小此木啓吾 『秘密の心理』 講談社 1986

懸賞で当てた図書券を『バガボンド』(講談社モーニングKC)購入に使った、
らぶナベ@先入観を捨てて読んでみると意外に面白いっすよ(^_^)

さて、『秘密の心理』小此木啓吾著(講談社現代新書)1986年初版。
精神科医が書いた秘密がもたらす作用をテーマにした本。
これは文句なしに面白い!(^o^)
精神医学のアプローチから秘密が与える人間関係への影響や
さらには社会構造までを視野に含めて書かれている。
症例による具体例だけでなく有名な映画や物語の中に潜む秘密の効果を
心理的作用の視点から分析しているので読んでいて楽しかったりする。
例えばこの著者によると『忠臣蔵』の面白さはどうやって秘密を全うしたかの
苦労話にあるし『勧進帳』は秘密を見逃すところが感動を与えてくれる。
松本清張の『天城越え』は思春期に誰もが体験する親や憧れの人に対する
原光景体験(幻滅や失望)と自律がテーマだとしている。
何となく納得(^^)
さらにこれ系の本によくあるような単なる分析に終わらずに、
現代を原光景(親や尊敬するものに対する幻滅)社会と定義して、
その病理性を騒ぎ立てるのではなく積極的な歴史的過程と捉えなおして、
不可知に耐える自我能力の必要性を提起している点は
単なる医学者の書いた心理本を越えている。
主張の善し悪しを別にしてもその挑戦的な姿勢はすばらしい。
薄い本だけど単純に面白さだけでいえば今年読んだ本の中で
1,2をあらそうくらいの本じゃないかな?

以下は重要だと思ったところから書き出したチェックポイント・・・
☆アンネ・フランクはキティさんという架空の人物を造りあげ、
この対象と対話するという形式で『アンネの日記』を書いた
→子供は親以外に秘密や親密さを共有する対象と出会い、
心の中でそれらとの関わりを通して親から自立した心の構造を形成する
→一歩誤ると親からも離れ、しかも新しい対象も発見できず、
人との関わりのよりどころを失って心の真空状態に落ち込むおそれがある
→親以外の親密な対象を持つことができるかどうかが発達心理上重要

☆恥の心理はその人物が心の中でどんな自己像を持とうとしているか
によって決まる面がある→本質的には自分に向けられた怒り

☆相手に誉めてもらうなどの形で自己愛を満たしたいという
受け身的な自己愛の満たし方が日本的な甘えの心理
→相手にどう思われるか、自分の自己像を受け入れてもらえるかどうかが
日本的な人間関係では最も重要なテーマとなる

☆人みしりは日本的な甘えや依存の心理と深く関わっている
→日本人が世間に対して自分のことを恥ずかしいと思うときの、
その世間とは全くの他人を意味しているわけではなく
むしろそれは顔みしりの集まった自分と一体の世間のことである
→こちらが優しい相手を期待するからこそ人みしりも起こる

☆公式な課題集団の情報伝達構造に十分な信頼をおかず、
非公式な憶測集団に自分を置いて情報を得ようとするのが日本的組織の特徴
→職場からすぐに帰らなかったり仕事の後にみんなで
飲んだりしなければならなくなるのはこのため
→米国の精神科医による日本人は同性愛的な気持ちが強いとの指摘

☆原光景体験を通して親に幻滅した子供はその幻滅と失意の克服を通して
やがては親との間に同等な人間同士としての対話的構造を作り上げていく、
現在の原光景社会はそのような社会的自我の発達と真の対話的構造を持った
情報交流可能なより成熟した社会への過渡的な一段階とみなすことができる、
このような積極的な歴史的意義を見失って現代の様々な原光景反応を
ただいたずらに病的な徴候とみなすことは集団幻想時代へ逆コースを
引き起こすおそれがある、それはタブーと抑圧の支配する隠蔽社会への逆戻り
→いま我々が身につけなければならないのは不可知に耐える自我能力である

・”secret”はラテン語”scereta”(分泌物)から来ている
→自分の分泌物を触れさせない距離感が他人との境界

・一杯飲みたくなる気持ちの中には秘密(分泌物)を共有する
一体感への渇望がある

・それまでタブー視していた家族についての不満や批判を
家族以外の人間に打ち明ける経験が自我の目覚めを体験するきっかけとなる
→精神分析やカウンセリングが発展したのは核家族化が進んで
個々の家族メンバーに対する家族の支配権が弱まったため

・子供の心の健全な発展には親は親、子供は子供という
世代境界の確立された秩序感覚が大切
→この世代境界はあらゆる組織にも存在する

・乳幼児期から子供は親に対して大便処理に関する嘘をつく
→フロイトによると自分の大便に対する執着が自己感覚の形成と
自律的な意思の成立につながっていくとされる

・サディズムとは相手の見せかけの強さ、尊厳、美しさなどの社会的、
人格的価値の背後にひそむ、弱さ、汚れ、醜さを暴く心理のこと
(その心理は強迫告白の心理と深層で深く関わっている)
→いじめ、家庭内暴力を引き起こす衝動がこれ

・原光景反応(幻滅など)が進むと自分自身が直接触れることのできる
狭い世界に退行したり現実を超えた神秘的な世界を頼りにするようになる

・人みしりは人に笑いものにされることを恐れる心理であり、
ユーモアは自分から笑いものになって結果として
他の人から笑いものにされることを防ぐ心理的技術

この本をamazonで見ちゃう

2000 11/18
心理学、教育学、社会学
まろまろヒット率5

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です