まろまろ@今週末はtwitterでの話題から発展した1000円焼肉食べ放題に行きます☆
さて、『ボルヘス、文学を語る―詩的なるものをめぐって』ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳(岩波書店)2002。
『伝奇集』などで知られるボルヘスが1967年~1968年にかけてハーヴァード大学のチャールズ・エリオット・ノートン詩学講義でおこなった講義録。
原題は“This Craft of Verse” (2000)。
ボルヘスといえば、ガルシア=マルケスと並ぶ20世紀を代表するラテンアメリカ文学者だけど、
小さい頃から英語を話す環境にあったこともあって、この講義も英語でおこなわれている。
(英文学からの引用も多いので、英語表現の勉強にもなった)
内容は、多くの引用を使いながら自説を展開する講義の中に、ボルヘスらしさがかいま見える。
たとえば、エマソンの「図書館は、死者らで満ちあふれた魔の洞窟である」を引用して、
読み手によって書物は「生命を回復することが可能」だと指摘しているところは興味深かった。
あくまで「書物は、物理的なモノであふれた世界における、やはり物理的なモノです。生命なき記号の集合体」だけど、
読者によって「すると言葉たちは息を吹き返して、われわれは世界の甦りに立ち会うことになる」としている。
<詩という謎>
また、ホイッスラーの”Art happens”を引用して、
“Art happens every time we read a poem” (われわれが詩を読むたびに、芸術はたまたま産まれる)
と付けくわえているところはボルヘスらしい”wit”だと感じた。
<詩という謎>
さらに自分自身の作家としての姿勢についても言及していて、
作家であることは「それは単に、自分自身の想像力に忠実であることを意味します」と言い切っている。
「私は作品を書くとき、読者のことは考えません (読者は架空の存在だからです)。
また、私自身のことも考えません (恐らく、私もまた架空の存在であるのでしょう)」。
「私が考えるのは何かを伝えようとしているかであり、それを損なわないよう最善を尽くすわけです」。
だから「私の考えでは、われわれは暗示することしかできない、つまり、読み手に想像させるよう努めることしかでない」としている。
<詩人の信条>
ちなみに、ボルヘスはこの講義の時にはすでに視力がほとんど失っていたので、メモを使わずに講義をしたとのこと。
ボルヘスの百科全書のような教養も感じられる一冊。
以下は、その他にチェックした個所(一部要約含む)・・・
○バイロンの”She walks in beauty, like the night”をその気になれば自分たちにも書けたかもしれないことについて
→しかし、その気になったのはバイロン一人でした
<隠喩>
○叙事詩で大事はのは英雄、小説の本質は人間の崩壊
<物語り>
○いい本を書くためには、恐らく、一つのきわめて重要でしかも単純なことが必要である
→その本の枠組みのなかに、想像力を掻き立てるような何かが存在しなければならない
<詩人の信条>
○意味などというものは重要ではない
→重要なのは音楽まがいのもの、語り口と呼ばれるもの
<詩人の信条>
○若者は不幸を好むものである(略)若者は不幸であるために全力を尽くす
→そして一般に、それに成功する
<詩人の信条>
2010 2/11
文学論、詩論
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