佐々木正人 『アフォーダンス―新しい認知の理論』 岩波書店 1994

セブンイレブンで売っている「牛乳シャーベット」は
何気に美味しいと思う、らぶナベです。

さて、『アフォーダンス-新しい認知の理論』佐々木正人著
(岩波科学ライブラリー12)1994年初版。
初めて読んだアフォーダンス(生態心理学の基本概念)の本。
情報は環境から受ける刺激を脳で処理して意味のあるものへと作られるのではなく、
情報はその人をとりまく環境そのものの中にあるという考えを提唱した
ギブソンの研究過程を追いながらアフォーダンスの考え方を紹介している。
この本では視覚と触覚についての記述がメインになっているが、
著者も後半で述べているようにアフォーダンスは
言語や芸術などの他の分野へも応用されるものなので興味深かった。

特に知覚について「五感」のように個々の感覚器官に注目するのではなく
複数の知覚システムの束とみなす考えは新鮮だった。
確かにこれだと盲目の人が自由に歩けることが不思議じゃない。

また、変化の中にある不変を知覚することを重視する考え方(不変項)も面白かった。
なんだかよくわからない非現実的な芸術作品を観て、
なんだかうまく説明できないけどそこに現実的なものを感じたとき、
その作品の中に不変項があるのだという視点はちょっと楽しい(^^)
この不変項という考え方は前に読んだ『日本人と日本文化』
ドナルド・キーンが「矛盾を見ればその人が何を考えているのかわかる」と
言っていたことと何か通じるような気がする。

さらにこれは前提として述べられたことだけど、
「人は記憶を語るときに記憶と過去を表現するメディア(映像や文字)と混同しがち。
思い出されることはビデオに映っているような文字通りの過去じゃないし、
会話は文字に書き写された言葉とは違う」
という趣旨のことがエピローグに書かれてあった。
これは僕自身ときどき完全に忘れていることなのでハッとさせられた。

ちなみに著者とは院の説明会と二次試験の口頭試問
少しだけ言葉を交わしたことがある。(単に試験官だっただけだけどラッキー)
そのときは個性的だけど温和な印象を受けて好感が持てたのを覚えている。
この本の最後で「あせらなくてもいい。情報は環境に実在して、
お前が発見するのをいつまでも待っている」(あとがき)という
著者自身に向けられた言葉を発見したときに会った時の印象が思い返された。
これも不変項か?(^^)

以下は、チェックした箇所(一部要約)・・・

○「フレーム問題」=ある行為に関連することとしないことを
 効率的に見分けるにはどのようにすればよいのかという問題(主にAI領域)
<プロローグ なぜいまアフォーダンスなのか?>

○デカルトの「こころ」とは、感覚刺激を統合し、判断し、推論し、
 意味をつくりだすメカニズム(略)いわゆる「中枢」
 →環境からの入力が「点運動」のようなものであるという仮定が、
  知覚理論への「有能なこころ」の概念の導入を招いた
<プロローグ なぜいまアフォーダンスなのか?>

○「ゲシュタルト」=「感覚要素の総和以上のもの、総和とはことなったもの」
 (エーレンフェルス)
<1 ギブソンの歩み>

☆知覚者が対象の変化から見ているのは「形(form)」ではなく、
 対象そのもの、それのリアルな「姿(shape)」
 →姿は、形からではなく、それ自体は形をもたない「変形」から知覚される(略)
  知覚ににとっては「変化という次元」こそが問題
  (「変化」のなかに埋め込まれている「不変」の知覚)
<1 ギブソンの歩み>

☆ギブソンが捜し求めた「知覚の刺激」の本質=環境の中で、動き回って、
 何かを見ようとしている観察者がその全身の動きとともに発見するもの
<1 ギブソンの歩み>

☆「生態光学(エコロジカル・オプティックス)」=環境に充満している光=包囲光
 (ambient light)を視覚の基礎にすべきであるという考え
 →包囲光の「異質性」=「包囲光配列(ambient array)」」
<2 情報は光の中にある>

☆「不変項(インバリアント)」=変形から明らかになる不変なもの
 →見るということで観察者が行っていることは、
  包囲光配列から不変項をピックアップすることである
<2 情報は光の中にある>

○不変項=
 1:構造不変項→恒常的に保たれている性質を知覚すること
 2:変形不変項→生じている変化がどのような変化であるか特定すること
 →動くものが何であるか特定するのが構造不変項、
  その動きがどういうものであるのか特定するのが変形不変項
<2 情報は光の中にある>

☆環境に満ちているのは、「持続と変化」である
 →生態光学はそこが「情報に満ちた海」であることを示した
<3 エコロジカル・リアリズム>

☆生態学的認識論は、情報は人間の内部にではなく、人間の周囲にあると考える
 →私たちが認識のためにしていることは、
  自身を包囲している環境に情報を「探索」すること
<3 エコロジカル・リアリズム>

○「生態学的測定法(エコ・メトリクス)」=物理的絶対値ではなく
 生き物を基準にして表した値
<3 エコロジカル・リアリズム>

☆アフォーダンス=「動物との関係として定義される環境の性質」(ギブソン)
 =環境が動物に提供する「価値」
 =物理的な性質ではなく「動物にとっての環境の性質」
  →アフォーダンスが環境の中に実存することを強調するギブソンの理論
  =「エコロジカル・リアリズム(生態学的実存論)」
<3 エコロジカル・リアリズム>

○感覚器官をもとにした古典的分類「五感」は多様な知覚体験を説明できない(略)
 五は感覚器官の種類の数ではなく「環境への注意のモード」の種類と考えるべき
 =「基礎的定位づけシステム」「聴くシステム」、「触るシステム」、
  「味わいー嗅ぐシステム」、「視るシステム」
<4 知覚するシステム>

☆知覚システムの特徴
1:”複数の知覚システムの獲得する情報は
 「等価」であるので「冗長」であることが多い”
  →盲目の人が自由に移動できるのは神秘的なことではなく
  「視るシステム」以外でもピックアップ可能な情報を知覚しているから
2:”動きが固定されていない”
  →知覚システムの動作を洗練し、分化していくことが学習
  →「わざ」を可能にするのは知覚システムの束
<4 知覚するシステム>

☆ギブソニアン(ギブソンの後継者たち)の主張
 =「運動研究の単位を変えよう」
 →関節などの要素でなくマクロな「結合」を単位に
<5 共鳴・同調の原理>

○運動系は、身体の内部に閉じて組織化しているのではなく、
 環境の中の情報とも協応の関係を結び、
 知覚情報をもそのシステムの一部としている
<5 共鳴・同調の原理>

○「タウ(τ)」=行為の制御に利用されている視覚情報
 =「衝突・接触」のアフォーダンス
<5 共鳴・同調の原理>

○知覚と行為の協応を、ギブソニアンは「知覚と行為のカップリング」と呼ぶ
<5 共鳴・同調の原理>

☆画家が遠近法で描いた絵も、抽象画も、もしそれが私たちに
 何らかのリアリティーを伝えることができるならば、
 そこには知覚された不変項が記録されていると考えるべき
<エピローグ リアリティーのデザイン>

○「あせらなくてもいい。情報は環境に実在して、
 お前が発見するのをいつまでも待っている」
 (略)研究だって知覚行為の一種なんだから
<あとがき>

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2003 1/12
アフォーダンス、心理学、認知科学、情報関連
まろまろヒット率4

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