E.H.カー、清水幾太郎訳 『歴史とは何か』 岩波書店 1962

距離の単位系を説明する時にEminemの“8 mile”を例に出して解説することが多い、
まろまろ@メートル換算すると実はかなりの距離(12.87km)と分かった時の元も子もない反応が痛くて気に入っています(w

さて、『歴史とは何か』E.H.カー著、清水幾太郎訳(岩波書店)1962。

ロシア革命史の研究で知られる歴史家、E.H.カーによる歴史の概要書。
歴史という対象の特徴と、それにアプローチする歴史学の方法論を述べた一冊。
原題は“What is History?” (1961)。
実はこれまで必要に応じて何度も部分読みをしていた本ではあるけれど、
特命係長プレイの合間に初めて通読したので、今回めでたく読書日記化。

内容は、歴史とは事実なのか、それとも解釈なのか?
歴史では社会(状況)と、個人(人物)のどちらが優先するか?
歴史は特殊事例の集まりでしかないのか、それとも一般化は可能なのか?
・・・などの歴史への問いかけに対して、それぞれ一方だけの立場を極論だと退けて、どれがも密接な相互関係にあることを述べている。

たとえば、歴史は事実なのか、解釈なのかという問いに対しては・・・・
「歴史家は事実の慎ましい奴隷でもなく、その暴虐な主人でもない」として、
「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話」
・・・と結論づけている。
(1 歴史家と事実)

両極端な意見にそれぞれ反論を加えて、中庸な立場を採用しているのが著者の終始一貫したスタンス。
ただ、それだけに上記のように結論が一言で言えないものばかりで、よく読解しないといけないものになっている。
この点、理系の人、特に実験などの実証的手法を取る人の中で、
「文系の人の話は何も問いに答えてない」と指摘する人をたまに見かけることがあるけれど、
そういう人がこの本を読んでも同じように感じるんだろうかとふと思った。

刑事裁判の手続がそうスパっといかないように、過去の出来事という対象にアプローチするのは、
そう簡単な話ではないということを理論立てて説明してくれているので、
同じような特徴(再現性無し、追試不可能、一般化が簡単では無いなど)を持つ研究対象へのアプローチの参考にもなる本でもある。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・

○正確は義務であって、美徳ではない
→仕事の必要条件であって本質的な機能ではない
<1 歴史家と事実>

☆歴史=歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話
→歴史家は事実の慎ましい奴隷でもなく、その暴虐な主人でもない
<1 歴史家と事実>

○事実と解釈とを引き離すことが出来ないのと同じように、特殊的なものと一般的なものとを区別することは出来ない
→一方を他方の上に置くことも出来ない
<2 歴史と科学と道徳>

○歴史の機能は、過去と現在との相互関係を通して両者を更に深く理解させようとする点にある
<2 歴史と科学と道徳>

○歴史は運動であり、運動は比較を含む
→道徳的判断には「善悪」ではなく「進歩と反動」という比較的性質の言葉を用いる
<2 歴史と科学と道徳>

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2008 6/24
歴史、学問一般
まろまろヒット率4

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