携帯電話のない80年代の青春をえがいた映画『LOVE SONG』(伊藤英明&仲間由紀恵)を
たまたまた深夜放送で観てちょっとせつなくなった、
らぶナベ@でも80年代が青春時代じゃないんですよねー(^^;
さて、『こころの情報学』西垣通著(ちくま新書)1999年初版。
研究者でもあり小説家でもある著者が提唱する基礎情報学の入門書。
内容は情報から心を眺めて情報化社会の心の問題をとらえようとしている。
そのために情報とは「生物にとって意味のあるパターン」(第1章)と定義して、
生物誕生から情報の意味をひも解いている。
著者自身が「知的乱暴さをもたないかぎり”情報化時代の心”という
巨大な疑問をまともに解くことは絶対に不可能」(あとがき)と書いているように、
情報に関わる各分野の理論を横断的に使いながら展開している新書だけど意欲作。
ちなみに著者がおこなっている講義(学際情報学概論)を受講しているけど、
朝が早いことをのぞけば笑いもあってけっこう楽しい。
そういう著者のシニカルな笑いの部分がこの本では見れなかったのは少し残念だった。
また、かなり古い話でも「周知のように」という意味の言葉がよく出てきたが、
いったいどういう年代の読者を想定しているのだろうかと疑問に思う点もあった。
以下はチェックした箇所(一部要約)・・・
☆「情報」の定義
・工学的な情報の定義=「(複数の場合のなかで)どれが起きたかを教えてくれるもの」
→本来あくまで「意味内容」を無視した機械的なもの(機会情報)
・社会学的な情報の定義=「人間社会に関連する< 記号>」
→< 認知>< 指令>< 評価>の三つの機能がある
・著者による情報の定義=「それによって生物がパターンをつくりだすパターン」
(a pattern by which a living thing generates patterns)
→パターンの本質はその「差異」
<第1章 情報から心をみる>
☆生物とは、いわば歴史を抱え込んだ存在(中略)
その歴史性すなわち時間的累積性こそが、< 情報>の本質的特長
<第1章 情報から心をみる>
○情報化社会とは、記号の意味作用の安定という条件の上に成立する社会
<第1章 情報から心をみる>
○「表象」(reprezentation)=
1:非記号表象(漠然としたイメージ)、
2:記号表象(明示的に書き下せる記号)
→記号表象は非記号表象を抽象化し、単純化することによって、
他人に伝達可能とし、体系化できるようにしたもの
<第2章 機械の心>
☆「オートポイエーシス・システム」=
「構成要素を創り出すプロセスのネットワークであり、
またその構成要素が自分自身を作ったネットワークを
常に再生産し続けるようなシステム」(マトゥラ&ヴァレラ)
→生物の認知的活動を理解するには、
「内側」から歴史に沿って見なくてはならないというのがポイント
→オートポイエーシス理論においては、社会とはヒトの集まりというより、
「コミュニケーション」という構成要素を生みだし続ける
オートポイエーシス・システムと定義される
<第2章 機械の心>
☆< リアリティ>とは、行動の適合性から、さらには世界の「抵抗感」
または「操作不能性」という観点から説明することができる
<第2章 機械の心>
☆「心的システム」=自己にもとづいて自己を再帰的に形成していく動的なプロセス
→学習によって変化する可塑性こそが心的システムの真骨頂であり、
常に自分を作り変えていくオートポイエーシス・システムの特長
<第3章 動物の心>
○具体的な現実状況から< 言葉>が切り離されたとき、
はじめて言葉の< 文脈>なるものが新しく出現する
→「言葉の意味は個々の運用の局面で定められる」(ヴィトゲンシュタイン)
<第3章 動物の心>
☆コンピュータの機械原語(機械の心)は統辞論があって意味論のない世界、
原型原語(動物の心)は意味論があって統辞論がない世界
<第4章 ヒトの心>
○オートポイエーシス理論→動物の認知行動の時間的側面に着目
アフォーダンス理論→動物の空間的側面に着目
→二つの理論は補完しあう
<第4章 ヒトの心>
☆文字とは、いわば言葉を空間に釘づけにするテクノロジー(中略)
文字が登場すると、個々の言葉はまるで< モノ>のように具体的な文脈から切り離され、
< 概念>としてとらえられるようになってくる
(ヒトの社会に抽象化と普遍化という方向性が鮮明にあらわれてくる)
<第4章 ヒトの心>
○近代社会の基盤には「言語の意味作用の規範化」が横たわっている
→規範化を可能にしたのが活版印刷という情報テクノロジー
<第4章 ヒトの心>
○近代の「ヒトの心」=「機械の心をつくろうとする動物の心」
<第4章 ヒトの心>
○情報化社会の方向性=技術や経済の領域は形式論理化・抽象化にむかい、
消費文化の領域では身体化・感性化・具体化にむかう
<第5章 サイバーな心>
☆神話とは、ひそかに深層でうごめいている意識の断片をまとめあげ、
そこに明示的表現に耐える秩序をもたらす一種の説明体系
<第5章 サイバーの心>
2003 5/1
基礎情報学、情報関連
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