弥永真生 『リーガルマインド会社法』 有斐閣 1999(第4版)

気がつけば自分もオリンピックが開催されていた、らぶナベっす。

さて、『リーガルマインド会社法』[第4版]弥永真生著(有斐閣)1999年第4版。
「この本の目的は会社法を素材にどうやって説得するかについて
イメージを持ってもらうこと」と最初に著者が断言しているだけあって
会社法的な視点や考え方についての理解に重点をおいた学術書。
会社法の視点としてそれぞれのポイントをカテゴライズし
それらの関係をあらわした図解を基本にしていて、
どんなに後半に進んでいってもその図解に書かれた視点に言及しているので
いまの議論が会社法全体の中でどういう位置を占める話なのかが
簡単に理解できるでとても使いやすい。素直に良いと言える一冊。

<はしがき>
☆法律は説得の学問であり、相手を納得させるためには
「結論への筋道」と「結論の妥当性」が必要
→一人一人の価値観が異なる以上、「説得力ある結論」は
必要性と許容性によって支えられているから

<「結論への筋道」入門>
☆文理解釈(条文にこう書いてある)が本来は普通の解釈だが
それでは妥当な結論が得られないとか直接規定した条文がない場合に
どのように処理するかが法律学を知っている者の腕のみせどころ
→法律の文言どおりに考える場合以外は立法趣旨をまず示すことが必要
→条文を文言どおり適用すると妥当な結論が得られない場合には
縮小解釈を使う、直接規定した条文がない場合には拡大解釈、
類推解釈、反対解釈を使うなど

<第1章 会社法の意義と目的>
○会社法の規定は原則として強行法規なので特に規定がない限り
強行法規や定款に違反した行為は無効
←会社の社員間や社員と経営者の間には利害の対立が生じやすく
一般の株主の利益を守るために法の後見的作用が必要になるから
(特に株式会社は関係者が多数にのぼるため)

○取引の安全と会社の利益が衝突する場合には「相対的無効」が構成される
(会社の対外的行為の効力を善意の第三者に対する関係では有効と考えるが
他の関係では無効と考える)

<第2章 営利社団法人としての会社>
○濫用、形骸化など形式的独立を貫くことが正義公平に反する場合には
会社の独立性を否定して会社(法人)とその背後にある社員(株主)とを
同一視する「法人格否認の法理」が適用されることがある
→契約の解釈によって解決できる場合が多いのであまり適用されない

<第3章 株式会社法の前提と視点>
☆表見代表取締役(262条)や表見支配人(42条)などの「外観主義」の要件は
外観の存在、外観への信頼、外観作出への帰責(予因)

<第4章 株式>
○株主平等の原則に反する会社の行為は取引の安全と衝突しないので無効

○株式譲渡の制限に違反した場合は会社の利益や株式会社制度の健全化の
観点からは無効とすべきだが取引の安全を図るため相対的無効と考えるべき
また、会社の利益を図ることのみが制限の目的の場合には対会社の関係で
無効にすれば足りるから当事者の利益を考慮して当事者間では有効とする

○「自己株式の取得禁止」(210条)とは発行会社の計算において
発行会社の株式を取得すること
・自己株式の無償取得は210条違反には当たらない
 →会社資産を減少させることも不当な投機に悪用されることもないから
・会社名義であっても他人の計算でなされれば210条違反には当たらない
 →株式取得から生じる損益は第三者に帰属し第三者が資金を出しているので
 資本維持の原則に悪影響を与えないから

<第5章 機関>
☆株式会社の機関の特色
=「機関資格と社員資格の分離」、「機関権限の分掌」

☆「株主総会の決議の瑕疵を争う訴え」には
決議の成立過程における手続や法令・定款に違反したか著しく不公平な場合、
決議の内容が定款に違反した場合、特別利害関係人が議決権を行使したため
著しく不当な決議がなされた場合などの「決議取消の訴え」(247条)と、
決議が存在しない場合または決議内容が法令に違反した場合の
「決議不存在・無効確認の訴え」(252条)がある

○「決議取消の訴え」は判決の確定があるまでは一応有効な決議を
その決議の時に遡って無効とすることを目的とする形成訴訟
→裁判所は取消の訴えが手続の瑕疵についてはその違反事実が重大でなく
かつ決議の結果に影響を及ぼさないと認められる時には
請求を棄却することができる=「裁量棄却」(251条)

○「決議不存在・無効確認の訴え」は当然に無効なので
いつでも誰でも主張でき、また必ずしも訴えによることを要せず
抗弁としてでも主張できる

☆「取締役会」←意思決定の権限、
「代表取締役」←執行自体と対外的代表の権限
・・・の両機関が並立的に株式会社の業務執行機関を構成している

○取締役がその取引によって取得した金銭その他の物を
会社に引き渡させる「介入権」(264条3項)を取締役会は持つ

○取締役が違法な行為をしようとしている時その行為をやめることを請求する
「違法行為差止請求権」を株主(272条)と監査役(275条の2)は持つ

<第6章 設立>
☆会社の設立の特色=「実体の形成」、「法人格の付与」

☆設立では資本充実(資本に見合う会社財産が会社に確保されていること)が
最重要

<第7章 株式会社の資金調達>
○「株式」←株主たる地位に基づく団体的性格、
「債権」←単に債権者としての地位に基づく個人的性格

○株主総会は法令・定款記載事項につき決議できる(230条の10)のに対し
社債権者集会の決議事項は法定され、それ以外の事項を決議するには
裁判所の許可を必要とする(319条)

○新株発行は会社の一部設立の面を持つ
→実質的には会社の人的・物的規模の拡大

<第8章 企業の基本的事項の変更>
○「合併比率」=合併の際、消滅会社の株主にその有する株式何株に対し
存続会社のいかなる新株を何株割り当て
または存続会社の株式を移転するかという割当比率
→合併による資本増加額は消滅会社の純資産額を超えてはいけない、
当事会社の財産状態からみて公平でなくてはいけないという原則がある

<第9章 株式会社の計算>
☆株式会社の計算に関する法規制の目的
=「配当可能利益の算定」、「会社の財務内容の開示」

○会社債権者が会社財産維持に重大な利害を有することを考えて、
違法配当が行われた際には会社債権者は違法配当額を会社に返還することを
株主に対しても求めることができる(290条2項)

○会社債権者が取締役に違法配当額の弁済を請求できる
266条1項1号は無過失責任

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