中沢新一 『大阪アースダイバー』 講談社 2012

渡邊義弘@略字だと渡辺です。

さて、『大阪アースダイバー』中沢新一著(講談社)2012。

アースダイバー(earth diver)のタイトル通り、その土地を深く掘り下げ、文化や風土の源泉に触れようとするシリーズの大阪編。
約6年前に大阪取材チームのコーディネイターをつとめて以来、何かと関わらせていただいた企画が単行本になったものなので、手にした時は感慨深いものがあった。
(当時の出来事メモ→講談社大阪取材チーム・コーディネイターをつとめる)

内容も、第四部「大阪の地主神」がまるまる僕の出身である渡邊村(渡辺村)と渡邊一族(渡辺一族)の歴史が取り上げられている。
中世は渡邊綱に代表される海運を握った武士団だった渡邊一族が、近世にいたって被差別部落にされながらも力強く生き抜いてきた過程が活き活きと記述されている。

全体を通して様々な角度から大阪の深層に触れようとする意欲的な試みがなされている本だけど、あえてごく主観的な立場で書けば、
この本は自分自身のバックボーンと、それに少なからず影響されているアイデンティティを見つめ直す機会を与えてくれた企画の結晶でもある。
(謝辞には僕と再合併した父も登場している)

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・

○現実世界に関わる南北の軸を「実数(現実の数)」とし、生と死を一体に思考する人々の生きる、生駒山麓の世界に向かう東西の軸を「虚数(想像の数i)」とすると、
原大阪の心性は、X+Yiという複素数であらわされることになる。
→垂直に交わるもの同士は、おたがいを否定することなく、一つの世界の座標軸となることができる。
<複素数都市>

○敗者や弱者を排除しないで、自分の中に組み入れる度量をもった政治をおこなうこと。
そういう世界を作り出すことが、「聖徳太子」という名前を使って表現された、日本人がめざしていた政治の理想なのだった。
<大阪スピリットの古層>

○都市の魅惑は、その奥にひそんでいる無縁の原理が、かもしだしているものだ。
しかし、無縁の原理は、ほうっておけば、人の社会をバラバラに解体してしまう。
そこで最初の都市住民たる商人たちは、無縁の原理の上に立って、さらにそれを乗り越えて、人の絆を生み出すことのできる、超無縁の組織をつくりあげてきた。
「無縁社会の悲劇」などを嘆いている暇があったら、私たちは、都市というものをつくったはじまりの商人たちの精神に、もう一度問い直してみるほうがいのではないか。
<無縁社会を超える>

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2012 10/16
大阪、歴史、文化論、文化人類学
まろまろヒット率5

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