養老孟司 『バカの壁』 新潮社 2003

肝機能回復のためにゴーヤ茶を飲んでいる、
らぶナベ@水筒を持ち歩いている人間を見かけたら、
もしかしたらそれは僕かもしれません(^^)

さて、『バカの壁』養老孟司著(新潮新書)2003年初版。
家に泊まりに来た人がくれたので読んでみた今年のベストセラー本。
脳解剖学者が書くエッセイ。

「一般に、情報は日々刻々変化しつづけ、それを受け止める人間の方は変化しない、
と思われがちです。情報は日替わりだが、自分は変わらない(略)あべこべの話です」
→「生き物というのは、どんどん変化していくシステムだけども、
情報というのはその中で止まっているものを指してる。
万物は流転するが、『万物は流転する』という言葉は流転しない」
(第4章:万物流転、情報不安)と述べているところや、
「組織に入れば徹底的に『共通了解』を求められるにもかかわらず、
口では個性を発揮しろと言われる。どうすりゃいいんだ、と思うのも無理の無い話。
要するに『求められる個性』を発揮しろという矛盾した要求が出されている」
→「(教育関係者へ)おまえらの個性なんてラッキョウの皮むきじゃないか」
(第3章:「個性を伸ばせ」という欺瞞)っと言い切っているところなどは
勢いがあって肯きながらサクサクと読んでいける。

また、「教育の現場にいる人間が、極端なことをしないようにするために、
結局のところ何もしないという状況に陥っているという現実があります」
→「(わたしは)自分が面白いと思うことしか教えられないことははっきりしている」
(第7章:教育の怪しさ)と述べているところにはすごく共感した。
ときどき僕は人から教え上手とか説明上手と言われることがあるけれど、
それは誤解で、僕は人に「教える」ことはまったくできないと考えている。
ただ、自分が必要だと思ったり大切だと思うことを相手に伝える、
共感することはできると思っていたところだったので、
そういうことを感じている人が他にもいたんだと思ってちょっと安心。

・・などなど、通して読むとけっこう面白いけど、
飲み屋のクダまきおっさんトーキングの色合いが強くなる後半は
ぐぐっと説得力と小気味良さが落ちてしまっている。

ちなみに、河合隼雄(心理学)といい、この本の著者といい、
こういう系のベストセラーを出す人が
心理学や脳科学の分野の人というのが現代的な特徴なのかな?

以下はその他にチェックした箇所・・・

○真に科学的である、というのは「理屈として説明出来るから」
それが絶対的な真実であると考えることではなく、
そこに反証されうる曖昧さが残っていることを認める姿勢。
→イデオロギーは常にその内部では100%だが、科学がそうである必要はない。
<第1章 「バカの壁」とは何か>

○人間はどうしても、自分の脳をもっと高級なものだと思っている。
実際には別に高級じゃない、要するに計算機。
<第2章 脳の中の係数>

○V.E.フランクルは「意味は外部にある」と言っている。
「自己実現」などといいますが、自分が何かを実現する場は外部にしか存在しない。
<第5章 無意識・身体・共同体>

この本をamazonで見ちゃう

2003 10/22
エッセイ、脳科学、科学論、教育論
まろまろヒット率3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です