渡邊義弘@常滑警察署で開催されたソーシャルメディア講座の講師をつとめました。
(2014年4月26日 『中日新聞』朝刊・第23面 「情報発信の仕方 常滑署員が学ぶ」)
さて、ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰翻訳 『昨日までの世界―文明の源流と人類の未来』 日本経済新聞出版社 2013。
600万年の人類史の中で、農耕社会が始まったのは1万1000年前、文字や国家が生まれたのは5400年前。
人類史の視点に立てば、現代社会の習慣や制度は「今日」起こったことにすぎない。
では、その前の「昨日」までの社会はどのようなものだったのか。
パプア・ニューギニアやアフリカに残った伝統社会と現代社会を対比させながら、それぞれの特徴を明らかにして、人類が取り組む課題に対して考察する。
『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』に続いて人類史を一本の道筋で描こうとする第3弾。
原題は、“The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?”。
読んでみると、よくある現代社会への批判のために伝統社会を取り上げる論調ではなく、
弱者切り捨てなどの伝統社会の様相が克明に記載されているので、現代社会のありがたさを痛感することも多かった。
また、外部との関係、心理的な緊張については日本は伝統社会が持つ要素を色濃く残しているのが分かる。
(著者の結婚相手は日系人)
人類の歴史に真っ向から取り組む点では、『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』の方が迫力があるけれど、人類史を通して自分の生活を振り返る参考になる一冊。
以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・
○伝統的社会(小規模社会)=人口が疎密で、数十人から数千人の小集団で構成される、狩猟採集や農耕や牧畜を生業とする古今の社会で、
なおかつ西洋化された大規模な工業化社会との接触による変化が限定的にしか現れていない社会
<プロローグ 空港にて>
☆伝統社会では取引を「創出」し、それを集団間に介在させることで、社会的・政治的な目標を実現する手助けになると考えられている
→伝統的社会にとって最も重要な目標は同盟関係の絆の強化
<第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人>
☆ニューギニアの伝統的な賠償方法は以前の関係の回復に主眼を置く
→損なわれた人間関係を回復する上で、ニューギニア人にとって何より重要な要素は、
相手側に経緯を払い、相手側が精神的および感情的な被害をこうむった事実を認めること
<第2章 子どもの死に対する賠償>
☆国家社会と小規模社会の間にみられる、戦争の悪循環が繰り返される社会であるのか、
繰り返されない社会であるのかの違いこそが、仮にも国家が存在するにいたった主たる理由
<第4章 多くの戦争についての長い話>
○小規模社会では、子どもの養育に、親以外の人々が関与し、子育ての責任を社会で広く分担している
<第5章 子育て>
2014 5/1
歴史、自然科学、人類学
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