西村健一郎・西井正弘・初宿正典 『判例法学』 有斐閣 1998(第3版追補)

この前の“プロジェクトX”で生きた心臓の一部を切り落とす手術
(バチスタ手術)を成功させたプロジェクトチームが取り上げられていて
その中で天才外科医と紹介されていた主治医の姿を見て妙に感動した、
らぶナベ@なぜなら僕も天才弁護士として紹介されたいから(^_^)

さて、『判例法学』[第三版]西村健一郎・西井正弘・初宿正典著
有斐閣(1998年第3版追補)。
日本は判例法を採用していないので判例を専門に扱った本自体が少なく、
学術的にもあまり重視されていないけどその重要性は感じているので
一度は判例というものについてちゃんと書かれた専門書を
読んでみようと本屋で発見したこの本を読んでみた。
判例法学という題名からして体系的な判例の読み方や考え方について
書かれているのかなと期待したけれど単に判例で事例を紹介しているだなので
ちょっと残念。もっと”判例”自体に突っ込んで欲しかった。
(わざわざ”学”とつける意味は無いね)
ただ、内容の方は一冊の中で憲法、民法、刑法、社会法、国際法と
幅広く網羅されていて聞いたこともないような事件や
その判決について知ることができたのでけっこう楽しめた(^^)
特に国際法は単なる事例の紹介だけでも十分に面白さを感じられた。

この本を読んで一番気になったことは、普段は判例に逆らわないように
色々な判断を下していくものだけど判例自体変わることも多いので
“判例変更”の挑戦をすることも決して不可能ではないということだ。
それをするかどうかの判断はかなりの決意が必要となるけど
(民事事件で最高裁まで行くのって何かギスギスしすぎてる感じがする)
その分やりがいがありそうだなっと思った。
そう思ってしまう自分はやっぱり”プロジェクトX”に出れそうだ(^_^)

以下、チャック項目・・・
・判決の先例になる部分「レシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)」、
傍論の部分「オビタ・ディクタ(obiter dictum)」

・最高裁判決の結論を補充するのが「補足意見」、
結論は同じだが異なる理由を述べるのが「意見」
「原審」と呼ばれているのは高裁判決

・明確な「家族」の定義を持たないままに個別の夫婦や親子に関する法律関係
だけを定めた結果が家族観について国民に十分な認識が伴わない状況を
生みだし、また個人の意思にもとづく人間の結合関係を容認しながら
それに対応する法制度の整備が十分に対応できていないのが家族法の現状

☆試験管ベイビーや精子&卵子の冷凍保存代理母などの人工生殖について
対処できるだけの準備が日本の現行法はできていないので
今後これらが家族法を含めた大きな問題になる可能性が高い

・権利濫用の法理は害意を持ってする権利行使を禁止する
「シカーネの法理」から利益の調整を許容する法理に移行してきている
→権利の行使が濫用になるかどうかは主観的評価基準だけでなく
客観的評価基準によっても判断すべき(宇奈月温泉事件:大判昭10.10.5)

・利息制限法が定める15%or20%の上限とサラ金規制法の定める40.004%
との間(裁判によって請求できないが処罰もされない利息の幅)が
「グレーゾーン」として問題になる

・条文は作為だけ規定しているように見えるが不作為でも処罰される場合
=「不真正不作為犯」(刑法199条は不作為でも成立するなど)

・緊急避難(カルネアデスの板)が実際に問題となったのが
イギリスのミニョネット号難破事件(1884年)

・「誤想防衛」は犯罪事実の認識が欠けているので故意犯は認められず、
過失があれば過失犯が成立するだけで「過剰防衛」は故意犯が成立するが
刑の減軽又は免除が可能→両者が合わさったものを「誤想過剰防衛」
(ヘルプミー事件:最決昭62.3.26)

・過失について結果回避措置を取る前提となる結果の予見可能性については
漠然とした危惧感があれば結果回避措置を取らなければならない
(それを取らない場合は過失が成立する)とするのが「危惧感説」
新過失論から進展した考え(千日デパートビル事件:最決平2.11.29)

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2001 1/18
法学一般
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