我妻栄 『法律における理屈と人情』 日本評論社 1955

『レオン』ではゲーリー・オールドマンが一番カッコ良いと思っている僕は
とても少数派だということに気がついてショックを隠しきれない、
らぶナベ@ジャン・レノなんかよりずっと良い演技していたのでは??

さて、『法律における理屈と人情』我妻栄著(日本評論社)1955年初版。
以前、カメラマンから弁護士になった人が薦めていたのを思い出して
書店で見つけたときに思わず購入した一冊。
民法の世界ではとぉっても有名な学者さんが、
戦後まもなくおこなわれた新憲法&新民法啓蒙の公演をもとに書いた本。

内容は「法律における理屈と人情」(立命館大学で公演したもの)と、
「家庭生活の民主化」(税務庁で公演したもの)の二部構成になっている。
「法律における理屈と人情」の方は”理屈”=”一般的確実性”(法的安定性)と
“人情”=”具体的妥当性”とが法律解釈ではどのような関係になるのか、
どのように調整すべきなのかについて語っている。
以下は第一部の中にあったもののピックアップ&要約・・・
・法律論は理屈の筋を通して論理の枠を守り、
しかもその筋にそって人情と調和させることに務めなければならない。
(人情だけを前面に出して理屈を壊せばもはや法律論ではない)

・法律における理屈と人情を調和させる第一の手段は擬制(フィクション)。
法律の規定を大前提とし、事実を小前提として、結論を引き出すのだから、
大前提を動かすことができなければ、小前提を動かす。
結論の違ってくることは、いずれを動かした場合でも同じ。

・一般的確実性を崩さないで、しかも具体的妥当性について
できるだけ人情に適した結論を導きうるような解釈をすること。
その場合もっとも重要なことは、法律規定の存在理由、
立法理由にさかのぼってその規定を吟味すること。

☆(形式的解釈の重要性)現代社会は大きな精密機械のように個々の役割が
分化、絡み合っている。この個々の歯車が全体の構造も知らないで
一人で力んだところで機械を動かすことはできない。
まず複雑な機構を全部理解して形式的に判断すればどうなるかを理解する。
そうすれば全体の動きを止めないでしかも妥当な結論を出せるようになる。

・・・第二部の「家庭生活の民主化」の方はさすがに50年ちかく前に
書かれたものなので議論の前提である家族状況がかなり変化していて
しっくりとこない面が多いのだけど、最後のところで・・・
・家庭内の役割を夫だから妻だから子供だからということで、
かつての民法のように一概に法が分けるのはおかしい。
各自がそれぞれの才能と能力に応じて違う楽器を手にしながら、
しかも調和のとれた交響楽をかなでだす家庭が理想だ。
・・・としているところは役割分担という法の役割について、
彼なりに語っているところなので興味深かった。

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2001 6/26
法学一般
まろまろヒット率3
法務 キャリア

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