司馬遼太郎 『城塞』 新潮社 1994(新装改訂版)

まろまろ@堂島ロール初体験です。

さて、『城塞』司馬遼太郎著(新潮社)1994(新装改訂版)。

関ヶ原の戦い後、天下を取った徳川家康は大阪城に残る淀君と豊臣秀頼の排除を目論む。
外交と謀略を使って大阪城方を追い込んでいくのだが・・・

大阪冬の陣と夏の陣をクライマックスに、それまでの政略過程も詳細にえがく長編歴史小説。
この本は1971年初版の全三巻を、上下二段組み861ページの一冊に新装改訂したもの。

『関ヶ原』の続編的な位置を占める作品なので読んでみたけれど、まず繰り返しの記述が多いことが気になった。
繰り返しは司馬作品の特徴で、それが魅力の一つだけど、この作品に関しては枚数かせぎかと思うほどくどく感じられた。

そう感じが原因の一つには徳川家康が徹底的に悪役としてえがかれていて、その政治性の高さに陰険な印象を受けるからだろう。
でも、だからといって徳川方と対する大阪城方も迷走するばかりで、どちらも感情移入できずもやもやしたものが残った。

思うに、この作品から感じるこうしたもやもや感や割り切れない感覚こそが、大阪の陣の表現でもあるのだろう。
戦国時代から続いた動乱の時代が正式に終わったことは、自立した英雄たちよりも小物タイプが生き残る時代でもある。
そういう時代がはじまったんだという著者なりの歴史の視点が折り込まれていると感じた作品。

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2007 11/17
歴史小説
まろまろヒット率3

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