らぶナベ@苦手なものランキングトップクラスのカラオケを克服中、
練習していると「紙ヒコーキ飛ばし過ぎ」と突っ込まれるっす(^^;
さて、『人はなぜウソをつくのか』渋谷昌三著(河出書房新社)1996初版。
去年は個人的にも何かとウソに苦労させられたし、
僕が選んだ進路も嘘と接していくことになるものなので
嘘についてちゃんと取り上げた本を一度は読んでみようと思い、
医科大学で教鞭を取る心理学者が書いたこの本を買って読んでみた。
実際に嘘は身近なものだが「ウソはいけない」と教義的に捉えるあまりに
意識して正面から嘘と向き合う事は少ないように思える。
この本の中でもっとも印象に残り有意義だと思えるのは・・・
「嘘はその人の置かれた立場を明確にする。
・・・相手を思いやるきっかけに」と著者が述べている点だ。
この本では発達心理学的側面から「なぜ人は嘘をおぼえていくのか」
という事も取り上げられているが、当人が嘘を憶えた事情や
うそをつく状況を冷静に受けとめれば一様に責めるのは良くないなと感じた。
また、この本は嘘にまつわる実験やアンケート結果を紹介しているのだが
その中に今までについた嘘とその結果についてのアンケート答案例・・・
「(女性)3歳くらいの時に死んだふりをした→そのまま放っておかれた」
・・・というのには不覚にも笑ってしまった(^^)
子供の嘘に対しては「許せるものに対しては大いに笑ってやり、
許せないものに対しては大いに怒るなどの柔軟な対応が必要」
・・・という風な事を書いていたがこれは大人にも当てはまるだろう。
そしてこの本では普段は経験的に分かっていることでも
心理学的にはどう説明していてどのような学説があるかの記述があり、
それがなかなかに興味深かった。
日常生活を捉える際の新しいフレームワークを得た感じがする。
薄っぺらい新書のわりにはなかなかに読む価値があった一冊(^_^)
以下、その他チェックした項目・・・
○嘘の定義・・・
「騙すことによってある目的を達成しようとする意識的な虚偽の発言」
(シュテルン)←つまり無意識についた嘘は嘘とは簡単には言い切れない
○ウソの分析は「嘘の意図」と「嘘の結果」を使って
立体的に分析する(ピーターソン)
○ヒステリーや意志薄弱性の人間にみられる虚言症は
事実に反しているにも関わらず事実であるように思いこんでいる
→ヒステリーの人間の自己顕示欲求=「喝采願望」
○「halo効果」=ある人の際立った特徴があると
その他の特徴がすべてその特徴に従属して評価されること
○生後10ヶ月でも寝たふりや聞こえないふりなどの嘘をつく
→自分以外の存在がわかると子供は嘘をつき始める(ごまかしをおぼえる)
○小さな子供ほど現実の出来事と空想との産物がつきにくい
→悪意とは言い切れないので頭ごなしに怒ってはいけない
○子供が意識して嘘をつくようになる時にモデルとなるのは
「嘘はいけない」と言っている親自身(エクマン)
→ごまかした態度を子供に見せたり「言うな」と嘘を強制したり
「人を育てる」として適応のための嘘をつく人間を育てている
○子供が親に初めて嘘をうまくついた時に
子供は絶対的だった親の束縛から自由になれる(ホイト)
○契約社会の西欧では嘘に代わりユーモアが発達し、
曖昧な日本においては嘘ではないとされる外交辞令が盛んになった
○女性には「ふりをする」などの対人摩擦から身を守ろうとする嘘が多い
○嘘の自白と同じく役割が期待される嘘を社会として紡ぎだしている
=「権力を背景に持つ一種の役割期待」(浜田)
○男性は相手とうまくやっていこうとしながら
常に相手より優位に立とうとするために嘘をつく
女性はとにかく相手との摩擦をさけようとする嘘をつく(実験結果より)
☆自己防衛のために嘘を守り通すのでやがてそれが身についてしまい
その人のパーソナリティを形成する→嘘が人格を形成する側面もある
☆「防衛規制」(フロイト)=人は強い不安を体験すると
パニックになるので自分に都合の良い解釈をして自己防衛する
→相手がどんなに怒ろうとも本人には問題意識が希薄なので
どうして相手が怒っているのかわからない
(つまりどんなに怒っても意味無いわけね(;_;))
○「甘いレモンの理論」=イソップ物語にある「すっぱい葡萄」を
応用させたもの、自分のやったことを過大評価させる合理化
☆不安から一時的に逃れる「逃避」には・・・
「空想への逃避」と「現実への逃避」がある
→現実への逃避には無益なこと(テレビを見まくる)、
有益なこと(仕事に打ち込む)の二つともあるが
どうせ逃避するならば「有益な現実への逃避」を心がけたいものだ
○被害者意識の強い人間は事実を曲げて他人のせいにする
「投射」という防衛機能を持っていることがある
○自分の気持ちと正反対の態度を示す=「反動形成」
→本音を隠すための嘘
○失敗した時のための口実をあらかじめ用意しておくこと
=”self handicaping”
→自己評価の低い人間ほどこの傾向が強い
○最初の判断が間違いだったことを認めると
自分の判断能力に問題があることになりプライドが傷つくので
当人の努力不足や運の悪さなど自分勝手な嘘の理由を築き上げる
→教師や指導者に多い
○人の記憶は残りやすいが場所の記憶は残りにくい
→名刺の余白に日時や場所、要件などのメモを入れたりすると有効
○計画的に過去の記憶を強調する質問をすると
その記憶が様々に加工されてよみがえることがあるので
記憶の内容が変わってしまうことがある→意識しない嘘
○強い不安にされされている人は他人と一緒にいたいと思う
=「親和欲求」(シャクター)
→長子、一人っ子に強い
○嘘を公開して自分をその状況に追い込む=”public commitment”
→本田宗一郎が成功した秘訣
○話すよりも書くことで嘘がつけなくなる傾向がある
→「わかった」という人に対して
「具体的に計画書を書いてきてくれ」と求めることによって
嘘や寝返りの防止につながる
(“public commitment”はプライドに訴えるもの)
○人がよく考えた上で判断できるのは
そうしようとする強い欲求と能力がある時だけに限られる
→機長症候群の温床
○誰もが了承できる事から頼んで本題を切り出す
“fit in the technique”(段階的説得法)の要点は
自分の行動に矛盾が生じてしまうことへの警戒を突く点
○絶対OKしそうもないことから要請出して譲歩案を切り出す
“shut the door in the face technique”(門前払い法)の要点は
譲歩のお返しという相手の義務感と印象を良くしたいという気持ち、
そして最初の案を拒絶した事への罪を補う気持ちを突く点
○嘘でも最高の条件を出してその承諾後に修正を求める
“low ball technique”(釣り球説得法)の要点は
一旦応じてしまうと深い関係ができてしまい
それを維持しようとする気持ちを突く点
○普段使うキーワードが入ればそれに反応してしまう
簡便法=「ヒューリステック」
→どんな要請でも「~ので」が入ると了承しやすくなるなど
○自動車ディーラーや不動産屋などがメインを値引きをして
オプションでその値引き分を取り返そうとするのは
「コントラストの原理」を利用している
○人は常に相手の期待に対してもっとも敏感に反応する(ローゼンソール)
○相手への感情が同時に相手から自分への感情と共鳴する=「好意の返報性」
○集団の中の真の権力者は地位が最も高い人間ではなく、
もっともよくまねをされる人間(デッカー)
○会議などで発言しなくても相手の動作をまねることで
相手と同じ意見であることを伝える=「同調ダンス」(シェフレン)は
似たものを愛する「類似性の原理」がその根幹
→自分と違うタイプの他人に接すると「自己不確定感の脅威」を受けるため
○不自然なまばたきが多いと嘘だったり自信が無かったりする可能性が高い
→弱点を知られないように自分のまなざしを隠そうとしている
○まばたきは情報処理中は抑えられ終了すると多くなる
☆自分の気持ちを発信する能力は「顔→手→足の順」だが
嘘やごまかしの手がかりは逆に「足→手→顔の順」に出る!
→顔には漏れにくいが首からしたには漏れやすい
○会話などでの嘘の徴候・・・
沈黙に敏捷に反応する、短く話そうとする、話に柔軟性が無くなる、
手を動かしたり隠そうとする、相手との距離(個人空間)を取ろうとする
○会話に集中する電話より直接会う方が騙しやすいことが判明している
→相手の手足に注目し後日電話で確認すると見抜きやすい
○聞き間違いも言い間違いも共に「錯誤行為」(フロイト)
→ど忘れは忘れたことにしたいという願望がある時が多い
○英語に見る嘘の種類・・・
lie,deception,cheat,fraud,fake,sham,swindle,charlatan,fib,trick
○女性は嘘を漏らすこと(符号化)が多いが
男性は嘘を見つけること(解読化能力)が低いので見破れない
→よくできたものだ
2000 2/4
心理学、教育学
まろまろヒット率5