アルトゥール・ショーペンハウアー、鈴木芳子訳 『読書について』 光文社 2013

渡邊義弘@哲学書を読むと心が落ち着きます。

さて、アルトゥール・ショーペンハウアー、鈴木芳子訳 『読書について』 光文社 2013。

「自分の頭で考える」、「著述と文体について」、「読書について」の三編から成る哲学書。
特に印象に残ったのは…

○読書をしていると、ものを考える活動は大部分、棚上げされる
→自分の頭で考える営みをはなれて、読書にうつると、ほっとするのはそのためだ

○たくさんの本を読んでいると、何も考えずに暇つぶしができて骨休めにはなるが、自分の頭で考える能力がしだいに失われてゆく

…と、読書による安心感と、それによって思考力が衰えることを指摘しているところだ。
著者は思考力の低下という読書の負の面を強調しているけれど、読書をすると安心する点については、今風にいうとmindfulnessとして共感が持てた。

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2022 7/5
哲学、読書法
まろまろヒット率3

お菓子の切れはしのような人でありたい

お菓子の切れはしのような人でありたい。

ケーキやカステラの切れはしは、商品としてはお手頃でも、味はしっかりと美味しい。
そんなさりげなく、お手頃で美味しい人でありたい。

<カステラの切れはしを贈り物にした時に>

2022 5/27
はしり書き

一生のうちに一番言われたことのある言葉は、「ありがとう」でありたい

一生のうちに一番言われたことのある言葉は、「ありがとう」でありたい。

これまで言われたことのある言葉のキーワードランキングを振り返ることができるなら、その一位は感謝の言葉になるよう生きたい。
それは幸せな人生だっことの証明になるだろう。

<誕生日にありがとうと伝えられて>

2022 5/26
はしり書き

コナン・ドイル、駒月雅子訳  『四つの署名』 KADOKAWA 2013

渡邊義弘@5月26日が誕生日です。

さて、コナン・ドイル、駒月雅子訳 『四つの署名』 KADOKAWA 2013。

19世紀ロンドン、探偵のシャーロック・ホームズと助手のワトスンの元に、真珠を送ってくる正体不明の送り主に呼び出されたという依頼主が相談に来る。
ホームズとワトスン、依頼主の3人は、インドの財宝をめぐる事件に巻き込まれていく…
シャーロック・ホームズ・シリーズの長編。
原題は、“The Sign of Four” (1890) 。

読んでみると、作者は、歴史小説家を目指しただけあって、以前読んだ『緋色の研究』と同じように、
歴史的事件(第一次インド独立戦争=インドの大反乱=セポイの乱)について楽しそうに描写しているのが伝わってくる。
ただ、感想としては、やはりシャーロック・ホームズの格好良さが一番の魅力に感じた。

また、以下の一節が綺麗な表現として印象に残った。

宝を失った者がいる一方で、宝を得た者もいた。
それはほからなぬ私自身であることを、その晩はっきりと悟ったのだ。
<第10章 アグラの財宝>

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2022 5/26
小説
まろまろヒット率3

コナン・ドイル、駒月雅子訳 『緋色の研究』 角川書店 2012

渡邊義弘@昔買っていた猫にホームズという名前を付けるくらいシャーロック・ホームズ好きです。

さて、コナン・ドイル、駒月雅子訳 『緋色の研究』 角川書店 2012。

アフガニスタン帰りの元軍医、ワトスンは探偵業を営むシャーロック・ホームズと同居を始める。
二人は難事件に挑んでいく…

シャーロック・ホームズ・シリーズの第1作。
原題は、”A Study in Scarlet” (1887)

事件の解決を扱った「第1部 元陸軍医師ジョン・H・ワトスン白紙の回想録より」と、
事件の背景となる「第2部 聖徒たちの国」の2部構成になっている。

読んでみると、作者(コナン・ドイル)は歴史小説家を目指していただけあって、歴史的な要素の強い第2部を楽しそうに書いているのが伝わってきた。
ただ、物語としては、多くの読者と同じように、第1部のシャーロック・ホームズの推理や活躍の方が面白いと感じた。

特定の宗教に対する誤解などから映像化はされにくい作品だけど、シャーロック・ホームズ・シリーズの最初として、
シャーロック・ホームズの魅力があふれる作品。

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2022 4/15
小説
まろまろヒット率4

コナン・ドイル、石田文子訳 『シャーロック・ホームズの冒険』 角川書店 2010

渡邊義弘@予測をする時に、”Sherlock Holmes Hands”をするものの、「細かすぎて伝わらないモノマネ」のようで、分かってもらえることが少ないです…

さて、コナン・ドイル、石田文子訳 『シャーロック・ホームズの冒険』 角川書店 2010。

19世紀末のロンドン、探偵のシャーロック・ホームズは、助手のワトソンと共に数々の不可解な事件を解決していく…
シャーロック・ホームズ・シリーズの代表的な12編の短編集。
原題は、“The Adventures of Sherlock Holmes” (1892) 。

中学生の時に旧訳版を読んで以来(当時は読書日記はつけていなかったため記録無し)、約30年ぶりに読んだ新訳版。
シャーロック・ホームズ・シリーズを読んだことのない友達に、誕生日プレゼントとしてお渡ししたものを、友人が読み終わってからお借りして読んだ一冊。

あらためて読み返してみると、『青いガーネット』 (原題:”The Adventure of the Blue Carbuncle”) のガチョウ屋の主人に対して、ホームズが賭けをしている風を装って情報を聞き出す場面が一番の面白さを感じた。
訳者もこの場面について、「人間心理の妙をついた、この短編集でも随一の名場面」、とあとがきで解説している。

「推理小説としては素朴で、さまざまな矛盾点も指摘」される作品集ではあるけれど、「一世紀以上を経たいまも多くの人々がホームズの物語を愛してやまないのは(略)ホームズのキャラクターの魅力に負うところが大きい」と訳者が解説しているように、細かいことは置いておいて、シャーロック・ホームズの魅力が伝わる古典的作品。

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2022 3/16
小説
まろまろヒット率4

戸田智弘 『ものの見方が変わる 座右の寓話』  ディスカヴァー・トゥエンティワン 2017

渡邊義弘@寓話好きです。

さて、戸田智弘 『ものの見方が変わる 座右の寓話』  ディスカヴァー・トゥエンティワン 2017。

様々な寓話から77話を取り上げて、それぞれの寓話の教訓を解説する一冊。

印象に残ったのは、不平不満を言わない有難屋吉兵衛の話、「こぶで有り難い」の解説部分。
この寓話の教訓は、残っているものを数えることの大切さだとして、以下のジョークを紹介しているのは笑ってしまった。
「両足を折っても、首でなくて良かったと思う。首を折れば、もう何も心配することはない」
(本の中では特定の民族のことをジョークにしているので、それは不記載)

紹介された寓話やエピソードは、孫引きや伝聞推定なども多く、また解説もその寓話との関連性がどこまであるのか疑問を感じるものもあった。
ただ、寓話を題材に扱う上では、こうした出典の曖昧さや主観の強さは避けられない特徴かもしれない。
寓話から教訓を解説するこの本から、教訓めいたものを感じることにもなった一冊。

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2022 2/11
寓話、教訓
まろまろヒット率3

エミール・ルートヴィヒ、北澤真木訳 『ナポレオン』 講談社 上下巻 2004

渡邊義弘@御堂筋線の通勤時間が貴重な読書時間になっています。

さて、エミール・ルートヴィヒ、北澤真木訳 『ナポレオン』 講談社 上下巻 2004。
ナポレオンについての古典的な伝記。
初版は、“Napoleon” (1929) 。

伝記なので、ナポレオンの手紙や命令書は現資料をそのまま使っているとのことだけど、ナポレオンの独白は著者の想像で書かれてある。
初版から100年ほど経っていることもあり、この独白が若干くどく感じてしまう。
ただ、波乱に富んだナポレオンの人生の躍動感を表現しようとしているのが伝わってくる

特に印象に残ったのは、ナポレオンが人生の最後に過ごしたセントヘレナ島での日々を追った「第5章 岩礁」だ。
この章では、心情や性格、行動の様式などについて詳細に書かれてあり、ナポレオンの人となりが一番伝わってくる章になっている。

また、ナポレオンが死の直前に息子に対して口述筆記で助言した、
「状況に強いられた余が武力により成した全てのことを、彼は人々の合意により行わんことを」
、という言葉は、ナポレオンが自分の人生を最後にどう評価していたのかが伝わってきて、胸に来るものがあった。
また、この口述筆記については、著者が「ナポレオンが息子に与えた助言は、死後100年を経った今もなお、ヨーロッパを啓蒙し得るものである」と述べているのが心に残った。

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2022 1/25
伝記、歴史、ナポレオン
まろまろヒット率3

クリスティン・ネフ、石村郁夫ほか訳 『セルフ・コンパッション[新訳版]』 金剛出版 2021

渡邊義弘@2022年初読書です。

さて、クリスティン・ネフ、石村郁夫ほか訳 『セルフ・コンパッション[新訳版]』 金剛出版 2021。

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)について、研究者が解説した一冊。
原題は、“Self-Compassion: The Proven Power of Being Kind to Yourself” (2015) 。

研究者が書いた本だけど、各所に「私のこれまでの人生」として、当事者として体験した苦悩とその対処の経緯が書かれてあり、
単なる研究成果の紹介だけでない、生々しさのような重みのある内容になっている。

特に、自己批判の苦悩に対しては…

○苦悩するのは、苦悩に抵抗するから→苦悩する=苦痛を感じる×抵抗する
(これは倍数的関係ではなく、指数関数的関係)
<第5章 現実に対してマインドフルでいる>

○(自己批判の感情が生まれたら)「これらは、いまこの瞬間に自分の意識的な気づきの中に浮かんできいる思考と感情だ」というように、
ただ事実のみに言及して、非難はいっさい添えないことが重要
→それらを正当化したり、強化したりする筋書の中で自分が迷子にでもならない限り、それらは自然に消えていく傾向にある
<第5章 現実に対してマインドフルでいる>

☆辛い感情から逃げることは現実的に不可能なため、最善の選択肢は、今あるがままのつらい感情をはっきりと、ただし、思いやりをこめて体験すること
→辛い感情は本質的に一過性なので、抵抗や回避によって長引かせたり増幅させたりしなければ、時が過ぎるにつれて弱まっていく
<第6章 感情のレジリエンス(立ち直る力)>

…と、苦痛や困難を感じる感情をありのまま受け入れることを強調しているのは印象に残った。
また、それに関連して…

○次に困難に遭遇したときはダーク・チョコレートという言葉を思い出すようにしてほしい
→あなたに必要なインスピレーションが生まれ、苦い痛みは愛に満ちた甘い芳香の思いやりで包まれるかもしれない
<第12章 蛹から蝶へ>

…と表現しているのは、ちょっと笑ってしまった。

以下は、その他にチェックした箇所 (一部要約含む) …

○思いやりには、人間のもつ共通性ーどのような人にも欠点や弱点があるという事実ーをありのままに認識することも必要
<第1章 セルフ・コンパッションを見つける>

○私たちが心から望んでいるのは、ありのままの自分を受け入れてもらうこと、
小さな自己より遥かに大きなものの不可欠な一部になることである
→制約を受けることなく、測り知れない存在として自由になることである
<第7章 自尊感情ゲームをやめる>

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2022 1/7
セルフコンパッション、心理学、心理療法、カウンセリング
まろまろヒット率4

まろまろアワード2021

読書アワード:『「本当の自分」がわかる心理学~すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』 (シュテファニー・シュタール)
→「あなたが美しく、なんでもできて強い人かどうかは、人生において重要ではありません。重要なのは、”ありのままの自分を温かく迎え入れる”ということなのです。(略)これができるかどうかによって、人生の良し悪しが決まるのです。」という箇所が身につまされた一冊。

出来事アワード:まろまろ記20周年
→ホームページの開設をした2001年から20年(読書日記は1995年から26年)を経た区切りの出来事。

2021 12/31
まろまろアワード