アーネスト・ヘミングウェイ 『THE OLD MAN AND THE SEA』 講談社 1998(原本1952)

らぶナベ@このメールが大学に入ってから12345通目のメール!
ぞろ目はめでたい(^o^)

『THE OLD MAN AND THE SEA』アーネスト・ヘミングウェイ著
(講談社インターナショナル)1998年初版(原本1952年初版)。
最近読み始めた法学の本を読んでるとそれなりに面白いし
必要性を強く感じるけどしょせん法学はルールでしかない。
枠をどう当てはめるかばかりにこだわると本質を見失ってしまうし
何よりもせせこましい性格になってしまうような気がする。
(原理原則にこだわるものはみんな同じ、枠はあくまで枠)
「こいつみたいにはなってはいけないな」と思う人間がやたらと
法学部や本屋の法律コーナーにいてるのもこのためかなとも感じる。

そこで骨太な文学作品を何か読んでみたいなと思い立ち、
骨太な文学者→ヘミングウェイ→一番骨太そうな作品→『老人と海』
・・・という単純な連想で選んだ本。
また、せっかく英語圏の作家の作品を読むんだから
作品の雰囲気をそのまま味わいたいし英語の勉強の意味も含めて
原語表記の出版物を購入して読んでみた一冊。
家の近くの本屋(旭屋難波店)では原語表記の『老人と海』は
これしか置いてなかったので買ってみたがご丁寧にこのシリーズは
どうみても普段の生活で使わないような単語にはルビが振ってある。
最初はかえってうざったく感じていたが途中頻繁に出てくる
漁業や船舶に関する専門用語にルビが振ってあったおかげで
不必要な字引の手間がはぶけたし結果として物語自体に集中できた。

内容の方はメモるまでもなく実にシンプルで力強い。
カリブ海のバハマに住んでいる漁師の老人とカジキマグロとの
三日間におよぶ死闘を中心にして人生とどう向き合って
生きるべきかを投げかける現代アメリカ文学の最高峰。
この作品でヘミングウェイが一番書きたかったと思われるのが・・・
“But man is not made for defeat,” he said.
“A man can be destroyed but not defeated”
・・・と、疲れながらも老人が望みを捨てずに船上でつぶやくシーンだ。
「常に男であらねばならない、男であることは戦うことだ」
・・・そうこの作品は言っているような印象を受ける。
そういう意味で司馬遼太郎の『燃えよ剣』(文春文庫)を
読んだときと同じように心がふるえるような感じを受けた。
(この作品は「うつくしく生きなくてはいけない」がテーマと感じたが)
読み終わった後に思わず僕もカジキマグロを釣り上げに行こうと
釣り道具を買いかけたがさすがにカジキマグロ釣れるくらいの
一式セットは簡単に手に入らないものだ(^^;

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1999 11/14
小説、文学、洋書
まろまろヒット率5

相馬達雄 『この一冊で「民法」がわかる!』 三笠書房 1994

弁護士である著者が担当した民事事件を中心にして・・・
「自分の物だという証拠が示せない時でも盗品は取り戻せるのか?」
「夫婦間の約束が取り消せる場合とできない場合との違いは何か?」
「不正入学を依頼して失敗すればお金は返してもらえるのか?」
「結婚するという嘘の約束をしてセックスすれば結婚詐欺になるのか?」
・・・などの民法が関係する実際のケースを101個紹介している。
三笠書房らしくいかにも安物くさいタイトルを付けている本だが
無味乾燥な法律の条文にケースという肉付けをつけて理解する上でも
民法の視点から日常生活を見直す上でもけっこう有益な一冊だと思える。

この本の中で知らなかったり気になったトピックスが三つ・・・
・「売り主は手付金の倍額を買主に支払えばその売買契約を解除してよい」
(民法五五七条)という条文から絶対欲しいものは
手付金じゃなく内金を払うべき。

・日本の相続法は血のつながりで財産を縦に流す性格が強いので
夫の死亡後も夫の両親に尽くした妻であっても
夫の親がちゃんと遺言書でその意図を明確に書かないと
夫の親の財産を相続できなかったり、
血がつながっていても前妻の子供と後妻の子供では相続に関して違う。
(たとえ認知していても父親の後に後妻が続いて死ねば
後妻の子供がその父親の遺産を全額相続する)などの弊害が生まれている。
立法時には「社会の混乱を防ぐ」という意図を含めてこういうのが
あるんだろうけど「ちょっとひどいなぁ」っと感じた。

・遺言書は家庭裁判所が「検認」する必要があるために当事者が
勝手に開封してはいけないが、たとえ開封しても
5万円以下の過料にしかならない(民法一〇〇五条)。
・・・ってことはいくらでも開封して改ざんするやついるぞって
思ってしまった(^^;

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1999 11/12
法学、民法
まろまろヒット率3

千葉博 『3時間でわかる民法入門』 早稲田経営出版 1999

ひさびさに会った友達と京都河原町にくり出して
調子に乗って「京都らしい行きつけの店を開拓しよう!」と
思わず素通りしそうになる町屋造りのこじんまりしたお店に突入。
表にメニューも出されていなかったので一見さんはダメかなと思ったが
意外にすんなり入れてもらい、さぁ、何か頼もうとしたら
どこを見ても値段が一切載っていない!!(*o*)
(時価&店が客によって請求額を変えるってやつ)
腹をくくって半分やけくそでいかにも高そうなくじらベーコンや
鰊と茄子の煮付けを含む合計7品目を頼み(雑炊が異常にうまかった)、
もちろんお酒やお茶などの飲み物も飲んで
「これでせっかくもらった奨学金も消えるのか(T_T)」と、
どきどきしながら会計に望むとナント全部込みで合計6100円だった!(@@)
どうやらお店の人に気に入られたらしく(一人3050円)
結果として河原町にて隠れ家的行きつけのお店をゲット!
虎穴に入らずば虎児を得ず。
場所とか店名とかは秘密、興味ある人は今度行きましょう(^^)

さて、本題・・・
『3時間でわかる民法入門』千葉博監修(早稲田経営出版)1999年初版。
民法の概要を理解できる本がないかと書店に行って
手にとってみて一番読みやすそうだったので購入した本。
こういうタイトルの本の例にもれることなく、
まずタイトル通りの時間で読むことはできない。
この本も「3時間でわかる」とか言いながら純粋に読書にかかった
時間だけでも軽くこのタイトルの3倍は超えた。
僕が元々法学の素養が無いこと&注意力が散漫な事もあるだろうが
購入してから気づいたことだがこの本は司法試験受験者のため用に
民法入門書として書かれているものなので(そりゃあ3時間じゃ無理だ(^^;)
入門書と言ってもけっこうシビアなところがある。
ただ、それでもやはり用語説明が丁寧なところなど
読みやすいことは確かで法学の基礎が無くても
それなりにスイスイ読めるようにはなっている。

この本を読んでみて良かったと思えるところは今までわからなかった
「親等」の数え方がようやくわかったということだ。
よく「結婚は三親等までだから従姉妹とは結婚できる」とか
「直系でも六親等までが親族になる」とか耳にするが
どうしてもその数え方が理解できなかった。
それがこの本で親等を図表にして表している箇所のおかげで理解できた。
(つまりその親族の父母まで還ってカウントしろってことだね)

これプラスややこしくて理解しずらかったけど、
かなり重要と思われる用語が二つ・・・
「短期賃貸借」
抵当権と賃貸権が対抗すればその優劣は
抵当権だけの時と同じように登記の先後で決まる。
しかし短期間のものであれば抵当権より後に登記された
賃借権でも対抗できる(=対抗要件を備える)こと。
ただし抵当権者は短期賃貸借をやめさせるように
裁判所に請求することができる。
(その場合でも抵当権は占有権ではないので追い出すことは不可)

「物上代位」
抵当権の目的物が何らかの形で交換価値を表すものに具体的に変形した場合、
(抵当にしていた家が焼失してしまったが同等の保険金が下りたなど)
その具体化された交換価値にも抵当権の効力が及び、
抵当権者はそこから優先的に支払を受けることができること。
ただし債務者が保険金などを受け取る前に
抵当権者自らが差し押さえなくてはいけない。

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1999 11/10
法学、民法
まろまろヒット率3

王者のように計画し、奴隷のように働く(神のごとく計画し悪魔のごとく実行する)

NHKビジネス英会話のquote-unquoteで似たようなものがあったが
ふと何か事をおこなう上でもっとも重要なことの一つのように思えた。
王者のように計画するだけではダメだし奴隷のように働くだけでもダメ。
“Making policy as a king in top of the world,
Working task as a slave in bottom of the world”
・・・と言ったところだろうか?

1999 11/9
はしり書き

酒井雅男 『図解でわかる民事訴訟のしくみと手続き』 日本実業出版社 1999

最近、自分が実はおっぱい星人なのかもしれないと疑い始めた、
らぶナベ@もう一人の自分が僕にささやくんだ!
(最近パワーダウンなダニエル・キースの小説のように(^^))

さて、『図解でわかる 民事訴訟のしくみと手続き』
酒井雅男著(日本実業出版社)1999年初版を読んでみました。
どんなに当たり障りのない生き方をしていても
民事訴訟はいつ自分が巻き込まれてもおかしくない上に
これから訴訟へのハードルがどんどん低くなっていくので
件数自体増えることが確実なのでいまのうちに訴訟の仕組みや
大きな流れくらいはある程度知っておこうと思って読んだ本。

読んでみると内容は方は実に面白い!!
民事訴訟の仕組みと流れを理解することを第一の目的として
書かれているので難しい法律用語には説明が加えられているし
訴訟の中での関係や意義に関する図解も多くてかなり読みやすかった。
また、裁判なんて暗くジメジメしていて退屈なものだと思っていたが
民事訴訟は攻撃、防御ともにオプションが多くて興味深いものだと感じた。
日本の法廷でも民事訴訟の中では十分に攻防戦が展開できるのだと
理解できたのでちょっとホッとした。(戦略が活きてくる環境がある)

以下は民事訴訟を攻撃、防御の視点で見てみると
知っておいた方が良いと思う事項の列挙・・・
☆「相殺」が訴訟で認められればその分敗訴しても損害を補える。(防御)

☆相手側の財産を保全すること=「保全手続き」が
訴訟に勝つことと同じくらい重要。(攻撃)

☆訴訟費用の負担割合を見れば勝ち負けの度合いが一目でわかる。(勝敗)

☆訴訟をおこされたら逆に原告に対して新しい訴訟を提起すること
=「反訴」が可能。(反撃)

☆訴えをおこさずに強制執行をおこなうことが可能なのが「支払督促」。
(長距離射撃に似た攻撃)
ただし「支払督促」送達を受けた日から二週間以内に被告が
「督促意義申立て」をおこなうと効力が消滅し通常の訴訟に移る。
これは裁判所に口答か書面で「支払督促は不服である」と言うだけでも良い。

☆証拠についての「反証」は相手が証明責任を負っているから裁判官に対して
確信までいかなくても事実の存在に疑問を抱かせれば良い。(防御)

☆利害関係者も訴訟に加わること=
「独立当事者参加」と「補助参加」が可能。(参戦)

・「示談」は刑事事件にしないための「上申書」にも利用できるし、
刑を軽くするための「情状証拠」にもなる。(防御)

・紛争解決のためであっても権利実現のためでも実力行使を禁止している
=法律の「自力救済の禁止(自救行為の禁止)」。(防御)

・訴状には言い渡して欲しい判決の主文=「請求の趣旨」と
その理由=「請求の原因」と法的根拠=「訴訟物」が重要。(攻撃)

・「当事者適格」を確定させるために訴状の一番最初に
原告と被告を記載する。(攻撃)

・共同で訴訟をおこなう時は「証拠共通」は認められるが
「主張共通」は認められない=「共同訴訟人独立の原則」。(攻撃)

・同一の手形の振出人、裏書人に対する請求の場合は
「共同訴訟人独立の原則」は制限を受ける=「必要的共同訴訟」。(攻撃)

・遅れて共同訴訟に加わること=「共同訴訟参加」は可能。
さらに利害の共通する原告or被告を自分のためにも
訴訟活動をしてくれる人間として選定できる
=「選定当事者」。(攻撃)

・自らが証拠について証明責任を負っている「本証」は
裁判官に確信の心証を与えなくてはいけない。(攻撃)

・控訴された「被控訴人」は控訴の審理をしている間は逆に自分に有利な
判決を求めて控訴すること=「附帯控訴」ができる。(反撃)

・債権者は仮執行宣言の申立てができるようになってから30日以内に
申立をしないと「支払督促」の効力が無くなってしまう。(攻撃)

・民事執行には「担保権の実行」と「強制執行」がある。(攻撃)

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1999 11/9
法学、民事訴訟法
まろまろヒット率3

榎原猛 『基礎法学』 法律文化社 1984

らぶナベ@あずきかけヨーグルトに家族中から迫害を受けているっす(^^;

さて、『基礎法学』榎原猛編(法律文化社)1993年第9刷をば。
最近法律、特に民法を知っておく必要性を感じたので読み始めた本。
いきなり民法学に当たっても良いのだが今までまともに読んだ
法学の本と言えば学部一回生の夏休みの時に読んだ
『法学入門』末川博編(有斐閣双書)くらいしかないので
もう一度法学を体系から学び直そうと思って帝塚山大学法政策学部に
通っている妹の本棚からこっそりパクって来て読んだ法学の総論書。

内容は僕が久々に法学に振れたということもあるが、
実に回りくどい言い方をしていたり、いちいち言わなくても
良いようなことをわざわざ書いていたりするのが気になった。
そのわざわざ書いていることに意味がある場合ならまだ良いが
結局は解釈者によって変わる箇所も多くて
意味の無いくどさを感じてしまうような条文も多かった。
総じて法学書が難解と言われるのは使われている漢字の難しさと
この回りくどい言い方、表現にあるためか?
特に印象深いのは法の解釈について・・・
「三段論法的に適用される法規を大前提として具体的な事実を小前提とし
後者が前者に包摂されることによって結果として判決が導き出される。」
・・・としているところだ。
つまり本質的に法学においては法が先にあって事実が後にあることになる。
では、ルール自体を飛び越したような事実が先の時はどうなるのだろう?
ここが法学の限界だなと感じた。
道具ではあっても真理を追求する学問的な深みが無いと感じてしまう。
この点が様々な法曹にまつわる問題の根底にあるような気がした。

以下、重要と感じた章のまとめとチェックした箇所の列挙・・・・
第一部基礎理論
<第一章 法の概念>
○「法とは社会が構成員に強制する行為の規範」
・物事の法則は価値とは無関係に因果律の支配する必然の法則、
 規範は人が一定の価値的目的に到達するための「当為の法則」
・道徳や宗教は意思規範、法は「行為規範」
・道徳や宗教は自律的規範、法は「他律的規範」
・慣習は期待規範、法は「強制規範」
・「法とは正義に適合して秩序をたてるために、
 社会が構成員に強制する行為の規範である」
・イェリネク「法は最小限の道徳」

<第二章 法の種類>
○法源
・「制定法」(特別法は一般法に優位する、後法は前法に優位する)
・「慣習法」(刑法では罪刑法定主義から慣習?????%法の法源性は否定)
・「判例法」(英米法では重要)
・「条理」(自己の主観に従ってするので客観的ではない)

<第三章 法の歴史>
○近代法の基本原理
「個人の自由平等独立」、「所有権の絶対」、「契約の自由」、「過失責任」
・イェーリング「損害を義務づけるのは損害でなく過失である」
・資本主義の高度化によって不自由不平等従属に転化した人間を
 再び具体的な自由平等独立の人間に回復させることが現代法の課題。
 →20世紀の社会法の制定

<第四章 法の解釈>
・成文法は社会に生じた紛争を解決するための道具(法の適応)、
 三段論法的に適用される法規を大前提として具体的な事実を小前提とし、
 後者が前者に包摂されることによって結果として判決が導き出される。
 →ルールが先で事実が後、事実が先になった時はどうなるのか?
  これが法の限界では?

○法の解釈の方法
・「文理解釈」
法文の一字一句を読み解く。
・「論理解釈」
 拡張解釈、縮小解釈、類推解釈、反対解釈など。
 しかし刑罰法規については拡張解釈、類推解釈は禁止。
・「文法解釈」
 立法者の意図を読みとく。
・「歴史的解釈」
 立法者が与えた意味を歴史的事実として認識。
・「目的論的解釈」
 目的もしくは価値を探求しその実現を指導理念としておこなう。
・「社会学的解釈」
 社会的事実に検討を加えてこれに第一次的重要性をおいて
 社会の良識に合致するよう解釈する。

・法規には複数の合理的解釈の成立する一定の枠がある。
 その枠のうちで解釈を迫れている具体的事実との関連で
 もっとも妥当と思われる解釈がなされる。
 →妥当とは何かに答えてない!

・法規範の認識は価値体系を知ることである。これは法律の条文が
 どのような規範命題を提示しているのか認識することである。

<第五章 権利と義務>
・ドイツ語”Recht”フランス語”droit”は法と権利の両方の意味がある。
 また、「主観的Recht」といった時は権利を表し、
 「客観的Recht」といった時は法を意味する。

・「権利」とは人がその利益を得、又は守るためにその意思
 (又は法によってその意思とされる他の意思)によって、
 或ることを主張することのできる法上の力である。

○権利の種類
・「支配権」(物又は人に対して直接且つ排他的に働く)
・「請求権」(他人の行為又は給付を要求するもの)
・「形成権」(権利者の一方的意思表示によって法的効果を発生される権利)
・「抗弁権」(他人の請求を拒絶しうる債務者の権利)

○義務の種類
・「作為義務」
・「不作為義務」
・「受忍義務」
・義務の主体となることできる資格を「法的人格」、
 このような資格を認められる者のことを「法上の人」と言う。

・「自然人」
 法的人格(権利能力)が認められた個人。
・「法人」
 団体や財団で法的人格を認められたもの。
 (法によって人格を認められるのですべてが法人となるわけではない)
 →財団法人は常に公益法人としてのみ認められる。

・民法では「物」とは「有体物」を指す。
 無体物は生命、自由、行為、権利などだが人の身体は
 身体そのものとしてよりも一体をなしている身体的構成とみて、
 「無体物」とされる。

○有体物の区別方法
・動産、不動産
・特定物、不特定物
・消費物、不消費物
・主物、従物
・融通物、不融通物(私権の目的とするものができるかどうか)
・有主物、無主物
・元物・果実

第三部各法
<第一章 行政法>
○行政法の類型
・「行政主体に関する法」
・「行政作用法」
・「行政救済法」

○「公定力」
行政行為に瑕疵がある場合でも権限ある行政機関または裁判所によって
正式に取消されるまでは有効なものとして通用し原則として国民を拘束する。

☆「行政指導」
行政庁が正式の行政行為に拠らずに相手方の任意の協力を得て
その意図を実現しようとする作用。勧告、助言、指導などと呼ばれる。
行政手続きの保障がなくまた行政処分の要件も具備せず、
しかも同意の上で従ったとされるため、
行政争訟により救済が受けられない恐れがある。
→行政指導による法治主義の空洞化の恐れが指摘?????%されている。

・行政強制には「強行執行」と「即時強制」がある。

○国家補償
・「国家賠償」
 違法な行政活動により生じた損害を填補する制度。
 故意又は過失に基づく公権力の行使による損害の賠償及び
 営造物の設置管理の瑕疵による損害の賠償。

・「国家損失補償」
 法律に基づく適法な行政作用により
 特定の者に特別な財産上の損失を生じしめた場合に、
 全体の負担においてその損失を填補する制度。

○行政争訟の種類
・「行政不服申立て」
 行政庁の違法又は不当な処分、不行為などを不服とする者が
 処分の取り消しその他の是正を求めて行政機関に対して争訟を提起する。
<行政府自身による裁断>
<救済手段であると同時に行政監督の一環としての性格から手続きは簡略>
・「行政訴訟」
 行政庁の作為又は不作為により国民の具体的な権利利益が侵害された場合に、
 国民の側から裁判所に提訴して行政庁の行為・不行為の違法性の審理を求め、
 違法状態を排除して権利利益の救済をはかることを目的とした手続き。
<裁判所による裁断>
<対審制の下で主張立証反駁の機会を保障するので手続きは慎重>

○抗告訴訟
・「処分の取消の訴え」
・「裁決の取消の訴え」
・「無効等確認の訴え」
・「不作為の違法確認の訴え」

☆「原告適格」
民事訴訟と違い取消訴訟は誰に争わせるのが
紛争解決上合理的かという問題が生じる。(原告適格)
原告適格があれば裁判は本案審理に入り行政処分の適法性が審査されるが
原告適格を欠く場合は本案審理をせず門前払いの却下判決がなされる。
→原告適格の有無が権利救済の使命を制することが多い。

<第二章 民法>
○民法体系(パングラテン方式)
・総則
・物権
・債権
・親族
・相続
・意思表示の統合のしかたによって法律行為は、契約、
 単独行為(遺言など)、合同行為(法人設立など)に分類される。

○規定の種類
・「強行規定」
 当事者の意思で左右することのできない規定。
・「任意規定」
 当事者の意思が曖昧だったり決めていなかったりしたことを
 補充するための規定。
・「取締規定」
 行政上の目的から一定の取引行為を禁止又は規制したり、
 それに違反した者に対して行政罰や営業の停止などの制裁を科す規定。

○意思表示
・「心理留保」(民法93条)
 相手方保護の必要性から。
・「虚偽表示」(民法94条)
 善意の第三者を保護するため。
・「錯誤」(民法95条)
 本人の意思と相手方の保護の調整は錯誤が法律行為の重要部分に関しており
 しかも表意者本人に思い違いをするについて重大な過失がない時に限る。
・「詐欺・強迫」(民法第96条)
 ただし詐欺と強迫では表意者本人の保護と善意の第三者の保護の調整に
 違いがある。→詐欺では善意の第三者を優先。

・「無効」
 法律上の効力が最初から無いことで相手方から請求されても
 履行する必要はないしすでに履行したものは返してもらえる。
 しかし公序良俗に反するような不法な原因のために
 給付したものは返してもらえない。(民法708条)
 →clean handsの原則

・「取消」
 法律行為の効力を当初に遡って失わせること。
 取り消すかどうかは取消権者の自由であり取り消されるまでは
 法律上の効力があるから法律行為をそのまま認めて取消権を放棄すれば
 法律行為は有効に確定する。

・代理の種類は「任意代理」、「法定代理」
 ただし自己契約と双方代理は禁止。

時効の種類
・「取得時効」
 正当な権利者でなくても相当の期間にわたって権利者であるような外観が
 続いた場合にはその者が正当な権利者として認められる。

・「消滅時効」
 権利者が権利を行使できるにも関わらず相当の期間にわたって
 権利を行使しないでいた場合にはその権利を主張できなくなる。

・時効は当事者がもち出さない限り裁判所はこれによって
 判断することができない。この持ち出すことを「援用」という。

○財産法の基本原理
・近代財産法は商品交換関係を保障する法=商品交換法
・「法人格の平等」を前提とした「所有権の絶対の原則」、
 「契約の自由の原則」、「過失責任の原則」。
・「物権」とは物を直接に支配できる権利。
・「債権」とは債務者という特定の人に対して
 一定の行為(給付)を請求できる権利。

・契約自由の原則は「契約締結の自由」、「相手方選択の自由」、
 「契約内容決定の自由」、「契約方式の自由」からなる。

・「符合契約」
 契約の一方当事者が契約内容を一方的に決定して契約の相手方は
 一方的に決められた契約内容を承認するか否かの自由しかない契約のこと。

☆不法行為の成立
・「権利侵害」
 最近では権利侵害に代わって違法性という要件が加えられた。
・「故意・過失」
 過失があったかどうかは個々人の注意力を基準とするものではなく
 不法行為における過失は一般人としてなすべき注意を怠った場合の
 抽象的過失を意味する。

○「中間責任」
 普通は故意・過失の立証責任は被害者側にあるが
 加害者が過失の無かったことを証明しなければならないもの。
・責任無能力者の監督者の責任(民法714条)
・使用者責任(民法715条)
・工作物責任(民法717条)
・自動車の運行共有者の責任(自動車損害賠償保障法3条)

○「無過失責任」
報償責任や危険責任の原理に基づき故意・過失の有無に拘わらず
他人に与えた損害に対して責任を負うこと。
(原子力損害の賠償に関する法律、独占禁止法など)

○家族法の種類
・「生活保持義務」
 夫婦相互間、未成年熟子とおやとの間における扶養。
・「生活扶助義務」
 その他の親族間の扶養、自分の経済を犠牲にしない範囲でおこなう援助。

○相続法の特徴
・相続開始の時期は現実に死亡した時から。相続は当然に開始して
 相続人が被相続人の死亡の事実を知っていると否とを問わない。

・自分のために相続開始があったことを知った時から
 三ヶ月の熟慮期間に相続するか否かの意思決定の自由が認められている。
 相続の効果を全面的に受諾する「単純承認」が日本の基本形態だが
 相続財産の限界においてのみ被相続人の債務などを弁済するという
 留保つきで相続の効果を受諾する「限定承認」、相続の効果を全面的に
 拒否する「相続放棄」の道がある。

・「遺留分減殺請求権」
 遺留分を有する相続人が受けた相続財産の総額が、
 遺贈・贈与がなされた結果遺留分に足りないときは遺留分権利者は
 遺留分を保全するに必要な限度で右遺贈・遺留分の減殺を
 請求することができること。

<第三章 商法>
・商法は司法の一般法である民法に対して特別法たる地位に立つ。

○商法の特色
・営利性
・迅速主義
・外観尊重主義
・公示主義
・定型化(画一主義)
・責任の加重・軽減
・企業の維持強化
・現状肯定主義
・厳格主義

○会社の概念
・社団性
・法人性
・営利法人性

○会社の種類
・合名会社
・合資会社
・株式会社
・有限会社

<第四章 経済法>
○「独占禁止法」
・企業集中規制
・カルテル規制
・不公正な取引方法の規制

<第六章 刑法>
○「犯罪とは構成要件に該当する違法で有責な行為である」
→「構成要件該当性」、「違法性」、「有責性」のうち
一つでも欠ければ犯罪にはあたらない。

<第八章 訴訟法>
○「訴訟法」
 一般的・抽象的な法から具体的な法を見出す裁判の過程において
 順守されるべき法を裁判において適用されるべき実体法に対して
 「手続法」と呼ぶ、今日ではこれを一般に「訴訟法」とも呼ぶ。

○訴訟法の諸原則(民事訴訟と刑事訴訟では違う)
・「公開主義」
・「当事者主義」
 訴追について当事者にイニシアティヴを取らせるばかりでなく
 証拠の提出その他の訴訟の進行についても当事者にまかせ、
 裁判所は専らそれらに対する公正な裁断者であるとすること。
・「形式的真実主義」と「実体的真実主義」
 民事訴訟では私的紛争の解決がその目的であるから
 それに必要な程度の真実の発見をすればよく当事者の主張する範囲での真実
 (=形式的・技術的真実)を発見すればよい→「形式的真実主義」。
 刑事訴訟では当事者の主張を超えてでも真実(=実体的真実)を
 明らかにする必要がある→「実体的真実主義」。

○「挙証責任」
 証拠調べをしてもなお証明すべき事実の存否判断がつかない場合に、
 それによって不利益を受ける一方の当事者の法的地位を「挙証責任」という。
 民事訴訟では一定の法律効果を主張する者が
 これを直接規定する法条の要件事実についての挙証責任を負う。
 刑事訴訟では原告の検察官がこれを負う。

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1999 11/4
法学一般
まろまろヒット率3

『歴史群像シリーズ60,61 朝鮮戦争』 学研 1999

いま書店とかで話題の武田麻弓著『ファイト!』を読んでみたいけど
読むこと自体にファイトが要りそうなので躊躇っている、
らぶナベ@しかしすごい人生もあるもんだ。

さて、『歴史群像 朝鮮戦争』上巻(歴史群像シリーズ60)、
下巻(歴史群像シリーズ61)学研(1999年初版)。
朝鮮戦争に関する戦略分析を中心としてその背景と各国の思惑、
日本に与えた影響などを掲載した『歴史群像』シリーズの上下巻。
このシリーズはいつもは買っても飛ばし読み&乱読するので
読書記録には残さないが今回のはそれこそ端から端まで読んでみた。
この戦争はそもそもの根本的な原因が日本にあるというだけでなく
朝鮮特需による産業構造の転化、中立政策の放棄、自衛隊の創設など
戦後の日本の方向性を形づくるのに決定的な影響を与えたという意味でも
日本と関係が深い。にも関わらずヴェトナム戦争などと比べると
日本ではあまり詳細には知られてないし馴染みが薄い。
終戦5年目でまだ日本が混乱期だったという事もあるが当事者の北朝鮮が
信頼できる情報を公開していないのでよくわからなかったというのもあった。
しかし90年代に入って北朝鮮を支援していたソ連が崩壊して
当時の資料が公開され始めているので今ではかなり正確な情報が
手に入ってこの戦争を多面的な視点で捉えられるようになっている。
ちょうどいま転換期にさしかかっている戦後日本の姿や方向性が
どのような状況や経緯で形成されたのかを知るという意味でも、
また、戦争中の当事者勢力の体制が変化していない上に
停戦ではなく休戦状態という国際法的にはまだ継続している戦争としても
ちゃんと知っておかなくてはいけない歴史的事象。
もちろんそれは第2次朝鮮戦争が勃発する可能性もあるという意味もあるが
そこまでいかなくても朝鮮半島に混乱が起こるのもそう遠くないはず。
この本はその時に一つの視点を与えてくれるだろう。

この戦争は純戦略的に見ても見るべきポイントが多いので
単なる読み物としても本書の内容の方はとても興味深く感じる。
奇襲に次ぐ奇襲で38度線での膠着状態に入るまでは
目まぐるしく主導権が行き来していて仁川上陸作戦、
中国義勇軍進行などのように戦局を一変させるターニングポイントになる
戦いが多かった。(ソウルは戦争期間中に二度も陥落している)
現代戦における兵器万能主義が挫折した最初の事例でもあるし、
政治的にもこの戦争が冷戦構造形成に果たした役割は決定的だ。
当時の指導者たちも李承晩、金日成、スターリン、トルーマン、
マッカーサー、毛沢東、吉田茂などアクの強い面々ばかり。
また、あまり知られていない前線で戦った
各陣営の司令官たちの苦闘ぶりも印象深い。
特に北朝鮮の指揮官たちは貧弱な装備、制空権が奪われているという
不利な状況下で実に善戦したが当時活躍した人間はことごとく
戦後に金日成に粛正されているのが印象に残っている。
途中、参戦してこの戦争の様相を一変させた中国も
当時活躍した指揮官たちを後の文化大革命で粛正している。
・・・共産国ってやっぱり恐い(^^;

そんなこんなでいろんな意味で読む価値のある一冊。

この本をamazonで見ちゃう

1999 10/30
歴史
まろまろヒット率4

M・E・ポーター、土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳 『競争の戦略』 ダイヤモンド社 1995(新訂)

NHK教育で放送されている『おじゃる丸』こそ合法ダウナーだと思う、
らぶナベ@見終わった後はあらゆるやる気を無くします(^^)

さて、今回はかなり手こずった『新訂 競争の戦略』ダイヤモンド社
M・E・ポーター著、土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳(1995年新訂)っす。
タイトル通り競争戦略についてとてもダイレクトに書かれた本。
なまじマーケティングとか経営戦略とかいうことを口に出すなら
一度は読んでおかないとお話にならないとまで言われる一冊。
(確かに就職活動でこれ系の話をして恥をかく人間は読んでなかった)
学術書としては新しいしこれクラスの著者にしてはけっこう若いけど
すでにこの分野では古典的な地位を占める学術書になっている。
でもやたらと分厚いので読み始めるのにかなりの勇気がいる本でもある(^^;
現に僕はこの本を読み終わるのに約一ヶ月かかり、
線引き用のマーカーも3本ダメにした。
その上この本の本体自体だけで5631円もするという
まさに時間、労力、費用の三つがかかる大著。
そういう意味で今まで読んだ学術書の中ではヴェーバー著
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波書店)や
サイモン著『経営行動』(ダイヤモンド社)に匹敵する。
これで有益じゃなかったらポーターに不幸のメール送りつけちゃいます(^^)

具体的な構成としては全16章を3部構成に分けてる。
パート1(第1章~第8章)は「業界における競争の性質を決める基本原理」
として競争戦略の基本的概念や分析手法について一般化している。
この本の根幹を成している重要な部分、理論的主柱にあたる。
パート2(第9章~第13章)は先端業界や衰退業界などのそれぞれ具体的な
業界環境の中で競争戦略をつくるのに必要な業界分析方法を述べている。
ここの部分は応用編というか自分が注目したり置かれている状況に応じて
見直せるようになっている。ガイドブック的な使い方もできる便利な所。
パート3(第14章~第16章)は拡大戦略や統合戦略のように競争戦略において
採用される主要な戦略についてタイプ別に検証している。
総じてパート1とパート2がとても重要だと感じた。
パート1は基本的な理論・概念構築を担う学術書としての性質があり、
パート2は各業界ごとに対する解説書としての性質がある。
一粒で二度は使える確かに手がかかるだけの一冊になっている。
僕的にはパート3はおまけ的なイメージを受けた。

以下は気になってチェックしたところと必要を感じて要約した部分・・・

○”本書の概要”
<戦略策定の古典的方法について>
目的と手段とを区別することで、戦略の本質はとらえられる。

☆「首尾一貫性の検証項目」
1:内的な一貫性があるかどうか
・目標1つ1つが互いに達成可能か。
・重要な運営ポリシーは目標に合致しているか。
・重要ポリシーは互いに強化しあう関係になっているか。
2:環境と適合しているか
・目標とポリシーは業界の好機にうまく乗れるか。
・目標とポリシーは業界の脅威(競争相手の反撃も含めた)を、
 利用可能な企業資源で対処できる程度に抑え込めるか。
・環境がアクションを吸収して相手にさとられぬように、
 目標とポリシーのタイミングがとれているか。
・目標とポリシーはより広範な社会的関心事にうまく対応できるか。
3:企業資源と適合しているか
・目標とポリシーは競争相手よりも会社で利用可能な資源に
 よくマッチしているか。
・会社の変化できる能力に応じたタイミングで、
 目標とポリシーがつくられているか。
4:コミュニケーションと戦略実行力はどうか
・目標は中枢実行担当者に十分理解されているか。
・目標とポリシーそれと実行担当者が責任を果たそうとする
 情熱との間に十分な一致があるか。
・戦略をうまく実行させるだけの十分な経営能力があるか。

パート1:競争戦略のための分析技法

○第1章”業界の構造分析法”
☆競争戦略をつくる際の決め手は会社をその環境との関係で見ることである。
・・・決め手はこれら外部要因に対するその能力の会社間の差違。

「競争を激化させる構造要因」
互いに代替可能な製品をつくっている会社の集団ーこれが業界である。
5つの競争要因ー新規参入の脅威、代替製品の脅威、顧客の交渉力、
供給業者の交渉力、競争業者の敵対関係の5つの競争要因が
一体となって業界の形相の激しさと収益率を決める。
戦略策定の立場ではそのうち一番強い要因が決め手になる。

「敵対関係の強さ」
競争業者間の敵対関係の強さは主に同業者が多いか
似たり寄ったりの規模の会社がひしめいている、業界の成長が遅い、
固定コストまたは在庫コストが高い、製品差別化がないか
買い手を変えるのにコストがかからない、キャパシティをふやすのは
小刻みにはできない、競争業者がそれぞれ異質な戦略をもつ、
戦略がよければ成果が大きい、撤退障壁大きいなどから決まる。

「参入障壁」
主に規模の経済性、製品差別化、巨額の投資、仕入先を変えるコスト、
流通チャンネルの確保、規模とは無関係なコスト面での不利、政府の政策、
参入に対して予想される報復、参入を抑える価格から決まる。

「撤退障壁」
資産の特殊化、撤退コストの高さ、政略的な関連性で問題を起こす、
感情的障壁、政府および社会からの制約から決まる。
☆最悪の例は参入障壁が小さく、撤退障壁が大きい場合だ。
状況が悪化しても業界のキャパシティは減らないから。

「代替製品」
現在の製品よりも価格対性能比がよくなる傾向を持つ製品、
高収入をあげている業界によって生産されている製品を示す。
これらに対しては抑え叩きのめす戦略をとるかそれとも避けられない
強敵として対処する戦略をとるか決めるべき。

「構造分析と競争要因」
☆効果的な競争戦略とは最良の防衛ポジションをつくること。
・・・競争要因の一番弱いところをみつけること、これが戦略である。
競争要因のバランスに務める、変化をうまく利用する、多角化戦略など。

「業界分析と業界の定義」
業界の定義と会社の欲する事業の定義とをはっきりと分けることが、
業界の境界線を引く際の不必要な混乱を避ける有効なやり方である。

○第2章”競争の基本戦略”
☆「三つの基本戦略」
コストのリーダーシップ、差別化、集中。

「コストのリーダーシップ」
低コストの地位は強力な値引き攻勢に対しても防衛してくれる。
買い手が威力を振り回すにしてもせいぜい自社の次に
低コストの業者に対しギリギリの価格水準に値切るくらいものだから。

「差別化」
コストのリーダーシップとは違う仕方で5つの競争要因に対処できる
安全な地位をつくるため業界の平均以上の収益を約束してくれる。
・・・差別化に成功して顧客の忠実性を得られた企業は
代替製品に対しても同業者より有利な立場にいられる。

「集中」
市場全体では低コストも差別化も達成できないが狭く絞られた
市場ターゲットだけだと低コストも差別化も達成できる。

☆「窮地に立った企業とは」
3つの方向の中で少なくとも一つにおいてさえ戦略がつくれない企業のこと。
市場シェアを確保する資本投資もなければ、低コストの競争に参加する
決意もなく、業界全体を相手にした差別化戦略もなく、
限られた狭い範囲での差別化や低コスト地位を生み出す
集中戦略ももたないからだ。戦略の面ではお粗末な立場にいることになる。
結果として企業カルチャーがあいまいになり
組織のあり方や動機づけシステムが動揺する。
→日産がダメになったのはまさにこの戦略理論で説明できる!
コストのリーダーシップ(トヨタ)、差別化(ホンダ)、
集中(スズキ)もできずどちらつかずで地盤沈下したからだ。

○第3章”競争業者分析のフレームワーク”
☆競争戦略とは競争相手よりもすぐれている点を生かして
その価値を最大にするように事業を位置づけることである。
したがって、戦略策定の主眼は、緊密な競争業者分析にある。
すぐれた競争業者分析は以下の質問に答えられるものでなければならない。
1:この業界ではどの企業を競争相手にすべきか、
その企業のどんな動きを競争対象にすべきか。
2:その競争業者の戦略的な動きは自社にどんな影響を及ぼすか、
その動きをどれくらい重視する必要があるのか。
3:その競争業者と競争を避けたほうが望ましい分野はどこか。
☆競争業者の「現在の戦略」「将来の目標」「仮説」「能力」に注目する。
競争業者が抱いている将来の目標と自社の地位と業界の性格に関しての仮説は
あまり重視されていないが競争業者の将来の行動は
この二つの要素によって決まってくることが多い。

「競争業者分析の構成要素」
<潜在的競争業者の分析>
・現在はこの業界にはいないが非常に低いコストで業界へ参入できる業者。
・この業界に参入することによってあきらかな相乗効果が得られる業者。
・戦略の一貫性から見てこの業界への参入が当然と思われる業者。
・流通チャネルの統合を進めている顧客企業あるいは供給業者。
・現在の競争業者と業界外の関連業者との間で今後起こると思われるM&A。

「将来の目標」
競争業者が現在の地位や利益水準に満足しているかどうかを
推測するために目標を知る。現在の戦略を変えてくる可能性が
どれくらいあるか、企業環境の変化や業者の動きに
どの程度の反応を示すかを予想することができる。
・・・自社の戦略変更に対する競争業者の反応も予測しやすくなる。
また、競争業者が何か新しい動きをとり始めた場合には
それにどの程度力を入れる考えがあるのかを知ることができる。
注意:目標分析は企業内のさまざまな組織階層ごとにすべき。
<事業単位レベルでの目標>
1:業績面積での公表された目標、および公表されていない目標は何か。
2:リスクに対する態度はどうか。
3:企業上もしくは非経済上の価値観や信条といったものをもっているか。
4:組織内での責任と権限はどんなふうに配分されているか。
5:管理システムと報酬システムはどうなっているか。
6:どんな経理システムや会計方式をとっているか。
7:経営者たちはどんな人たちで構成されているか。
8:将来の方向について役員間での意見の一致はどの程度あるか。
9:取締役会はどんなメンバーで構成されているか。
10:業務上の契約によって経営活動が制約されているか。
11:政府の規制あるいは社会的な制約条件にしばられているか。
<多角化企業の本社部門と個別部門の目標>
1:その企業全体の現在の業績はどうか。
2:企業全体としての目標は何か。
3:全体戦略の中でのその事業部門の戦略上の重要度はどの程度か。
4:なぜその事業部門が設立されたのか。
5:その事業部門と他の部門との経済上での関係はどうなっているか。
6:トップはどんな価値観あるいは信念をもっているか。
7:自社内の数多くの事業に適用した基本戦略というものを持っているか。
8:他の部門の業績とニーズから考えてその事業部門に
 どれだけの売上目標投資収益率目標を与えているか、
 また資金面ではどんな制約条件を課しているか。
9:どんな多角化計画をもっているか。
10:企業全体の組織構造からその事業部門の企業内での
 地位と目標についてどんな手がかりが得られるか。
11:企業全体の管理および報酬精度の中での
  その事業部門の責任者の待遇はどうか。
12:昇進が早いのはどんな業績をあげた経営者か。
13:その事業部門の責任者は部内から昇進した人か、
  それとも部外あるいは社外の人か。
14:企業全体として社会からの攻撃を受けるような要素をもっていて、
  それが事業部門に影響を及ぼすようなことはないか。
15:企業あるいはトップ・マネイジメントの中の特定の人が、
その事業部門に特別な愛着をもっていないか。
<ポートフォリオ分析と競争業者の目標>
その事業の目標を知る手がかりだけではなく、投資収益率や
マーケット・シェア、あるいはキャッシュ・フローなどの点から
その事業にどの程度力を注ぐのか、またその戦略上での地位を変える
可能性がどれくらいあるのかを知る手がかりになる。
・・・ポートフォリオ分析を使うと競争業者の事業を「鐘のなる木」、
「刈り取り」、「これから成長させようと意図している事業」に区分できる。
<競争業者の目標と戦略上での位置づけ>
戦略策定の一つのやり方は競争業者に脅威を及ぼすことなしに
目標を達成できるような位置を市場の中に見つけだすことである。

「仮説」
あらゆるタイプの仮説を調べることによって経営者が自社環境を
認識する場合に知らず知らずのうちに入り込んでくる偏見、
もしくは盲点を見つけだすことができる。
1:コスト、品質、技術水準、およびその他の主要な点において、
 その地位がどのへんにあると信じているか。
2:特定の製品あるいは特定の経営政策に対して歴史的あるいは感情的に
 強い一体感を抱いているか、これからのうちどれと結びつきが強いか。
3:文化や地域あるいは国のちがいによって事象認識法と
 それの重要度の決め方にちがいが見られるか。
4:長年にわたってしみ込んだ組織上での価値観もしくは規範があり、
 それらが事象の見方に影響を及ぼしているか。
5:その製品の将来の需要についてどんな考えを抱いているか、
 また業界の動向が意味するところをどのように認識しているか。
6:同業他社の目標と能力をどんなふうに考えているか。
7:新しい市場条件と合わないような業界の定型化した知恵、
 あるいは因習的な荒っぽい法則、業界固有のやり方を信頼しているか。
<事業の歴史>
1:最近数年間の実績と比べて現在の業績とマーケット・シェアはどうか。
2:当該市場における経歴はどうか。
3:本来どの分野でスターだったのか、どの分野で成功したのか。
4:他社のある特定の戦略や業界内での事象に対して、
 これまでにどんな対抗行動を示してきたか。
<経営者の経歴とそのアドバイザー>
1:経営者の専門性は何か。
2:これまで採用して成功した戦略と失敗した戦略のタイプは何か。
3:今の事業以外にどんな事業を経験してきたか、それらの事業の経営方針と
 戦略にはどんな特異点があるのか。
4:どんな大事件と遭遇してきたか。
5:どんな社外活動や社外との関わりをしているか。
6:その企業が採用しているコンサルタント、広告代理店、銀行などは何か。

「能力」
核になる能力、成長能力、迅速な対応能力、変化への適応能力、
持続力から構成されている。

「四つの構成要素の統合」
<攻撃的な動き>
現在の地位での満足度、予想される動き、予測される動きの強さと重大さ。
<防御能力>
弱点、挑発、対抗行動の効果。
<競争分野の選定>
☆競争業者の動機を交錯させたり目標間の整合性を
なくすような状況をもたらす。
・・・ある特定の動きに対する対抗策そのものは
有効であっても結局は企業全体のより大きな利益を損なうという
状況に追い込む。これはすでに市場で成功し確固とした地位を
維持している企業に対して有効。

「競争業者分析と業界動向の予測」
<将来の業界動向予測>
1:それぞれの業者の予想される動きが相互作用を引き起こすなら、
 それは業界の将来にどんな意味をもつか。
2:それら業者の戦略は一点に収れんしていくのか、
 そうなれば共倒れにならないか。
3:業界の予想成長率に見合うだけの成長率を維持しているか。
4:予想される動きが合体して業界構造に影響を及ぼすようになるか。
<情報伝達と統合の重要性>
すばらしいデータが収拾されてもこれが戦略策定に生かされないなら
データ収集時間は無駄になる。
すぐ失われるような断片的なデータでも統合できれば有効な資料になる。

○第4章”マーケットシグナル”
競争相手の動機、意図、目標を示す手がかりにもなるが
事実を隠す見せかけの役割も果たす。

「動きの予告」
有利な地位占領、相手の行動を妨げる脅威、テスト、自社の意思伝達、
懐柔、回避、評判の確保、社内の意思統一などの役割を担う。

「間接的な攻撃」
間接的に反撃できるような市場で小さなシェアを持っていれば
自社のメイン市場への競争業者進出を抑える有効性がある。

○第5章”競争行動”
「脅威的な行動」
反撃の遅れと手強さの間にトレードオフ関係がある場合、
この二つをうまくバランスさせる必要がある。

「防御的な行動」
☆相手に対してその動きが賢明でなかったと思わせるのがすぐれた防衛。
競争相手に譲歩を強いることができてこその防衛効果。
<競争基盤の否定>
相手が目標達成の基盤にしているものを否定してかつその状態が
継続すると思いこませることで行動をやめさせることができる。

「約束」
攻撃及び防御を計画し実施する場合の最も重要なコンセプトは約束。
自社の経営資源と意図を曖昧ではなくはっきりと伝える方法。
約束の価値はその抑止力にある。

「情報と秘密についての覚え書き」
どんな情報でもそれを公開する場合にはそれが競争戦略の
重要な一部であるという認識に立って実施されなくてはいけない。

○第7章”業界内部の構造分析”
「競争戦略の次元」
専門度、ブランド志向度、プッシュ型かプル型か、流通業者の選択、品質、
技術のリーダーシップ、垂直統合、コスト面での地位、サービス提供度、
価格政策、力、親会社との関係、自社と事業を行っている国の政府との関係
・・・などで区分する。

「戦略別企業グループ」
☆<戦略グループと移動障壁>
参入障壁はその戦略グループへの業界外からの企業参入を防ぐだけでなく、
その業界内の企業が一つの戦略グループから別のグループへ
移動するのを防ぐ役割も果たす。(移動障壁)
この考えは業界内での収益性という点で企業間に常に一貫した
格差のある理由も説明できる。業界内の戦略グループは
それぞれ固有の移動障壁をもっており、
それが企業間の収益性に格差をもたらしている。
さらにこの考え方を使うと戦略を変えても全部が全部、
成功するわけではないのに企業ごとに採用している戦略が
異なっている理由も説明できる。

「業界内構造分析が戦略策定に果たす役割」
☆ある業界における競争戦略の策定とは参入すべき戦略グループの選択。
→戦略策定の一番の基本は自社の長所と短所、特に他社にない競争力を
その環境内の利益見込みとリスクに合わせることである。
→長所と短所を検討するフレームワークには構造上から見るやり方と
実行上から見るやり方の二つのタイプがある。

○第8章”業界の進展・変化”
「業界を予測するためのフレームワーク」
業界の変化を説明するよりも変化の原動力になるものを知ることの方が
実り多い→このメカニズムが進展過程。

「進展過程」
成長の長期変化、買い手セグメントの変化、買い手の学習、不確実性の減少、
専有知識の拡散、エクスペリエンスの累積、規模の拡大・縮小、
インプットコストと通貨コストの変化、製品イノベーション、
マーケティングイノベーション、生産工程のイノベーション、
関連業界の構造変化、政府の政策変化、参入と撤退などから決まる。

☆「企業が業界構造を変えることができる」
企業のとる戦略行動によって業界の構造を変えることができる。
→業界の進展を迷惑な既成事実として受け入れるのではなく、
利益機会と考えなければならない。

パート2:業界環境のタイプ別競争戦略

○第9章”多数乱戦業界の競争戦略”
「多数乱戦の原因は何か」
参入障壁の低い、規模の経済性やエクスペリエンス曲線が効かない、
高い輸送コスト、在庫コストが高く売上変動も大きい、創造性が売りもの、
買い手や供給業者が強すぎて大手でも有利にならない、多様な市場ニーズ
規模の不経済が致命的、人手によるサービスが決め手、撤退障壁、新規業界、
いちじるしい製品差別化、各地域の条令、政府による企業集中の禁止。

「多数乱戦業界を制圧するには」
規模の経済性やエクスペリエンス曲線が作用する状況を作り出す、
多様な市場ニーズに標準品で対応する、M&Aで利益の出る規模まで拡大する、
多数乱戦の原因を無力化するか経営から切り離す、
業界の動向をすばやくかぎとる。

「多数乱戦に対処する方法」
多数乱戦は多くの場合いかんともしがたい経済原則が働くから起こる。
こういう状況では戦略によって自社の立場をどう変えていくかが
何にもまして重要になってくる。

「多数乱戦業界の競争戦略策定手順」
1:業界の構造はどうか。競争業者はそれぞれどういう位置にいるか。
2:多数乱戦の原因は何か。
3:多数乱戦状態を変えられるか。その方法は何か。
4:変えて利益が得られるか。その場合の自社がめざす位置はどこか。
5:多数乱戦が避けられない場合はどう対処するのが最善か。

○第10章”先端業界の競争戦略”
形が整ったばかりの業界もしくは再編された業界のことで古い業界でも
環境変化によって競争の仕方が変わればこの業界と同じ問題が起きる。
☆戦略策定の観点ではこの業界の特徴は競争のルールが無いことである。
自社にとって有利なルールを創りあげるのが競争の争点になる。

「構造的環境の特徴は何か」
技術の将来性が確定的ではない、戦略が定まっていない、時間的視野が狭い、
コストは高いが急速に下がる、スピンオフ企業が次々に生まれる、
初めての買い手ばかり、助成金が出る。

「どの市場が早く開拓できるか」
新しい業界の製品をどの市場が早く受けいれ、
どこが遅くまで扉を閉ざしているかを見定めることが重要。

「戦略の選択」
先端業界の戦略策定ではこの時期につきものの不確定さやリスクに対する
対処が必要だがどんな戦略でも採用できてそれが当たると大きい。

○第11章”成熟期へ移行する業界の競争戦略”
「移行期に業界はどう変わるか」
シェア競争が激化、顧客が買い慣れる、コストとサービスに重点が移動、
過剰にならないように増強するのが難しくなる、国際競争が激しくなる、
新製品や新用途が出にくくなる、流通業者のマージンが減るが力は強まる、
利益は低下するが一時的な場合と永続する場合とがある。

「移行期は戦略にどう影響するか」
あらゆるコストで主導権をとるか、差別化か、一点集中主義か、
成熟期に戦略の迷いは許されない。

「成熟期は組織にどんな影響を与えるか」
業績目標の引き下げ、社内規律の厳しさを増す、昇進が少なくなる、
分権から再び中央集権化へ。

「移行期業界の社長のあり方」
厳しい原価管理、職能部門間の調整、マーケティングなどに関する手腕は
急成長業界で企業の形を整えてゆくこととはまた別の手腕。
組織を支えどのように生き残らせようかと案じることは
未開地に挑む気分が消え失せることもあり、特に創業経営者の中には
移行期であると認めなかったり経営の現役から退くなどの兆候がみられる。

○第12章”成熟期へ移行する業界の競争戦略”
「衰退期の競争を左右する構造要因」
・需要面:不確実性、需要衰退の速さとパターン、残った需要領域の性質、
衰退の原因(代替品か人口の変化かニーズの変化によるものか)。
・撤退障壁面:転用のきかない耐久資産、撤退の固定コスト、情報障壁、
他事業との関連性、金融市場への影響、垂直統合、経営者の感情障壁、
政府と社会による障壁、資産処分。

「衰退期の戦略」
<リーダーシップ戦略>
シェアを確保してリーダシップを握る。
<拠点確保戦略>
特定のセグメントで強力な地位を築くか防衛する。
<刈り取り戦略>
もてる力を増加させずに活用してうまく投資を回収する。
<即時撤退戦略>
できる限り早く投資を回収する。

「衰退期戦略の選択」
他社と比較した自社の業界地位に合わせてどのように業界に
踏みとどまるのが望ましいのか判断する過程。
1:有力な競争業者はそれぞれどんな撤退障壁に直面しているか。
 どの企業がすばやく撤退してどの企業が踏みとどまるか。
2:踏みとどまる企業の強い点は何か。
 撤退障壁と考え合わせてどの程度まで踏みとどまるのか。
3:自社の撤退障壁は何か。
4:残る需要領域と対比して自社の強みは何か。

「衰退期の落とし穴」
衰退に気づかない危険、消耗線の危険、
大した力もないのに刈り取り戦略を採る危険。

「衰退期にそなえる」
撤退障壁を高くしてしまうような投資や活動はできる限りひかえる、
衰退期に有利な状況になると考えられる市場セグメントに重点を置く、
他社が代替製品に切り替えるコストがかかるように手を打つ。

○第13章”グローバル業界の競争戦略”
「グローバル競争が有利になる原因」
比較優位性、生産・物流・マーケティング・購買における規模の経済性、
グローバルなエクスペリエンス、製品差別化、独自の製品技術、生産の移動。
・・・これらの原因がグローバル化によって経済性が生じる側面が
事業全体のコストにとってどれほど重要か、
事業の競争力にとってどれほど重要なのかで決まる。

「グローバル競争への障害」
<経済的障害>
輸送と在庫のコスト、国によって異なる製品ニーズ、
侵入を許さない流通チャネル、セールスパーソン、現地での修理部門、
リードタイム、地域市場内での複雑なセグメンテーション、
需要が広まっていない。
<経営管理上の障害>
国によって違うマーケティング、
変化の激しい技術、国情に合わせたサービス。
・制度上の障害:政府による障害、認識不足や経営資源不足から来る障害。

「グローバル業界への進展」
<きっかけとなる環境変化>
規模の経済性が大きくなる、輸送と在庫コストが下がる、政府規制の緩和、
流通チャネルの合理化、生産要素コストの変化、経済・社会環境差の縮小。
<戦略イノベーションがグローバル化を刺激する>
製品の再定義、セグメントターゲットの明確化、国別製品のコスト低下、
企画部品の多用、完成品に代わり主要部品の製品、発想の転換。

「グローバル業界での競争」
政府の産業政策と企業の競争行動、主な進出市場政府との関係、
企業全体としての競争、競争業者分析の難しさ。

「戦略案にはどんなものあるか」
業界の全品種で競争する、特定のセグメントに集中する、
特定の国に集中する、安全地帯を狙う。

パート3:戦略デシジョンのタイプ

○第14″垂直統合の戦略分析”
垂直統合とは技術的には別々の生産、流通、販売、その他の経済行動を
一つの企業内にまとめることである。
多くの垂直統合デシジョンはそれにからむ経理計算を中心として
作るか、買うかのデシジョンなのである。
しかし数字だけに頼らず間接的な影響も考えてその大きさと
戦略的意味を判断すべきである、これがデシジョンの核心である。

「戦略的利得とコスト」
川上企業とは売る側の企業、川下企業は買う側の企業。

「戦略的な利得」
統合の経済性、技術の習得、需要と供給の確保、取引圧力の回避、
差別化の強化、参入又は移動障壁を高める、収益の高い事業への参入、
系列化が進む上での自衛力向上。

「統合の戦略的コスト」
移動障壁を乗り越える費用、打つべき施策の増加、取引相手の硬直化、
撤退障壁を高める、必要資金の大きさ、R&Dの他社依存ができなくなる、
バランス保持の必要性、刺激が鈍る、異なった経営方式の必要性。

「準統合」
長期契約と完全所有との中間のどこかにある関係をつくり出すことである。
少額の株式投資、融資の保証、購入の前払、独占取引契約、
専用配送施設、共同R&Dなど。
このような利益共同体のメリットは善意、情報の共同化、
経営者のつき合い、相互間の債権責務など。
決め手になるのは準統合によって形成される利益共同体が完全統合よりも
コスト・リスクが小さく、それでいて利得は入手できるかどうかである。
→エニックス株を購入した僕は準統合なのか?

「垂直統合デシジョンに見られる錯覚」
一定の条件下では垂直統合が戦略上の地位向上につながるものの、
戦略的に弱い経営を立て直すことには不十分である。
→安易な統合への警鐘。

○第15″キャパシティ拡大戦略”
「キャパシティ拡大デシジョンの構成要素」
競争業者の行動の予測は一回限りで終わるものではない。
なぜなら一社の動きが他の競争業者に影響を与えるからである。
特にその業者が業界のリーダーである場合は他社への影響は大きい。

「キャパシティ過剰になる原因」
<技術面での原因>
規模の経済性・習熟曲線が大きい、キャパシティ拡大には時間がかかる、
繊細最小効率 (MES)が大きくなる、生産技術の変化、
一度に大きくキャパシティを増やす。
<業界構造上の原因>
強力な撤退障壁、供給業者の力、信頼性の確率、
競争業者の統合化、キャパシティのシェアが受注量に影響、
生産能力の新しさとタイプが需要を左右する。
<競争上での原因>
同業者数が多い、信頼できるリーダー企業の欠如、新規参入、
他社に先駆けた設備拡大が利益を増やす。
<情報上での原因>
将来への過大な期待感、競争業者の力の把握を誤る、金融機関からの圧力
マーケット・シグナル機能の崩壊、業界構造の変化。
<経営上での原因>
生産指向型の経営者、設備を拡大した場合のリスクよりも
しなかった場合のリスクが大きい。
(後者の場合は地位と業績にも大きな損益となる)
<政府政策の原因>
設備投資を誘う不当な税制、自国産業育成の方針、雇用の維持と促進圧力。

「需要先どり戦略」
市場の大部分をあらかじめ押さえ競争業者の設備拡大意欲をくじき
市場への参入を遅らせることを意図したもの。
<以下の条件すべてを満たさなければ危険が大きい>
期待される市場規模に見合うだけの設備拡大、おこなう企業の信頼性、
規模の経済性もしくはエクスペリエンス曲線効果が
大きくあらわれる市場での設備拡大、
競争業者が行動する前に先どり戦略意向があることを示す能力、
競争業者による進んで身を引く意志(経済性以外で目標を持っている、
その事業が企業戦略遂行上で核になっている、利益を犠牲にしても
市場地位の維持をはかる意志のある企業を相手にするのは困難)。

○第16章”新規事業への参入戦略”
市場要因の働きが不完全な業界を見つけることが参入の前提。
市場用要因が完全に作用しているなら平均以上の投資収益は無理。

「自社内での開発をもとにした参入」
構造上の参入障壁と参入した業界の既存業者の反撃の二つの障壁がある。

「反撃が生じる可能性」
低成長業界、汎用品もしくは汎用化した製品業界、固定比率の高い業界、
少数寡占業界、老舗の既存業者がある業界、
既存業者がその事業を戦略的に重視している業界。

「参入業界の確定」
<不均衡状態にある業界>
新しい業界、参入障壁が高くなりつつある業界、情報の少ない業界。
<反撃が緩慢か非効果的な業界>
参入に対する反撃コストが得られる利得よりも大きい業界、
家父長的な支配力をもつリーダー企業の結束固いグループがある業界、
既存業者の現在の事業を守る観点から反撃コストが高過ぎる業界、
因習的な観念が支配的で参入業者がこれを利用できる業界。
<参入コストが他社よりも少なくてすむ業界>
<自社の力によって業界構造を変えることができる業界>
<参入によって自社の既存事業にプラス効果が生じる業界>

「参入の基本コンセプト」
製品コストの引き下げ、低価格販売によるシェア獲得、
市場における新しいセグメントの発見、他の流通網を利用する、
広い意味でより優れた製品販売、新しいマーケティング手法の導入。

「吸収合併による参入」
事業買い取り価格は会社市場で設定されている点が重要。
<利益をもたらすだろう吸収合併>
底値の額、会社市場の機能が不完全、他の買い手の非論理的な行動、
吸収した事業をうまく運営するための独自の能力。

「段階的参入」
ある戦略グループへ参入して次に別のグループに参入するという
段階的な参入戦略をとることも可能。(参入リスクの軽減)

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1999 10/27
経営学、戦略論、経済学
まろまろヒット率5

西野武彦 『入門 株式・証券のしくみ―株価と景気の関わりからデリバティブまで』 PHP研究所 1999

ふと、TBSで最も過酷な部署って実は「花まるマーケット」で
花まるカフェのゲストを選んでいるチームではないかと思った、
らぶナベ@よくあれだけ半端に微妙なポジションのタレントを
毎日コンスタントに呼んでこれるものだ、ある意味関心してしまう。

さて、本題・・・
『[入門] 株式・証券のしくみ 新版』西野武彦著(PHP研究所)1999年初版。
いざ株をやってみたり勉強したりするとニュースとかで聞いたことはあるけど
何のことなのか実はよくわからないものが多かったりする。
(中途半端にわからない世界の代表格か?)
今まで金融理論の概要に関しては『金融入門』岩田規久男著(岩波新書)を、
投資理念に関しては『敗者のゲーム』エリス著(日本経済新聞社)などを
読んできたが実際の株式投資に関するシステムや用語が説明されている
ガイドブック的なものも読んでみる必要があるように感じていた。
この分野は知っているか知らないかがそのまま利益と損益に
直結する世界なのでとりあえずは基本的な知識のムラを
なくさなくてはいけないなと前から感じていた。
そうこうしているうちにリクエストされた内容に関して
僕が知っている範囲で講義するということが後期から始まり(ナベ塾)
自然と今までの自分の知識の蓄積を鋭く振り返ることが多くなった。
振り返ってみると株式投資についての自分の知識には
やはりぽつぽつ穴があることを痛感したので
株式投資の講義を今度することになったのをきっかけとして
予習代わりに読んでみようと思って手に取った一冊。
(こういうガイドブック系読んでると服部とかにバカにされそうだが(^^;)

そういうわけでいざひととおり通し読みしてみると、実に良い本だった!
(ドンピシャで当たりの一冊(^^))
説明文が簡潔だし構成もよく練られていて読みやすい。
範囲も入門(株とは何か)から応用まで(デリバティヴ)まで
ちゃんと不足なく押さえられていて安心する。
さらに最後に掲載されている用語集も充実している。
基本的に手元において辞書代わりに使う本だけど
通して読んでみても十分に読み応えがある一冊。
これは僕の知識に欠けている部分があったからということが大きいが
読み解いてみるとパズルが埋まっていくような快感もあった。
PHPはこういうかゆい所に手が届くようなビジネス本をつくるのが
うまいなぁっとあらためて感じた。

基本的にガイドブックなので抜粋および要約するような読書はしなかったが
それでもあえて眼についてチェックした箇所や自分の持っている株や
投資スタンスに関して振り返るきっかけにした箇所は以下・・・・

○「PER」と「PBR」は共に高ければ割高、低ければ割安。
・雑誌『マネージャパン』1999年12月号ではPER20倍以下、
PBR1.5倍以下の株価が10倍になる可能性があるとしている。

○「ROE」は市場金利と比べてその株に投資するのか
金利商品に投資するのかを機関投資家が判断する材料。

○企業業績を見る時の最大のポイントは「1株当たり利益」。
10円以下→低利益、30~50円→高収益、100円以上→超高収益。
現在、エニックス株は214.73円

○機関投資家が投資する目的は「純投資」と「政策投資」。
・僕がエニックス株を買ったのは政策投資ということになる。

○ヘッジファンドを含めた外国人投資家は値上がり益のほかに
為替差益を狙っているため円高になると判断すれば
日本市場に買いを入れてくる。
・外国人投資家の動きも為替判断になる

○会計ビッグバンの移行期は2000年3月から2002年3月の間。

○先物取引で売買されるのは個別銘柄でなく
日経平均株価(日経225)や東証株価指数(TOPIX)そのもの。
・わかりやすいのでけっこう惹かれる金融商品だ

○あくまで一般論だが東証一日の出来高が平均3億株以下では不人気、
4億~5億株は普通、10億株では人気が高く、それ以上になると過熱気味。

○『雇用、利子および貨幣の一般理論』の中でケインズは
株式投資は美人投票で選ばれる人間を見つけるようなものと述べている。
自己判断から真に最も美しい容貌を選ぶことでもなければ平均的な意見が
最も美しいと真実に考える容貌を選択することでもないからだ。

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1999 10/25
経済学、株
まろまろヒット率3

政策科学研究科リサーチプロジェクト発表2

T教授から「何々学ではなくまず問題意識を投げかけてみることから
始めろ」と言われたので『方向性を与える力』という題目で
僕の問題意識を発表する。「社会を動かす力とは何なのか?」、
「人に考えさせる力を持つ人間はいる」→
「その鬱屈した力に方向性を与える力を持つ人間が今は必要」という流れで
今までの素地やきっかけを述べた。
すると佐藤教授からは「社会科学はある意味で決めつけが無いとできない」、
「ハッタリでも誤魔化しでもそれができれば学者でありリーダー」と
力強くこの方針を奨めてもらった。
社会を動かすことに存在理由を見出した僕にとって大学院での
存在価値も見出せそうだ。

1999 10/20
出来事メモ