ダン・ギルモア、平和博訳 『ブログ 世界を変える個人メディア』 朝日新聞社 2005

大阪にいた頃からの念願かなって日比谷松本楼の10円チャリティカレーを食べることができた
らぶナベ@協力してくれたみなさんに大感謝です(^^)

さて、『ブログ 世界を変える個人メディア』ダン・ギルモア著、平和博訳(朝日新聞社)2005。

長年ジャーナリストを続けてきた著者が、ブログの出現と普及によって急激に変化している
アメリカのメディア状況を取材してまとめた一冊。

内容は、読者を「元読者」と表現するなどのスタンスからわかるように、
ジャーナリズムの抱える問題点を照らし合わせながらメディアの変化をレポートしている。

中でも思わず笑ってしまったのは、情報発信には信頼の階層構造が必要だと述べている
第9章「荒らし、情報誘導、そして信頼の境界」の中で、古株編集者が駆け出し記者に語るという・・・
「かあちゃんから『お前のことが何より大事なんだよ』って言われてもな、まず裏を取って来い」
・・・という忠告を紹介しているのは思わず笑ってしまった。

ちなみにこの本の原題は”We the Media”。
合衆国憲法前文の出だし”We the People”をもじっていることともあって、
訳題よりも原題のままの方がよかった気がする。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○ブログが民主主義的な形式のジャーナリズムである理由・・・
1:今日のジャーナリズムは市場経済に由来するが、ブログは贈与経済に由来
2:ジャーナリズムはプロの領域でたまにアマチュアが迎えられるが、ブログはアマチュアの領域でプロが迎えられる
3:ジャーナリズムの参入障壁は19世紀半ば以来ずっと高かったが、ブログがその障壁を引き下げた
(ジェイ・ローゼンの「プレスシンク」より)
<第2章 読み・書きウェブ>

○ブログに対する典型的な批判は、ほとんどが自己完結でくだらないというもの
→その通りだがだからと言ってこのジャンルを否定したり、人々が互いに語り合うことの価値を損なうことにはならない
<第7章 元読者がパーティに参加する>

☆書いた記事をそのまま残す唯一の方法は、正反対の立場の人間でも納得するようなものを書くということ
(ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズへのインタビューより)
<第7章 元読者がパーティに参加する>

○荒らしとは、時間泥棒 (ワード・カニンガムによる定義)
<第9章 荒らし、情報誘導、そして信頼の境界>

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2005 9/25
情報・メディア、HP・ブログ本
まろまろヒット率3

ウヴェ・フリック、小田博志・春日常・山本則子・宮地尚子訳 『質的研究入門―「人間の科学」のための方法論』 春秋社 2002

この前も「”まろまろ”さんのブログによく出てくる”らぶナベ”さんってどんな人ですか?」と聞かれた、
らぶナベ=まろまろ記ブロガーです(>_<)

さて、『質的研究入門―「人間の科学」のための方法論』
ウヴェ・フリック著、小田博志・春日常・山本則子・宮地尚子訳(春秋社)2002。

質的な研究の方法論を網羅的に解説している概要書。
代表的な質的研究アプローチのほぼすべてが取り上げられていて、
それぞれの一長一短まで踏み込んで解説、比較しているのがすごい。
質的な研究分野は全体を見通す概要書がほとんど無いこともあって、
まさに質的方法論の決定版と言っていい一冊。

また、日本語版は独自に日本の質的研究の歴史解説と用語説明もついている。
用語説明は訳語の対立点が解説されているので質的研究の簡単なレビューとしても読めるし、
訳者が原著との出会いについて語っている解説部分は、人柄がかいま見えて面白かった。
どのようなアプローチによってその結論が出てきたのか考える道具にもなるので、
特に研究目的でなくても、質的な資料を読む際にも参考になる本でもある。
僕が起案をつくった佐倉研究室必読文献2005年度版にも入れておいた、
この分野ではオススメの一冊。

ただ、一口に質的研究と言っても、その理論的背景と実際の方法論は多様なので、
入門という割には内容、分量ともに軽くは無いのが致し方ないところだろうか(^^;

ちなみにこの本は2005年度学際情報学府:社会情報学研究法1「メディア研究調査法」のテキストでもある。
(担当教員:花田達郎教授&林香里助教授)
さすが公共圏、まろまろ圏も思わず納得(^_-)

以下はチェックした箇所・・・

○質的研究の背景=
口述されるものへの回帰、特殊なものへの回帰、地域的なものへの回帰、時間的なものへの回帰(Toulmin 1990)
<第1章 質的研究とは何か―その意義、歴史、特徴>

☆質的研究の特徴
・研究対象に対する方法と理論の適切性
・研究対象者の視点とその多様性
・研究者による自己と研究に関する反省
・アプローチと方法の多様性
・認識的原則としての理解
・出発点としての事例の再構成
・基礎としての現実の構築
・実証的資料としてのテクスト
<第2章 理論的立場>

☆個別の事例から抽象的な理論へと一般かしていくためのステップ・・・
1:どの程度の一般化が目指されるのか、また達成可能なのかの明確化
 →一般化の要求レベルを押さえておく
2:現象が埋め込まれた事例や文脈を慎重に統合する
 →研究結果の一般化はサンプリング方法によって決まることが多い
3:得られた材料を系統的に比較する
 →グラウンデッド・セオリー法の継続的比較の方法(the constant comparative method)など
<第18章 質的研究の基礎づけと評価基準>

○質的方法と量的方法とは対立するものとしてよりも相補的なものとして見られるべき(Jick 1983)
<第21章 量的研究と質的研究>

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2005 9/18
研究方法論、学問一般
まろまろヒット率4

鈴木芳樹 『スローブログ宣言!』 技術評論社 2005

豆乳ココアにはまっている、らぶナベ@健康フェチです。

さて、『スローブログ宣言!』鈴木芳樹著(技術評論社)2005。

ブログに反発していた著者が、ブログ(はてなダイアリー)を導入した体験を通じて、
WEB上で表現することの変遷、あるべき姿をエッセイ風に書いている一冊。

僕もブログの雰囲気に馴染まなくて導入をためらっていた時期があったので、
心情的に著者と共感できる部分が大きかった。
特に一人称をどうするか迷った経験や、2ちゃんねるに対する姿勢などは、
ネットで情報発信する上で避けて通れない話題だけにおもしろく読めた。

この本が興味深いのは、自分の表現史と重ね合わせながら、
ネット上でまき起こった事件や議論を紹介している点だ。
自分の体験談、目撃談が中心なので、事例の紹介が偏っていたり、
主観的すぎて資料としての信頼性に疑問があるのは著者も認めているけど、
固有名詞の解説や人物の紹介が丁寧なので、ネット史としても読める。

日本のオンライン事情の特徴として、個人サイトが多くてアーカイブが残りにいというのがある。
だからわずか数年前のことなのに、当時の出来事や論争を振り返ろうとしても確認できない場合も多い。
こういう個人的な体験の紹介も、大きな流れの中で見た目撃談として興味深かった。

以下は、チェックした箇所・・・

○インターネットでは一度親しくなったひとと疎遠になるきっかけが生まれにくい=倦怠期がおこりやすい

○ジャーナリズムをジャーナリスト風の文体で書くことだと勘違いしているところが多い

○これまでの日本の個人サイトが既存の権威やマスメディアに対して無批判だったとするのは間違い
 →マスメディアが取り上げない作品を取り上げることで社会的でなく文化的な批判をおこなってきた

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2005 9/9
情報・メディア、HP・ブログ本
まろまろヒット率3

GEODESIC 『ブログを続ける力―Blogを続けるのに必要かつ大事なこと』 九天社 2005

小物系を造ってほしいと思っていた元Macユーザーとしては、
Appleの携帯電話発売はとってもうれしい、らぶナベです。

さて、『ブログを続ける力―Blogを続けるのに必要かつ大事なこと』GEODESIC編著(九天社)2005。

タイトルにひかれて手に取ったブログ本(タイトルフェチなもので(^^;)。
HPにしろブログにしろ、情報発信の最大の問題はやはり「いかに続けるか」だ。
僕のまわりでもこのテーマは繰り返し話題になるので読んでみた一冊。

でも内容はブログ利用の現状やツールの紹介にかなりの分量をさいていて、
実際に続ける上での問題点を語っているのは第2章だけ。
さらに事例として紹介されているブログも半年とか1年に満たないものもあってあまり参考にならない。

この内容なら前に読んだ『ブログ・ハンドブック』の方が参考になると思う。

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2005 9/8
情報・メディア
まろまろヒット率1

レベッカ・ブラッド、yomoyomo訳 『ウェブログ・ハンドブック―ブログの作成と運営に関する実践的なアドバイス』 毎日コミュニケーションズ 2003

原作を読んだ人間にとって『電車男』のエルメスは中谷美紀のイメージだけど、
最近は伊東美咲もエルメスに見えるようになってきた、らぶナベです。

さて、『ウェブログ・ハンドブック―ブログの作成と運営に関する実践的なアドバイス』
レベッカ・ブラッド著、yomoyomo訳(毎日コミュニケーションズ)2003。

図書館情報学をやっている友人のmannyにつきあって万博帰りに愛知県立図書館に行ったときに、
ふと見つけてペラペラ読んでみたらけっこうおもしろかったので、
東京に帰ってきてから文京区立図書館で借りて読んだ一冊。

初版は2003年(原本2002年)なのでブログ関連の本としては古い方になるけど、
技術面ではなく「どう情報発信すべきか」という点についての内容になっているので、
読んでいて古めかしく感じることはほとんどなかった。

HOWTO本っぽいタイトルだけど、ウェブログがどういう風に生まれてきて普及したのか、
その歴史についても書かれてあるし、最近は日本でも話題になることが多い、
ウェブログと既存ジャーナリズムとの対比もあるので
アメリカの大学でブログ関連のテキストになっているのも理解できる。

「訳者あとがき」にあるように、アメリカのウェブログと日本のウェブ日記(テキストサイト)との
ネット文化の違いはあるけれど、情報発信する人間にとって自分を振り返るには良い本だろう。

以下はチェックした箇所(重要と思う順)・・・

☆秀でたウェブログに必要な要素は、つまり、観点、リンクを選択する識別眼、そして書き手の人生経験
→ウェブログの質は、最終的にはその主張の信頼性による
<第4章 自己を主張する>

☆リンクこそがウェブの根本的な属性であり、
ウェブロギングが旧来からの情報発信形態と違う唯一無二の最も重要なこと
<ウェブログって何?>

☆人を惹きつけるウェブログを作りたいのなら、
あなたは1人のオーディエンスに向けて書かなくてはならない
→そのオーディエンスとは、あなた自身
<第4章 自己を主張する>

○優れたウェブログを読むことは、誰かの頭の中を覗き、突ついてみるに多少似ている
→最良のウェブログはタイプこそ違えど、どれも変わっており、頑固で、予想が付かず、そして不完全
<第4章 自己を主張する>

○ウェブログの強みの1つ=補完を行う、もしくは対立する資料や情報を併置することで、
情報を脈絡(コンテクスト)化する能力
<ウェブログって何?>

○ウェブログはジャーナリストや他のメディア機構によって大量生産される情報を評価し、
補強し、そして、最後には選別することで、従来のジャーナリズムを補完する
→マスメディアは広範なオーディエンスにアピールしようとする、
ウェブログは個人の支持者に対象を絞った思いがけない発見を生み出すのに長ける
<第1章 ウェブログって何?>

○ウェブログを続ける動機は三つしかない→情報共有、名声確立、個人表現
<第2章 なぜウェブログなのか>

○オーディエンスの役割・・・
1:オーディエンスの存在を意識することで関係性や名声を損なうのを防ぐ、
2:オーディエンスの存在を意識することで自分が行うことを上手にやろうとする
<第4章 自己を主張する>

○オンライン上の議論のルール・・・
1:腹が立っているときは投稿しない
2:決して人格でなく、常に事実を論じる
3:主張を述べた後は引っ込む(他の人が気が済むまで発言するのを読む)
4:個人攻撃は無視
5;会話を乗っ取らない
6;他の人の意見を不正確に述べない
<第5章 オーディエンスを見出す>

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2005 9/6
情報・メディア
まろまろヒット率4

ジョン・H.カートライト、鈴木光太郎・河野和明訳 『進化心理学入門』 新曜社 2005

決して鉄ちゃん(鉄道オタク)ではないけどダージリン・ヒマラヤ鉄道に飛び乗りしてみたい、らぶナベです。

さて、『進化心理学入門』ジョン・H.カートライト著、鈴木光太郎・河野和明訳(新曜社)2005。

研究室で発見したので借りて読んでみた一冊。進化心理学ではめずらしい入門書。
内容は進化心理学の主要な論点、仮説を手堅く紹介している。
章末ごとにまとめがある上に、用語説明もあってテキストとして使いやすい。
ただ、分量の関係上仕方ないとはいえ、進化心理学で僕が一番魅力的に感じる
「協力する心の理論」の記述はほしかった。

読み終えてみて、ヒトも動物の一種として進化してきたんだから、ヒトの心も環境適応の結果物
・・・っという進化心理学の基本姿勢はやっぱり説得力があると感じた。
ただ、訳者あとがきにもあったように安易な現状肯定の仮説に終始する可能性も同時に感じた。
検証が難しいだけに、時間がかかりそうな分野だけど魅力的な領域であることは確か。

以下は、チェックした箇所(一部要約)・・・

○ダーウィンの進化論が意味するおそるべきこと=自然界には究極的な目的も設計も運命も存在しない
<第1章 進化―自然淘汰と適応>

○人間行動の至近的説明と究極的説明を区別することが重要
<第1章 進化―自然淘汰と適応>

○性淘汰において性内淘汰と性間淘汰と区別することが重要
→性内淘汰と性間淘汰の両方がヒトの心の性質を形作ってきたと考えられる
<第3章 性淘汰>

○典型的なヒトの配偶を一言で言えば、不倫に悩む表向きの一夫一妻制
<第4章 人間の性を解明する>

○「心の原型」と「内的衝動の表出」という考えは新しいものではないが、
ユングは原型を神秘的な集合的無意識から解釈、
フロイトは子ども時代の原型的意志の欲求不満を過度に強調(さらにラマルク主義)
→進化精神医学はダーウィン理論。
<第5章 心の原型―適応反応としての恐怖と不安>

○進化精神医学は現代精神医学を精神障害のメカニズムの正常な機能を理解しようとせず、
その原因となっている欠陥だけを見つけようとしていると批判する(Nesse and Williams, 1995)
→至近的要因と究極的要因の違いとの批判
<第6章 心の病を進化から説明する>

○祖先の環境と現在の環境の間の相違点を強調するよりむしろ類似点を探すべき(Crawford, 1998)
<第6章 心の病を進化から説明する>

○精神障害の原因に対する仮説
=心的モジュール機能不全説、楽園追放説(ゲノム・ラグ説)、適応的堅実性説、
準備性説、正規分布説、抑うつ階級説、包括適応度説
<第6章 心の病を進化から説明する>

○ヒトの脳が大きくなった原因についての仮説
=多様な食物に関する認知能力の必要性説、社会的要因の役割説(マキャヴェリ的知能仮説と心の理論)、
性淘汰の効果説、脳と言語(ハードウェアとソフトウェア)の共進化説、道具使用説
<第8章 知能の進化>

○進化的適応環境=”Enviroment of Evolutionary Adaptation”(EEA)
→ヒトの持つ遺伝子が進化の過程で、その時の生存問題を解決するため自然淘汰によって形成された時期の環境
→約300万年~3万5千年前
<用語解説>

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2005 9/2
進化心理学
まろまろヒット率3

小河陽 『ペテロとパウロ』 講談社 2005

IBMのThinkPad-X31からPanasonicのLet`s note-CF-W4に代えた、
らぶナベ@レッツノー党なみなさん、どうぞよろしくお願いします(^_^)v

さて、『ペテロとパウロ』小河陽著(講談社選書メチエ)2005。

ユダヤ教の一分派だったイエス運動がキリスト信仰として世界宗教になる基礎を作った
原始キリスト教の二人のキーパーソン、ペテロとパウロの軌跡をたどった一冊。

伝道者の元祖としての二人の宣教戦略について知りたかったが、その記述は少なかった。
でも、限られた資料、特に聖典として後世の脚色が加わった可能性の高いものから、
実際の姿を導き出そうとする謎解き的なおもしろさを読んでいて感じた。
著者は神学者だけあって、理論構成や論理操作もおもしろく思えた。
(ただ、妙に文章に修飾が多いのも神学の特長か?)

英雄物語として脚色された部分を除いて見てみると、
実際のペテロはここ一番で逃げ出して泣いたりするし(イエスを見捨てる)、
パウロは会ってみると弱々しい印象で話がつまらないと評価されていた。
そんな二人が世界宗教への基礎を作ったというのはちょっとおもしろい。
「私は弱いときにこそ強い」というパウロの言葉の深さも感じた。

また、ペテロがイエスの弟子となる箇所では・・・
「彼は師となる人が示した律法についての造詣の深さに感銘を受けたのではない。
いや、むしろ伝統的な解釈や過去の権威にはまったく無頓着に、
それでいて彼らが子どものころから聞き知らされていた神について、神の掟について、
独自の解釈を自らの権威において語る、その言葉の力強さに圧倒されたのである」
・・・と著者が言っているのは、すべての新宗教帰依者に通じるものだろうと思った。

ちなみにペテロは復活、パウロは回心という神秘体験(ヌミノーゼ)を通して伝道者となった。
その神秘体験は実際はどういったものだったんだろうかと思った。
論理的に書かれたこの本の中でも、奥歯にものがはさまったような表現だったので、
余計にそのあやしさが目立っていて興味を感じた。

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2005 8/29
歴史、神学
まろまろヒット率4

杉浦昭典 『海賊キャプテン・ドレーク―イギリスを救った海の英雄』 中央公論新社 1987

万博ではマイナーな国々の料理を食べまくった、らぶナベです。

さて、『海賊キャプテン・ドレーク―イギリスを救った海の英雄』杉浦昭典著(中公新書)1987。

16世紀イギリスの海賊、後に提督として活躍したフランシス・ドレークを取り上げた歴史本。
正確に言うとドレークは完全に無法な海賊(pirate)というより、
敵国の船に対する私掠特許状を与えられた私掠船(privateer)の船長だ。
ナイトの称号を与えられたりプリマス市長も勤めたように、
彼はイギリス国内では彼は合法的な存在だった。

でも敵国、特に当時イギリスと覇権を争っていたスペインにとっては彼の経歴は海賊そのもの。
スペインの商船や植民地を襲いながらマゼラン隊に続いて世界史上2番目の世界一周を達成。
(その過程でホーン岬とドレーク海峡を発見)
スペインとの戦いではイギリス艦隊の実質的な指揮を取り、
カディス湾の奥まで進入してスペイン艦隊を奇襲(1587年)。
さらにスペイン艦隊との決戦であるアルマダ海戦では、
得意の焼き討ちで当時世界最強といわれた無敵艦隊(アルマダ)を壊滅させる(1588年)。
最後は洋上で生涯を終える彼は、史上もっとも成功した海賊といえるだろう。

奇襲や焼き討ちなどのB級なゲリラ戦術を得意とする一方で、
世界一周を達成するほどの大きな冒険心と実行力があって、指揮もうまい。
彼は二流国家時代はB級戦術で勝ち上がってきたイギリスの象徴的な存在ともいえる。
裏技が得意なのに正攻法もできるというまさに僕好みの人物だ。
ドレークの元上司で後にライバルとなるジョン・ホーキンズも魅力的な人物だし、
彼の人生を知るにしたがってすっかり彼と彼の活躍した時代を好きになってしまった。
逆にエリザベス1世のことがかなり嫌いになってしまったけど(^^;

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2005 8/22
歴史、海賊もの
まろまろヒット率4

武光誠 『世界史に消えた海賊』 青春出版社 2004

らぶナベ@「海賊もの」カテゴリ創設中です。

さて、『世界史に消えた海賊』武光誠著(青春出版社)2004。

16世紀~18世紀に大西洋で活躍した海賊を中心に取り上げた一冊。
ヨーロッパ列強の覇権争いの中で勃興し変遷していった海賊の歴史的な役割を述べている。

特にカリブ海海賊の最盛期である1700~1720年代の「幸運の紳士の時代」では、
バーソロミュー・ロバーツやロング・ベン・エイヴァリなどの
魅力的な海賊船船長が取り上げられていたのに興味を持った。

ただ、だいたいが既に知っていたことばかりだったのでそれほど面白くはなかった。

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2005 8/10
歴史、海賊もの
まろまろヒット率2

リチャード・プラット&クリス・リデル、長友恵子訳 『海賊日誌』 岩波書店 2003

ある自己紹介で自分の特徴を「特に野心は無いが胡散臭い」と書いたら大受けした、
らぶナベ@我ながらそんなに的確な自己分析だったとは・・・(T_T)

さて、『海賊日誌』リチャード・プラット文、クリス・リデル絵、長友恵子訳(岩波書店)2003。

海賊行為に巻き込まれて海賊の一員として生活をおくることになった、
10歳の少年ジェイク・カーペンターの航海日誌を物語にしている大型絵本。
原題は”PIRATE DIARY : The Journal of Jake Carpenter”で、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品。

物語の舞台となるのはアメリカ独立戦争前の大西洋。
1716年9月23日~1717年5月22日までの航海日誌になっているが、
時代考証がしっかりとされていてその当時の洋上生活をかなり正確に再現している。
(参考文献も豊富)
大型絵本なので船内図をながめるだけでも迫力があっておもしろい。

巻末には物語の時代背景の説明や、海賊の歴史についてのかなりしっかりした記述がある上に、
時代考証に忠実なので残酷なシーンもあるので絵本とはいえあまり子供向けでは無さそう。

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2005 8/9
絵本、海賊もの
まろまろヒット率3