らぶナベ@あずきかけヨーグルトに家族中から迫害を受けているっす(^^;
さて、『基礎法学』榎原猛編(法律文化社)1993年第9刷をば。
最近法律、特に民法を知っておく必要性を感じたので読み始めた本。
いきなり民法学に当たっても良いのだが今までまともに読んだ
法学の本と言えば学部一回生の夏休みの時に読んだ
『法学入門』末川博編(有斐閣双書)くらいしかないので
もう一度法学を体系から学び直そうと思って帝塚山大学法政策学部に
通っている妹の本棚からこっそりパクって来て読んだ法学の総論書。
内容は僕が久々に法学に振れたということもあるが、
実に回りくどい言い方をしていたり、いちいち言わなくても
良いようなことをわざわざ書いていたりするのが気になった。
そのわざわざ書いていることに意味がある場合ならまだ良いが
結局は解釈者によって変わる箇所も多くて
意味の無いくどさを感じてしまうような条文も多かった。
総じて法学書が難解と言われるのは使われている漢字の難しさと
この回りくどい言い方、表現にあるためか?
特に印象深いのは法の解釈について・・・
「三段論法的に適用される法規を大前提として具体的な事実を小前提とし
後者が前者に包摂されることによって結果として判決が導き出される。」
・・・としているところだ。
つまり本質的に法学においては法が先にあって事実が後にあることになる。
では、ルール自体を飛び越したような事実が先の時はどうなるのだろう?
ここが法学の限界だなと感じた。
道具ではあっても真理を追求する学問的な深みが無いと感じてしまう。
この点が様々な法曹にまつわる問題の根底にあるような気がした。
以下、重要と感じた章のまとめとチェックした箇所の列挙・・・・
第一部基礎理論
<第一章 法の概念>
○「法とは社会が構成員に強制する行為の規範」
・物事の法則は価値とは無関係に因果律の支配する必然の法則、
規範は人が一定の価値的目的に到達するための「当為の法則」
・道徳や宗教は意思規範、法は「行為規範」
・道徳や宗教は自律的規範、法は「他律的規範」
・慣習は期待規範、法は「強制規範」
・「法とは正義に適合して秩序をたてるために、
社会が構成員に強制する行為の規範である」
・イェリネク「法は最小限の道徳」
<第二章 法の種類>
○法源
・「制定法」(特別法は一般法に優位する、後法は前法に優位する)
・「慣習法」(刑法では罪刑法定主義から慣習?????%法の法源性は否定)
・「判例法」(英米法では重要)
・「条理」(自己の主観に従ってするので客観的ではない)
<第三章 法の歴史>
○近代法の基本原理
「個人の自由平等独立」、「所有権の絶対」、「契約の自由」、「過失責任」
・イェーリング「損害を義務づけるのは損害でなく過失である」
・資本主義の高度化によって不自由不平等従属に転化した人間を
再び具体的な自由平等独立の人間に回復させることが現代法の課題。
→20世紀の社会法の制定
<第四章 法の解釈>
・成文法は社会に生じた紛争を解決するための道具(法の適応)、
三段論法的に適用される法規を大前提として具体的な事実を小前提とし、
後者が前者に包摂されることによって結果として判決が導き出される。
→ルールが先で事実が後、事実が先になった時はどうなるのか?
これが法の限界では?
○法の解釈の方法
・「文理解釈」
法文の一字一句を読み解く。
・「論理解釈」
拡張解釈、縮小解釈、類推解釈、反対解釈など。
しかし刑罰法規については拡張解釈、類推解釈は禁止。
・「文法解釈」
立法者の意図を読みとく。
・「歴史的解釈」
立法者が与えた意味を歴史的事実として認識。
・「目的論的解釈」
目的もしくは価値を探求しその実現を指導理念としておこなう。
・「社会学的解釈」
社会的事実に検討を加えてこれに第一次的重要性をおいて
社会の良識に合致するよう解釈する。
・法規には複数の合理的解釈の成立する一定の枠がある。
その枠のうちで解釈を迫れている具体的事実との関連で
もっとも妥当と思われる解釈がなされる。
→妥当とは何かに答えてない!
・法規範の認識は価値体系を知ることである。これは法律の条文が
どのような規範命題を提示しているのか認識することである。
<第五章 権利と義務>
・ドイツ語”Recht”フランス語”droit”は法と権利の両方の意味がある。
また、「主観的Recht」といった時は権利を表し、
「客観的Recht」といった時は法を意味する。
・「権利」とは人がその利益を得、又は守るためにその意思
(又は法によってその意思とされる他の意思)によって、
或ることを主張することのできる法上の力である。
○権利の種類
・「支配権」(物又は人に対して直接且つ排他的に働く)
・「請求権」(他人の行為又は給付を要求するもの)
・「形成権」(権利者の一方的意思表示によって法的効果を発生される権利)
・「抗弁権」(他人の請求を拒絶しうる債務者の権利)
○義務の種類
・「作為義務」
・「不作為義務」
・「受忍義務」
・義務の主体となることできる資格を「法的人格」、
このような資格を認められる者のことを「法上の人」と言う。
・「自然人」
法的人格(権利能力)が認められた個人。
・「法人」
団体や財団で法的人格を認められたもの。
(法によって人格を認められるのですべてが法人となるわけではない)
→財団法人は常に公益法人としてのみ認められる。
・民法では「物」とは「有体物」を指す。
無体物は生命、自由、行為、権利などだが人の身体は
身体そのものとしてよりも一体をなしている身体的構成とみて、
「無体物」とされる。
○有体物の区別方法
・動産、不動産
・特定物、不特定物
・消費物、不消費物
・主物、従物
・融通物、不融通物(私権の目的とするものができるかどうか)
・有主物、無主物
・元物・果実
第三部各法
<第一章 行政法>
○行政法の類型
・「行政主体に関する法」
・「行政作用法」
・「行政救済法」
○「公定力」
行政行為に瑕疵がある場合でも権限ある行政機関または裁判所によって
正式に取消されるまでは有効なものとして通用し原則として国民を拘束する。
☆「行政指導」
行政庁が正式の行政行為に拠らずに相手方の任意の協力を得て
その意図を実現しようとする作用。勧告、助言、指導などと呼ばれる。
行政手続きの保障がなくまた行政処分の要件も具備せず、
しかも同意の上で従ったとされるため、
行政争訟により救済が受けられない恐れがある。
→行政指導による法治主義の空洞化の恐れが指摘?????%されている。
・行政強制には「強行執行」と「即時強制」がある。
○国家補償
・「国家賠償」
違法な行政活動により生じた損害を填補する制度。
故意又は過失に基づく公権力の行使による損害の賠償及び
営造物の設置管理の瑕疵による損害の賠償。
・「国家損失補償」
法律に基づく適法な行政作用により
特定の者に特別な財産上の損失を生じしめた場合に、
全体の負担においてその損失を填補する制度。
○行政争訟の種類
・「行政不服申立て」
行政庁の違法又は不当な処分、不行為などを不服とする者が
処分の取り消しその他の是正を求めて行政機関に対して争訟を提起する。
<行政府自身による裁断>
<救済手段であると同時に行政監督の一環としての性格から手続きは簡略>
・「行政訴訟」
行政庁の作為又は不作為により国民の具体的な権利利益が侵害された場合に、
国民の側から裁判所に提訴して行政庁の行為・不行為の違法性の審理を求め、
違法状態を排除して権利利益の救済をはかることを目的とした手続き。
<裁判所による裁断>
<対審制の下で主張立証反駁の機会を保障するので手続きは慎重>
○抗告訴訟
・「処分の取消の訴え」
・「裁決の取消の訴え」
・「無効等確認の訴え」
・「不作為の違法確認の訴え」
☆「原告適格」
民事訴訟と違い取消訴訟は誰に争わせるのが
紛争解決上合理的かという問題が生じる。(原告適格)
原告適格があれば裁判は本案審理に入り行政処分の適法性が審査されるが
原告適格を欠く場合は本案審理をせず門前払いの却下判決がなされる。
→原告適格の有無が権利救済の使命を制することが多い。
<第二章 民法>
○民法体系(パングラテン方式)
・総則
・物権
・債権
・親族
・相続
・意思表示の統合のしかたによって法律行為は、契約、
単独行為(遺言など)、合同行為(法人設立など)に分類される。
○規定の種類
・「強行規定」
当事者の意思で左右することのできない規定。
・「任意規定」
当事者の意思が曖昧だったり決めていなかったりしたことを
補充するための規定。
・「取締規定」
行政上の目的から一定の取引行為を禁止又は規制したり、
それに違反した者に対して行政罰や営業の停止などの制裁を科す規定。
○意思表示
・「心理留保」(民法93条)
相手方保護の必要性から。
・「虚偽表示」(民法94条)
善意の第三者を保護するため。
・「錯誤」(民法95条)
本人の意思と相手方の保護の調整は錯誤が法律行為の重要部分に関しており
しかも表意者本人に思い違いをするについて重大な過失がない時に限る。
・「詐欺・強迫」(民法第96条)
ただし詐欺と強迫では表意者本人の保護と善意の第三者の保護の調整に
違いがある。→詐欺では善意の第三者を優先。
・「無効」
法律上の効力が最初から無いことで相手方から請求されても
履行する必要はないしすでに履行したものは返してもらえる。
しかし公序良俗に反するような不法な原因のために
給付したものは返してもらえない。(民法708条)
→clean handsの原則
・「取消」
法律行為の効力を当初に遡って失わせること。
取り消すかどうかは取消権者の自由であり取り消されるまでは
法律上の効力があるから法律行為をそのまま認めて取消権を放棄すれば
法律行為は有効に確定する。
・代理の種類は「任意代理」、「法定代理」
ただし自己契約と双方代理は禁止。
時効の種類
・「取得時効」
正当な権利者でなくても相当の期間にわたって権利者であるような外観が
続いた場合にはその者が正当な権利者として認められる。
・「消滅時効」
権利者が権利を行使できるにも関わらず相当の期間にわたって
権利を行使しないでいた場合にはその権利を主張できなくなる。
・時効は当事者がもち出さない限り裁判所はこれによって
判断することができない。この持ち出すことを「援用」という。
○財産法の基本原理
・近代財産法は商品交換関係を保障する法=商品交換法
・「法人格の平等」を前提とした「所有権の絶対の原則」、
「契約の自由の原則」、「過失責任の原則」。
・「物権」とは物を直接に支配できる権利。
・「債権」とは債務者という特定の人に対して
一定の行為(給付)を請求できる権利。
・契約自由の原則は「契約締結の自由」、「相手方選択の自由」、
「契約内容決定の自由」、「契約方式の自由」からなる。
・「符合契約」
契約の一方当事者が契約内容を一方的に決定して契約の相手方は
一方的に決められた契約内容を承認するか否かの自由しかない契約のこと。
☆不法行為の成立
・「権利侵害」
最近では権利侵害に代わって違法性という要件が加えられた。
・「故意・過失」
過失があったかどうかは個々人の注意力を基準とするものではなく
不法行為における過失は一般人としてなすべき注意を怠った場合の
抽象的過失を意味する。
○「中間責任」
普通は故意・過失の立証責任は被害者側にあるが
加害者が過失の無かったことを証明しなければならないもの。
・責任無能力者の監督者の責任(民法714条)
・使用者責任(民法715条)
・工作物責任(民法717条)
・自動車の運行共有者の責任(自動車損害賠償保障法3条)
○「無過失責任」
報償責任や危険責任の原理に基づき故意・過失の有無に拘わらず
他人に与えた損害に対して責任を負うこと。
(原子力損害の賠償に関する法律、独占禁止法など)
○家族法の種類
・「生活保持義務」
夫婦相互間、未成年熟子とおやとの間における扶養。
・「生活扶助義務」
その他の親族間の扶養、自分の経済を犠牲にしない範囲でおこなう援助。
○相続法の特徴
・相続開始の時期は現実に死亡した時から。相続は当然に開始して
相続人が被相続人の死亡の事実を知っていると否とを問わない。
・自分のために相続開始があったことを知った時から
三ヶ月の熟慮期間に相続するか否かの意思決定の自由が認められている。
相続の効果を全面的に受諾する「単純承認」が日本の基本形態だが
相続財産の限界においてのみ被相続人の債務などを弁済するという
留保つきで相続の効果を受諾する「限定承認」、相続の効果を全面的に
拒否する「相続放棄」の道がある。
・「遺留分減殺請求権」
遺留分を有する相続人が受けた相続財産の総額が、
遺贈・贈与がなされた結果遺留分に足りないときは遺留分権利者は
遺留分を保全するに必要な限度で右遺贈・遺留分の減殺を
請求することができること。
<第三章 商法>
・商法は司法の一般法である民法に対して特別法たる地位に立つ。
○商法の特色
・営利性
・迅速主義
・外観尊重主義
・公示主義
・定型化(画一主義)
・責任の加重・軽減
・企業の維持強化
・現状肯定主義
・厳格主義
○会社の概念
・社団性
・法人性
・営利法人性
○会社の種類
・合名会社
・合資会社
・株式会社
・有限会社
<第四章 経済法>
○「独占禁止法」
・企業集中規制
・カルテル規制
・不公正な取引方法の規制
<第六章 刑法>
○「犯罪とは構成要件に該当する違法で有責な行為である」
→「構成要件該当性」、「違法性」、「有責性」のうち
一つでも欠ければ犯罪にはあたらない。
<第八章 訴訟法>
○「訴訟法」
一般的・抽象的な法から具体的な法を見出す裁判の過程において
順守されるべき法を裁判において適用されるべき実体法に対して
「手続法」と呼ぶ、今日ではこれを一般に「訴訟法」とも呼ぶ。
○訴訟法の諸原則(民事訴訟と刑事訴訟では違う)
・「公開主義」
・「当事者主義」
訴追について当事者にイニシアティヴを取らせるばかりでなく
証拠の提出その他の訴訟の進行についても当事者にまかせ、
裁判所は専らそれらに対する公正な裁断者であるとすること。
・「形式的真実主義」と「実体的真実主義」
民事訴訟では私的紛争の解決がその目的であるから
それに必要な程度の真実の発見をすればよく当事者の主張する範囲での真実
(=形式的・技術的真実)を発見すればよい→「形式的真実主義」。
刑事訴訟では当事者の主張を超えてでも真実(=実体的真実)を
明らかにする必要がある→「実体的真実主義」。
○「挙証責任」
証拠調べをしてもなお証明すべき事実の存否判断がつかない場合に、
それによって不利益を受ける一方の当事者の法的地位を「挙証責任」という。
民事訴訟では一定の法律効果を主張する者が
これを直接規定する法条の要件事実についての挙証責任を負う。
刑事訴訟では原告の検察官がこれを負う。
1999 11/4
法学一般
まろまろヒット率3