この本で六法+法学総論は全てにそれぞれ3冊づつ読み終えた(総数21冊)、
らぶナベ@ほぼゼロの状態で11月から始めた法学の勉強も3カ月半で
「どんな状況でもどんな本でもとりあえず3冊読めばその分野は理解できる」
という僕の勝手な読書理論(書籍三段撃ち)を完成させることができたので
法学も僕にとっての「武器」と言える域まで達成したというところか。
伝説によると同じようなコンセプトで鉄砲の「三段撃ち」を使って
長篠の戦いに臨んだとされる信長に妙なしんぱしぃを感じてしまう(^_^)
さて、武器としての法学の正式なスタートを切ることになった
その記念すべき1冊の感想をば・・・
『入門刑事手続法[改訂版]』三井誠・酒巻匡著(有斐閣)1998年改訂初版。
前に読んだ『伊藤真の刑事訴訟法入門』伊藤真著(日本評論社)1998年初版で
著者が薦めていたので刑事訴訟法の3冊目としては最適かなと思って購入。
内容の方は刑事訴訟法の手続法としての面に特化していて
全体の流れを追うことを重視して書かれているので読みやすい。
理論だけでなく統計なども使って現実の刑事裁判の実体を紹介してくれたり
最終章では実際に使われる書類を通して刑事手続の流れを
紹介してくれているというなかなかに良い本。
以下、チェック&まとめ・・・
○実際の刑事訴訟法の出だしは189条から始まる
○刑事訴訟法が実現しようとする実体法の類型・・・
「刑法」、「特別刑法」(覚せい剤取締法など)、「行政刑法」(道交法など)
<起訴前手続>
[捜査とは]
○捜査を規律する法律・・・
「刑事訴訟法」、「警察法」(組織法)、「警察官職務執行法」(権限法)
○「捜査機関」=司法警察職員、検察官、検察事務官の3種の総称
○刑事訴訟法上の司法警察職員とは原則として巡査部長以上を指す
(司法巡査は巡査が当たる)
○警察において発生を認知した「刑法犯」は窃盗犯(刑235条)と
業務上過失致死傷事犯(刑211条)が全体の約9割を占めている
○「検挙」=警察で事件を検察官に送致・送付するか
もしくは微罪処分に付することを指す
○刑事訴訟法が定める捜査のきっかけは6つ・・・
・「現行犯」(212条以下)
・「変死体の検視」(229条1項)
・「告訴」(230条以下)と「告発」(239条以下)
→意思を表示する主体によって違う
・「親告罪」(告訴がなければ無効)
→告訴権者が犯人が誰か知った日から6カ月を経過すると無効
・「請求」→「外国国章損壊罪」(刑92)など
・「自首」(245条)→実体法の刑法では42条1項
○検察官が指定した一定の軽微な事件は不送致→「微罪処分」(246条但書)
○検察官は管轄区域の司法警察職員に対して
捜査に対して必要な「一般的指示」(193条1項)、
「一般的指揮」(193条2項)することが可能
また、検察官が第一次的な捜査機関として捜査をおこなう時には
特定の司法警察職員を「具体的指揮」(193条3項)することが可能
[捜査の方法・実行]
○197条1項の「本文は任意捜査」、「但書は強制捜査」に関する規定
○事実に誤りがない時でも被疑者は「供述調書」の署名押印を拒否できる
(198条5項)
○事情聴取はマスコミ用語で正式には「参考人取調べ」(223条1項)
[被疑者の逮捕]
○被疑者の既済人員のうち実際に逮捕されているのは約2割
→8割は不逮捕・在宅事件として身柄拘束なしで捜査が続けられる
○逮捕状を請求できるのは検察官だけでなく警部以上の司法警察職員
=「特定司法警察職員」(199条2項)でも可能
○「逮捕状請求」(規139条)=「請求書」&「疎明資料」の提出
○「逮捕状の緊急執行」(201条)と「緊急逮捕」(210条)との違いは
逮捕する時に令状が発布されているかどうかの差
○「現行犯逮捕」(212条1項)も「準現行犯逮捕」(212条2項)も
その判断は微妙で憲33条(令状主義)との対立が争点になる場合も多い
○逮捕後の被疑者の弁解は「弁解録取書」に既済されるが
取調べとは別とされ「供述拒否権の告知」(198条2項)は
実務上は不要だと考えられている
→「身柄送致」(203条)された被疑者の取調べには告知が必要
☆逮捕に関する特別の不服申立ての規定が無いなど
逮捕された被疑者の地位が問題となっている
[勾留]
○被疑者勾留の要件=60条1項で限定列挙
○検察官による「勾留請求書」(147条)→裁判官による「勾留質問」(61条)
→「勾留状」(207条) の発布へ
○「代用監獄」が原則化している勾留場所について議論がある
○勾留期間は勾留の請求をした日から起算する(208条1項)
○裁判官は適当と判断した時は職権によって
勾留の執行を停止することができる(95条)
→ただし検察官の請求によって「勾留の執行停止の取消」(96条1項)も可能
○起訴前勾留=「被疑者勾留」、起訴後勾留=「被告人勾留」
[捜索・差押え・検証]
○証拠に必要な血液や胃液などの採取には本人の同意が得られなければ
「鑑定処分許可状」をもって強制的に採取可能
○令状の執行には時刻の制限がある(222条4項)ので
特別の旨の記載がなければ日没後から日出前は捜査できない
○公務員や国会議員等の職務上の秘密、医師や弁護士等の業務上の秘密には
一定の範囲と条件のもとで押収を拒絶する権利が認められている
(103条~105条)
○逮捕にともなう逮捕現場の捜索・差押え・検証は令状無しで可能(220条)
→現行犯逮捕と共に「令状主義」(憲35条)の例外
ただし緊急逮捕に対応するような緊急捜索や緊急差押えの制度は無い
[その他の強制処分]
○捜査機関が特別の学識経験を持つ第三者に
報告を求める「鑑定嘱託」(223条以下)には・・・
「鑑定留置」(224条)と「鑑定の必要な処分の許可」(225条)がある
→対象者が拒んでも強制的に鑑定としての身体検査ができるかは争いがある
[被疑者の防御]
○被疑者の弁護人選定権は被疑者だけでなく法定代理人、保佐人、
配偶者、直系の親族および兄弟姉妹にもある(30条2項)
→ただし実務上は逮捕についての通知義務はないとされる
○選任できる弁護人の数は各被疑者に対して3人以内に限られる(35条)
→ただし実務上は請求があれば許可される
☆接見交通権を制限する接見制限(39条3項)に不服があれば
裁判所に対して「接見指定処分に対する準抗告」ができる(430条)
○裁判官は接見・授受の禁止に加えて書類などの検閲や差押えができる(81条)
☆被疑者と弁護人でも押収、捜索、検証、証人の尋問や鑑定の処分などの
強制処分を裁判官に対して請求することができる=「証拠保全手続」(179条)
○捜索や検証に対しては法文上、準抗告の規定はない
<公訴提起>
[公訴提起の手続]
○検察官による事件処理・・・
・「終局処分」→起訴処分、不起訴処分
・「中間処分」→中止処分、移送処分
○検察官による不起訴処分の種類・・・
・起訴すべき条件が欠けているとき
・法律上、犯罪が成立しないとき
・証拠上、犯罪事実を認定できないとき
・刑の免除にあたるとき
・起訴を猶予すべきとき(起訴便宜主義)
☆不起訴処分は裁判所の判決とは違って「確定力はない」ので
不起訴処分を取り消して捜査を再開することが可能=「再起」
○強制力を持たないため検察審査会による不起訴不当の議決後に
検察官が実際に起訴の手続をしたのは6%しかない
○検察官に対する「付審判手続」(262条)は起訴便宜主義の例外
○管轄=「事物管轄」、「土地管轄」
○移送・送致・送付の違い・・・
・「移送」→事件などを同種類の機関相互間で送る(19条)
・「送致」→事件などを異種類の機関相互間で送る(206条)
・「送付」→書類や証拠物のみを送る(242条)
[公訴提起の方法]
○起訴状の訴因が不明確な時は裁判官は検察官に対して「釈明」を求め、
これに応じない時に初めて手続を打ち切るとされる(208条1項)
☆起訴後は原則として公訴提起された裁判所が
被告人の身柄処置についての責任を持つ(規164条)
○「起訴状一本主義」(憲37条1項、256条6項)により
起訴状に書く「余事記載」には被告人の経歴や性格、
前科などは構成要件要素と不可分な場合にしか記載不可
○刑事訴訟法での時効(=「公訴時効」)期間は法定刑を基準にする(252条)
→犯罪行為(生じた結果も含む)が終わった時から起算する(253条)
○裁判官がその事件の審理に適切でない時・・・
「除斥」(20条)、「忌避」(21条~25条)、「回避」(規13条)
→除斥か忌避理由のある裁判官が判決に関与すれば判決破棄の事由に(377条)
<公判手続>
[公判のための準備活動]
○第一回公判期日前の準備=「事前準備」、第二回以後=「期日間準備」
☆「証拠開示」に関しては裁判官の「訴訟指揮権」(294条)を根拠に
検察官の所有する証拠を弁護人に閲覧させるように命じることが可能
(最決昭和44・4・25)
○被告人が召喚に応じないときは裁判所は強制的に「勾引」ができる(58条)
○請求があれば原則的に保釈できるのが建前=「権利保釈」(89条)だが
実際上は裁判所の裁量に任されている=「裁量保釈」(90条)
[公判期日における手続]
○重大事件の場合は弁護人の出頭が開廷の要件=「必要的弁護事件」(289条)
○「黙秘権」(憲38条1項)の範囲が被告人を特定する
事項(氏名や住所)まで及ぶのかどうかには争いがある
○検察官の冒頭陳述は義務(296条)だが被告人または弁護人の冒頭陳述は任意
→事件が複雑で争点が多岐にわたるような場合には行うことが多い
○証拠をめぐる攻防の流れは「甲号証」(構成要件など)から
「乙号証」(前科や身上など)へ争点が移行していく
○「証人尋問」の流れは検察側が提出した参考人の供述調書を
被告人が証拠とすることに同意しなかった(=「不同意書面」)場合に
目撃者などの第三者を証人として取調べ請求するという経緯をたどる(326条)
☆不当なものでない限り「誘導尋問」は許される(規199の3条3項)
○憲38条1項の理念を刑事訴訟法上で実現させたのが「被告人質問」(311条)
→ただし被告人が質問に答えて任意に話せば有利不利を問わず証拠になる
☆「証拠調べに対する異議申立て」は法令に反している時だけでなく
その行為が相当でないという理由でも可能(規205条但書)
○裁判長の処分に対しても意義申立てが可能(309条1項)
☆証拠調べが終わると検察官による「論告求刑」(293条1項)→
弁護人による「最終弁論」→被告人による「最終陳述」(規211条)を行って
判決を待つ=最後の発言権は被告人にある
○「判決の宣告」(342条)は判決書の草稿にもとずいておこなわれる
→判決書の原本で判決が言い渡される民事訴訟法とは違う(民訴252条)
☆「訴因の変更」(312条)の関して判例は・・・
「具体的事実同一性説」と「択一関係説」を採用
→新旧の両訴因が事実として併存できない関係にある場合と
併存できても両訴因が罪数論上一罪(科刑上一罪含む)を構成する場合に
広義の公訴事実の同一性が認められて訴因が変更できる
○「訴因変更の必要性」では具体的事実に注目する「事実記載説」が通説
→被告人が防御する上で実質的な不利益をもたらすおそれのあるような
事実のずれであるかどうかが判断基準になる
○訴因変更は裁判所による「訴因変更命令」(312条2項)でも可能
→裁判所が訴因変更を促すなどの措置を行わないで判決を下すと
審理を尽くさなかった違法があるとされる
☆公判期日の訴訟手続は裁判所書記官が作成する
「公判調書」に記録される(48条)
→上訴審の判断資料は原審の公判調書に限定されていて
他の資料では覆すことができないため重要(52条)
○裁判の「公開主義」(憲82条1項、憲37条1項)の範囲は
傍聴人がメモをとることまで認められる(判例:レペタ訴訟)
☆「釈明」=訴訟関係人が裁判官の発問に応じて
法律上・事実上の点を明確にすること
○「アレインメント(arraignment)制度」・・・
罪状認否手続(arraignment)で被告人が有罪の答弁をおこなえば
証拠調べ手続を飛ばして公判をする英米法上の制度
→当事者間の司法取引(plea bargainning)が可能になるが日本では
採用されていないため有罪を認めていても事実が公判審理に付される
<証拠法>
○情況証拠はマスコミ用語で正式には「間接証拠」
☆「無罪の推定」原則は構成要件事実だけでなく
違法性阻却事由や責任阻却事由についても適用される
→真偽不明の場合は無罪の結論
☆心証のレベル・・・
「疎明」=一応確からしい程度
↓
「証拠の優越」=肯定証拠が否定証拠を上回る程度
↓
「厳格な証明」=合理的な疑いを生じる余地がない程度
→証拠裁判主義(317条)で求められるレベル
[伝聞法則]
○「伝聞法則」(320条)=「供述書」(供述者自ら作成したもの)や
「供述録取書」(第三者の供述を録取したもの)は原則的に証拠にはならない
☆伝聞法則を考える際には常にその証拠によって立証しようとする事実
=「要証事実」は何かを中心に考える
☆伝聞法則の例外(321条以下)・・・
・被告人以外が関係した供述調書や供述録取書でも署名押印があるものは
「再現不能」や「供述の自己矛盾」などを理由にして証拠能力が認められる
・検察官の目前での供述を録取した書面=「検察官面前調書」(検面調書)
=「二号書面」でも321条1項の2の条件下で証拠能力が認められる
→これに関する証拠能力の有無が公判廷での争点となることも多い
(「調書裁判」化しているとの批判あり)
○「信用性の情況的保障」(特信性)=外部的状況から見て供述が行われた
信用性が担保されているだけでその供述の内容自体の信用性とは別
○証拠とすることができる書面や供述であっても任意性の
調査をした後でなければ証拠とすることができない(325条)
○伝聞法則で排除される書面や供述でも両当事者が
同意すれば証拠とすることが可能=「同意書面」(326条)
→同意は伝聞法則の例外のトップバッター、同意の実質は反対尋問権の放棄
○「承認」=自分に不利な事実を認める供述
「自白」=犯罪事実の主要部分を認める供述
→違いは補強証拠を必要とするかどうかの差(319条2項)
[自白]
☆「自白法則」は伝聞法則と違って任意性の無い自白調書に同意したとしても
証拠として使えない上に自由な証明の証拠とすることもできない
(憲38条2項、319条)
→その根拠は「虚偽排除説」VS「人権擁護説」VS「違法排除説」が対立
○自白法則が争われた事例・・・
両手錠をかけられたままの取調べは任意の供述ではない(最判昭和38・9・13)
や起訴猶予を期待した自白には任意性に疑いがある(最判昭和41・7・1)、
切り違え尋問による自白は任意性が無い(最大判昭和45・11・25)
・・・などの判例が有名
☆自白以外に証拠がなくその自白以外の証拠=「補強証拠」も無ければ
有罪にできない「補強法則」(憲38条3項、319条2項)は
共犯者の自白を唯一の証拠として被告人を有罪にする場合には
当てはまらないとする判例がある(最大判昭和33・5・28)
[違法に収拾された証拠の排除]
○適正手続の保障(憲31条以下)のためには「違法収拾証拠を排除」するのが
適切と考えられるがこれを直接定めた規定は無い
→これが争われた判例(最判昭和53・9・7など)では
捜査の違法性を認めながらも証拠能力は肯定するというものがある
<公判の裁判>
[裁判とは]
☆不服申立ての種類・・・
・判決←「控訴」(372条)、「上告」(405条)
・決定←「抗告」(420条)
・命令←「準抗告」(429条)
○判決書は判決そのものではなく判決の内容を証明するための文書なので
裁判官が宣告の際に判決を言い間違えた場合はそれがそのまま判決になる
→実際にもたまにあるらしい
○民事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は義務(民訴255条)だが
刑事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は任意(46条)
[実体裁判]
○有罪率がきわめて高いことが日本の刑事裁判の大きな特徴
○判決宣告後「14日以内」に控訴申立てがなければ判決は確定される(373条)
(宣告当日は算入されないので実質15日)
→確定すれば「一事不再理効」(憲39条)のため公訴提起はできない
[形式裁判]
○民事訴訟法では管轄違いによる移送を認めている(民訴16条)が
刑事訴訟法では原則として認められていない(329条)
○形式裁判である管轄違いの裁判と公訴棄却の裁判は
確定しても実体判決のような一事不再理効は生まれない
→免訴も形式裁判だがこれには一事不再理の効力があると考えられている
<上訴>
[控訴]
○控訴期間ぎりぎりまで勾留中の被告人が控訴申立てを迷ったとしても
第一審判決宣告日から控訴申立ての前日までの未決勾留日数は
全部刑に法定通算される→「不利益変更禁止の原則」(402条)の応用
○控訴の範囲が争われた判例=「新島ミサイル事件」(最大判46・3・24)
☆控訴審の構造・・・
民事訴訟法では第一審口頭弁論終結直前の状態まで戻す「続審制度」を取るが
刑事訴訟法では第一審判決当時の証拠のみに基づいて
原判決の当否を判断する「事後審制度」を取っている
→しかし例外である「382条の2」と「393条2項」が実際の控訴審事件の
70%以上を占めていて原則と例外が逆転している
○控訴審の争点の設定は「控訴趣意書」を提出する当事者の義務(376条)
☆控訴理由・・・
訴訟手続の違反を理由にする「絶対的控訴理由」(378条)が原則だが
例外的に事実誤認や法令の解釈適用の誤りに対しても
その誤りが判決に影響した場合に限っては控訴理由とすることができる
=「相対的控訴理由」(380条以下)がある
→実際の控訴審での審判対象はこの「量刑不当」と「事実誤認」がほとんど
○控訴審で被告人の実質的利益を害することはないと考えられる場合には
検察官による「訴因の追加・変更」請求が認められるとされている
(最判昭和30・12・26)
○原判決の破棄は2種類・・・
・控訴理由に該当する事由があればそのまま原判決の破棄理由となる
(397条1項)=「1項破棄」
・原判決後の情状を調査して原判決を破棄しなければ
明らかに正義に反すると認められるとき(397条2項)=「2項破棄」
○実務上では破棄した場合には控訴審自らが新たに判決=「自決」するため
破棄差戻しや移送がなされることはほとんど無い(400条但書)
→たとえ差戻されても控訴審の判断は下級審の判断を拘束する
「破棄判決の拘束力」がある
[上告]
☆「上告」=控訴審判決に憲法違反か法令違反があることを理由に
最高裁判所に対してその取消し・変更を申し立てること(405条)で原則的に
法令の解釈統一が目的なので事実誤認や量刑不当は上告理由に当たらない
→しかしそうした理由でも判決確定前に最高裁判所の裁量的判断で
受理することができる「事件受理の申立て制度」がある(406条)
(実際にも量刑不当を主張するものがほとんど)
[抗告]
○抗告の種類・・・
・「通常抗告」(419条)
→実際には保釈の許可・却下に対するものが多い
・「即時抗告」(422条)
→実際には執行猶予取消決定や再審請求棄却決定に対するものが多い
・「特別抗告」(433条)
→刑事訴訟法では不服申立てができないとされる決定や命令に対して
憲法違反・判例違反を理由に最高裁判所に不服申立てをする制度
○「再度の考案」(423条)=原裁判所が申立書を抗告裁判所に送付する前に
自ら抗告の理由があると認めるときは決定を更正しなくてはいけない
[準抗告]
☆「準抗告」=
・裁判官による命令に対する不服申立て(上訴に近い)
・捜査機関の処分に対する不服申立て(行政訴訟に近い)
・・・のまったく性質の違う二つがある(430条)
<確定後救済手続>
[再審]
☆「再審事由」の中では特に「6号事由」(435条)が重要
→明白性の要件を緩和した判例(最決昭和50・5・20)以降は
「免田事件」、「財田川事件」、「松山事件」、「島田事件」など
再審の著名なものはこの6号を事由に申し立てられたものがほとんど
[非常上告]
○「非常上告」=被告人救済の側面は無くほとんど利用されていない(454条)
<特別手続>
[略式手続]
○「略式手続」(461条)=書面審理だけで
50万円以下の罰金or科料を科する裁判をする
○略式手続に不満があって正式裁判を申し立てることは上訴ではないので
不利益変更禁止の原則は適用されない→科刑が重たくなることもある
[少年事件の特別手続]
☆少年の刑事事件はまず家庭裁判所に送致され調査の結果、
刑事処分が相当であると判断した場合に検察官に事件を送致する
=「逆送決定」=「20条決定」(少20条)
○少年事件では家庭裁判所が刑事処分にするかどうかの決定権を持つ
=検察官起訴専権主義、起訴便宜主義の例外→「起訴強制主義」(少45条)
[付随手続]
○未決勾留日数を本刑に算入する事については刑法21が「裁定算入」を
認めているが刑事訴訟法は必ず本刑に算入する「法定通算」(495条)を規定
○「仮納付」(494条)の裁判は直ちに執行できる上に
追徴の裁判が確定すると本刑の執行を終えたことになるので
道路交通法違反による略式命令の90%以上を占めている
○罰金or科料の刑を言い渡す際には被告人が法人or少年の場合を除いて
必ず労役場留置の言い渡しをしなくてはいけない
=「換刑処分」(刑18条、505条)
☆「追徴」=裁判時に被告人から没収物を没収できない場合に
没収に代えてその物に相当する価額を徴収する裁判(刑19条の2)
○「被害者還付制度」=判決の際に裁判所が押収している
財産犯罪によって得られた物件(贓物)は被害者に還付する(347条)
○有罪判決の場合でも被告人が貧困のため負担能力がない場合は裁判所の
裁量によって訴訟費用の負担を免除することができる(181条1項但書)
→たとえ負担させられる判決が下っても被告人は
訴訟費用負担の執行免除申立てが可能(500条)
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2000 2/16
法学、刑事訴訟法
まろまろヒット率3