小野昌延 『知的所有権Q&A100のポイント』 有斐閣 2000(第5版)

週末から東京入りする僕としてはやはり目黒の寄生虫博物館は欠かせないと
思っている、らぶナベ@まだTシャツ売ってるのかな?

さて、『知的所有権Q&A100のポイント』[第5版]小野昌延著
(有斐閣ビジネス) 2000年第5版。
これまでの人生をふと振り返りつつ今後のことをマロマロ妄想してみると
そのうち知的所有権関係のお仕事がやって来る可能性が妙に高いので
今のうちにざっとでも押さえておこうと手軽に読める本を購入してみた。
内容は無理矢理ポイントを100に絞り込んでいるので用語説明が前後したり
前提の話がずっと後に書かれていたりと実に読みにくい!
でも包装箱に「ハイミー」と印刷してパチンコで当てたハイミーを詰め、
販売目的で所持した行為でも商標権侵害と認めた微妙な事件(最決昭46.7.20)
などはその議論のバカバカしさと深刻さを想像するとかなり笑えた。
それに知的所有権についての主要文献も紹介されているのでよしとしよう。
とにもかくにも始めて読んだ知的所有権関係の一冊。

☆著作権=「著作財産権」(著作物利用で収益をあげる)&
「著作者人格権」(内容を勝手に変えないことや氏名表示など)
→著作者人格権は他人に譲渡できない一身専属権(著作権法50条)
=美術品と譲渡と美術著作権の譲渡を混同して問題になることが多い

☆商標の要件である「特別顕著性」の中心は識別力
→判例は「菊正宗」と「菊焼酎」の類似性を認めた(最決昭36.6.27)
・・・判例が認めた類似性・・・
・外観類似=「テイオン」と「ライオン」(最決昭28.9.1)
・呼称類似=「シンガー」と「SINKA」(最決昭35.10.4)
・観念類似=「キング」と「王」(大審昭9.3.23)
→判例はこれに加えて取引の実情を加味する方向にある
(商標権侵害の本質は商標の機能を害すること)

☆「○+C」マーク&「発行年」&「氏名」を適当な場所に書いておくと
万国著作権条約上に著作権の保護が受けられる

☆保護が難しかった「trade secret」(営業秘密やノウハウ)には
不正競争防止法3条によって差止請求もできるようになった
(ただし事実を知った時から3年で時効&行為の開始時から10年で時効)

☆特許の要件=発明・新規制・進歩性
(実用新案要件は特許の発明が考案に代わるだけ)

☆工業上利用できるものの「機能」を保護するのが特許&実用新案、
「美感」を保護するのが意匠(デザイン)
→著作権は「模倣」のみが禁止されるが意匠権は偶然一致した類似物も禁止

☆特許権の許諾=「専用実施権」&「通常実施権」
=権利者(licenser)が利用者(licensee)に独占使用を認めるかどうかの差

☆特許などの実施料(royalty)の例・・・
・一括金だけを払う「lump sum payment」
・一個単科を分割金として算出して払う「running royalty」
・頭金&分割金で払う「initial payment&running royalty」などが主流

○グーテンベルクの印刷技術によって発生した
聖書出版業者からの保護要求が著作権が出現する原動力となった

○1642年の英専売条令が「特許の母」と呼ばれる
(パテントという言葉も特許状”letters patent”から来ている)

○知的所有権重視の流れは技術的国際競争力の低下が顕著になった
レーガン政権下のアメリカで急速に広がった

○データベース作成に使用する原文献の著作物性の問題と
データベース自体の著作物性の問題とは別

○WIPO(世界知的所有権機関)、AIPPI(世界知的所有権保護協会)、
WTO(世界貿易機関)の三つが知的所有権をめぐる主要国際機関

○”PAT.P”=”Patent pending”(特許出願中)

○著作権は50年だが商標権は更新さえすれば半永久

○商標侵害による差止請求は現実に混同していなくても
そのおそれさえあれば請求できる(最決昭49.11.18)

○著作権法が世界的に注目されるのは
知的所有権保護の欠落した部分を補う役割があるため

○著作権侵害の例外・・・
・私的利用する場合は著作物を自由に複製&上映できる(著作権法30条)
・引用部分があくまでその内容の中で「従」である場合(著作権法32条)
・使用許諾を受けた者は差止請求ができない
・著作権者が反対しても文化庁長官の裁定で使用可能など

○特許&実用新案が出願されるより前にすでに実施or準備していた発明は
自由に利用できる=「先特許」&「先実用新案」
→「先商標」では中断せずに善意で使用され続けられている事実が必要

○実用新案と著作権をめぐる裁判では特許に認められる「過失の推定」はない
(無審査で申請が許可されるため)

○著作権は文化庁に登録することができるが登録なしでも差止&損害賠償請求が可能
(ただし刑事事件の場合は親告罪・告訴期間は侵害を知ってから6ヶ月)

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2001 2/19
法学一般、知的財産
まろまろヒット率3

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