ヴォー・グエン・ザップ、真保潤一郎・三宅蕗子訳 『人民の戦争・人民の軍隊―ヴェトナム人民軍の戦略・戦術』 中央公論新社 2002

大阪の大国町コミュニティで初オフ会を開催した、まろまろ@まさに情報機動戦です。

さて、『人民の戦争・人民の軍隊―ヴェトナム人民軍の戦略・戦術』ヴォー・グエン・ザップ著、真保潤一郎・三宅蕗子訳(中央公論新社)2002。

現在のベトナム民主共和国の独立戦争で中心的な役割を果たした、ベトナム人民軍とベトミンの最高指揮官ヴォー・グエン・ザップによる戦略書。
ベトナム人民軍はインドシナ戦争でフランスを、続いてベトナム戦争でアメリカを破っているけれど、
原著は”Guerre du peuple, Armee du peuple”(1961)なので、まだベトナム戦争が終結(1975)していない時期のもの。
そのため、インドシナ戦争で北ベトナムの独立を確定したディエン・ビエン・フーの戦いがクライマックスに書かれている。

フランスは第2次世界大戦で弱体化していたとはいえ、20世紀半ばから21世紀初頭の現在までアメリカは世界最強の国。
そのアメリカ軍を破ったベトナム人民軍の戦いは戦略を語る上では外せない存在。
特にベトナムはロシア(ソ連)のような工業国ではなかったし、中国のような人口が多い国ではない小国。
そんなベトナムが長期にわたって大国と戦えたのはゲリラ戦を中心とした戦いがあったからで、
この本の著者グエン・ザップは世界で最も成功したゲリラ戦の指導者の一人と言える。

そんな著者の本なので楽しみに読んでみると、ベトナム労働党の自画自賛とマルクス・レーニン主義的な抽象論ばかりが目についてしまった。
プロパガンダの意味もあってか「正しい」や「適切な」という単語は多かったけど、何がどう正しかったのか具体的でなかったのが残念。
そういう意味で同じゲリラ戦の指導者による戦略書としては、毛沢東の『遊撃戦論』やチェ・ゲバラの『ゲリラ戦争』に比べるとだいぶ見劣りがしてしまうように感じた。

ただ、ゲリラ戦を「まず第一に長期戦の戦略でなければならない」としている点。
<第1章 人民の戦争・人民の軍隊>

武装蜂起について、「蜂起を一つの技法だとするならば、この技法の内容に必要不可欠な点は、
その転換を各時期の政治情勢に適した新たな闘争形態に誘導することと、
各時期の政治闘争の形態と武装闘争の形態との間に正しい関係を維持していくことである」としている点。
<第2章 党は武装蜂起の準備と1945年8月の総蜂起を成功裏に指導した>

また、「ゲリラ戦を維持し、発展させていくためには、必然的に機動戦に行き着かねばならない」として正規軍による戦いも強調している点。
<第3章 党はフランス帝国主義者とアメリカ帝国主義者との長期抵抗戦争を成功へと導く>

・・・などは興味を持った。

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2007 10/25
戦略論
まろまろヒット率2

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