折橋徹彦・杉田正樹 『うその自己分析―虚感の時代を生きる』 日本評論書 1999

NHK総合でいま一番あつい番組、『プロジェクトX』
マニアのマニアによるマニアのための番組だと思えてならない、
らぶナベ@あの痛さが最高っす!

さて、『うその自己分析~虚感の時代を生きる~』
折橋徹彦・杉田正樹著(日本評論書)1999年初版。
社会心理学者(第1部)と哲学者(第2部)による嘘に関する共著。
嘘が良いとか悪いとかいう倫理観ではなくどうして嘘をついたのか、
その背景には何があるのかという科学的アプローチを持って
嘘と接する必要がある仕事をする予定なので読んでみた。
これは以前読んだ『人はなぜウソをつくのか』渋谷昌三著(河出書房新社)
1996初版を読んだ時と同じ動機からだが精神医学的な視点で書かれた
『人はなぜウソをつくのか』と違って、この本はエッセイ風になっている。
(自然科学と社会・人文科学との本質的な差でもあるのだろうけど)

特に哲学者が書いた第2部は純粋な読み物としてもとても面白く感じた。
例えば「世界一の美女はいたのか、それともいなかったのか」
というエピソードはドイツの捕虜収容所でフランス兵が
「この独房に世界一の美女がいることにしよう」というルールを決めて
活き活きと生活しているのに対して
捕虜収容所の所長がその世界一の美女を連行しようとし、
またフランス兵たちがそれに抵抗するというものだ。
世界一の美女なんていなかったに決まっているが、かといって
彼らを動かしていたのが世界一の美女であるのことも事実だ。
そしてこれこそが宗教や神や真理、社会原理だと言っている。
「意味は、意味であるが故に無意味である、と言える。なぜか。
ゲームがルールによって支えられているように、
意味が成り立つのは、それを支える広い意味での文法があるからだ・・・
意味は、最終的な文法がない以上、宙づりになっている、ということだ」
という風に結論づけているが妙に印象に残っている。
身近なエピソードだけでなく各哲学者の嘘に対する接し方を紹介するなど
哲学入門としてもすごく良い本ではないだろうかとも思った。
社会心理学の視点で書かれた第1部も面白かったがどうせ非科学的ならば
割り切って人文科学的なアプローチに徹したこの第2部の方が説得的だった。

基本的に僕は社会・人文科学的な心理学のアプローチには
どうも説得力が欠けると感じる傾向があるけれど
この本は読み物としても面白かったし、倫理的ではなく事実的として
嘘を考えるきっかけとして良い本だった。
けっこうお薦めかもしれない。

この本をamazonで見ちゃう

2000 10/31
心理学、教育学、社会学、哲学
まろまろヒット率4

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です