西垣通 『こころの情報学』 筑摩書房 1999

携帯電話のない80年代の青春をえがいた映画『LOVE SONG』(伊藤英明&仲間由紀恵)を
たまたまた深夜放送で観てちょっとせつなくなった、
らぶナベ@でも80年代が青春時代じゃないんですよねー(^^;

さて、『こころの情報学』西垣通著(ちくま新書)1999年初版。
研究者でもあり小説家でもある著者が提唱する基礎情報学の入門書。
内容は情報から心を眺めて情報化社会の心の問題をとらえようとしている。
そのために情報とは「生物にとって意味のあるパターン」(第1章)と定義して、
生物誕生から情報の意味をひも解いている。
著者自身が「知的乱暴さをもたないかぎり”情報化時代の心”という
巨大な疑問をまともに解くことは絶対に不可能」(あとがき)と書いているように、
情報に関わる各分野の理論を横断的に使いながら展開している新書だけど意欲作。

ちなみに著者がおこなっている講義(学際情報学概論)を受講しているけど、
朝が早いことをのぞけば笑いもあってけっこう楽しい。
そういう著者のシニカルな笑いの部分がこの本では見れなかったのは少し残念だった。
また、かなり古い話でも「周知のように」という意味の言葉がよく出てきたが、
いったいどういう年代の読者を想定しているのだろうかと疑問に思う点もあった。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

☆「情報」の定義
・工学的な情報の定義=「(複数の場合のなかで)どれが起きたかを教えてくれるもの」
 →本来あくまで「意味内容」を無視した機械的なもの(機会情報)

・社会学的な情報の定義=「人間社会に関連する< 記号>」
 →< 認知>< 指令>< 評価>の三つの機能がある

・著者による情報の定義=「それによって生物がパターンをつくりだすパターン」
 (a pattern by which a living thing generates patterns)
 →パターンの本質はその「差異」
<第1章 情報から心をみる>

☆生物とは、いわば歴史を抱え込んだ存在(中略)
 その歴史性すなわち時間的累積性こそが、< 情報>の本質的特長
<第1章 情報から心をみる>

○情報化社会とは、記号の意味作用の安定という条件の上に成立する社会
<第1章 情報から心をみる>

○「表象」(reprezentation)=
 1:非記号表象(漠然としたイメージ)、
 2:記号表象(明示的に書き下せる記号)
  →記号表象は非記号表象を抽象化し、単純化することによって、
   他人に伝達可能とし、体系化できるようにしたもの
<第2章 機械の心>

☆「オートポイエーシス・システム」=
 「構成要素を創り出すプロセスのネットワークであり、
 またその構成要素が自分自身を作ったネットワークを
 常に再生産し続けるようなシステム」(マトゥラ&ヴァレラ)
 →生物の認知的活動を理解するには、
  「内側」から歴史に沿って見なくてはならないというのがポイント
 →オートポイエーシス理論においては、社会とはヒトの集まりというより、
  「コミュニケーション」という構成要素を生みだし続ける
  オートポイエーシス・システムと定義される
<第2章 機械の心>

☆< リアリティ>とは、行動の適合性から、さらには世界の「抵抗感」
 または「操作不能性」という観点から説明することができる
<第2章 機械の心>

☆「心的システム」=自己にもとづいて自己を再帰的に形成していく動的なプロセス
 →学習によって変化する可塑性こそが心的システムの真骨頂であり、
  常に自分を作り変えていくオートポイエーシス・システムの特長
<第3章 動物の心>

○具体的な現実状況から< 言葉>が切り離されたとき、
 はじめて言葉の< 文脈>なるものが新しく出現する
 →「言葉の意味は個々の運用の局面で定められる」(ヴィトゲンシュタイン)
<第3章 動物の心>

☆コンピュータの機械原語(機械の心)は統辞論があって意味論のない世界、
 原型原語(動物の心)は意味論があって統辞論がない世界
<第4章 ヒトの心>

○オートポイエーシス理論→動物の認知行動の時間的側面に着目
 アフォーダンス理論→動物の空間的側面に着目
 →二つの理論は補完しあう
<第4章 ヒトの心>

☆文字とは、いわば言葉を空間に釘づけにするテクノロジー(中略)
 文字が登場すると、個々の言葉はまるで< モノ>のように具体的な文脈から切り離され、
 < 概念>としてとらえられるようになってくる
 (ヒトの社会に抽象化と普遍化という方向性が鮮明にあらわれてくる)
<第4章 ヒトの心>

○近代社会の基盤には「言語の意味作用の規範化」が横たわっている
 →規範化を可能にしたのが活版印刷という情報テクノロジー
<第4章 ヒトの心>

○近代の「ヒトの心」=「機械の心をつくろうとする動物の心」
<第4章 ヒトの心>

○情報化社会の方向性=技術や経済の領域は形式論理化・抽象化にむかい、
 消費文化の領域では身体化・感性化・具体化にむかう
<第5章 サイバーな心>

☆神話とは、ひそかに深層でうごめいている意識の断片をまとめあげ、
 そこに明示的表現に耐える秩序をもたらす一種の説明体系
<第5章 サイバーの心>

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2003 5/1
基礎情報学、情報関連
まろまろヒット率3

坂村健 『痛快!コンピュータ学』 集英社 2002

真矢みきはあれだけ言って宝塚から怒られないのか心配になる、らぶナベです。

さて、『痛快!コンピュータ学』坂村健著(集英社)2002年初版。
組み込みOS「TRON」を開発した著者が書いたコンピュータ学の入門書。
コンピュータの原理的な仕組みと歴史について紹介している一冊。
中でも歴史の話が面白くて、コンピュータ誕生にまつわるゴタゴタ話では
フォン・ノイマンって嫌なやつだなと思ったりもした(笑)
ちなみに僕は著者が講師をつとめる「電脳建築学」という講義を受けていて、
この本はその講義のプレテキストに指定されているのだけど、
講義名物の著者の毒舌ぶりが本書の端々でも垣間見られてそれも楽しみだった。
特に語注では江戸っ子モード全開っといった感じで笑いながら読んでしまった。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○コンピュータという道具は、水や空気のよに本質的に「無色透明」
 →いままでの道具は人間の肉体の能力を増強するものが多かったが、
  コンピュータは人間の脳の働きを増幅してくれるもの
<第1章 コンピュータ学へ、ようこそ>

○情報の単位「ビット」を考えたシャノンの功績は、
 数字だけでなく全ての情報をコード化できるとした点
<第2章 20世紀を変えた情報理論>

○アナログとデジタルの違い・・・
 ・アナログ情報=コード化されていない情報→連続性があり切れ目がない
 ・デジタル情報=コード化された情報→不連続で飛び飛び
<第2章 20世紀を変えた情報理論>

○電子式計算機(コンピュータ)が成功を収めた最大の原因
 =計算のベースを10進法ではなく2進法に置いたところ(プール代数のおかげ)
<第4章 0と1のマジック・プール代数>

○コンピュータ学をマスターするコツは
 「とりあえず分かった気になれば、それでいい」と考えること(略)
 その意味ではコンピュータ学は英語に似ている
<第4章 0と1のマジック・プール代数>

○フォン・ノイマン型コンピュータの最大の特徴は、
 一度に一つのことしかできない点=逐次処理
<第5章 プログラム コンピュータとの会話術>

○アルゴリズムを勉強することはプログラミング言語の勉強をするよりずっと重要
 (プログラムを書くことはプロットを重視する小説を書くことに似ているから)
<第5章 プログラム コンピュータとの会話術>

○メイン・フレーム市場で圧倒的な強さを持っていたIBMが
 パソコン市場で覇権を失ったのは、
 CPU(インテル)とOS(マイクロソフト)の自社開発をせずに囲い込み戦略が失敗したため
<第6章 世界を変えた小さな「石」>

○「モデム」の語源=Modulation(変調)+DE-Modulation(復調)を合わせたもの
<第8章 インターネットのは「信頼の輪」>

○コンピュータが誕生してからこの半世紀の流れ
 =「集中(メインフレーム)から分散(パーソナルコンピュータ)へ」
  →「孤立(スタンドアロン)から共同(オンライン)へ」
<第8章 インターネットのは「信頼の輪」>

○ボーダレスな時代だからこそ、それぞれの国民性や文化が大切になってくる(略)
 世界中が金太郎飴のように同じでは、わざわざネットにつなぐ必要性はない
<第8章 インターネットのは「信頼の輪」>

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2003 4/23
コンピュータアーキテクチャ、情報関連
まろまろヒット率3

フェルナン・ブローデル、金塚貞文訳 『歴史入門』 太田出版 2002(第3版)

アレンジものが流行っているからといってUAが歌う『もりのくまさん』はやりすぎだと思う、
らぶナベ@”NHKみんなのうた”で聴けます(^^)

さて、『歴史入門』フェルナン・ブローデル著、金塚貞文訳(太田出版)2002年3版。
原題は『資本主義の活力』(“LA DYANAMIQUE DU CAPITALISME”)で、
著者はアナール派として有名な歴史学者兼思想家。
この本は彼の代表作『物質文明・経済・資本主義』を著者自身が要約して紹介している。
実はこの『物質文明・経済・資本主義』は「共依存的生滅の論理の探求」という
何だかよくわからないけど熱い名前の講義(学際情報学特殊講義)のテキストになっている本。
面白そうな本だけど分厚いのが六巻もある大著なので、
全体像を把握するためにまずはダイジェスト版のこちらを手に取った。
(親本の方はどうしても飛ばし読みして読書メモを残せないからという意味もある)
この『歴史入門』は親本とまったく同じ章立てから構成されている上に、
いま読んでいる場所が親本ではどこなのかという注釈までついているという
僕のような読者にとっては完璧なダイジェスト版。

著者は緻密で膨大な資料の上に当時の社会のうねりを再現させることに定評があるけど、
この本でもその片鱗は十分に感じられてダイジェスト版にありがちな安物臭さはなかった。
文中で「食べ物や暮らしの話だって、有名な事件や人物の話と同じくらい重要じゃん」
っと述べているところは(ナベ語訳from第1章:物質生活と経済生活の再考ー2:物質生活)、
彼の本領発揮というところだろうか(^^)

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○歴史的事象の時間性
 ・「短期持続」=一回限りの歴史的事実「事件」
 ・「中期持続」=時々刻々動きながらも一定の周期を示す「複合状況」
 ・「長期持続」=事件や複合状況の深部にあって、ほとんど動かない「構造」
<第1章:物質生活と経済生活の再考ー1:歴史の深層>

○私が出発したのは日常性であった(中略)
 こうした行為=慣習的行動(la routine)を行なわしめる刺激、衝動、模範、様式、
 あるいは義務は、われわれが思っている以上に多くの場合、
 人類史の起源にまで遡るのである。
<第1章:物質生活と経済生活の再考ー1:歴史の深層>

☆物質生活とは、長い歴史を背負った人類が、まさに内臓の中に吸収するように、
 彼自身の生に深く合体させているものであり、
 そこではあれこれの過去の経験なり興奮なりが、
 日常生活の必要性、凡庸性となっているのだ。
 そうであるが故に、誰もそれに注意をはらおうとはしない。
<第1章:物質生活と経済生活の再考ー1:歴史の深層>

☆貨幣は、それを交換を促す手段のすべてを指定するものと解すれば、
 非常に古い発明である。そして交換のないところには、社会も存在しない。
<第1章:物質生活と経済生活の再考ー2:物質生活>

☆つねに再審をせまられる、過去/現在、現在/過去の弁証法こそが、
 まさしく、歴史そのものの核心、その存在理由なのかもしれない。
<第2章:市場経済と資本主義ー2:資本主義という用語>

○資本主義、それは(略)普通ほとんど利他的なものではない目的のために行われる、
 資本投入という絶えざる賭けのあり様そのものに他ならない。
<第2章:市場経済と資本主義ー3:資本主義の発展>

○交換のタイプ
 1:次元の低い、透明であるがゆえに競争原理の働くもの
 2:高度で洗練され支配的なもの
 →この二つはまったく別のメカニズム&経済単位(資本主義の領分があるのは2の方)
<第2章:市場経済と資本主義ー3:資本主義の発展>

○ヨゼフ・シュンペーターが、企業家をデウス・エクス・マキナ(救いの神)とみなすのは間違いである。
 決定的なものは全体としての働きであり、あらゆる資本主義は、
 何よりも、その下の経済に見合ったものでしかない。
<第2章:市場経済と資本主義ー3:資本主義の発展>

○16世紀末の、地中海から北海への中心の移動は(略)
 新興地域の旧勢力に対する勝利を意味するだけである。
 (略)マックス・ウェーバーの誤りとは、そもそも資本主義の役割を、
 近代世界の推進力として過大評価してしまったことに根本的に起因するように思われる。
<第2章:市場経済と資本主義ー4:資本主義発展の社会条件ー国家、宗教、階層>

○資本主義は優れて、頂点における、あるいは、頂点を目指した、
 経済活動から生まれるものに他ならないということである。
 それゆえ、この高空飛行(大規模)の資本主義は、物質生活と、
 まとまりのある市場経済という二重の層の上を飛翔し、
 それは高利潤の層をなしているのである。
<第3章:世界時間ー4:産業革命>

○すべての客観科学の前には、つねに、発見されるべきアメリカ大陸が横たわっているのだ。
<第3章:世界時間ー4:産業革命>

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2003 4/20
歴史学、経済史
まろまろヒット率3

R.H.フランク、山岸俊男監訳 『オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情』 サイエンス社 1995

最近は屋号(?)で「まろまろさん」と呼ばれたりもする、らぶナベです。

さて、『オデッセウスの鎖ー適応プログラムとしての感情ー』
(原題”Passions within Reason-The Strategic Role of the Emotions-“)
R.H.フランク著、山岸俊男監訳(サイエンス社)1995年初版。
前に読んだ『マインドー認知科学入門』の中で「合理的思考プロセスでも感情は重要だ」
と述べられているところが一番面白かったと言うと佐倉助教授が貸してくれた一冊。

この本では自己利益追求(感情は合理的判断の邪魔)という経済学の前提条件を
感情の重要さに注目しながら修正しようとしている。
合理的自然人という考え方や利潤追求モデルは前々から批判を受けているけれど、
経済学者が経済学的アプローチから感情の重要性を考察している点が面白い。
(著者は経済学者だけど訳者は社会心理学者という点もユニーク)
だから自己利益追求モデルを否定しているわけではなく、
利益追求の意味と過程をもう一段階広くとらえようとしている。
読んでいるとちょっと無理っぽい展開だと感じる箇所もいくつかあるけれど
「その理論に反するデータを示されただけでは重要な理論は変わらない」から、
「事実により良く合致する代替理論が提出される必要がある」として
この本を書いている著者の姿勢はすごく好感が持てた。

以下はチェックした箇所の抜粋(一部要約)・・・

☆私は(略)感情が自己利益追求にうまく役立つと考えている。
 ただしその理由は、感情に駆られた行為が隠された利益を生み出すからではなく、
 合理的行動によっては解決できない重要な問題が存在しているからである。
 そういった問題の特徴は、自分に不利益な状況になっても行動を変えられないように、
 自分の行動をあらかじめ自分で縛りつけておかなくては解決できない点にある。
 →オデッセウスの故事に
<1章 自己利益を越えて>

☆「自己利益追求モデル」=人が常に効率良く自己利益を追求しようとする視点
 「コミットメント・モデル」=一見非合理な行動がコミットメント問題の解決に役立つ
               感情傾向だとする視点
<1章 自己利益を越えて>

○コミットメント問題は、後で自分の行動を変えられなくするよう、
 自分の行動をあらかじめ一定の方向に縛りつけておくと得になる場合に生じる。
 →誤魔化し、抑止、結婚など
<3章 道徳感情の理論>

☆道徳感情は報酬のメカニズムを微調整し、特定の状況で将来の報酬やペナルティに
 もっと敏感にさせるための荒削りな試みとして考えることができる。
<4章 評判>

○さまざまな不快感情を避けたいという欲求が、道徳行動を引き起こす主要な要因。
 (ケーガン)
<8章 道徳を身につける>

○愛について思慮深い人は、愛することができない。(ダグラス・イェーツ)
<10章 愛>

○判別フィルターがなければ、環境からもたらされる刺激はわれわれを圧倒してしまうだろう。
 脳は実際に意識されているよりもずっと多くの情報にアクセスしている、
 それらの情報の多くは意識されていないけれども、だからといって、
 感情や行動に何の影響も与えないわけではない。
<10章 愛>

○感情にもとづく行動はコストをともなっているように見えるが、
 そういった行動が必ずしも物質的に不利になるとは限らない。
<11章 人間の品位>

○全盛をきわめている理論は、その理論に反するデータを示されただけでは変わらない。
 事実により良く合致する代替理論が提出されてはじめて、
 既存の理論は本当の挑戦を受けることになる。(トーマス・クーン)
<12章 まとめ>

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2003 4/17
進化心理学、経済学、社会心理学
まろまろヒット率3

栗原はるみ 『ごちそうさまが、ききたくて。―家族の好きないつものごはん140選』 文化出版局 1992

ぷち隠し日記を実験的に導入した、らぶナベ@場所はまだ秘密です(^^)

さて、『ごちそうさまが、ききたくて。―家族の好きないつものごはん140選』栗原はるみ著(文化出版局)1992年初版。

最近、僕が料理本(レシピ集)を読んでいるのを知った友達から薦められた一冊。
タイトルから想像できるように実際に著者が家族のために作っている料理を紹介している。
紹介されているレシピはどれも素朴な素材を使っていてあっさりした味付けのものばかりだけど、
「健康にこだわりすぎて楽しさを失わないこと」と言っているところや、
市販のたれなども使っているところから肩の力が抜けた著者の料理への姿勢を感じた。

中でも特に材料が少ないときやボリュームがほしいときに、
とにかく大きく丸く焼いた玉子焼きを上にのせる「帽子のっけ」が
格段に豪華&美味しそうに見えるのでかなり愛用させてもらっている。

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2003 4/15
料理本
まろまろヒット率3

谷崎潤一郎 『文章読本』 中央公論新社 1996(原著1934)

麻婆豆腐はどうしても二人分つくってしまう、らぶナベ@まだ一人暮らしには慣れてません(^^;

さて、『文章読本』谷崎潤一郎著(中央公論新社)1996年改版(原著1934年初版)。
知り合いが読んでいたので気になって手に取った一冊。
小説以外で谷崎潤一郎が書いた本といえば『陰影礼賛』が有名だけど、
この本でも言葉という伝達手段の限界を踏まえて、
総てを表現しようとしたり言い尽くそうとすることを戒めている。
かなり文化論的考証が入っている点(それが目的?)も考えると、
さしずめ『陰影礼賛』の作文指南版っといった感じだろうか。
また、文章の要素の中で一番その人の本質が出るのが文章の「調子」だと言っている点や、
西洋語のような厳密な文法は日本語にはないので「文法に囚われるな」と言っている点には肯いてしまった。

読んでいる最中はちょうど新生活がスタートして気持ちが落ち着かない時期だったので、
こういう著者の文章を読むと一息つけるような気分になってよかった(^^)

以下は、チェックした箇所(一部要約)・・・

○されば言語は思想を伝達する期間であると同時に(略)
 思想を一定の型に入れてしまうと云う缺点があります。
<一 文章とは何か>

☆口で話す方は、その場で感動させることを主眼としますが、
 文章の方はなるたけその感銘が長く記憶されるように書きます。
→即ち真に「分からせるように」書くためには
 「記憶させるように」書くことが必要なのであります。
<一 文章とは何か>

○口語体の大いなる缺点は、表現法の自由に釣られて長たらしくなり、放漫に陥り易いこと(略)
 言葉や文字で表現出来ることと出来ないこととの限界を知り、その限界内に止まることが第一。
<一 文章とは何か>

○即ち真に「分からせるように」書くためには
 「記憶させるように」書くことが必要なのであります。
<一 文章とは何か>

☆文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない、だから文法に囚われるな(略)
 全体、日本語には、西洋語にあるようなむずかしい文法というものはありません。
<二 文章の上達法>

○即ち感覚と云うものは、一定の鍛錬を経た後には、
 各人が同一の対象に対して同様に感じるように作られている。
<二 文章の上達法>

☆されば文章における調子は、その人の精神の流動であり、血管のリズムである。
<三 文章の要素>

○或る文章の書き方を、言葉の流れと見て、その流露感の方から論ずれば調子と云いますが、
 流れを一つの状態と見れば、それがそのまま文体となります。
<三 文章の要素>

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2003 4/9
作文指南、文化論
まろまろヒット率3

リチャード・ドーキンス、日高敏隆ほか訳 『利己的な遺伝子』 紀伊国屋書店 1991(第2版)

転居ははじめてだけど文京区はまろまろしていて何気に気に入っている、らぶナベです。

さて、『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス著、日高敏隆ほか訳(紀伊国屋書店)1991年第2版。
生物の行動を種族でも集団でも個体でもなく遺伝子を中心に見直そうとした進化論の定番本。
当時としてはインパクトが強い内容と専門家でなくても読める点から物議を醸し出した一冊。
ただ、初版(1976年)のまえがきで著者自身が「私は生物学はミステリー小説と同じくらい
刺激的なものであるべきだと前々から思っている」と述べているように、
あえて過激な表現や事例を使っている点も考慮して問題作になったことは著者の狙い通りか?(^^)

この本の中で一番興味深かったのは、考え方や文化、理念などのも一種の遺伝子のように、
それ自体が人から人へと媒介していくという考え方=「ミーム論」だ。
自分に振り返ってみると本を人に貸したり無くしたりしても大丈夫なように読書メモを残す点
(ハードウェアに依存しない)や、重要なのは本に書かれてあることそれ自体ではなく
読む人それぞれがその本から感じ取ったことだ考えている点から、この考え方はすんなり受け入れられた。
このミーム論でいくと本の遺伝子と僕の遺伝子が交配された新しいミームが読書日記で、
それを公開しているホームページはミーム配信源というところだろうか(^_^)
ただ、一般的には文化の普及や発展の不作為性が強調される点が
このミーム理論を使うことのいちばんのメリットのような気がする。

また、「われわれが死後に残せるものが二つある。遺伝子とミームだ」(11章)と著者が述べているところは、
かつてある企業とある企業の橋渡し役をつとめたときのこと(出来事メモ)を思い出させられた。
あの時は「自分の名前が残らなくても自分の考えや色のかけらは、社会に残せるかもしれない」
と感じたことが衝動のような行動意欲につながったのを覚えている。
何かを創りたいとか、残したいという気持ちはやはり性欲と同じように本能なのかもしれない。
よく考えたらリアルな遺伝子だって自分から子供に伝わるのはその半分、
子孫になるとほんのかけらだけだということを考えると、
何かを残したいというこの欲望は利己的な遺伝子的には性欲よりも効率が良いといえるだろう(^^)
この本は専門家でなくても読めるようにしているという点を差し引いても、
あまりに比喩に比喩を重ねる手法や事例の持ち出し方があからさまだったりするのが
「どうかな?」と思うところもあるが、
こうしたことを考えさせてくれたのでまろまろヒット率は最大に値すると思う。

ちなみに、思わず笑ってしまったのが、遺伝子の定義をしている第3章で、
厳密な定義からすればこの本のタイトルを・・・
『いくぶん利己的な染色体の大きな小片とさらに利己的な染色体の小さな小片』
・・・っとすべきだったと書いてあったことだ。
厳密さでは問題あっても確かにこっちの『利己的な遺伝子(The Selfish Gene)』の方が
ずっと良いミームだろう(笑)

以下はチェックした箇所の抜粋(一部要約)・・・

○この本の主張するところは、われわれおよびその他のあらゆる動物が
 遺伝子によって創りだされた機械にほかならないというものである。
 →自己利益の基本単位は、種でも、集団でも、厳密には個体でもない(略)
  それは遺伝の単位、遺伝子である。
<1 人はなぜいるのか>

○成功した遺伝子に期待される特質のうちでもっとも重要なのは無常な利己主義である(略)
 しかし(略)遺伝子が固体レベルにおけるある限られた形の利他主義を助長することによって、
 もっともよく自分自身の利己的な目標を達成できるような特別な状況も存在する。
 注:利他主義と利己主義の上述の定義が行動上のものであって、
   主観的なものではないことを理解することが重要(略)
   利他的にみえる行為はじつは姿を変えた利己主義であることが多い。
<1 人はなぜいるのか>

○(正確な複製と突然変異との両立の問題について)
 進化とは、自己複製子(今日では遺伝子)が
 その防止にあらゆる努力をかたむけているにもかかわらず、
 いやおうなしにおこってしまうというたぐいのものである。
<2 自己複製子>

○一個の遺伝子は、何世代もの個体の体を通って生きつづける単位。
<3 不滅のコイル>

☆遺伝子と進化の定義☆
・「遺伝子」
 =自然淘汰の単位として役立つだけの長い世代にわたって続きうる染色体物質の一部
 =複製忠実度(コピーの形での寿命)のすぐれた自己複製子
 =十分に存続しうるほどには短く、自然淘汰の意味のある単位として
  働きうるほど十分に長い染色体の一片

・「進化」
 =遺伝子プール内である遺伝子が数を増やし、ある遺伝子が数を減らす過程
 =たえまない上昇ではなくて、むしろ安定した水準から安定した水準への不連続な前進のくり返し
<3 不滅のコイル>+<5 攻撃ー安定性と利己的機械>

☆個体は安定したものではない(略)染色体もまた、配られてまもないトランプの手のように、
 まもなくまぜられて忘れ去られる。
 しかし、カード自体はまぜられても生きのこる。このカードが遺伝子である。
<3 不滅のコイル>

○意識とは、実行上の決定権をもつ生存機械が、究極的な主人である遺伝子から
 解放されるという進化傾向の局地だと考えることができる。
<4 遺伝子機械>

○遺伝子は方針決定者であり、脳は実施者と考えられる。
<4 遺伝子機械>

☆進化的に安定な戦略(Evolutionarily Sable Strategy=”ESS”)
 =個体群の大部分のメンバーがそれを採用すると、
  べつの代替戦略によってとってかわられることのない戦略
 →個体にとって最善の戦略は、個体群の大部分がおこなっていることによってきまる
<5 攻撃ー安定性と利己的機械>

○(ESSのコンピュータシミュレーション実験からから)
 重要な一般的結論は、ESSが進化する傾向があること、
 ESSが集団の申し合わせによって達成されうる最適条件と同じではないこと、
 そして常識は誤解を招くことがあるということである。

○まったくでたらめをいうよりポーカー・フェイスのほうがいいのはなぜだろうか?
 やはり、うそをつくことが安定ではないからだ。
<5 攻撃ー安定性と利己的機械>

○賭博師にとって最良の方策は、ときには猛烈攻撃作戦ではなく、
 幸運待望作戦かもしれないのである。
<7 家族計画>

○(親動物の家族計画は集団のためではない点について)
 個体に過剰な数の子をもたせるように仕向ける遺伝子は、
 遺伝子プールの中にはとどまれない。その種の遺伝子を体内にもった子供らは、
 成体になるまで生き残るのがむずかしいからである。
<7 家族計画>

○親子の争いの場合、敵対者は互いにある程度の遺伝的利益を共有しており(略)
 一定の限度、あるいは一定の感受期間の間においてのみ、敵対関係を形成するのである。
<8 世代間の争い>

○精子と卵子の大きさおよび数にみられる根本的な相違が原因で、
 雄には一般に、乱婚と子の保護の欠如の傾向がみられる。
 →これに対抗する雌の戦略がたくましい雄を選ぶor家庭第一の雄を選ぶこと
<9 雄と雌の争い>

○不妊の働きバチが一匹死ぬことは(略)木の遺伝子にとって、
 秋に葉を一枚落とすことが、些細なことであるのとまったく同じことである。
<10 ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中をふみつけてやろう>

☆ヒトの肥大した大脳や、数学的にものごとを考えることのできる素質は、
 より込み入った詐欺行為を行ない、同時に他人の詐欺行為を
 より徹底的に見破るためのメカニズムとして進化したのだという可能性すら考えられる。
 このような見方からすれば、金銭は、遅滞性の互恵的利他主義の形式的象徴である。
<10 ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中をふみつけてやろう>

○人間をめぐる特異性は、「文化」という一つの言葉にほぼ要約できる(略)
 基本的には保守的でありながら、ある種の進化を生じうる点で、
 文化的伝達は遺伝的伝達と類似している。
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○生物の基本原理=すべての生物は、自己複製を行なう実体の生存率の差に基づいて進化する
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

☆文化伝達の単位(模倣の単位)=mimeme(ギリシア語で模倣)+gene(遺伝子)→”meme”(ミーム)
 →ミームがミームプール内で繁殖する際には、
 広い意味で模倣と呼びうる過程を媒介して脳から脳へと渡り歩く
 (楽曲、思想、標語、ファッション、建築など文化のすべてがミームの例))
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○概念のミーム=脳と脳の間で伝達可能な実体
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○(かつて宗教勢力が多様した「地獄の恐怖」についてミームの視点から)
 それ自体は意識をもたないミームが、成功する遺伝子が示すのと同じ
 類似的残忍性という特性をもったおかげで、
 自らの生存を確保できたのだというほうがあたっているような気がする。
 地獄の却火という観念は、まったく単純に、それ自体がもつ強烈な心理的衝撃力のおかげで、
 自己を永続化しえているのである。
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○われわれが死後に残せるものが二つある。遺伝子とミームだ。
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○人間には、意識的な先見能力という一つの独自な特性がある(略)
 この地上で、唯一われわれだけが、利己的な自己複製子たちの専制支配に反逆できるのである。
<11 ミームー新登場の自己複製子ー>

○ダーウィン主義者にとって、成功する戦略はさまざまな戦略の集団の中で多数になったもののことである。
<12 気のいい奴が一番になる>

○ほとのどの遺伝子は、たとえば緑色の眼と巻毛といった、二つ以上の表現型効果をもっている。
 自然淘汰は。遺伝子そのものの性質のゆえではなく、
 その表現効果のゆえに、ある遺伝子を他の遺伝子よりも優遇する。
<13 遺伝子の長い腕>

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2003 4/3
進化論、自然科学、情報関連
まろまろヒット率5

MARK TWAIN "The Adventures of TOM SAWYER" Oxford University Press 2000 (orignal first published 1876)

LOVENABE@somehow managed to remove.

“The Adventures of TOM SAWYER” written by MARK TWAIN
Oxford University Press 2000(orignal first published 1876).
This book is one of the most popular old literature in the United States,
and captured its popularity in Japan in cartoon TV shows.
Despite of its popular background, since I remember litle of it,
I opened this book again.

The story tells that how the boys attain to live happily
with their wisdom and encouragement in overall.
Their quick-witted actions exhilarated me.
I was also interested in “ABOUT THE AUTHOR” section at the end of the book.
When author was working as a guard of the Mississippi river,
“Mark Twain” was named.
The term of “Mark Twain” simply means “4 fathoms of water”.
This fact suprised me.

And this is the first book since I have removed to Tokyo.
So, I think my life is like a little adventure:-D

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2003 3/30
洋書、文学、English
まろまろヒット率3

annotation; this readingdiary was assisted by maropro.

テレビ東京 『グッチ裕三のこれは旨い!3』 ブックマン社 1999

大阪人なのでうどん派だったけ最近はそば派になりつつある、らぶナベです。

さて、『グッチ裕三のこれは旨い!3』テレビ東京編(ブックマン社)1999年初版。
最近よく読んでる『これは旨い!』シリーズの第三段。
この本は前半が朝食&昼食、後半が酒の肴という構成になっている。
調味料や料理のコツについて書かれてあるコラムもけっこう役に立つ。
レシピもニンニクとゆず胡椒を合わせたパスタは何気に美味しいかった。

ただ、やはり味が濃いと思う(^^;

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2003 3/9
料理本
まろまろヒット率3

テレビ東京 『グッチ裕三のこれは旨い!2』 ブックマン社 1999

今月半ばからひとり暮らしをはじめる、らぶナベです。

さて、『グッチ裕三のこれは旨い!2』テレビ東京編(ブックマン社)1999年初版。
前に読んだ『これは旨い!』の第二段。
今回は前半が夕食用、後半が夜食用とわかれている。
でもどちらも手軽でちょっとヘビーな料理が多いので、
あまり分類の意味がないような気がする(^^;

いくつか試してやってみると隠し味にマーマレードを入れて、
大根おろしをかけて食べる牛丼は美味しかった。
グッチ裕三はこういう一見当たり前のようで気づきにくい小技が多い。

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2003 3/7
料理本
まろまろヒット率3