稲葉陽二 『ソーシャル・キャピタル入門 - 孤立から絆へ』 中央公論新社 2011

「東北行脚、再び」でワカメ収穫のお手伝いをしたことが新聞記事にも取り上げられました。
(2012年6月5日 『中日新聞』朝刊・第16面 「石巻の漁師応援の輪 料理写真でワカメPR 松阪市職員のネット投稿を機に」)

さて、『ソーシャル・キャピタル入門 - 孤立から絆へ』稲葉陽二著(中央公論新社)2011。

ソーシャル・キャピタル(Social Capital)=社会関係資本の入門書。
内容は、概念の整理(第2章)や意義(第3章)から、測定方法(第4章)や格差との関係(第7章)、暗黒面(第8章)まで、社会関係資本をめぐる議論が一通り解説されている。
さらに、巻末の巻末の「もう少し社会関係資本について知りたい読者のためのリーディングリスト」も充実しているので、入門書としてとても分かりやすい。
また、入門書としての解説だけでなく・・・
一般的な社会関係資本の定義に心の外部性を加えて、「心の外部性を伴った信頼・規範・ネットワーク」と定義する。
「経済格差の拡大が社会関係資本を壊して人々の健康水準や教育に悪影響を及ぼす」と主張する。
・・・などの著者の独自の立場も明確に示しているので、社会関係資本に関連した問題を考えるきっかけともなっている。
読みやすく、示唆に富む一冊。

以下はチェックした箇所(一部要約含む)・・・

○社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)=信頼、互酬性の規範、ネットワーク(絆)
<第1章 社会関係資本とは何か>

○社会関係資本の外部性は、市場に内部化してしまうと人の心を踏みにじることになり、社会関係資本そのものを毀損してしまう可能性が高い
<第1章 社会関係資本とは何か>

○著者の定義=社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)=信頼、互酬性の規範、ネットワーク(絆)、に心の外部性を加えて・・・
「心の外部性を伴った信頼・規範・ネットワーク」
<第2章 信頼・規範・ネットワークー三つの要素>

○社会関係資本の基本概念=異質な者同士を結びつけるブリッジング(橋渡し型)な社会関係資本+同質な者同士が結びつくボンディング(結束型)な社会関係資本
<第2章 信頼・規範・ネットワークー三つの要素>

○社会関係資本の研究では一般的に、「たいへいの人は信頼できると思いますか、それとも、用心するに越したことはないと思いますか?」という問いを用いて社会全般への信頼(一般的信頼)を計測している
→日本では「国民性の研究」(統計数理研究所)、国際的には”World Value Survey”などが代表的
<第4章 何がかたちづくるのか、どう測るのか>

○社会関係資本は、(略)結局のところ、人の心を通して測る部分が出てくる
→やり方を誤れば倫理上の問題がある
<第4章 何がかたちづくるのか、どう測るのか>

○著者の立場=格差の拡大が信頼・規範・ネットワークである社会関係資本を壊し、それが人々の健康水準や教育に悪影響を及ぼす
<第7章 社会関係資本を壊すー経済格差をめぐる議論とその現状>

○生活水準の違いが、人々の間の共通のアイデンティティを損ない、人々の間の優越感と劣等感という概念を助長させ、
さらにヒエラルキーや権威主義的な価値観を生む
→地位争い、自己利益や物質的成功の強調、個人的な利得nためお攻撃的な搾取や、他人の幸福への配慮の欠如といった状況が増える
→これらすべては、人々の社会関係の質を劣化させ、社会関係資本の協調的な側面をことごとく否定し、
 信頼という社会関係資本の基本を毀損させる
→劣等という汚名を拒否する人々による暴力の増加、それに伴うコミュニティの崩壊、加えて人々の健康へのストレスを増やすことになる
<第7章 社会関係資本を壊すー経済格差をめぐる議論とその現状>

○格差と社会関係資本との因果関係の経路まとめ
1:平等な社会の方が、構成員が同じ価値観を持ち、協調的に働きやすい
2:不平等は所得階層間の社会的距離を拡大させる
3:不平等は貧困層の自尊心を傷つけ、富裕層との協調行動を難しくさせる
4:富裕層は貧困層と接触する積極的理由はないので、貧困層の接触先は同じ層に限られ、
 貧困層の社会的接触先の質、つまり、彼らの社会関係資本の質はますます悪化する
5:経済的不平等は情報の非対称性を拡大させ、異なるネットワークで情報量の差を拡大させる
6:経済的不平等は信頼を壊し、取引費用を拡大させある
7:過度の不平等は将来に対する人々の期待を失わせ、協調的行動を阻害する
<第7章 社会関係資本を壊すー経済格差をめぐる議論とその現状>

○社会関係資本のわかりやすいダークサイド=反社会的勢力のようにそのネットワーク自体が負の外部経済を生じるもの
+腐敗のように市場に内部化しようとする過程で負の外部性を生じるもの
<第8章 社会関係資本のダークサイド>

○ボンディング(結束型)な社会関係資本の問題点=しがらみ、
ブリッジング(橋渡し型)な社会関係資本の問題点=互酬性の規範(お互い様)は通用しないことが多いので、協調性を欠くことが多い
→特定化信頼は、ネットワークを通じたつきあいの積み重ねで醸成されるが、
場合によってはネットワークを通じて、信頼ではなく、逆に不信を膨らませてしまうケースもある
<第8章 社会関係資本のダークサイド>

○社会関係資本は良いことばかりでなく、不祥事の温床になるケースもあるだろう
→不平等させ助長しかねない
<第8章 社会関係資本のダークサイド>

☆水平的組織と垂直的組織の違い
・水平的な組織=技術革新や評判の伝播には向いているが、メンバーの退出が容易で互酬性の規範やそれに基づく戦略的な信頼は維持しにくい
・垂直的な組織=メンバーが固定しているため規範が成立しやすく、メンバー間の信頼は厚いが、対外的には排他的になりがち
<第9章 豊かな社会関係資本を育むために>

○「きずな」という言葉を意味・・・
・世の中には市場では評価できない価値があり、行き過ぎた市場化に警鐘を鳴らす
・「きずな」を壊す経済格差に対する批判
→「きずな」の重視を標榜するということは、格差に伴う不平等を是正するということだ
<第9章 豊かな社会関係資本を育むために>

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2012 6/14
経済学、社会学、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)
まろまろヒット率4

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