藤沢周平 『漆の実のみのる国』 文藝春秋 上下巻 2000

何だか妙に静かな時期に静かな本を読んだ、らぶナベっす。

『漆の実のみのる国』藤沢周平著(文春文庫)上下巻2000年初版。
いまさら書くまでもなく藤沢周平の遺作で彼の故郷、
米沢を代表する人物である上杉鷹山と取り上げた小説。
ハード版が出版された時からずっと読みたいと思っていたが
ようやく文庫版が出たのでさっそく買って読んでみた。

上杉鷹山と言えばかつてジョン・F・ケネディが「最も尊敬する日本人は?」
と聞かれたときに躊躇無く彼の名前をあげたというくらい国内よりも
海外での評価が高いという点や「なせばなる。なさねばならぬ何事も・・・」
という彼の訓示などが注目されている人物。
(もっともこれは彼のオリジナルじゃないんだけど
武田信玄の「風林火山」と同じようにパクリの方が有名になった代表例)
彼に関しては小大名からの養子という不安定な立場、
保守的な反発を示す藩上層部、無気力感がただよう農民、
返済不能とされた財政赤字、奥さんは身体障害者という
絵に描いたような絶望的状況下で粘り強く藩政改革をおこなって
最終的に成功させたというその華々しい経歴が注目されることが多い。
4年ほど前に僕が読んだ堂門冬二の『小説 上杉鷹山』(学陽書房)は
困難に立ち向かった偉大な改革者としての上杉鷹山を英雄的に描いていた。
当時は確かにちょっと持ち上げすぎだなという感想を持ったものだ。

この『漆の実のみのる国』はそういう意味では逆に読んでいてもどかしい。
改革が軌道に乗ったと思えば頓挫し成果らしい成果はほとんどあがらない。
そのあまりにも長い道のりに疲れて去ってゆく人々や
気持ちがゆれる鷹山の姿を中心にえがいている。
消えそうでそれでも燃えそうな遠くにある光明をつかもうとする
長い長い月日を小説にしているという感じだ。

この本のタイトルになったように上杉鷹山の改革の代表としては
今でも米沢の名産になっている漆塗りが有名だがその漆の木の殖産でさえ
当初は「15万石を実質30万石にする起死回生の政策」という情熱で
施行したものの実際は大した成果があがらず
藩財政の足を引っ張ることになったものとして書かれている。

この小説の最後の下りでは上杉鷹山が若い頃漆の実は大きくて
実がみのる時期には風に揺られてカラカラと音がなるものだろうと思ってが
現物を見てみると実際には米粒ほどの大きさしかなくて驚いたことを
思い出して微笑する場面で終わっている。
本当は文芸春秋の連載ではあと二回分残っていたらしいんだが
藤沢周平が「これで良い」と言ったのでこの小説はここで終わっている。

何かに追いかけられる感覚を受けて走り出したい気分の中、
静かにゆっくりと歩いた人々の物語というべきだろうか。

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2000 2/28
小説、歴史
まろまろヒット率4

三井誠・酒巻匡 『入門刑事手続法』 有斐閣 1998(改訂)

この本で六法+法学総論は全てにそれぞれ3冊づつ読み終えた(総数21冊)、
らぶナベ@ほぼゼロの状態で11月から始めた法学の勉強も3カ月半で
「どんな状況でもどんな本でもとりあえず3冊読めばその分野は理解できる」
という僕の勝手な読書理論(書籍三段撃ち)を完成させることができたので
法学も僕にとっての「武器」と言える域まで達成したというところか。
伝説によると同じようなコンセプトで鉄砲の「三段撃ち」を使って
長篠の戦いに臨んだとされる信長に妙なしんぱしぃを感じてしまう(^_^)

さて、武器としての法学の正式なスタートを切ることになった
その記念すべき1冊の感想をば・・・
『入門刑事手続法[改訂版]』三井誠・酒巻匡著(有斐閣)1998年改訂初版。
前に読んだ『伊藤真の刑事訴訟法入門』伊藤真著(日本評論社)1998年初版で
著者が薦めていたので刑事訴訟法の3冊目としては最適かなと思って購入。
内容の方は刑事訴訟法の手続法としての面に特化していて
全体の流れを追うことを重視して書かれているので読みやすい。
理論だけでなく統計なども使って現実の刑事裁判の実体を紹介してくれたり
最終章では実際に使われる書類を通して刑事手続の流れを
紹介してくれているというなかなかに良い本。

以下、チェック&まとめ・・・
○実際の刑事訴訟法の出だしは189条から始まる

○刑事訴訟法が実現しようとする実体法の類型・・・
「刑法」、「特別刑法」(覚せい剤取締法など)、「行政刑法」(道交法など)

<起訴前手続>
[捜査とは]
○捜査を規律する法律・・・
「刑事訴訟法」、「警察法」(組織法)、「警察官職務執行法」(権限法)

○「捜査機関」=司法警察職員、検察官、検察事務官の3種の総称

○刑事訴訟法上の司法警察職員とは原則として巡査部長以上を指す
(司法巡査は巡査が当たる)

○警察において発生を認知した「刑法犯」は窃盗犯(刑235条)と
業務上過失致死傷事犯(刑211条)が全体の約9割を占めている

○「検挙」=警察で事件を検察官に送致・送付するか
もしくは微罪処分に付することを指す

○刑事訴訟法が定める捜査のきっかけは6つ・・・
・「現行犯」(212条以下)
・「変死体の検視」(229条1項)
・「告訴」(230条以下)と「告発」(239条以下)
 →意思を表示する主体によって違う
・「親告罪」(告訴がなければ無効)
 →告訴権者が犯人が誰か知った日から6カ月を経過すると無効
・「請求」→「外国国章損壊罪」(刑92)など
・「自首」(245条)→実体法の刑法では42条1項

○検察官が指定した一定の軽微な事件は不送致→「微罪処分」(246条但書)

○検察官は管轄区域の司法警察職員に対して
捜査に対して必要な「一般的指示」(193条1項)、
「一般的指揮」(193条2項)することが可能
また、検察官が第一次的な捜査機関として捜査をおこなう時には
特定の司法警察職員を「具体的指揮」(193条3項)することが可能

[捜査の方法・実行]
○197条1項の「本文は任意捜査」、「但書は強制捜査」に関する規定

○事実に誤りがない時でも被疑者は「供述調書」の署名押印を拒否できる
(198条5項)

○事情聴取はマスコミ用語で正式には「参考人取調べ」(223条1項)

[被疑者の逮捕]
○被疑者の既済人員のうち実際に逮捕されているのは約2割
→8割は不逮捕・在宅事件として身柄拘束なしで捜査が続けられる

○逮捕状を請求できるのは検察官だけでなく警部以上の司法警察職員
=「特定司法警察職員」(199条2項)でも可能

○「逮捕状請求」(規139条)=「請求書」&「疎明資料」の提出

○「逮捕状の緊急執行」(201条)と「緊急逮捕」(210条)との違いは
逮捕する時に令状が発布されているかどうかの差

○「現行犯逮捕」(212条1項)も「準現行犯逮捕」(212条2項)も
その判断は微妙で憲33条(令状主義)との対立が争点になる場合も多い

○逮捕後の被疑者の弁解は「弁解録取書」に既済されるが
取調べとは別とされ「供述拒否権の告知」(198条2項)は
実務上は不要だと考えられている
→「身柄送致」(203条)された被疑者の取調べには告知が必要

☆逮捕に関する特別の不服申立ての規定が無いなど
逮捕された被疑者の地位が問題となっている

[勾留]
○被疑者勾留の要件=60条1項で限定列挙

○検察官による「勾留請求書」(147条)→裁判官による「勾留質問」(61条)
→「勾留状」(207条) の発布へ

○「代用監獄」が原則化している勾留場所について議論がある

○勾留期間は勾留の請求をした日から起算する(208条1項)

○裁判官は適当と判断した時は職権によって
勾留の執行を停止することができる(95条)
→ただし検察官の請求によって「勾留の執行停止の取消」(96条1項)も可能

○起訴前勾留=「被疑者勾留」、起訴後勾留=「被告人勾留」

[捜索・差押え・検証]
○証拠に必要な血液や胃液などの採取には本人の同意が得られなければ
「鑑定処分許可状」をもって強制的に採取可能

○令状の執行には時刻の制限がある(222条4項)ので
特別の旨の記載がなければ日没後から日出前は捜査できない

○公務員や国会議員等の職務上の秘密、医師や弁護士等の業務上の秘密には
一定の範囲と条件のもとで押収を拒絶する権利が認められている
(103条~105条)

○逮捕にともなう逮捕現場の捜索・差押え・検証は令状無しで可能(220条)
→現行犯逮捕と共に「令状主義」(憲35条)の例外
 ただし緊急逮捕に対応するような緊急捜索や緊急差押えの制度は無い

[その他の強制処分]
○捜査機関が特別の学識経験を持つ第三者に
報告を求める「鑑定嘱託」(223条以下)には・・・
「鑑定留置」(224条)と「鑑定の必要な処分の許可」(225条)がある
→対象者が拒んでも強制的に鑑定としての身体検査ができるかは争いがある

[被疑者の防御]
○被疑者の弁護人選定権は被疑者だけでなく法定代理人、保佐人、
配偶者、直系の親族および兄弟姉妹にもある(30条2項)
→ただし実務上は逮捕についての通知義務はないとされる

○選任できる弁護人の数は各被疑者に対して3人以内に限られる(35条)
→ただし実務上は請求があれば許可される

☆接見交通権を制限する接見制限(39条3項)に不服があれば
裁判所に対して「接見指定処分に対する準抗告」ができる(430条)

○裁判官は接見・授受の禁止に加えて書類などの検閲や差押えができる(81条)

☆被疑者と弁護人でも押収、捜索、検証、証人の尋問や鑑定の処分などの
強制処分を裁判官に対して請求することができる=「証拠保全手続」(179条)

○捜索や検証に対しては法文上、準抗告の規定はない

<公訴提起>
[公訴提起の手続]
○検察官による事件処理・・・
・「終局処分」→起訴処分、不起訴処分
・「中間処分」→中止処分、移送処分

○検察官による不起訴処分の種類・・・
・起訴すべき条件が欠けているとき
・法律上、犯罪が成立しないとき
・証拠上、犯罪事実を認定できないとき
・刑の免除にあたるとき
・起訴を猶予すべきとき(起訴便宜主義)

☆不起訴処分は裁判所の判決とは違って「確定力はない」ので
不起訴処分を取り消して捜査を再開することが可能=「再起」

○強制力を持たないため検察審査会による不起訴不当の議決後に
検察官が実際に起訴の手続をしたのは6%しかない

○検察官に対する「付審判手続」(262条)は起訴便宜主義の例外

○管轄=「事物管轄」、「土地管轄」

○移送・送致・送付の違い・・・
・「移送」→事件などを同種類の機関相互間で送る(19条)
・「送致」→事件などを異種類の機関相互間で送る(206条)
・「送付」→書類や証拠物のみを送る(242条)

[公訴提起の方法]
○起訴状の訴因が不明確な時は裁判官は検察官に対して「釈明」を求め、
これに応じない時に初めて手続を打ち切るとされる(208条1項)

☆起訴後は原則として公訴提起された裁判所が
被告人の身柄処置についての責任を持つ(規164条)

○「起訴状一本主義」(憲37条1項、256条6項)により
起訴状に書く「余事記載」には被告人の経歴や性格、
前科などは構成要件要素と不可分な場合にしか記載不可

○刑事訴訟法での時効(=「公訴時効」)期間は法定刑を基準にする(252条)
→犯罪行為(生じた結果も含む)が終わった時から起算する(253条)

○裁判官がその事件の審理に適切でない時・・・
「除斥」(20条)、「忌避」(21条~25条)、「回避」(規13条)
→除斥か忌避理由のある裁判官が判決に関与すれば判決破棄の事由に(377条)

<公判手続>
[公判のための準備活動]
○第一回公判期日前の準備=「事前準備」、第二回以後=「期日間準備」

☆「証拠開示」に関しては裁判官の「訴訟指揮権」(294条)を根拠に
検察官の所有する証拠を弁護人に閲覧させるように命じることが可能
(最決昭和44・4・25)

○被告人が召喚に応じないときは裁判所は強制的に「勾引」ができる(58条)

○請求があれば原則的に保釈できるのが建前=「権利保釈」(89条)だが
実際上は裁判所の裁量に任されている=「裁量保釈」(90条)

[公判期日における手続]
○重大事件の場合は弁護人の出頭が開廷の要件=「必要的弁護事件」(289条)

○「黙秘権」(憲38条1項)の範囲が被告人を特定する
事項(氏名や住所)まで及ぶのかどうかには争いがある

○検察官の冒頭陳述は義務(296条)だが被告人または弁護人の冒頭陳述は任意
→事件が複雑で争点が多岐にわたるような場合には行うことが多い

○証拠をめぐる攻防の流れは「甲号証」(構成要件など)から
「乙号証」(前科や身上など)へ争点が移行していく

○「証人尋問」の流れは検察側が提出した参考人の供述調書を
被告人が証拠とすることに同意しなかった(=「不同意書面」)場合に
目撃者などの第三者を証人として取調べ請求するという経緯をたどる(326条)

☆不当なものでない限り「誘導尋問」は許される(規199の3条3項)

○憲38条1項の理念を刑事訴訟法上で実現させたのが「被告人質問」(311条)
→ただし被告人が質問に答えて任意に話せば有利不利を問わず証拠になる

☆「証拠調べに対する異議申立て」は法令に反している時だけでなく
その行為が相当でないという理由でも可能(規205条但書)

○裁判長の処分に対しても意義申立てが可能(309条1項)

☆証拠調べが終わると検察官による「論告求刑」(293条1項)→
弁護人による「最終弁論」→被告人による「最終陳述」(規211条)を行って
判決を待つ=最後の発言権は被告人にある

○「判決の宣告」(342条)は判決書の草稿にもとずいておこなわれる
→判決書の原本で判決が言い渡される民事訴訟法とは違う(民訴252条)

☆「訴因の変更」(312条)の関して判例は・・・
「具体的事実同一性説」と「択一関係説」を採用
→新旧の両訴因が事実として併存できない関係にある場合と
 併存できても両訴因が罪数論上一罪(科刑上一罪含む)を構成する場合に
 広義の公訴事実の同一性が認められて訴因が変更できる

○「訴因変更の必要性」では具体的事実に注目する「事実記載説」が通説
→被告人が防御する上で実質的な不利益をもたらすおそれのあるような
 事実のずれであるかどうかが判断基準になる

○訴因変更は裁判所による「訴因変更命令」(312条2項)でも可能
→裁判所が訴因変更を促すなどの措置を行わないで判決を下すと
 審理を尽くさなかった違法があるとされる

☆公判期日の訴訟手続は裁判所書記官が作成する
「公判調書」に記録される(48条)
→上訴審の判断資料は原審の公判調書に限定されていて
 他の資料では覆すことができないため重要(52条)

○裁判の「公開主義」(憲82条1項、憲37条1項)の範囲は
傍聴人がメモをとることまで認められる(判例:レペタ訴訟)

☆「釈明」=訴訟関係人が裁判官の発問に応じて
法律上・事実上の点を明確にすること

○「アレインメント(arraignment)制度」・・・
罪状認否手続(arraignment)で被告人が有罪の答弁をおこなえば
証拠調べ手続を飛ばして公判をする英米法上の制度
→当事者間の司法取引(plea bargainning)が可能になるが日本では
採用されていないため有罪を認めていても事実が公判審理に付される

<証拠法>
○情況証拠はマスコミ用語で正式には「間接証拠」

☆「無罪の推定」原則は構成要件事実だけでなく
違法性阻却事由や責任阻却事由についても適用される
→真偽不明の場合は無罪の結論

☆心証のレベル・・・
「疎明」=一応確からしい程度
   ↓
「証拠の優越」=肯定証拠が否定証拠を上回る程度
   ↓
「厳格な証明」=合理的な疑いを生じる余地がない程度
→証拠裁判主義(317条)で求められるレベル

[伝聞法則]
○「伝聞法則」(320条)=「供述書」(供述者自ら作成したもの)や
「供述録取書」(第三者の供述を録取したもの)は原則的に証拠にはならない

☆伝聞法則を考える際には常にその証拠によって立証しようとする事実
=「要証事実」は何かを中心に考える

☆伝聞法則の例外(321条以下)・・・
・被告人以外が関係した供述調書や供述録取書でも署名押印があるものは
 「再現不能」や「供述の自己矛盾」などを理由にして証拠能力が認められる
・検察官の目前での供述を録取した書面=「検察官面前調書」(検面調書)
 =「二号書面」でも321条1項の2の条件下で証拠能力が認められる
→これに関する証拠能力の有無が公判廷での争点となることも多い
(「調書裁判」化しているとの批判あり)

○「信用性の情況的保障」(特信性)=外部的状況から見て供述が行われた
信用性が担保されているだけでその供述の内容自体の信用性とは別

○証拠とすることができる書面や供述であっても任意性の
調査をした後でなければ証拠とすることができない(325条)

○伝聞法則で排除される書面や供述でも両当事者が
同意すれば証拠とすることが可能=「同意書面」(326条)
→同意は伝聞法則の例外のトップバッター、同意の実質は反対尋問権の放棄

○「承認」=自分に不利な事実を認める供述
 「自白」=犯罪事実の主要部分を認める供述
 →違いは補強証拠を必要とするかどうかの差(319条2項)

[自白]
☆「自白法則」は伝聞法則と違って任意性の無い自白調書に同意したとしても
証拠として使えない上に自由な証明の証拠とすることもできない
(憲38条2項、319条)
→その根拠は「虚偽排除説」VS「人権擁護説」VS「違法排除説」が対立

○自白法則が争われた事例・・・
両手錠をかけられたままの取調べは任意の供述ではない(最判昭和38・9・13)
や起訴猶予を期待した自白には任意性に疑いがある(最判昭和41・7・1)、
切り違え尋問による自白は任意性が無い(最大判昭和45・11・25)
・・・などの判例が有名

☆自白以外に証拠がなくその自白以外の証拠=「補強証拠」も無ければ
有罪にできない「補強法則」(憲38条3項、319条2項)は
共犯者の自白を唯一の証拠として被告人を有罪にする場合には
当てはまらないとする判例がある(最大判昭和33・5・28)

[違法に収拾された証拠の排除]
○適正手続の保障(憲31条以下)のためには「違法収拾証拠を排除」するのが
適切と考えられるがこれを直接定めた規定は無い
→これが争われた判例(最判昭和53・9・7など)では
 捜査の違法性を認めながらも証拠能力は肯定するというものがある

<公判の裁判>
[裁判とは]
☆不服申立ての種類・・・
・判決←「控訴」(372条)、「上告」(405条)
・決定←「抗告」(420条)
・命令←「準抗告」(429条)

○判決書は判決そのものではなく判決の内容を証明するための文書なので
裁判官が宣告の際に判決を言い間違えた場合はそれがそのまま判決になる
→実際にもたまにあるらしい

○民事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は義務(民訴255条)だが
 刑事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は任意(46条)

[実体裁判]
○有罪率がきわめて高いことが日本の刑事裁判の大きな特徴

○判決宣告後「14日以内」に控訴申立てがなければ判決は確定される(373条)
(宣告当日は算入されないので実質15日)
→確定すれば「一事不再理効」(憲39条)のため公訴提起はできない

[形式裁判]
○民事訴訟法では管轄違いによる移送を認めている(民訴16条)が
刑事訴訟法では原則として認められていない(329条)

○形式裁判である管轄違いの裁判と公訴棄却の裁判は
確定しても実体判決のような一事不再理効は生まれない
→免訴も形式裁判だがこれには一事不再理の効力があると考えられている

<上訴>
[控訴]
○控訴期間ぎりぎりまで勾留中の被告人が控訴申立てを迷ったとしても
第一審判決宣告日から控訴申立ての前日までの未決勾留日数は
全部刑に法定通算される→「不利益変更禁止の原則」(402条)の応用

○控訴の範囲が争われた判例=「新島ミサイル事件」(最大判46・3・24)

☆控訴審の構造・・・
民事訴訟法では第一審口頭弁論終結直前の状態まで戻す「続審制度」を取るが
刑事訴訟法では第一審判決当時の証拠のみに基づいて
原判決の当否を判断する「事後審制度」を取っている
→しかし例外である「382条の2」と「393条2項」が実際の控訴審事件の
 70%以上を占めていて原則と例外が逆転している

○控訴審の争点の設定は「控訴趣意書」を提出する当事者の義務(376条)

☆控訴理由・・・
訴訟手続の違反を理由にする「絶対的控訴理由」(378条)が原則だが
例外的に事実誤認や法令の解釈適用の誤りに対しても
その誤りが判決に影響した場合に限っては控訴理由とすることができる
=「相対的控訴理由」(380条以下)がある
→実際の控訴審での審判対象はこの「量刑不当」と「事実誤認」がほとんど

○控訴審で被告人の実質的利益を害することはないと考えられる場合には
検察官による「訴因の追加・変更」請求が認められるとされている
(最判昭和30・12・26)

○原判決の破棄は2種類・・・
・控訴理由に該当する事由があればそのまま原判決の破棄理由となる
 (397条1項)=「1項破棄」
・原判決後の情状を調査して原判決を破棄しなければ
 明らかに正義に反すると認められるとき(397条2項)=「2項破棄」

○実務上では破棄した場合には控訴審自らが新たに判決=「自決」するため
破棄差戻しや移送がなされることはほとんど無い(400条但書)
→たとえ差戻されても控訴審の判断は下級審の判断を拘束する
 「破棄判決の拘束力」がある

[上告]
☆「上告」=控訴審判決に憲法違反か法令違反があることを理由に
最高裁判所に対してその取消し・変更を申し立てること(405条)で原則的に
法令の解釈統一が目的なので事実誤認や量刑不当は上告理由に当たらない
→しかしそうした理由でも判決確定前に最高裁判所の裁量的判断で
 受理することができる「事件受理の申立て制度」がある(406条)
 (実際にも量刑不当を主張するものがほとんど)

[抗告]
○抗告の種類・・・
・「通常抗告」(419条)
 →実際には保釈の許可・却下に対するものが多い
・「即時抗告」(422条)
 →実際には執行猶予取消決定や再審請求棄却決定に対するものが多い
・「特別抗告」(433条)
 →刑事訴訟法では不服申立てができないとされる決定や命令に対して
  憲法違反・判例違反を理由に最高裁判所に不服申立てをする制度

○「再度の考案」(423条)=原裁判所が申立書を抗告裁判所に送付する前に
自ら抗告の理由があると認めるときは決定を更正しなくてはいけない

[準抗告]
☆「準抗告」=
・裁判官による命令に対する不服申立て(上訴に近い)
・捜査機関の処分に対する不服申立て(行政訴訟に近い)
・・・のまったく性質の違う二つがある(430条)

<確定後救済手続>
[再審]
☆「再審事由」の中では特に「6号事由」(435条)が重要
→明白性の要件を緩和した判例(最決昭和50・5・20)以降は
 「免田事件」、「財田川事件」、「松山事件」、「島田事件」など
 再審の著名なものはこの6号を事由に申し立てられたものがほとんど

[非常上告]
○「非常上告」=被告人救済の側面は無くほとんど利用されていない(454条)

<特別手続>
[略式手続]
○「略式手続」(461条)=書面審理だけで
50万円以下の罰金or科料を科する裁判をする

○略式手続に不満があって正式裁判を申し立てることは上訴ではないので
不利益変更禁止の原則は適用されない→科刑が重たくなることもある

[少年事件の特別手続]
☆少年の刑事事件はまず家庭裁判所に送致され調査の結果、
刑事処分が相当であると判断した場合に検察官に事件を送致する
=「逆送決定」=「20条決定」(少20条)

○少年事件では家庭裁判所が刑事処分にするかどうかの決定権を持つ
=検察官起訴専権主義、起訴便宜主義の例外→「起訴強制主義」(少45条)

[付随手続]
○未決勾留日数を本刑に算入する事については刑法21が「裁定算入」を
認めているが刑事訴訟法は必ず本刑に算入する「法定通算」(495条)を規定

○「仮納付」(494条)の裁判は直ちに執行できる上に
追徴の裁判が確定すると本刑の執行を終えたことになるので
道路交通法違反による略式命令の90%以上を占めている

○罰金or科料の刑を言い渡す際には被告人が法人or少年の場合を除いて
必ず労役場留置の言い渡しをしなくてはいけない
=「換刑処分」(刑18条、505条)

☆「追徴」=裁判時に被告人から没収物を没収できない場合に
没収に代えてその物に相当する価額を徴収する裁判(刑19条の2)

○「被害者還付制度」=判決の際に裁判所が押収している
財産犯罪によって得られた物件(贓物)は被害者に還付する(347条)

○有罪判決の場合でも被告人が貧困のため負担能力がない場合は裁判所の
裁量によって訴訟費用の負担を免除することができる(181条1項但書)
→たとえ負担させられる判決が下っても被告人は
 訴訟費用負担の執行免除申立てが可能(500条)

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2000 2/16
法学、刑事訴訟法
まろまろヒット率3

日笠完治 『憲法がわかった』 法学書院 1999

今年は義理チョコ断絶宣言を出したけどメリルリンチに行った帰りに
チョコをもらってしまい(イメージキャラの牛さんチョコだったので思わず)
あっさり方針を撤回した、らぶナベ@というわけで義理チョコでも受付中っす

さてさて、『憲法がわかった』日笠完治著(法学書院)1999年初版。
憲法関連で3冊目に読んだ本。
当初は憲法学のバイブルと言われる芦部信喜の本を読もうと思っていたが
彼の本は人権に偏りすぎていて統治の記述が無いと聞いたので
まずは全体を把握することを第一の目的とする本を読もうと思って
本屋で探して選んできたのがこの本。
読んでみると「文章書くの下手だなぁ」と思うことが多々。
分かりやすく図解などを使って書こうとしているのは理解できるが
修飾語が多すぎて結論が見えにくい記述も多かったように思える。
どうもメリハリの感じられない構成&文章が目立ったが
よくよく見てみたら著者はドイツ公法の専門家だった。
確かに意味無いほどの時代変遷の列挙や抽象論的議論をしているのは
ドイツ観念論の傾向が強いからか?(ヘーゲルの影響)
どうも大陸法、特にドイツ関連の素養を持った日本人研究者っていうのは
日本語の文章がうまく無いように感じられる。
観念論的過ぎるためか?とりあえず結論を明確に書く
英米法の素養を持った研究者の方が読んでいてわかりやすさを感じる。

以下は、チェックした箇所・・・
○憲法前文は具体的事件に適応されるべき裁判規範ではなく、
個別条文の「解釈指針」でしかないとするのが通説

○憲法学の構成・・・
「憲法総論」、「基本的人権」、「統治機構論」、「憲法保障論」

○新旧憲法の違い・・・
・大日本帝国憲法→ドイツ憲法の影響→外見的立憲主義
 (法実証主義的、合理主義、演繹的傾向)
・日本国憲法→アメリカ憲法の影響→実質的立憲主義
 (判例中心主義的、機能主義、帰納論的傾向)

○グラウンド・・・
・憲法学の5段階構造
 「憲法理念」→「憲法原理」→「憲法典」→「憲法制度」→「憲法現実」
・法学のグラウンド
 「法理念」→「法律」→「現実」

☆憲法理念の価値序列・・・
「個人主義」→「自由主義」→「平等主義」→「福祉主義」→「平和主義」

○誰を指すのか曖昧な「国民」という言葉は錦の御旗的な機能を果たし
実際の政治的権力を行使している者の隠れ蓑となる可能性がある
→「国民主権の現実隠蔽的機能」

○「法律上の争訟」であっても「統治行為」の理論によって裁判所が
判断を回避した判例:「砂川事件」(昭和34)での安保条約の合憲性

○基本的人権を記載した条文の関係・・・
11条=「基本的人権の享有」(人権の大原則)
12条=「自由・権利の保持責任と濫用の禁止」(国民の債務)
13条=「個人の尊重・幸福追求権の保障」(国家・社会の債務)

○人権の限界=「公共の福祉論」に関する解釈では
「一元的内在制約説」が通説

○「二重の基準理論」が確率されたのはニューディール時代に
経済的自由が制約を受ける社会国家的政策が展開されたため

○13条=「個人の尊重」=「生命・自由及び幸福追求権」
=「幸福追求権」=「包括的基本権」
→裁判上で新しい人権を直接生み出すことが可能

○38条1項=「自己負罪拒否の特権」
(privilege against self-incrimination)」

○「国家の宗教活動の禁止」(20条3項)は
国家が「習俗的行為」を行うことまでは禁止していない
→判例:「津地鎮祭事件」(昭和52)

○「政教分離原則」(20条、89条)の違憲審査基準に関しては
「目的・効果基準」よりも「endorsement test」が有効とされる

☆「アクセス権」に憲法上の保障を与えようとする動きがあるが
国民とマス・メディアとの関係はあくまで私人間関係なので
憲法上の権利としてアクセス権を国民に認めることは難しい
→アクセス権の中核に位置するのが「反論権」だが
 判例:「サンケイ新聞反論権事件」(昭和62)ではこの権利を否定

○守秘義務がある人間には「証言拒絶権」があるが
(民事訴訟法197条、刑事訴訟法149条)
新聞記者を含めた報道関係者には守秘義務が無いとされる
→判例:「石井記者事件」(昭和27)

○行動を伴う表現(speech plus)の制約についての違憲判断基準
=「オブライエン・テスト」

○「二重の基準理論」の根拠=「代議的自治論」
経済的自由への制約は正常な民主主義的手続が保障されていれば
民意にもとづいて修正されるが精神的自由(特に表現の自由)への制約は
民主主義=代議的自治によっては是正されないとされているため
→政治部門と司法部門の役割分担

○厳格な審査基準の「事前抑制禁止の理論」
=相手側に情報ないし表現が伝達される前に
立法その他の公権力がその伝達を阻止することへの禁止
→検閲の禁止(21条2項)

○厳格な審査基準の「明確性の理論」
=「漠然性ゆえに無効」、「過度の広汎性ゆえに無効」

○厳格な審査基準の「より制限的でない他の選びうる手段」(LRA)
=立法目的を達成するための規制手段として規制の程度のより少ない
規制手段が存在するか否かを具体的・実質的に審査して
そのような手段がありうると解される時は当該規制立法を違憲とする審査基準

☆経済的自由権に対する消極的制約に対して
「厳格な合理性の審査」をしてさらに「LRA」の審査で違憲判決をした
判例:「薬局開設距離制限違憲判決」(昭和50)
→職業選択の自由(22条)への制限立法に対する合憲性審査をした

☆経済的自由権に対する積極的制約に対して
「明白性の原則」の審査で合憲判決をした
判例:「小売市場開設距離制限事件」(昭和47)
→職業選択の自由(22条)への制限立法に対する合憲性審査をした

○「国務請求権」=「受益権」
→「請願権」(16条)、「国家賠償請求権」(17条)、
「裁判を受ける権利」(32条)、「刑事補償請求権」(40条)

○「両議院独立活動の原則」・・・
「議員の資格争訟の裁判」(55条)、「定足数・表決数」(56条)、
「会議録」(57条2項)、「役員の選任・議院規則・懲罰」(58条)、
「国政調査権」(62条)などの条文にある「両議院は、各々・・・」に根拠

☆両議員独立活動の原則の例外(両院協議会)・・・
「法律案の議決」(59条)、「予算案の議決」(60条2項)、
「条約の承認」(61条)、「内閣総理大臣の使命」(67条2項)

☆衆議院だけにある機能=「内閣に対する信任・不信任の決議権」(69条)
「参議院の緊急集会における緊急措置に対する同意」(54条3項)

☆「国政調査権」(62条)の機能・・・
「情報提供機能」、「争点明確化機能」、「世論形成機能」
判例:「浦和充子事件」(昭和24)

☆地方公共団体による条例制定「自主立法」(94条)は
地方公共団体の事務に関する事項に限定されるが
国家法とは原則的に無関係の独自の法定立ができる
判例:「徳島市公安条例事件」(昭和50)

○司法消極主義による憲法判断の形式
「憲法判断回避の準則」
(憲法上の利益が保障されるなら憲法判断を回避)
    ↓
「違憲判断回避の準則」
(当該法令の解釈が多用にある場合には憲法に合致するような
限定解釈をおこなって当該法令の違憲判決をしない)
    ↓
「適法違憲」
(当該法令をその事件に適応する限りで違憲判断)
    ↓
「法令違憲」
(法令そのものが憲法に合致していないと判断)

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2000 2/11
法学、憲法
まろまろヒット率3

哲学とはどこで開き直るか

標題: [ml-dokusyo 190] 哲学と結論と開き直り
期限: 00/ 8/ 4 14:48
宛先: ml-dokusyo@ml.ritsumei.ac.jp

椎名林檎が昔ホリプロスカウトキャラバンに応募していたことを知って
(それもBEST4まで残ってた!)「キャラ違うやろ」と突っ込んだ、
らぶナベ@アイドルになってなくてホント良かった(^_^)

さて、ぼーちゃんがアップした・・・
>だから、読書感想文でも書いてみることにしました。
(中略)
>『西田幾太郎哲学講座(永遠の今について)』
・・・について、僕も暇になったのでコメントでもちょっと書いてみまっす。
僕たちの親やその少し上の世代の人にとって哲学と言えば
西田哲学と言うほどこの著者は影響力を持っていたらしいっすね。
僕も団塊の世代と話をしていて哲学的な話に方向が行くと
この人の話は耳することがかなり多いっす。

各哲学論がどうかということはひとまずおいておいて
そもそも哲学というものを大きな視覚見てみると
これは客観的な有形物では無いからそれを捉えようとする
人自身の感情や姿勢によってまったく違ったものなってしまう性質が
あることは無視できない面だと思うっす。
どんなに客観的or科学的or分析的になろうとしても
まさに「永遠に」主観的な感情論の粋を出ない面もあると思うっす。
これは前に読んだ『不安の心理学』生月誠著(講談社学術新書)
1996年初版で不安に対するアプローチについて
書かれてあったことにも通じることなんだろうけど、
(主観的無形物という点では哲学も不安も同じカテゴリ)
哲学に対してあまり感情を抑えて正面から冷静に捉えようとする
科学的アプローチは本末転倒に陥る可能性があるなと思っているっす。
でも、哲学論がすべてそういうものだと言い切ってしまうと
いくら考えても答えが出ないという哲学で言うところの
サスペンス状態に陥ってしまうっす。
この未決状態っていうのが人間にとっては一番気持ち悪い状態だから
(推理小説のカタルシスはこの点をつく)
どこかしらの結論をとりあえずは出すっす。
・・・では、どこで結論を出すのか?
言いかえてみればどんなに冷静になっても最後は感情論の結論を出すという
開き直りをどこでするのかということになると思うっす。
では「どこで開き直るのか?」ということが
その人やその学派の哲学を形作っているんだと僕は捉えているっす。
だから僕は哲学者の意見を聴くときや著作を読むときには
常に「こいつどこで開き直っているんだ?」という視点で
接するようにしているっす。(ちょっとヤなやつかも(^^;)
そして所詮は感情論の粋を出ないことなんだからこちらも開き直って
自分なりのそこへの感想を尺度にして捉えるようにしているっす。
そういう視点で見てみると西田哲学は・・・
>こうして現在は、過去・現在・未来を包んでいると理解した。
・・・そして・・・
>自我へのこだわりを捨てきった絶対無の境地にいたって、初めて世界との世
>界との対立が融解して世界がそのまま自由な自己であると感じられるである。
・・・という風に開き直っているところが共感者を集めているんだなと
感じたっす、いまを生きるしか術のない僕らの状況を肯定している
彼の哲学観には勇気づけられた人も多いだろうから(^_^)

“Making policy as a king top of the world,
Working task as a slave bottom of the world”
Yoshihiro Watanabe:School of Policy Science


読書会MLより。

2000 2/6
まろまろコラム

松山正一 『この一冊で「刑法」がわかる!』 三笠書房 1996

刑法関連で読み終えた3冊目の本。
さらに今まで理論書で把握した骨格に肉付けする目的で
判例が豊富な三笠書房の『この一冊でわかる』シリーズを
読んできたがこれでこのシリーズをすべて読み終えたことにもなる。
内容の方は他の法律版と同じように刑法でもその例にもれず
実によく様々な具体例を紹介してくれている。(その数ざっと79例)
特に刑法は事例である各論を中心に考えるとわかりやすいので
なかなかに読んでいて楽しかった。
この本を読んで初めて知ったことだが『死刑囚』や『泥棒日記』で有名な
フランスの作家ジャン・ジュネは本人も常習窃盗犯で
終身刑まで言い渡されたことがあるらしい。
その時はサルトルやコクトーの奔走で特赦を得たらしいが
「彼の作品って単なるマニアの結晶やん(^^;」と突っ込んでしまった。
僕の痛いものコレクションに新たなコレクションが加わった。

以下、チェック&まとめたところ・・・

○刑罰の分け方=「生命刑」、「自由刑」、「財産刑」、「名誉刑」

○日本の刑罰は重い方から死刑→懲役→禁固→罰金→拘留→科料→没収
・死刑~科料までが「主刑」で没収は「付加刑」

☆一つの行為が複数の犯罪にあたる場合は刑罰の量刑の枠を
それぞれ刑罰の重い方を選んでその範囲内で処罰する(54条1項)
=「観念的競合」

○懲役刑(13条)と禁固刑(16条)は共に無期と有期があり、
有期の上限は15年だが最長「20年」まで延長することが可能

○「拘留」は刑法上の刑罰だが同じ発音をする
「勾留」は刑事訴訟法上の強制処分で刑罰ではない

○裁判を下される全犯罪の90%以上が罰金刑
(罰金は原則1万円以上、科料は千円以上1万円未満)

○刑罰の「科料」と同じ発音の交通違反などで支払う
「過料」は行政上のもので刑罰ではない
→「科料」を「とがりょう」、「過料」を「あやまちりょう」と呼ぶことも

○刑期は暦による年や月の単位で計算する(22条)
→2月と3月とでは3日も違う

○執行猶予を加えることができるのは3年以下の懲役か禁固、
または50万円以下の罰金の時のみ(25条)

○執行猶予中の犯罪でももう一度だけは執行猶予を受けることができる

○仮釈放で出所した人間の数が満期釈放で出た人間の数を上回っている(56%)

○例外的だが教師に「暴行罪」(208条)を適応した判例がある

○他人の封筒などの信書を開けると「信書開封罪」(133条)
→内容を見なくても読める状態であれば該当

○「あの肉はミミズの肉だ」などの嘘の情報などで業務活動を妨げれば
実害の有無に関わらず「信用毀損及び業務妨害罪」(233条)

○憲法20条「信教の自由」を刑法上で実現させたのが
「宗教的感情に関する罪」(188条~192条)

○民訴では証人や身内にとって重大な利害関係のある事柄については
裁判での宣誓を拒否できる(民事訴訟法196条)
刑訴でも証人自身や身内などが処罰を受ける可能性のある
事柄については宣誓を拒否できる(刑事訴訟法146条)

○警官が無理矢理職務質問をすれば「公務員職権乱用罪」(193条)、
また条件が整っていない逮捕や要件が整っていない勾留をおこなえば
「特別公務員職権乱用罪」(194条)

○職務上知った他人の秘密を漏らすと「秘密漏示罪」(134条)

○「傷害罪」(204条)と「暴行罪」(208条)との線引きは問題となるが
被害者が精神衰弱症になるまでイタ電をし続けた犯人には
物理的攻撃をしていなくても傷害罪が適用された判例がある

○ペットが他人を怪我させれば買い主は「過失傷害罪」(209条)
→ただし親告罪

☆「過失」=「注意義務違反」=
「予見可能性」+「回避可能性」があったにも関わらず
「結果予見義務」or「結果回避義務」を欠いたこと
○全くの第三者でも喧嘩をはやし立てると「傷害現場助勢罪」(206条)
☆単純な理論上では殺意無しで殴って相手が死んでしまえば
「傷害罪」(204条)+「過失致死罪」(210条)で懲役最大10年だが
結果的に死を招いた傷害に対しては「あれ無ければこれ無し」の
条件関係を重視して「傷害致死罪」(205条)を適応し懲役最大15年
→故意犯よりも過失犯が重く処罰されることを「結果的加重犯」
過失致死罪」(210条)よりも「業務上過失致死罪」(211条)の方が重い

○13歳未満の女の子との性交は同意を得ていても「強姦罪」(177条)
また、強姦罪は原則的に親告罪だが輪姦の場合は告訴無しでも成立する

○要求を受けたのに人の住居などから立ち去らなければ「不退去罪」(130条)

☆線引きが難しい「強盗罪」(236条)と「恐喝罪」(249条)との違いは
主観的な判断でなく客観的な性質に注目
→被害者が現実に反抗を抑圧されたかどうかは問わない

○借金の返済であっても強要すると「恐喝罪」(249条)

☆借金の借用証でも破ると「私用文書毀棄罪」(259条)
→「毀棄」とは文書としての役割を果たさなくすることなので
隠匿行為も毀棄のうちに含まれる

○「公用文書毀棄罪」(258条)は親告罪ではないが
「私用文書毀棄罪」(259条)は親告罪

☆預かった封書全体をネコババすると「横領罪」(252条)、
中身だけ抜き取ると「窃盗罪」(235条)でこちらの方が重たい
→占有を侵害している方が罪が重い

○ローン返済完了前に商品を売っても「横領罪」(252条)に該当
→支払が終わるまでその商品の所有権は売り主にあるため

○「盗品などに関する罪」(256条)は懲役刑と罰金刑の
両方が科される刑法上では唯一の罪

○役員が焦げ付くとわかっていた融資すれば「背任罪」(247条)

☆犯人自身とその家族が証拠を消しても「証拠隠滅罪」(104条)にはならない

☆被害者やその家族、目撃証人を脅したり面会を強要しただけで
「証人威迫罪」(105条の2)

○最近の判例による違法ではない安楽死の要件・・・
1:耐え難い肉体的苦痛があること
2:患者の死が避けられず、かつ死期が迫っていること
3:肉体的苦痛を除去・緩和する方法を尽くし、他に手段がないこと
4:生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること←これが一番重要

☆「建造物損壊罪」(260条)と「器物破損罪」(261条)は
物理的に使用できなくする場合だけでなく
心理的に使えなくした場合でも該当する

☆「併合罪」の量刑の枠はもっとも重い刑の1.5倍を上限とする(47条)

☆原則的には悪事を重ねる再犯の刑期は2倍になり
情状酌量された犯人の刑期は2分の1になる

○親告罪で告訴権のある被害者に犯人が自分の罪を告げて処分を委ねると
自首と同じ扱いを受ける=「首服」(42条)

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2000 2/6
法学、刑法
まろまろヒット率3

渋谷昌三 『人はなぜウソをつくのか』 河出書房新社 1996

らぶナベ@苦手なものランキングトップクラスのカラオケを克服中、
練習していると「紙ヒコーキ飛ばし過ぎ」と突っ込まれるっす(^^;

さて、『人はなぜウソをつくのか』渋谷昌三著(河出書房新社)1996初版。
去年は個人的にも何かとウソに苦労させられたし、
僕が選んだ進路も嘘と接していくことになるものなので
嘘についてちゃんと取り上げた本を一度は読んでみようと思い、
医科大学で教鞭を取る心理学者が書いたこの本を買って読んでみた。
実際に嘘は身近なものだが「ウソはいけない」と教義的に捉えるあまりに
意識して正面から嘘と向き合う事は少ないように思える。
この本の中でもっとも印象に残り有意義だと思えるのは・・・
「嘘はその人の置かれた立場を明確にする。
・・・相手を思いやるきっかけに」と著者が述べている点だ。
この本では発達心理学的側面から「なぜ人は嘘をおぼえていくのか」
という事も取り上げられているが、当人が嘘を憶えた事情や
うそをつく状況を冷静に受けとめれば一様に責めるのは良くないなと感じた。
また、この本は嘘にまつわる実験やアンケート結果を紹介しているのだが
その中に今までについた嘘とその結果についてのアンケート答案例・・・
「(女性)3歳くらいの時に死んだふりをした→そのまま放っておかれた」
・・・というのには不覚にも笑ってしまった(^^)
子供の嘘に対しては「許せるものに対しては大いに笑ってやり、
許せないものに対しては大いに怒るなどの柔軟な対応が必要」
・・・という風な事を書いていたがこれは大人にも当てはまるだろう。
そしてこの本では普段は経験的に分かっていることでも
心理学的にはどう説明していてどのような学説があるかの記述があり、
それがなかなかに興味深かった。
日常生活を捉える際の新しいフレームワークを得た感じがする。
薄っぺらい新書のわりにはなかなかに読む価値があった一冊(^_^)

以下、その他チェックした項目・・・
○嘘の定義・・・
「騙すことによってある目的を達成しようとする意識的な虚偽の発言」
(シュテルン)←つまり無意識についた嘘は嘘とは簡単には言い切れない

○ウソの分析は「嘘の意図」と「嘘の結果」を使って
立体的に分析する(ピーターソン)

○ヒステリーや意志薄弱性の人間にみられる虚言症は
事実に反しているにも関わらず事実であるように思いこんでいる
→ヒステリーの人間の自己顕示欲求=「喝采願望」

○「halo効果」=ある人の際立った特徴があると
その他の特徴がすべてその特徴に従属して評価されること

○生後10ヶ月でも寝たふりや聞こえないふりなどの嘘をつく
→自分以外の存在がわかると子供は嘘をつき始める(ごまかしをおぼえる)

○小さな子供ほど現実の出来事と空想との産物がつきにくい
→悪意とは言い切れないので頭ごなしに怒ってはいけない

○子供が意識して嘘をつくようになる時にモデルとなるのは
「嘘はいけない」と言っている親自身(エクマン)
→ごまかした態度を子供に見せたり「言うな」と嘘を強制したり
「人を育てる」として適応のための嘘をつく人間を育てている

○子供が親に初めて嘘をうまくついた時に
子供は絶対的だった親の束縛から自由になれる(ホイト)

○契約社会の西欧では嘘に代わりユーモアが発達し、
曖昧な日本においては嘘ではないとされる外交辞令が盛んになった

○女性には「ふりをする」などの対人摩擦から身を守ろうとする嘘が多い

○嘘の自白と同じく役割が期待される嘘を社会として紡ぎだしている
=「権力を背景に持つ一種の役割期待」(浜田)

○男性は相手とうまくやっていこうとしながら
常に相手より優位に立とうとするために嘘をつく
女性はとにかく相手との摩擦をさけようとする嘘をつく(実験結果より)

☆自己防衛のために嘘を守り通すのでやがてそれが身についてしまい
その人のパーソナリティを形成する→嘘が人格を形成する側面もある

☆「防衛規制」(フロイト)=人は強い不安を体験すると
パニックになるので自分に都合の良い解釈をして自己防衛する
→相手がどんなに怒ろうとも本人には問題意識が希薄なので
どうして相手が怒っているのかわからない
(つまりどんなに怒っても意味無いわけね(;_;))

○「甘いレモンの理論」=イソップ物語にある「すっぱい葡萄」を
応用させたもの、自分のやったことを過大評価させる合理化

☆不安から一時的に逃れる「逃避」には・・・
「空想への逃避」と「現実への逃避」がある
→現実への逃避には無益なこと(テレビを見まくる)、
有益なこと(仕事に打ち込む)の二つともあるが
どうせ逃避するならば「有益な現実への逃避」を心がけたいものだ

○被害者意識の強い人間は事実を曲げて他人のせいにする
「投射」という防衛機能を持っていることがある

○自分の気持ちと正反対の態度を示す=「反動形成」
→本音を隠すための嘘

○失敗した時のための口実をあらかじめ用意しておくこと
=”self handicaping”
→自己評価の低い人間ほどこの傾向が強い

○最初の判断が間違いだったことを認めると
自分の判断能力に問題があることになりプライドが傷つくので
当人の努力不足や運の悪さなど自分勝手な嘘の理由を築き上げる
→教師や指導者に多い

○人の記憶は残りやすいが場所の記憶は残りにくい
→名刺の余白に日時や場所、要件などのメモを入れたりすると有効

○計画的に過去の記憶を強調する質問をすると
その記憶が様々に加工されてよみがえることがあるので
記憶の内容が変わってしまうことがある→意識しない嘘

○強い不安にされされている人は他人と一緒にいたいと思う
=「親和欲求」(シャクター)
→長子、一人っ子に強い

○嘘を公開して自分をその状況に追い込む=”public commitment”
→本田宗一郎が成功した秘訣

○話すよりも書くことで嘘がつけなくなる傾向がある
→「わかった」という人に対して
「具体的に計画書を書いてきてくれ」と求めることによって
嘘や寝返りの防止につながる
(“public commitment”はプライドに訴えるもの)

○人がよく考えた上で判断できるのは
そうしようとする強い欲求と能力がある時だけに限られる
→機長症候群の温床

○誰もが了承できる事から頼んで本題を切り出す
“fit in the technique”(段階的説得法)の要点は
自分の行動に矛盾が生じてしまうことへの警戒を突く点

○絶対OKしそうもないことから要請出して譲歩案を切り出す
“shut the door in the face technique”(門前払い法)の要点は
譲歩のお返しという相手の義務感と印象を良くしたいという気持ち、
そして最初の案を拒絶した事への罪を補う気持ちを突く点

○嘘でも最高の条件を出してその承諾後に修正を求める
“low ball technique”(釣り球説得法)の要点は
一旦応じてしまうと深い関係ができてしまい
それを維持しようとする気持ちを突く点

○普段使うキーワードが入ればそれに反応してしまう
簡便法=「ヒューリステック」
→どんな要請でも「~ので」が入ると了承しやすくなるなど

○自動車ディーラーや不動産屋などがメインを値引きをして
オプションでその値引き分を取り返そうとするのは
「コントラストの原理」を利用している

○人は常に相手の期待に対してもっとも敏感に反応する(ローゼンソール)

○相手への感情が同時に相手から自分への感情と共鳴する=「好意の返報性」

○集団の中の真の権力者は地位が最も高い人間ではなく、
もっともよくまねをされる人間(デッカー)

○会議などで発言しなくても相手の動作をまねることで
相手と同じ意見であることを伝える=「同調ダンス」(シェフレン)は
似たものを愛する「類似性の原理」がその根幹
→自分と違うタイプの他人に接すると「自己不確定感の脅威」を受けるため

○不自然なまばたきが多いと嘘だったり自信が無かったりする可能性が高い
→弱点を知られないように自分のまなざしを隠そうとしている

○まばたきは情報処理中は抑えられ終了すると多くなる

☆自分の気持ちを発信する能力は「顔→手→足の順」だが
嘘やごまかしの手がかりは逆に「足→手→顔の順」に出る!
→顔には漏れにくいが首からしたには漏れやすい

○会話などでの嘘の徴候・・・
沈黙に敏捷に反応する、短く話そうとする、話に柔軟性が無くなる、
手を動かしたり隠そうとする、相手との距離(個人空間)を取ろうとする

○会話に集中する電話より直接会う方が騙しやすいことが判明している
→相手の手足に注目し後日電話で確認すると見抜きやすい

○聞き間違いも言い間違いも共に「錯誤行為」(フロイト)
→ど忘れは忘れたことにしたいという願望がある時が多い

○英語に見る嘘の種類・・・
lie,deception,cheat,fraud,fake,sham,swindle,charlatan,fib,trick

○女性は嘘を漏らすこと(符号化)が多いが
男性は嘘を見つけること(解読化能力)が低いので見破れない
→よくできたものだ

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2000 2/4
心理学、教育学
まろまろヒット率5