財部誠一 『シティバンクとメリルリンチ』 講談社 1999

去年から始まった日本型金融ビッグバンは眼に見える形で着々と進行中で
特に今年の10月からはいよいよ株取引の手数料自由化がスタートする。
こうした流れはサーヴィスの種類が豊富になって
僕ら顧客が自分の好みで様々な形態を選べるようになるんだけど
その代わりに「知らなかった」や「教えてくれなかった」は通用しなくなる。
と、いうわけでそれなりに僕もビッグバンの流れや
使っている金融機関の事くらいは調べようと思い読み始めた本。

シティバンクもメリルリンチも銀行と証券会社という違いはあれ、
どちらも法人(ホール)相手ではなく個人(リテール)を相手にしている
現在の日本市場では唯一の外資系金融機関。
1200兆円を超える世界一の個人金融資産が眠っている日本で
この領域をターゲットにするのは当然といえば当然の方針だが
日本独自の金融文化や個人顧客の伝統的な排他性や保守性のために
各国の金融機関は個人をメインターゲットにすることに二の足を踏んでいる。
そうした中で個人を狙って進出してきたシティバンクとメリルリンチは
一体どういう企業文化を持っていてどのような経緯で成長してきたのか、
また日本市場に対してどういう戦略を持って臨んできているのかを
この本では日本金融市場のこれまでの特徴と対比しながら記述されている。

本の中ではシティバンクとメリルリンチの両方とも80年代には瀕死状態で
(シティバンクに到っては米国史上最大の不良債権を持っていた)
そこからはい上がってきた金融機関というのを強調していた。
30万円以上の預金が無いと口座維持費を取られてしまうシティバンクの方は
あまり僕とはまだまだご縁が無さそうなのでさらっと読んだが、
(100万以上預金すると他銀行から引きだしたとしても
24時間ATM手数料無料というのは惹かれるけど)
メリルリンチの方は僕個人の取引証券会社であるのでとても興味深く読めた。
特にこの本を読んで強く印象に残ったのは”Get Rich Slowly”という
メリルの理念だ、これはまさに顧客として感じていたことだった。
普通の証券会社は営業ノルマが細かく設定されているために、
顧客に大したこと無い株を安易に薦めたりすることが多々あるが
メリルの営業にはそのノルマが細かく設定されてはいない。
だから僕の担当の人と話していても他の株を強く薦められることは無い、
求めるならあくまでアドヴァイスという形で株を紹介するという感じだ。
だからとても安心感を持って窓口に立ち寄ることができる。
しかし、この営業方針が日本の顧客に理解されるかどうかは微妙だろう。
基本的にそれは顧客がある程度は自分で学ぶということが前提になるし
顧客の自己責任について他の証券会社よりも強調することになる。
僕のように株を所有することを通して市場や株式を学びたいという人間なら
まさにこれは大歓迎だし小うるさい営業が嫌いという人にも歓迎されるが
「おんぶにだっこ」な感覚を根強く持っている多くの日本の顧客にとって
このやり方は違和感をまだまだ強く感じるだろう。
そこにメリルの苦戦があるように個人的に感じた。

そしてこの本を通して感じたもう一つの大きなこと。
それは各業界で現在進んでいる規制緩和や自由化によって
「結局1社か2社しか生き残らない」と極端には言われている。
(自動車、銀行、旅行代理店、製薬会社などなど)
でもそれはトップの「何でも屋」としては1社か2社が残るというだけで
他の各社がより存在理由やアイデンティティを鋭くしてゆく
(中途半端は消えてゆく)ということだろうと感じる。
まさに「No1か?Only Oneか?」をせまられる構造になるだろう。
もちろんこれは予想というより勝手な臭い的に感じるだけのことで
実際にどうなってゆくのかは確かにはわからないけど
どちらに転んでも僕にとっては生きやすい世の中になっていきそうだ(^_^)

また、他にはこの本の中で株式市場や為替市場に限らず、
市場で最高値で売り最安値で買うことの難しさについて・・・
「大底が形成されるのは売り手がまったくいなくなってしまうからであり、
反対にマーケットが天井をつけるときは買い手が消えてしまうからである。」
・・・としているのは当たり前の話だが思わず熱くなると忘れることだ(^^;

それと日本の不動産を買い始めている外資系企業が導入している、
担保の価格変動をも金融機関の責任に入れる「ノンリコース・ローン」が
本格的に日本の不動産業界で中心になっていけば
ずいぶん不動産業や銀行などによる融資の仕事も
興味深いものになってゆくだろうと感じた。

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1999 8/19
経営学
まろまろヒット率3

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