倉阪秀史 『政策・合意形成入門』 勁草書房 2012

渡邊義弘@カンボジアでの日々を「カンボジア道中記」にまとめました。

さて、『政策・合意形成入門』倉阪秀史著(勁草書房)2012。

政策形成と合意形成の入門書。
著者は環境庁職員として環境基本法、環境影響評価法の制定に携わり、専門家として柏市環境基本条例の制定、三番瀬円卓会議・再生会議に携わった経験があるので、
理論的背景と共に政策形成・合意形成の実例が詳しく解説されている。
特に著者の経験を活かした前半の政策形成部分は、理論と実践のバランスが良く、読んでいて説得力があった。
(前半の政策形成部分と比べると、後半の合意形成部分はやや迫力に欠けた)

中でも政策実現の二つの条件として、「引き金」と「合理性」を挙げ、それぞれ具体的事例を丁寧に解説しているところは、
松阪市情報政策担当官として取り組んでいる政策立案の現場体験をいくつか思い出した。
実務の振り返りにもなった一冊。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)・・・

☆制度の定義=言語、習慣、約束ごと、契約、規則、法律など、複数の個人によって相互に共有された認識基盤
<第1講 政策とは何か>

☆政策の定義=社会的な課題の解決のために制度を変えようとする活動
 (対策の定義=社会的な問題の解決のために行われる個別の行動)
<第1講 政策とは何か>

○日本の国レベルでのパブリックコメント制度は、1992年の国際環境会議(地球サミット、UNCED)が最初
<第2講 市民による政策形成・合意形成はなぜ必要なのか>

☆政策形成に市民参加が必要な理由=1:個別の状況を反映させるため、2:公共的意識を涵養するため、3:政策の正当性を確保するため
<第2講 市民による政策形成・合意形成はなぜ必要なのか>

○政策実現の2条件=
 1:引き金→アジェンダ設定
  ex.事件・事故、外圧、イニシアティヴ、イベント、判決、政策の連鎖、制度化された政策変更
 2:合理性→政策内容決定
  ex.課題適合性、技術的実現可能性、社会的受容可能性、制度的整合性、費用効率性、反作用の防止、副作用の防止
<第3講 政策をどのように作っていくのか>

○政策立案者の行動指針=
 1:時代と社会に応じた社会的課題を敏感に把握すること
 2:「引き金」を逃さずに行動すること
 3:「引き金」を作り出すように行動すること
 4:政策の合理性を確保するように努力すること
<第3講 政策をどのように作っていくのか>

○政策立案者が備えるべき能力=1:課題発見力、2:政策立案力、3:調整力
<第3講 政策をどのように作っていくのか>

○インタビューにあたっては、たとえ仮説の誤りが発見されても、仮説に執着しない
 →あくまでも現場の声を素直に受け止めることが重要
<第4講 課題発見力を養う>

○法案を作成する作業は、既存の法令に規定されたいくつかのパーツを組み合わせて、一つの新しいルールをプログラミングする作業
<第6講 どのようにして法案を作成するのか>

○やりたいことをすべて条文に書ききるのではなく、民間主体によって必要な対策が行われるように、
どの権利・義務を変更すべきか考えて、その部分を法律によって担保するという姿勢が重要
<第8講 実際に法案を作ってみる(その2)>

☆合意形成は、最終的に得られる状態が「全員の賛成」であるかどうかではなく、
プロセスの中で、社会的合意に向けて関係者の協力関係が構築されていくことがより重要
<第9講 どのように合意形成を進めていくのか>

○ファシリテイターの役割=
 1:議論の目的や議論のルールを明確にする
 2:議論に慣れていない人からもいろいろな意見が出されるようにする
 3:出された意見をまとめる作業を効率的に行う
 4:議論の成果を確認する
<第13講 参加型合意形成プロセスの運営>

○論点が対立するテーマでの議論においては、メリットとデメリットをもれなくだぶりなく整理すること自体が、議論の成果物になることもある
<第13講 参加型合意形成プロセスの運営>

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