伊藤真 『伊藤真の刑事訴訟法入門』 日本評論社 1998

この本で『3時間でわかる』シリーズに続いて『伊藤真の入門』シリーズも
六法を通してすべて読み終えたことになる。
去年の11月から始めた法学もそろそろ初級編を越えたところだろうと感じる、
らぶナベ@約3ヶ月で基礎を固めるられたのは天佑だろう(^^)

さて、その『伊藤真の刑事訴訟法入門』伊藤真著(日本評論社)1998年初版。
刑事訴訟法は民事訴訟法と比べて構造も簡単だし流れも一本しかないので
あまり気合い入れて勉強するまでも無いし何より実際にもお堅い分野なので
僕自身あまり携わることは無いだろうと思っていたがこの本の中で著者が・・
「刑事訴訟の場は法益がもっとも鋭く対立する場なので
刑事訴訟に携わることは法律家としての真価が問われる」
・・・という風な書き方をしていたのに思わず反応してしまい、
「それなら一度は携わってみてやろうか?」と思ってしまった。
根が単純なので相変わらずこういう挑発に弱い(^_^)
内容の方は刑事訴訟法は「応用憲法」とも呼ばれるくらいのものなので
(概念もドイツ法を元にした刑法よりも英米法を元にした憲法に近い)
刑事訴訟法上の論議で解決できない時は常に憲法に戻るところが根幹だろう。
これは憲法31条(「適性手続の保障」)以下で国家の憲法としては例外的に
刑事手続きに関する条文が事細かく規定されいているのにも由来している。
憲法という抽象性の強いものを最も法益の対立が激しい場で実現させるという
この刑事訴訟法は「現実的な割り切りも必要」と著者も言っているように
どうやら携ってゆくだけの価値がありそうな感じだ(^^)

以下、チェック&まとめた箇所・・・
☆刑事訴訟法とは「刑法を実現するための手続」

☆「真実発見」と「人権保障」との調和が刑事訴訟法のテーマ
(人権保障=手続保障)

☆たった一人の無実の人のために多数の真犯人を逃がす考えは
憲法13条の「個人の尊重」という趣旨から来ている

○刑事訴訟法が実現しようとしている刑法は明治時代からのドイツ法体系を
ベースにしているが刑事訴訟法自体は戦後のアメリカ手続法の影響を
受けているのでそのギャップがどうしても出てくる

○刑事訴訟法と民事訴訟法の違い・・・
・「訴訟物」→刑訴の「訴因」(検察官の主張する過去の具体的事実)
      =民訴の「権利」(いま現在の関係)
・刑訴の「公判」=民訴の「口頭弁論」
・刑訴の「実体裁判」&「形式裁判」=民訴の「本案判決」&「訴訟判決」
・刑訴の「訴因の変更」=民訴の「訴えの変更」

<捜査>
○捜査=「被疑者の身柄確保」、「証拠の収集・保全」

○刑事訴訟法では警察官=「司法警察職員」
→警察官という言葉は出てこない

○警察官自体は「行政警察活動」と「司法警察活動」の二つの仕事がある

○検察官も司法警察職員も行政権に属する(司法権には属さない)

○捜査構造論・・・
「糾問的捜査観」VS「弾劾的捜査観」
(強制捜査は認められる)VS(強制捜査は認められない)

○もっとも捜査と人権との対立が生じるのが「職務質問」(警職法2条)
→職務質問は行政警察活動の一環にすぎないのであくまで任意

○「捜査の必要性」VS「人権侵害の危険の防止」の調整について判例&学説は
具体的な事件ごとに必要性と相当性を判断して適法性を判断するとしている

○職務質問でおこなわれる「所持品検査」の根拠は警職法2条1項

○自動車検問を正面から定めている法律はない

○強制捜査は例外的な場合で基本はあくまでも「任意捜査の原則」(197条)

○強制捜査に関しては・・・
立法権からの「強制処分法定主義」(197条1項但書)
司法権からの「令状主義」(憲法33条、35条)
・・・のふたつの歯止めがある

○強制捜査=
・「証拠の採取」=「捜索」、「押収」、「検証」、「鑑定」
・「被疑者の逃亡防止・罪証隠滅の防止」=「逮捕」、「勾留」

○「逮捕」=最大72時間身柄を拘束することができる短期の身柄拘束処分
・通常逮捕(199条)
・現行犯逮捕(212条)=令状主義の例外
・緊急逮捕(210条)=令状主義の例外

☆逮捕には被疑者を「取り調べるためという要件は含まれない」
→結果的に取調べが可能なだけであって取調べを目的にはできない

○逮捕が適法かどうかのチェック・・・
・逮捕の理由があること
・逮捕の必要性があること

○逮捕後「48時間以内」に検察官のほうに身柄を送る(203条)

○○警察段階で「48時間」(203条)、検察段階で「24時間」(205条)
最長「72時間」の間は逮捕で身柄拘束が可能

○勾留(208条)の期間・・・
「10日間」の身柄拘束が認められている(208条1項)
さらに「10日間」の延長が認められる(208条2項)
→全部で「20日間」

☆逮捕の「3日間」(72時間)+勾留の「20日間」で
合計「23日間は被疑者の身柄拘束ができる」
(起訴前の勾留に関して)
→起訴後の勾留は判決が出るまで続く

○「起訴後の勾留」(60条)でも取調べの必要性は要件ではない

○「保釈」(88条)=起訴後に勾留されている場合に
一時的に身柄を解放する手続
→起訴前の勾留には保釈はない(207条1項但書)

○「逮捕前置主義」(207条1項)=逮捕は必ず拘留より先
→勾留にも二度の司法審査が必要

○逮捕・勾留には「事件単位の原則」を適用(×「人単位の原則」)
→「逮捕・勾留の1回性の原則」を導きだしさらに・・・
・「一罪一逮捕・勾留の原則」(同時反復の禁止)
・「再逮捕・再勾留禁止の原則」(異時反復の禁止)

○「別件逮捕・勾留」は・・・
・逮捕・勾留を自白獲得のための手段にしている
・法定の拘束期間の逸脱
・令状主義に反する
・・・という三つの点から学説&判例でも違法と判断
→オウム事件でどういう判決が下るか注目

○「押収」=「差押」(強制)と「領置」(任意)

○「検証」=場所、物、人について強制的にその形状を五官の作用によって
認識する処分→「実況検分」は任意処分で検証は強制処分

○強制捜査の中で特に議論になっているのが「強制採尿」
→判例は要件を厳格に絞ったうえで認める

☆被疑者の取調べ「受忍義務」に関して判例は198条1項但書を
反対解釈して逮捕・勾留されているときは取調べ受忍義務があるとしている
→学説では否定、実務と学説とが真っ向から対立している場面
ただし被告人の取調べ受忍義務に関しては判例も学説も否定している

○不当な捜査に対する被疑者の防衛
・「被疑者の不当な捜査処分を積極的に争う権利」
・「弁護人の助力を得る権利」

○被疑者の不当な捜査処分を積極的に争う権利・・・
・「勾留理由開示請求」(207条1項、87条)
・「不当な勾留決定に対する準抗告の手続」(429条1項2号)
・「勾留の取消請求」(207条1項、87条1項)
・「不当な押収などに対する準抗告」(429条、430条)
・「押収物の還付請求」(123条2項)

○「準抗告」=勾留が60条の要件を満たしていないことへの不服申立

○「勾留理由開示請求」は被疑者を励ます場として弁護人が使うことが多い

○弁護人の助力を得る権利(憲法34条)・・・
・「弁護人選任権」(30条)
・「接見交通権」(39条)

○接見交通権(39条1項)を制限する「接見指定」(39条3項)の解釈については
「限定説」VS「非限定説」

○被疑者には被告人と違って国選弁護制度はない

<公訴の提起>
○日本は検察官が公訴をおこなう「国家起訴独占主義」(247条)
→イギリスは私人でも独自に起訴できる(シャーロック・ホームズの土壌)

○親告罪の代表は「強姦罪」(刑法177条)、「名誉毀損罪」(刑法230条)、
「器物破損罪」(刑法261条)

○日本は訴追裁量権を検察官が持っている「起訴便宜主義」(248条)

☆起訴便宜主義の定義・・・
「訴訟条件が具備し犯罪の嫌疑があるにも関わらず起訴猶予を認める法制」

○「不起訴処分」=
「嫌疑なし」と「起訴猶予」のまったく内容の違う二つがある

○強大な権限を持つ検察官に対する制限として・・・
検察官による不当な不起訴に対しては「通知制度」、「検察審査会制度」、
「準起訴手続」の三つの救済の制度があるが
検察官による不当な起訴処分に対しては条文上制限がない
→338条4項を解釈して「公訴権濫用論」で対応する

○「検察審査会」の意見に検察は従う義務はない(強制力も拘束力もなし)
→御巣鷹山の日航機墜落事故での不起訴処分に対する強制力のなさが有名

○「公訴権濫用論」を巡った判例としては「チッソ川本事件」が有名

○形式裁判の訴訟条件=
「管轄違い」(329条)、「免訴」(337条)、「公訴棄却」(338条)

○「免訴」の中で最も大切なのが「時効が完成したとき」(337条4号)
時効の具体的条文は250条、253条、254条

○「公訴棄却」(338条4号)の「公訴提起の手続がその規定に違反した」
というのは公訴提起の手続の法令違反のような場合

○「公訴棄却の決定」に関してはロッキード事件の時に田中角栄が死亡して
339条4号によって公訴棄却の決定がなされたのが有名

○「起訴状一本主義」の根拠は256条6項

○「訴因」=犯罪構成事実が特定、具体化された犯罪事実のこと
     =「公訴事実」←訴状では物語風に書く

○公訴事実の概念はドイツ刑法を元に、
訴因の概念はアメリカ刑法を元にしているため重複している

○訴因の機能=「告知機能」(被告人のため)、「識別機能」(裁判のため)

○「訴因特定の要請」VS「裁判官の予断排除」の場合は
弊害の大きさを比べて「裁判官の予断排除のほうを優先する」

<公判手続>
○公判手続の流れ
「冒頭手続」
・人定質問(規則196条)
・起訴状朗読(291条1項)
・黙秘権等告知(291条2項)
・罪状認否(291条2項後段)
   ↓
「証拠調べ手続」
・検察官の冒頭陳述(296条)
・証拠調べの請求(298条)
・証拠決定(297条)
・証拠調べの実施
・被告人質問(311条)
   ↓
「弁論手続」
・論告求刑(293条1項)
・最終弁論(293条1項)
・最終陳述(293条2項)
   ↓
「判決の宣告」(342条)

○検察官が「論告求刑」をして(293条1項)、
弁護側が「最終弁論」をする(293条2項)

○迅速な裁判を受ける権利(憲法37条1項)が
争点になった判例は「高田事件」が有名
→高田事件以来迅速な裁判に反するとして免訴された事件はない

○「審判の対象」は実際に社会で起こったことではなく
「検察官が主張した具体的な事実」
=裁判所は真相解明ではなく検察官が構成してきた事実を審議する
→「当事者主義」(×「職権主義」)
ただし例外として裁判所が命令を下すこともできる(312条2項)

○「訴因の変更」(312条)は「公訴事実の同一性を害しない程度」で認められる

○公訴事実の同一性とは「機能概念」でしかない(×実体概念)

○訴因の変更は「不告不理の原則違反」を防ぐためある
→「訴因変更の要否」の問題+「訴因変更の可否」の問題

○「証拠裁判主義」(317条)のため「厳格な証明」が求められる

○「厳格な証明」
=「証拠能力ある証拠を使え」&「適式な証拠調べを経ろ」

○「証拠能力」=証拠としての許容性
・「自然的関連性」
・「法律的関連性」
・「違法収拾証拠排除」

○また聞きは証拠能力が認められない=「伝聞法則」(320条1項)
→被疑者の「反対尋問権」(憲法37条2項)を実現するため
ただし例外として「相手方が同意した書面」は証拠能力がある(326条以下)

○強制・拷問などによる自白は証拠能力がない=「自白法則」(319条1項)

○自白だけでは有罪にはしない=「補強法則」(憲法38条3項)

○犯罪事実の存否や程度に関する事実(構成要件、違法性、有責、処罰条件)
については「厳格な証明」を適応、
それ以外の事実については「自由な証明」を適用

○戦後、被疑者に訴訟における主体的地位を与えて
「当事者主義的訴訟構造」が確立された

○「挙証責任」→検察官にある→「疑わしきは被告人の利益に」
ただし「同時傷害」(刑207条)、「名誉棄損の事実証明」(刑230条2項)は
被告人に挙証責任がある例外

○立証の程度は「合理的疑いを入れない程度」までしないといけない
(>「証明の優越」)
→弁護人の役割は別に無罪を主張しなくても良く
検察官が主張してきた証拠に疑いを持たせるようなことをおこなえば十分

○「証明力」=証拠の価値←「自由心証主義で裁判官が判断」(318条)
(×法定証拠主義)

○「自由心証主義における合理性の担保」
・判決文には証拠を挙げなくてはいけない(335条)
・証拠能力
・自白についての補強法則(319条2項)

<裁判>
○法律用語としての裁判=裁判所または裁判官の
公権的な判断を内容とする意思表示
EX:裁判所による「判決」、裁判所による「決定」、裁判官による「命令」

○裁判の種類=
・「実体裁判」→「有罪判決」、「無罪判決」、
・「形式裁判」→「管轄違いの裁判」、「免訴判決」、「公訴棄却判決・決定」

○「一事不再理効」=確定判決によって生じる再訴を遮断する効力
=まとめて有罪にできた範囲については1回しか裁判は許されない
←憲法39条の「二重の危険禁止の法理」から

○「再審」と「非常上告」=
上訴とは別の制度で確定判決に対する非常救済手段
・「再審」(435条以下)=判決の確定後事実認定の誤りが
 発見されたことを理由にしておこなう
・「非常上告」(454条)判決の確定後審判が法令に
 反したことを理由にしておおなう

○裁判の執行は検察官が指揮しておこなう
→死刑には法務大臣の執行命令が必要

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