ロバート・D. パットナム、猪口孝訳 『流動化する民主主義: 先進8カ国におけるソーシャル・キャピタル』 ミネルヴァ書房 2013

渡邊義弘@好きな言葉の一つは「かけ橋」です。

さて、ロバート・D. パットナム、猪口孝訳 『流動化する民主主義: 先進8カ国におけるソーシャル・キャピタル』 ミネルヴァ書房 2013。

イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、日本の8ヵ国を取り上げて、民主主義と社会関係資本の関係を模索する論文集。
原題は、“Democracies in Flux: The Evolution of Social Capital in Contemporary Society” (2002)

読んでみて特に興味を持ったのが、各国の論文の中で、社会関係資本の中で結束型社会関係資本よりも橋渡し型社会関係資本の変化と減少について指摘しているものが多いところだ。
まとめのところでも・・・

○より新しい形態の社会参加は、狭く、架橋的でなく、集合的あるいは公共的目的にあまり焦点を当てていない
→社会関係資本のある種の私化を示しており、より解放的かもしれないが、あまり連帯的でない
<終章 拡大する不平等>

・・・と指摘しているのは印象深い。

以下は、その他にチェックした箇所(一部要約含む)・・・

○集合的交流は、集合行為につきものの様々なジレンマを解消して、交流がなかったならば人々がお互いに信頼し合って行動しそうにないような状況でも、人々に互いを信頼し合って行動するように促す
→相互信頼は社会の潤滑油→あらゆる交換をその都度決済する必要がなければ、我々は多くのことを達成できる
<序章 社会関係ションとは何か>

○社会関係「資本」の意味→物理的資本や人的資本(道具や訓練など)と同様に、社会的ネットワークは、個人にとっての価値と集団にとっての価値の両方を産み出すからであるし、また我々はネットワークの形成に投資することが可能だから
<序章 社会関係ションとは何か>

○社会関係資本の変化の基本的問い=
誰が利益を得て、誰が得られないのか?
この形態の社会関係資本は、どのような社会の実現を推進するのか?
より多くあることは、必ずより良いことなのか?
<序章 社会関係ションとは何か>

○メンバーたちの忠誠の対象がまちまちであるとか、考え方が多様である場合には自然に働くはずの抑制作用がないと、結びつきが密で同質な集団は、不吉な結末に向けて簡単に暴走しかねない
→橋渡しを伴わない接合は、ボスニアとなる
<序章 社会関係ションとは何か>

○狭義と広義の社会関係資本=
・狭義の社会関係資本=個人が自発的に参加し、定期的に対面の集会を開く集団の中でつくられ、埋め込まれた社会資源のみを指す
→公式の自発的非営利団体、非公式な友達の集まり、近所づきあい、教会の仲間など
・広義の社会関係資本=個人が参加するグループ内で、個人の自由意志というよりも偶然、抑制、社会向上の過程などの結果として形成されたり創造されたりするものを指す
→家族、会社、民族的なグループ、地域、都市、国家など
<第4章 フランス―新旧の市民的・社会的結束>

○関心=社会・政治生活についての一連の考えや意見と関係している
→その主たる対象は、ある程度の共同性を有する生活状態―必ずしも「他の全員」の生活状態ではないにしても、同じ市民仲間と見なされ、共通の政治的コミュニティに所属していると考えられる相当数の人々の生活状態―の物質的幸福、道徳的行為、個人の発展、美的特質などの特徴
<第5章 ドイツ―社会関係資本の衰退?>

○カラオケ民主主義=政治のメイン・メニューは官僚によって用意され、政治家はこのメニューの中から、自分好みの政策を選ぶ日本の政治の特徴
→カラオケと同様なシステムが官僚の手で用意されているため、多くの人たちが自分も政治に参加できると感じているし、実際に誰が政治家になってもそこそこの実績を上げることができる
<第9章 日本―社会関係資本の基盤拡充>

○日本の社会関係資本の変化=
・閉鎖的な社会名系資本から開放的な社会関係資本へ
・安心指向型の社会関係資本から信頼醸成型の社会関係資本へ、
→名誉型集団主義から協調型個人主義へ
<第9章 日本―社会関係資本の基盤拡充>

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2016 3/15
社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)、比較政治学、政策学、経済学、コミュニティ論、アメリカ社会、イギリス社会、フランス社会、ドイツ社会、スペイン社会、スウェーデン社会、オーストラリア社会、日本社会
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