中嶋博行 『司法戦争』 講談社 2001

EU拡大を目的とするニース条約批准を否定したアイルランドの首相の名前が
「アハーン」首相だと知って世界の広さを感じている、らぶナベっす。

さて、『司法戦争』中嶋博行著(講談社文庫)2001年初版。
弁護士をやりながら小説を書いている著者が『検察捜査』
『違法弁護』に続いて出したリーガルサスペンス小説。
三つ合わせて司法三部作と呼ばれているらしい。
確かにこれで主役も女検察官、女弁護士、女裁判官と法曹三者がそろった。

内容は三部作の中で間違いなく一番面白い!
検察庁から出向している女性裁判官(最高裁民事調査室所属)が
沖縄でおこった最高裁判事の殺人事件を検察側の人間として
極秘に捜査することから物語はスタートする。
法曹三者による最高裁判事の熾烈なポスト争い、判事間の対立、
最高裁と内閣とのパワーバランス、警察と検察の相互不信、
アメリカでのビジネスロイヤー市場の活況、PL法、
次世代技術をめぐる日米間の熾烈な争い、行政改革、
果ては内閣情報調査室とCIAとの闘いまで、
スケールの大きな背景を殺人事件に直接的にからませて物語は展開する。
物語が進むにつれてなぜ「戦争」なのかの輪郭がはっきりしてくる。
突っ込める箇所はいくらでもあるけれど本質的なリアリティがあって
緊張感がある、著者のキャリアが活かされているのだろう。
(しかし商売敵だからってアメリカの弁護士に警戒心ありすぎ(^^;)
その分、三部作の中では一番分量が厚いけど、
物語の核心部分も二転三転するので読んでいて退屈しない。

ただ、この人の書く物語は出てくる人間や組織内部での関係が
精神的にどれも窮屈そうで線の細い視点ばかり目立つ。
そこらへんが読んでいてちょっとうんざりする面もある。
ちなみにこの人の小説は常に司法の構造的な問題点をプロットの根底において
書かれているけどどの作品もほとんどまったくと言って良いほど
法廷シーンが舞台にならない。
一度彼の書いた法廷ものを読んでみたいと思う梅雨の合間。

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2001 6/20
小説、法学一般
まろまろヒット率4
法務 キャリア

伊藤真 『伊藤真セレクション1 司法試験択一過去問集[憲法]』 法学書院 2000

最近自分はゲームメイカーやストライカーではなく、
アウトサイドを駆け上げるサイドポジションが合っているんじゃないかと思う
らぶナベ@「ナベッカム」と呼んで欲しい(^_^)

さて、『伊藤真セレクション1 司法試験択一過去問集[憲法]』
伊藤真監修(法学書院)2000年初版。
問題集だけど解説も多くて一通りやり終わったら
「読んだ」という感じになるので読書録に記録。
(「なるほど」と感心することもけっこうあった)

そもそも過去問を練習してみようと思って買ったは良いけど
あれだけ基本書を読んでいてもちんぷんかんぷんな問題も多くて
最初はほとんど手もつけなかった。
これはいかんと思って司法試験予備校と契約して
伊藤真のDVD講義を見てから取り組むとかなり解けるようになった。
憲法を「個人を尊重するための権力への制限規範」という前提でみれば
複雑な問題もある程度目処をつけることができることは眼から鱗(^^)
尻上がりで解けるようになり最後までやってみると
一度目なのにトータル46%ほど正解率があったのには驚き。
復習や確認用としてはかなり良い教材では?

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2001 5/27
法学一般、憲法
まろまろヒット率3

講談社 『隋唐演義』 安能務 全3巻 1999

ニュースで坂口厚生労働大臣を見るたびに横から「フーッ!」っとふいて
はるか・かなた師匠の芸をやってみたくなる、
らぶナベ@僕が厚生労働省のキャリアだったら職を捨ててやってます(^^)

さて、久しぶりに通して読んだ歴史小説『隋唐演義』全3巻
安能務著(講談社文庫)1999年初版。
『封神演義』、『三国志演義』と共に三大演義ものとして
中国ではポピュラーな物語。
著者は中国ものをよく書いていることで有名らしい。

内容は統一期の隋初から安史の乱が終了する唐中期までの約二百年の物語。
南北朝の統一、煬帝の宮廷での退廃的な生活、唐建国と混乱の収集、
則天武后の王朝樹立、玄宗皇帝によるクーデター、楊貴妃との情愛、
安史の乱・・・と、この時代はエピソードには事欠かない。
以前読んだ『翔べ麒麟』を選んだ時もそうだけど
どうも僕はこの時代に漠然とした興味があるみたいだ。
儒教の影響が強い中国史の中では女性が一番強かった時代だったし、
(実力で成り上がった唯一の女性皇帝まで出てきているんだから)
国際色豊かでもあったので多彩な人材が活躍した時代だからだろう。
そして唐の太宗、李世民に興味があるみたいだ。

そんなこんなで期待して読んでみたけれど
著者の文体が軽すぎるように感じていまいち乗り切れなかった。
せっかく面白い人材や話がいっぱいあるんだから、
もっと叙情豊かにえがいてくれればいいのにと思うことが多々あった。
力はめっぽう強いが単純でだまされやすい前半部分の主役・秦叔宝に
あまり感情移入できなかったというのもあるけれど、
李世民や則天武后はもっと彼らの政治、戦略面を書いて欲しかった。
勝手な予想だけど、どうも著者は政治と言えばコソコソと人を蹴落とす
小物のやること、みたいな価値観があるみたいだ。
それで政治物語が主流になってくる物語の後半部分は登場人物の魅力を
えがききれずに姑息な話ばかりになって読んでいて退屈してしまう。
私見では13歳で男を知ってから死ぬ間際まで夜は男を離さず、
僧院に送り込まれても宮廷に復帰して最後は皇帝にまでなった則天武后は
実にスケールの大きい人物だと思うんだけど。
(それも優秀な宰相を抜擢して国政を安定させている)
彼女のそういう面をこの著者の視点ではうまくえがけていなかったのが残念。
中国史を書くってやっぱり難しいんだろうなと痛感した一冊でもある。

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2001 5/26
小説、歴史
まろまろヒット率2

塩野寛 『法医学 推理する医学―死体は真実を語る』 羊土社 1998

『レオン』は何度見直してもゲーリー・オールドマンの演技が
一番印象深いと思う、らぶナベ@だって痛いもん(^^;

さて、『法医学ー推理する医学~死体は真実を語る・・・~』
塩野寛著(羊土社)1998年初版。
法医学の本を読むのは始めてだし馴染みの薄い科学書だけど
法律関係を学ぶ僕にとってはまた別の意味がある一冊。
神田神保町の本屋で見つけて思わず衝動買いしてしまった。
内容の方はかなり面白い!
「男の睾丸はおもりとなるか」(溺死)、「オンディーヌの呪い」
(乳幼児突然死症候群)など各項の題名のつけ方もセンスがあって楽しい。
ただ専門書ではないので物足りない面もあるが
これ以上深くなるとまた読みにくい本になるのだろうと思う。
民事専門のはずなのにこんな本を読んでしまうと
刑事事件を担当したくなる(^^;

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2001 4/1
法医学、自然科学、法学、その他
まろまろヒット率3

中坊公平 『中坊公平・私の事件簿』 集英社 2000

34日間にわたる東京滞在から帰ってきた、
らぶナベ@ネコのホームズが他人行儀でさびしんぼ倶楽部(T_T)

さて、『中坊公平・私の事件簿』中坊公平著(集英社新書)2000年初版。
東京在住中に市ヶ谷の中大大学院の中で読み終えた、法学関係で50冊目の本。
弁護士・中坊公平がこれまで関わった事件の中から
印象深い14の事件を取り上げて書いている自伝的な一冊。
掲載している事件数自体は14と少なく感じるが
「この本が私の墓標」と言い切っているだけあって
森永ヒ素ミルク事件、豊田商事事件、豊島事件、住専事件などの
戦後史に残る大きな事件だけでなく小さな市場の立ち退き補償事件まで
彼の弁護士人生に影響を与えた事件を紹介している。

様々な読み方ができる本だろうが僕は彼の人間や物事に対する
本質的な希望感や明るさやというものを強く感じた。
特に豊田商事事件や豊島事件などの大きな事件ほど
この考えが貫かれているように感じられる。
森永ヒ素ミルク事件で彼が読み上げた冒頭陳述が掲載されているが
彼が「遅れてきた青春」と呼ぶように僕自身も強い感動を感じた。
人に対して明るさを持つ人間が活躍するというのは先行きが明るいだろう(^^)

以下は印象に残った彼の言葉・・・
現場さえ知っていれば裁判も勝つし客も来る(中略)私にはツテもコネもない。
ましてや不勉強で特に法律に強いわけでもない。
そんな私がこの世界で生きていくためには、
誰より現場をしりぬくしかないんだ。
<H鉄工和議申立て事件>

依頼者が自分の事務所に来る時にはすでに仮面をかぶって入ってきています。
だから依頼者のほんとの素顔というのは依頼者が生活しているところへ
行ってこそ初めてわかるものなのです。
<M市場立ち退き補償事件>

この事件の被害者は誰や。赤ちゃんやないか。
赤ちゃんに対する犯罪に右も左もない。
<森永ヒ素ミルク中毒事件>

当事者の代理人がそもそも事件をどのように考え、どのように進行させ、
どのように終結させるのかということについて、
今のように裁判所任せであってはならない(中略)
弁護は迫力をもっていないとだめ。
<小説のモデル名誉毀損事件>

どうやって被害者の費用負担を最小限に抑え、
かつ正しい調査・鑑定結果を得られるのかということを見出す。
そういうことも弁護士の仕事の中に入ってくる。
<自転車空気入れの欠陥による失明事件>

弁護士が扱う「商品」というのは「人の不幸」というものから出発している
わけです。しかし「人の不幸」というものをどう処理するかというのは
限りなく難しい(中略)要するに人を見て法を説かないといけないのであり、
たえず万人に対して同じ答え、態度で接するという方がむしろ間違っている
<看護学校生の呉服類購入契約事件>

結局、事件を手がける時に弁護士にとって一番大事なのは、
同じ目線でものがみられるかということなのです。
これはどんな事件を手がけるにしても一番必要なことなんです
(中略)人間、粘りとひたむきさが大切です。
<金のペーパー商法・豊田商事事件>

われわれは単に豊島にいて、そしてそれがテレビや新聞に載せられて、
そして公害調停委員会に届くというだけでは目的は達成できない。
香川県の知事が謝罪しないということは香川県の皆さまが
やっぱり承知されていないからだ(中略)それには自分たちが
まず小豆島の土庄町から、そして小豆島から、
われわれの願いというものを本当にわかってもらわなければならない。
<産業廃棄物の不法投棄・豊島事件>

世の中は理屈や筋書きだけでは動きません。
情熱、エネルギーというものが必要です。
住管機構の仕事も見通しがないのに出発してはいけないというのではなく、
見通しがなくとも出発すべきだと考えました。
なんの見通しもないまま出発したのに(中略)何千億も回収できるなんて
奇跡だと言う人もいますが、人間、退路を断って懸命にやれば
世の中は動くものなのです。
<不良債権・住専処理事件>

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2001 3/25
法学一般、ドキュメンタリー
まろまろヒット率4

小野昌延 『知的所有権Q&A100のポイント』 有斐閣 2000(第5版)

週末から東京入りする僕としてはやはり目黒の寄生虫博物館は欠かせないと
思っている、らぶナベ@まだTシャツ売ってるのかな?

さて、『知的所有権Q&A100のポイント』[第5版]小野昌延著
(有斐閣ビジネス) 2000年第5版。
これまでの人生をふと振り返りつつ今後のことをマロマロ妄想してみると
そのうち知的所有権関係のお仕事がやって来る可能性が妙に高いので
今のうちにざっとでも押さえておこうと手軽に読める本を購入してみた。
内容は無理矢理ポイントを100に絞り込んでいるので用語説明が前後したり
前提の話がずっと後に書かれていたりと実に読みにくい!
でも包装箱に「ハイミー」と印刷してパチンコで当てたハイミーを詰め、
販売目的で所持した行為でも商標権侵害と認めた微妙な事件(最決昭46.7.20)
などはその議論のバカバカしさと深刻さを想像するとかなり笑えた。
それに知的所有権についての主要文献も紹介されているのでよしとしよう。
とにもかくにも始めて読んだ知的所有権関係の一冊。

☆著作権=「著作財産権」(著作物利用で収益をあげる)&
「著作者人格権」(内容を勝手に変えないことや氏名表示など)
→著作者人格権は他人に譲渡できない一身専属権(著作権法50条)
=美術品と譲渡と美術著作権の譲渡を混同して問題になることが多い

☆商標の要件である「特別顕著性」の中心は識別力
→判例は「菊正宗」と「菊焼酎」の類似性を認めた(最決昭36.6.27)
・・・判例が認めた類似性・・・
・外観類似=「テイオン」と「ライオン」(最決昭28.9.1)
・呼称類似=「シンガー」と「SINKA」(最決昭35.10.4)
・観念類似=「キング」と「王」(大審昭9.3.23)
→判例はこれに加えて取引の実情を加味する方向にある
(商標権侵害の本質は商標の機能を害すること)

☆「○+C」マーク&「発行年」&「氏名」を適当な場所に書いておくと
万国著作権条約上に著作権の保護が受けられる

☆保護が難しかった「trade secret」(営業秘密やノウハウ)には
不正競争防止法3条によって差止請求もできるようになった
(ただし事実を知った時から3年で時効&行為の開始時から10年で時効)

☆特許の要件=発明・新規制・進歩性
(実用新案要件は特許の発明が考案に代わるだけ)

☆工業上利用できるものの「機能」を保護するのが特許&実用新案、
「美感」を保護するのが意匠(デザイン)
→著作権は「模倣」のみが禁止されるが意匠権は偶然一致した類似物も禁止

☆特許権の許諾=「専用実施権」&「通常実施権」
=権利者(licenser)が利用者(licensee)に独占使用を認めるかどうかの差

☆特許などの実施料(royalty)の例・・・
・一括金だけを払う「lump sum payment」
・一個単科を分割金として算出して払う「running royalty」
・頭金&分割金で払う「initial payment&running royalty」などが主流

○グーテンベルクの印刷技術によって発生した
聖書出版業者からの保護要求が著作権が出現する原動力となった

○1642年の英専売条令が「特許の母」と呼ばれる
(パテントという言葉も特許状”letters patent”から来ている)

○知的所有権重視の流れは技術的国際競争力の低下が顕著になった
レーガン政権下のアメリカで急速に広がった

○データベース作成に使用する原文献の著作物性の問題と
データベース自体の著作物性の問題とは別

○WIPO(世界知的所有権機関)、AIPPI(世界知的所有権保護協会)、
WTO(世界貿易機関)の三つが知的所有権をめぐる主要国際機関

○”PAT.P”=”Patent pending”(特許出願中)

○著作権は50年だが商標権は更新さえすれば半永久

○商標侵害による差止請求は現実に混同していなくても
そのおそれさえあれば請求できる(最決昭49.11.18)

○著作権法が世界的に注目されるのは
知的所有権保護の欠落した部分を補う役割があるため

○著作権侵害の例外・・・
・私的利用する場合は著作物を自由に複製&上映できる(著作権法30条)
・引用部分があくまでその内容の中で「従」である場合(著作権法32条)
・使用許諾を受けた者は差止請求ができない
・著作権者が反対しても文化庁長官の裁定で使用可能など

○特許&実用新案が出願されるより前にすでに実施or準備していた発明は
自由に利用できる=「先特許」&「先実用新案」
→「先商標」では中断せずに善意で使用され続けられている事実が必要

○実用新案と著作権をめぐる裁判では特許に認められる「過失の推定」はない
(無審査で申請が許可されるため)

○著作権は文化庁に登録することができるが登録なしでも差止&損害賠償請求が可能
(ただし刑事事件の場合は親告罪・告訴期間は侵害を知ってから6ヶ月)

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2001 2/19
法学一般、知的財産
まろまろヒット率3

加藤晋介 『弁護士 加藤晋介のゴト師の事件簿』 KKベストセラーズ 1999

2月の頭くらいに東京に行こうかと思っている、
らぶナベ@遠慮の塊なので懐かしの関東周辺の人は連絡下さい(^^)

さて、『弁護士 加藤晋介のゴト師の事件簿』
加藤晋介著(KKベストセラーズ)1999年初版。
前に読んだ同じ著者の『ゼニの事件簿』が妙に面白かったので
続編的なこの本も買って読んでみた。
ただし60以上のケースを紹介した”裏稼業図鑑”とでも言うべき前作と違い、
著者が直接関わった12の印象深い事件を記述しているこの本はいわば”物語”。

コロンビアから来た窃盗団の国選弁護人を引き受け意思疎通に苦労した話や
暴力団に監禁された話、ひき逃げ犯の執行猶予をめぐって法廷で涙した話など
前回同様なかなかスリリングな話が展開されている。
中には「受けた依頼は最後まできっちりやったれよ」と思うところもあったが
もめ事処理の仕事って精神的に疲れるんだろう。(だからこそやりがいがある)
好きじゃないとやってられない仕事は趣味にするのが一番の解決策だね。

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2001 1/26
法学一般
まろまろヒット率3

西村健一郎・西井正弘・初宿正典 『判例法学』 有斐閣 1998(第3版追補)

この前の“プロジェクトX”で生きた心臓の一部を切り落とす手術
(バチスタ手術)を成功させたプロジェクトチームが取り上げられていて
その中で天才外科医と紹介されていた主治医の姿を見て妙に感動した、
らぶナベ@なぜなら僕も天才弁護士として紹介されたいから(^_^)

さて、『判例法学』[第三版]西村健一郎・西井正弘・初宿正典著
有斐閣(1998年第3版追補)。
日本は判例法を採用していないので判例を専門に扱った本自体が少なく、
学術的にもあまり重視されていないけどその重要性は感じているので
一度は判例というものについてちゃんと書かれた専門書を
読んでみようと本屋で発見したこの本を読んでみた。
判例法学という題名からして体系的な判例の読み方や考え方について
書かれているのかなと期待したけれど単に判例で事例を紹介しているだなので
ちょっと残念。もっと”判例”自体に突っ込んで欲しかった。
(わざわざ”学”とつける意味は無いね)
ただ、内容の方は一冊の中で憲法、民法、刑法、社会法、国際法と
幅広く網羅されていて聞いたこともないような事件や
その判決について知ることができたのでけっこう楽しめた(^^)
特に国際法は単なる事例の紹介だけでも十分に面白さを感じられた。

この本を読んで一番気になったことは、普段は判例に逆らわないように
色々な判断を下していくものだけど判例自体変わることも多いので
“判例変更”の挑戦をすることも決して不可能ではないということだ。
それをするかどうかの判断はかなりの決意が必要となるけど
(民事事件で最高裁まで行くのって何かギスギスしすぎてる感じがする)
その分やりがいがありそうだなっと思った。
そう思ってしまう自分はやっぱり”プロジェクトX”に出れそうだ(^_^)

以下、チャック項目・・・
・判決の先例になる部分「レシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)」、
傍論の部分「オビタ・ディクタ(obiter dictum)」

・最高裁判決の結論を補充するのが「補足意見」、
結論は同じだが異なる理由を述べるのが「意見」
「原審」と呼ばれているのは高裁判決

・明確な「家族」の定義を持たないままに個別の夫婦や親子に関する法律関係
だけを定めた結果が家族観について国民に十分な認識が伴わない状況を
生みだし、また個人の意思にもとづく人間の結合関係を容認しながら
それに対応する法制度の整備が十分に対応できていないのが家族法の現状

☆試験管ベイビーや精子&卵子の冷凍保存代理母などの人工生殖について
対処できるだけの準備が日本の現行法はできていないので
今後これらが家族法を含めた大きな問題になる可能性が高い

・権利濫用の法理は害意を持ってする権利行使を禁止する
「シカーネの法理」から利益の調整を許容する法理に移行してきている
→権利の行使が濫用になるかどうかは主観的評価基準だけでなく
客観的評価基準によっても判断すべき(宇奈月温泉事件:大判昭10.10.5)

・利息制限法が定める15%or20%の上限とサラ金規制法の定める40.004%
との間(裁判によって請求できないが処罰もされない利息の幅)が
「グレーゾーン」として問題になる

・条文は作為だけ規定しているように見えるが不作為でも処罰される場合
=「不真正不作為犯」(刑法199条は不作為でも成立するなど)

・緊急避難(カルネアデスの板)が実際に問題となったのが
イギリスのミニョネット号難破事件(1884年)

・「誤想防衛」は犯罪事実の認識が欠けているので故意犯は認められず、
過失があれば過失犯が成立するだけで「過剰防衛」は故意犯が成立するが
刑の減軽又は免除が可能→両者が合わさったものを「誤想過剰防衛」
(ヘルプミー事件:最決昭62.3.26)

・過失について結果回避措置を取る前提となる結果の予見可能性については
漠然とした危惧感があれば結果回避措置を取らなければならない
(それを取らない場合は過失が成立する)とするのが「危惧感説」
新過失論から進展した考え(千日デパートビル事件:最決平2.11.29)

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2001 1/18
法学一般
まろまろヒット率3

加藤晋介 『弁護士 加藤晋介のゼニの事件簿』 KKベストセラーズ 1998

21世紀になったので一番好きなカクテルがマリブミルクというのは
(ココモミルクでも可)そろそろ卒業しようかと思っている、
らぶナベ@小ましなバーでも頼むのはさすがに恥ずかしくなってきたっす(^^;

さてさて、『弁護士 加藤晋介のゼニの事件簿』加藤晋介著(KKベストセラーズ)1998年初版。
街金、整理屋、総会屋、霊感商法などメジャーどころ(?)から
紹介屋、サルベージ屋、倒産整理屋などのマイナーどころまで
彼が弁護士として実際に対処した裏稼業を60ケース以上紹介している。
一連の流れの中のどの点で儲けているのか、
そのからくりまでも詳しく書かれている。
ご丁寧に索引まであって意外に読み応えがあるが、
日常の中に潜むスリリングさを感じられて読書がどんどん進んだ。
「世の中っていろんなお仕事があるんだね」と大人の社会見学をした気分(^^)

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2001 1/8
法学一般
まろまろヒット率4

デカルト、谷川多佳子訳 『方法序説』 岩波書店 1997(原本1637)

これが21世紀に最初に読んだ本になる、
らぶナベ@この本を読み終えてから感じたことだけど
21世紀の始めに読んだ本が17世紀の本っていうのもちょっと不思議(^^)

さて、『方法序説』デカルト著・谷川多佳子訳(岩波書店)
1997年初版(原本1637年初版)。
「我思う、故に我あり」の人が書いた本。
(我ながらおおざっぱな説明だなぁ(^^;)
現在の哲学や思想学は彼に対する批判から発展していったらしく、
なにかとよく眼にする人なので一度は読んでみようと思って買った一冊。
読んでみるとちょっと嫌味なやつだなって思うような記述がちらほら。
謙遜しながらも自分ほど勉強したやつはいないとそこら中で公言したり、
論文を公表しない言い訳に多くの記述を使っているのにはちょっとうんざり。
(「公開」を否定的に捉える点は21世紀には向いていない考えだね(^^))

肝心の内容の方はというと結局のところデカルトの言う「方法論」とは、
三つの規則から成る「方法」とそれを達成するための四つの格率から成る
「道徳」が合わさってできたものだということにつきる。
まず「方法」・・・
・第一は、私が明証的に真であると認めるのでなければ、
どんなことも真として受け入れないこと(明証性の規則)。
・第二は、私が検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、
しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること
(分析の規則)。
・第3は、私の思考を順序にしたがって導くこと(総合の規則)。
・最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、
なにも見落とさなかったと確信すること(枚挙の規則)。
・・・(この方法のおかげで)どれから始めるべきかを探すのに、
私は大して苦労はしなかった。
もっとも単純で、もっとも認識しやすいものから始めるべきだと、
すでに知っていたからだ。

・・・それを支える「道徳」・・・
理性が私に判断の非決定を命じている間も、
行為においては非決定のままで止まることのないよう、
そしてその時からもやはりできるかぎり幸福に生きられるように、
当座に備えて、一つの道徳を定める。
(中略)それは三つ四つの格率から成る・・・
・第一の格率は、私の国の法律と習慣に従うこと。
(その中で一番穏健なものを選ぶ)
・第二の格率は、自分の行動において、できるかぎり確固として果断であり、
どんなに疑わしい意見でも、一度それに決めた以上は、
きわめて確実な意見であるときに劣らず、一環して従うこと。
(一度決めたあとはその意見を、実践に関わるかぎり、
もはや疑わしいものとしてでなく、
きわめて真実度の高い確かなものとみなさなければならない)
・第三の格率は、運命よりもむしろ自分に打ち克つように、
世界の秩序よりも自分の欲望を変えるようにつねに務めること。
・最後にこの道徳の結論として、この世の人々が携わっている
さまざまな仕事を一通り見直して、最善のものを選び出すこと。

・・・以上がこの本の根幹&デカルト哲学の基本。
ううん、確かに突っ込まれやすい方法論だけど
そこに明確な真実性は感じることができる。
数世紀を超えて読み継がれる価値のある一冊であることは確かだろう。

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2001 1/2
哲学
まろまろヒット率5