『歴史群像シリーズ60,61 朝鮮戦争』 学研 1999

いま書店とかで話題の武田麻弓著『ファイト!』を読んでみたいけど
読むこと自体にファイトが要りそうなので躊躇っている、
らぶナベ@しかしすごい人生もあるもんだ。

さて、『歴史群像 朝鮮戦争』上巻(歴史群像シリーズ60)、
下巻(歴史群像シリーズ61)学研(1999年初版)。
朝鮮戦争に関する戦略分析を中心としてその背景と各国の思惑、
日本に与えた影響などを掲載した『歴史群像』シリーズの上下巻。
このシリーズはいつもは買っても飛ばし読み&乱読するので
読書記録には残さないが今回のはそれこそ端から端まで読んでみた。
この戦争はそもそもの根本的な原因が日本にあるというだけでなく
朝鮮特需による産業構造の転化、中立政策の放棄、自衛隊の創設など
戦後の日本の方向性を形づくるのに決定的な影響を与えたという意味でも
日本と関係が深い。にも関わらずヴェトナム戦争などと比べると
日本ではあまり詳細には知られてないし馴染みが薄い。
終戦5年目でまだ日本が混乱期だったという事もあるが当事者の北朝鮮が
信頼できる情報を公開していないのでよくわからなかったというのもあった。
しかし90年代に入って北朝鮮を支援していたソ連が崩壊して
当時の資料が公開され始めているので今ではかなり正確な情報が
手に入ってこの戦争を多面的な視点で捉えられるようになっている。
ちょうどいま転換期にさしかかっている戦後日本の姿や方向性が
どのような状況や経緯で形成されたのかを知るという意味でも、
また、戦争中の当事者勢力の体制が変化していない上に
停戦ではなく休戦状態という国際法的にはまだ継続している戦争としても
ちゃんと知っておかなくてはいけない歴史的事象。
もちろんそれは第2次朝鮮戦争が勃発する可能性もあるという意味もあるが
そこまでいかなくても朝鮮半島に混乱が起こるのもそう遠くないはず。
この本はその時に一つの視点を与えてくれるだろう。

この戦争は純戦略的に見ても見るべきポイントが多いので
単なる読み物としても本書の内容の方はとても興味深く感じる。
奇襲に次ぐ奇襲で38度線での膠着状態に入るまでは
目まぐるしく主導権が行き来していて仁川上陸作戦、
中国義勇軍進行などのように戦局を一変させるターニングポイントになる
戦いが多かった。(ソウルは戦争期間中に二度も陥落している)
現代戦における兵器万能主義が挫折した最初の事例でもあるし、
政治的にもこの戦争が冷戦構造形成に果たした役割は決定的だ。
当時の指導者たちも李承晩、金日成、スターリン、トルーマン、
マッカーサー、毛沢東、吉田茂などアクの強い面々ばかり。
また、あまり知られていない前線で戦った
各陣営の司令官たちの苦闘ぶりも印象深い。
特に北朝鮮の指揮官たちは貧弱な装備、制空権が奪われているという
不利な状況下で実に善戦したが当時活躍した人間はことごとく
戦後に金日成に粛正されているのが印象に残っている。
途中、参戦してこの戦争の様相を一変させた中国も
当時活躍した指揮官たちを後の文化大革命で粛正している。
・・・共産国ってやっぱり恐い(^^;

そんなこんなでいろんな意味で読む価値のある一冊。

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1999 10/30
歴史
まろまろヒット率4

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