まろみあんの方からお借りした、アンガーマネイジメント (anger management) の本。
以下は、印象に残った個所。
(→は私のコメント)

〇怒りは二次感情=怒りを感じたとき、また相手を怒らせてしまったときに大切なのは、「怒りの奥にある一次感情は何か」を探ること
<第3章 ムダに怒らない人になる10の心の持ち方>

→確かに怒りの場面では、本人も相手も怒りの奥にある一次感情を見過ごしがちだと感じた。

☆変えられる×重要な怒りに全力で取り組む
=変えられないor重要でない怒りは手放す
<第3章 ムダに怒らない人になる10の心の持ち方>

→取り組む価値のある怒りにだけ取り組むというのはとても重要だと思う。

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2020 9/14
アンガーマネイジメント、心理学
まろまろヒット率3

武田友紀 『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』 飛鳥新社 2018 

渡邊義弘@11年半ぶりに佃 (佃島) を訪れました。

さて、武田友紀 『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』 飛鳥新社 2018。

繊細さん=HSP (Highly Senstive person) が、より生きやすくなるように解説する一冊。
まろみあんの方からお借りして読んでみると、痛いほど身につまされるところがあった。
この本でも引用されていた、『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』 (、エレイン・N. アーロン) は以前も読んだことがあったけど、この本の内容はさらに心に刺さった。
以下は、印象に残った個所と「→」はそれに対する私のコメント。


☆考えすぎて動けないとき、合言葉は「ベストはさておき、とりあえず!」で前に進んでみてください
<第1章 繊細さんラクになれる基本>

→「とりあえずという言葉は使う”べき”ではない」とべき論を強く思っていたことが、負の自己暗示となっていたのを反省。
私にとってはより口にしやすい、「ひとまず」や「まずは」などの同意語を使うようにしたい。

〇気づいたときにわずかでも踏みとどまって「私はどうしたいんだっけ?」と自分に問いかけ、対応するかどうか、また対応するならその方法を、自分で「選ぶ」ことが必要
<第1章 繊細さんラクになれる基本>  

→条件反射的に、この本の表現なら「半自動的に対応し、振り回されている」状態、になっていたことを、一呼吸おいて自分に問いかけることができるようになることが自分にとっても周りにとっても良い方向性なんだろうと感じる。

〇「一つひとつやっていこう!」という合言葉には、目の前の仕事とは関係ない考えを頭から追い払う効果
<第4章 肩の力を抜いてのびのび働く技術>

→気疲れ、この本の表現なら、「考え疲れ」になりやすい自分にとっては、意識すると効果がありそう。

〇優先順位をつけるより、重要なものをひとつだけ選ぶ
<第4章 肩の力を抜いてのびのび働く技術>

→「優先順位をつけようとしてますます混乱する」という人がいる、というこの本の表現は、自分のことだと感じ、この方法を試してみようと思った。

〇「こうしたい」は、本音の可能性がありますが、「こうしなきゃ」は、世間の声
<第5章 繊細さんが自分を活かす技術>

→「したい」や「好き」の感情はワガママだから気する”べき”ではない。
また、たまに出したワガママを指摘されるとすごく落ち込む、というこれまでも自分を振り返ると痛いところ。
「こうしなきゃ」と「こうすべき」は短期間の踏ん張りには向いているものの、長期間の指針にはなりにくいことを感じる。

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2020 9/11
HSP、心理学
まろまろヒット率4

今岡和彦 『東京大学第二工学部』 講談社 1987

渡邊義弘@名古屋から東京に引越しました。

1942年から1951年まで9年間、8期の卒業生を出した東京大学(当時は東京帝国大学)第二工学部の歴史と、
関係者、特に約30名の卒業生へのインタビューを中心に構成している一冊。

読んでみると、第二工学部(二工)の設立経緯が、当時の時代背景と合わせて丁寧に解説されている。
また、この本の最大の特徴である卒業生へのインタビューも、太平洋戦戦争の前後という混乱期にあって、
したたかにたくましく生きた当時の学生の様子が活き活きと伝わってくるものになっている。

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2020 4/28
歴史、インタビュー、大学史
まろまろヒット率3

アンソニー・ギデンズ、松尾精文ほか訳 『社会学 第5版』 而立書房 2009

渡邊義弘@石垣島から名古屋に引越しました。

さて、アンソニー・ギデンズ、松尾精文ほか訳 『社会学 第5版』 而立書房 2009。

社会学が扱う下記の22のテーマについて解説している。

第1章 社会学とは何か?
第2章 グローバル化と、変動する世界
第3章 社会学の問いを発し、その問いに答える
第4章 社会学における理論的思考
第5章 社会的相互行為と日常生活
第6章 社会化、ライフコース、加齢
第7章 家族と親密な関係性
第8章 健康、病気、障害
第9章 社会成層と階級
第10章 貧困、社会的排除、福祉
第11章 グローバルな不平等
第12章 セクシュアリティとジェンダー
第13章 人種、エスニシティ、移民
第14章 現代社会における宗教
第15章 メディア
第16章 組織とネットワーク
第17章 教育
第18章 労働と経済生活
第19章 犯罪と逸脱
第20章 政治、統治、テロリズム
第21章 都市と都市的空間
第22章 環境とリスク

これらの章の本文だけで、1ページ上下2段構成で935ページ。
このページ数の本文に加えて、用語解説も39ページになる大著。

分量は多いけれど、各章の最初にはそのテーマを象徴するエピソードが掲載されているので読みやすい。
また、各章の最後には、「まとめ」、「考察を深めるための問い」、「読書案内」の項目が設けられているので、理解しやすい工夫がされている。

社会学の決定版なことはもちろん、人文社会科学全般、社会・世の中の課題を考える上では必須的な一冊と言っても良いくらいの網羅的かつ体系的な本。
分厚いので辞書的に使うこともできるけど、ぜひ一度は通読したい一冊。

かくいう自分も、この本は石垣島にいる時に石垣市立図書館でリクエストして図書館間相互貸借として読みはじめ、
その後は新規購入による所蔵資料にしていただいて読み続け、名古屋に引越をしてからは大学付属図書館で借り、
じっくりと読み進め、通読することが知的基礎体力となることが実感できた。
迷わずお薦めできる名著。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)…

○社会学の理論的多様性=人間の行動は、複雑かつ多面的であるため、人間の行動のすべての側面に単一の理論的視座を適用できることなどおそくらできない
<1 社会学とは何か?>

○社会学の意味=社会学は、自己啓発をもたらし、集団や個人がみずからの生活の諸条件を改善する機会を増大させる
<1 社会学とは何か?>

○ハンフリーズがおこなったように、一般に社会学研究の任務は、日常生活に関する表面的な理解を超えていくことにある
→私たちが自分たちの社会生活を新たなかたちで理解する手助けになる
<3 社会学の問いを八市、その問いに答える>

☆宗教=神聖で、あらゆるものを含む、超自然的な現実という観念を形成することによって究極の意味や目的の意識を与える、そうした共有された信念や儀礼の文化体系であると
→最も重要な特徴は、目的感覚=生きることには究極の目的があるという感覚、を与える
<14 現代社会における宗教>

○権力における「欲望の操作」=こちら側が思う通りの欲望を誰かに抱かせること
=その人の思考や欲望の制御を通して服従させること
→これこそが究極の権力行使 (Lukes,1974)
<20 政治、統治、テロリズム>

○理論(theory)=規則的に観察できる事象を説明するために、その事象の一般的特性を同定しようとする試み
<用語解説>

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2019 7/1
社会学、人文社会科学
まろまろヒット率5

まろまろアワード2018

読書アワード:『西行』 (白洲正子)
→西行への愛情がありながらも辛辣な解釈が、まるで自分のことを言われているように身につまされた一冊。

出来事アワード:『月刊やいま』296号「八商工観光コース×月刊やいま 石垣島さしみ屋MAP」特集のコーディネーターをつとめる
→提案した「石垣島モデル」を自ら展開するやりがいを感じた出来事。

2018 12/31
まろまろアワード

ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳 『巨人たちの星』 東京創元社 1983

渡邊義弘@現時点で今まで読んだSF小説の中で一番印象深いのは『星を継ぐもの』です。

さて、ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳 『巨人たちの星』 東京創元社 1983。

巨人の星からの通信により、地球ははるか以前から何者かに監視されていた可能性が生まれた。
外交交渉と科学的推論から人類はその謎に迫ろうとする・・・

『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』に続く第3弾。
読んでみると、『星を継ぐもの』を読んだ時の迫力はまったく消えてしまっていて、荒唐無稽さばかり目立った一冊。

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2018 8/1
SF小説
まろまろヒット率2

ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳 『ガニメデの優しい巨人』 東京創元社 1981

渡邊義弘@「存在がSFっぽい」と言われることがあります。

さて、ジェイムズ・P・ホーガン、池央耿訳 『ガニメデの優しい巨人』 東京創元社 1981。

近未来の世界。ガニメデの探査基地近くで、正体不明の宇宙船が出現した。
乗船した巨人(ガニメアン)は人類が初めて体面する地球外生命であった。
しかも彼らは2500万年前からやって来たという・・・

『星を継ぐもの』以来、13年ぶりに読んだ続編。
前作と同じく科学的推論が柱となっていて、議論を通して物語が進んでいく。
ただ、前作を読んだ時に感じたような、「ハッ」とする驚きは無く、淡々とした読後感の一冊。

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2018 6/1
SF小説
まろまろヒット率3

ネガポ辞典制作委員会 『ネガポ辞典―ネガティブな言葉をポジティブに変換』 主婦の友社 2012

渡邊義弘@Instagramではstoriesをよく使っています。

さて、ネガポ辞典制作委員会 『ネガポ辞典―ネガティブな言葉をポジティブに変換』 主婦の友社 2012。

ネガティヴ(negative)な言葉を、ポジティヴ(positive)な言葉に変換する辞書。
一番面白かったのは、

○キモい→1:存在感がある、2:個性がある、3:ミステリアス
例文:キモッ!→存在感がありすぎて目が離せないんだけど、どうしよう

○空気が読めない→1:まわりに流されない、2:自分の意見を主張できる、3:よどんだ空気を壊してくれることがある、4:愛嬌がある

、の二つ。
また、

○自分に甘い→1:自分にやさしくできる、2:楽天的、3:己の限界を把握している

○神経質→1:細部にまで目が行き届く、2:仕事が丁寧、3:想像力が豊か

○言い訳をする→1:頭の回転が速い、状況判断が早い、3:探偵になる素質がある

○上から目線→1:自信がある、2:指導が得意

○子どもっぽい→1:愛嬌がある、2:考え方が固定観念に縛られていない、3:童心を忘れていない

、などは、そういう人に対しても優しい視点で見られるようになる表現としてメモした。

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2018 4/13
辞典、辞書、ポジティヴ、言語、表現
まろまろヒット率3

イカロス・ムック 『世界の機内食』 イカロス出版 2017

渡邊義弘@石垣島に来てから飛行機に乗る機会が増えました。

さて、イカロス・ムック 『世界の機内食』 イカロス出版 2017。

日本に就航している主要な世界の航空会社の機内食を紹介する一冊。
内容は、ファースト(第1章)、ビジネス(第2章)、エコノミー(第3章)、LCC(第4章)、国内線(第6章)と各クラスごとの機内食を網羅的に紹介しているのが特徴的。
また、ドリンク(第5章)や機内食を考えるシェフのインタビュー、機内食工場、機内食用語解説など、機内食の周辺も範囲にして取り上げている。

中でも、エコノミーとLCCの機内食は、限られた条件の中で各社の工夫が読み取れて興味深かった。

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2018 3/23
機内食、航空機
まろまろヒット率3