P.B.メダウォー、加藤珪訳 『科学の限界』 地人書館 1992

渡邊義弘@健康診断の結果から中性脂肪減を目指そうと思っています。

さて、『科学の限界』 P.B.メダウォー著、加藤珪訳(地人書館)1992。

科学の限界を明らかにしつつ、その有用性と可能性を論じる科学哲学書。
著者は免疫系の研究で知られるイギリスの生物学者。
(組織移植の研究と後天性免疫寛容の発見によってF.M.バーネットと共に1960年にノーベル生理学・医学賞受賞)
原著は、“THE LIMITS OF SCIENCE” (1984)。

内容は・・・

○科学的真理とは、科学的研究の目標と考えられることが多いが、実際には科学には絶対的に明白な確実さ、すなわち批判の余地なく決定的に確実なものはありえない
<科学(scians)についてのエッセー>

○実際には、科学の方法というようなものは存在しない
→科学者は問題を解決するためのある種の道筋ー素人のまったくの暗中模索よりは成功の可能性の大きい研究の方法ーはもっているが、論理的に記すことのできる発見の手順を用いるわけではない
→科学者の日々の仕事の大部分は、自分の仮説にもとづく想像の世界が現実の世界と一致するかどうかを確認するための観察や実験を行なうことにある
<科学の発見はあらかじめ計画できるか>

○演繹法と帰納法の限界
・演繹法は、すでに示されている情報をはっきりした形にするにすぎない
 →手順によって新たな情報を生み出すことはできない
・帰納法は、仮説であって、その確実性を主張するものではない
→既知の事例を合計した以上の情報を含むことはありえない
<科学の限界>

・・・という限界を明確にして・・・

○政治が実は可能なことをする術であるとすれば、科学の研究はまさしく解けるものを解く術である
<科学(scians)についてのエッセー>

・・・と結論づけている。
その上で・・・

○科学における生産的行為は仮説の提示、「推測」することの中にある
<科学(scians)についてのエッセー>

○仮説は創造的な思考の産物
<科学の限界>

・・・として仮説の持つその創造的な側面を強調。
芸術と同じように科学はこれからも枯渇しないと主張している。
著者のこの考えは、解説の中で紹介される・・・

○電子が何かについては知らないが、電子がどのように働いたり、作用するかは知っている
→科学にできることは、そうしたことを明らかにするこ
<解説ー研究の方法とメダウォー>

・・・という事例が分かりやすい。
また、情報について・・・

○情報量保存の法則=いかなる論理的推論のプロセスも公理および前提に含まれる情報量、
あるいは推論の出発点となる観測結果の記述に含まれる情報量を増大させることはできない
<科学の限界>

○情報=意味のあるメッセージの伝達を可能にするような構造もしくは秩序、あるいは何らかの構造もしくは作業に特異性を与え、
規定するコミュニケーションという形の構造もしくは秩序
<科学の限界>

・・・と位置付けている点にも注目した。

ちなみに、著者はロンドン大学時代にポパーと同僚だったとのことで、ポパーへの言及が多いのもこの本の特徴の一つとなっている。

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2012 7/9
科学哲学、学問一般
まろまろヒット率3

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