伊藤真 『伊藤真の刑法入門』 日本評論社 1997

ようやく去年のうちに蒔いた「策」が実ってきてモンゴルにタダで
行けることになりそうな、らぶナベ@でもこの時期に行くって超極寒やん(^^;

さて、『伊藤真の刑法入門』伊藤真著(日本評論社)1997年初版。
日本の刑法は参考に使ったドイツ刑法の単語をそのまま直訳した
専門用語が多くてパッと見はかなり難しそうな感じがするけど
内容や構造自体は民法よりもずっと単純なので
単語さえ丁寧に押さえればかなり楽な法律。
ただ、六法の中では一番学説が鋭く対立していて
いろんな学説が出てくるのでちょっとうざったい所もある。
これはやっぱり刑法が人を殺せる法律だからだろう。
(刑法学者にも必要以上に攻撃的な人間が多いのはこのためか(^^;)
しかしこの本の著者も「いちばん最初にマスターできるのは刑法」
と書いているように誰かの学説の立場に立って研究するとか
資格試験用に勉強するとかではないなら(単にまんべんなく学ぶだけなら)
あまり学ぶ価値が見出せない法律だなぁっと感じた。
戦うなら刑法よりもやっぱり民法だ(^o^)
それとこの本を読んでみて国自体に対する罪がまだ残っていることを知った。
最近、社会的権威を破壊するというような意図を持って子供やお年寄りを
殺している事件が目立っているけどどうせ権威に楯突く犯罪をするなら
刑法第77条の内乱罪に該当するような楯突きかたをして欲しいもんだ。
でかいことを言って弱い立場の人ををちまちま攻撃する姿は
見ていてなさけなさを感じてしまう。
悪いことは完全に小さくやるか完全に希有壮大にやるか二つに一つだ(^_^)

以下、そんなこんなでその他にチェックした箇所・・・
<刑法総論>
○刑法は「法益保護機能」(処罰の範囲を広げるべき)と
「自由保障機能」(処罰の範囲を限定すべき)の二つの調整がテーマ

○イギリスでは取り調べの状況を全てテープで録音している

<犯罪の定義>
☆『犯罪とは「構成要件」に該当する「違法」で「有責」な行為』
・「構成要件」とは一般的、類型的な形式的判断
 →手術も傷害罪の構成要件に該当する
・「違法性」とは個別具体的な事情
 →手術は構成要件に該当するが違法性はないので犯罪は阻却
・「責任」とは思いとどまらなかったことを非難できること
 →責任主義(責任なくして刑罰なし)

<構成要件>
○「構成要件要素」=
・「客観的構成要件要素」(その事実の外面性)
 →実行行為、結果、因果関係を検討
・「主観的構成要件要素」(その行為者の内面性)
 →故意かどうかを検討
・・・の二つから成る
→まず客観から入って主観にうつるのが特徴

<客観的成立要件>
○客観的構成要件要素=「実行行為」、「結果」、「因果関係」の三つ
→結果が発生したときだけ因果関係を検討するこの順番が重要

○「実行行為」の定義・・・
「法益侵害の現実的危険という実質を有し、
構成要件に形式的にも実質的にも該当すると認められる行為」
→法益侵害の危険性を持っているかどうかが
実行行為の有無の判断するポイント(このため呪いは犯罪ではない)

○「不作為犯」=何もしないこと自体が実行行為にあたること
EX:溺れている「自分の」子供を助けなかったことなど
→「作為義務」の有無が不作為犯の成立要件!

○「間接正犯」=
他人を「道具のように」利用して間接的に犯罪をおこなうこと
→「道具理論」のため道具のように使われた人には責任が無いとされる
(間接正犯の成立要件は主観的要素と客観的要素から成る)

○犯罪の分類
・「正犯」=「直接正犯」&「間接正犯」
・「狭義の共犯」=「教唆犯」&「幇助犯」
・「結果犯」=結果の発生を要求する
・「挙動犯」=結果の発生を必要とせず一定の行動をするだけで犯罪になる

○因果関係には・・・
・「条件関係」=「あれなければこれなし」
・「相当因果関係」=「社会通念上相当であること」
・・・の二つが必要とされるのが通説→「折衷的相当因果関係説」

<主観的構成要件>
○主観的構成要件=「構成要件的故意」
「故意」とは「客観的構成要件要素(犯罪事実)に該当している事実を
認識、認容していること」

☆刑法では故意犯が原則!(38条1項)
過失を処罰する規定が例外的に明記されていなければ裁けない
→「窃盗罪」(第235条)は故意犯なので過失で人の物を盗めば処罰されない

○「構成要件的錯誤」があるときは構成要件的故意が阻却されるかどうかが
論点となる→「具体的符合説」VS「法定的符合説」(通説)

<違法性>
○構成要件に該当すれば原則として違法だが
例外的に違法性が阻却される場合がある→「違法性の阻却」

☆何をもって「違法」と言うのか?
「法益侵害説」VS「法規範違反説」が刑法の根本!
→通説は「法規範違反説」

○二つの説の違い・・・
・「法益侵害説」=結果無価値論(結果が悪い)だけ
 →故意犯と過失犯の違いはない
・「法規範違反説」=行為無価値論(行為が悪い)+結果無価値論
 →故意犯と過失犯は違う

○「違法性阻却事由」=
・「正当行為」←「法令行為」・「正当業務行為」・「一般的正当行為」(35条)
・「緊急行為」←「正当防衛」(36条)・「緊急避難」(37条)・「自救行為」

○被害者の承諾があれば一般正当行為として違法性が阻却される場合がある
→尊厳死の問題に出てくるか?

○「正当防衛」と「緊急避難」の違い・・・
「正当防衛」=相手が不正=正対不正
「緊急避難」=相手が正=正対正

○過剰防衛は「任意的減免」(36条2項)になる

<責任>
○行為者を非難する(=責任を負わせる)ためには・・・
・「責任能力」
・「責任的故意、責任的過失が無い」
・「期待可能性」
・・・の一つでも欠けてはいけない

○「責任能力」=「是非弁別能力」+「行動制御能力」

○「刑の減軽」は有期ならば半分になるのが普通

○責任無能力は原則無罪だが「原因において自由な行為」理論によって
修正されることがある

☆故意・・・
・「構成要件的故意」
・「責任故意」=「違法性阻却事由を基礎づける事実の不認識」
 +「違法性の意識の可能性」

○「違法性阻却を基礎づける事実の不認識」
「誤想防衛」などの場合は故意責任は向けられないこと=勘違いは許される
→ルイジアナ州で起こった服部君射殺事件で被疑者に無罪判決が出たのもこれ

○「違法性の意識の可能性」には「制限故意説」が通説

○「期待可能性」は実際の事件で認められることはない→最後の安全弁

     ☆☆故意犯の成立要件☆☆
○構成要件
・「客観的構成要件」=実行行為→因果関係→結果
・「主観的構成要件」=構成要件的故意
         ↓
      <構成要件に該当>
         ↓
○違法性阻却事由はないか?
・「正当行為」=法令行為・正当業務行為・一般的正当行為
・「緊急行為」=正当防衛・緊急非難・自救行為
         ↓
      <違法性阻却なし>
         ↓
○責任要素
・「責任能力」=是非弁別能力+行動制御能力
・「責任故意」=違法性阻却事由を基礎づける事実の不認識
 +違法性の意識の可能性
・「期待可能性」
         ↓
       <責任あり>          
         ↓ 
       <故意犯成立>

○修正された構成要件
・時間的修正→「未遂」、「予備」
・人的修正(共犯)→「共同正犯」(60条)、「教唆犯」(61条)、
 「幇助犯」(62条)、「共謀共同正犯」(条文無いが判例では認められている)

○「未遂」が処罰されるのは各本条で定められている場合だけ!(例外的)

○未遂・・・
・「中止未遂」=自己の意思により中止
 →刑罰は必ず減軽もしくは免除の「必要的減免」(43条但書)
・「傷害未遂」=たまたま中止
 →刑罰の減軽は裁判官が判断する「任意的減軽」(43条本文)

○「免除」とは有罪と判断するが刑を執行しないで免除するという意味

○「未遂犯」と「不能犯」を分ける「実行行為としての危険性」は
科学的見地からではなく一般人の見地から判断する

○「実行の着手の意義」では「実質的客観説」が通説

○「共同正犯」には個人責任の原則を修正した「一部実行全部責任」を適用

○共同正犯の成立要件・・・
・主観的要件=共同実行の意思が存在すること
・客観的要件=共同実行の事実が認められること

○教唆犯の犯罪性に関しては「共犯従属性説」VS「共犯独立性説」
・・・共犯従属性説が通説で特にその中の「制限従属性説」が有力

○幇助犯の成立要件=「幇助行為」&「被幇助者の実行」
→幇助犯の刑は「正犯の刑を減軽する」

○幇助の物理的方法による場合を「有形的従犯」、
精神的方法による場合を「無形的従犯」

<罪数>
○二個以上の犯罪の場合はまとめて数罪と呼ぶ

○一罪か数罪かは「包括的一罪」と「法条的競合」がある

○数罪の場合の処罰方法は
・「科刑上一罪」=観念的競合(54条1項前段)と牽連犯(54条1項後段)
・「併合罪」=確定裁判を経ない数罪

<刑法各論>
○最近は各論の重要性が見直されている

☆刑法各論を学ぶ時は常に「保護法益」から見ていくのがとても重要!

○保護法益には「個人的法益」、「社会的法益」、「国家的法益」がある

○胎児などの何をもって「人」になるのかは「一部露出説」が通説

○「傷害罪」(204条)=人の生理的機能を害すること
「暴行罪」(208条)=人の身体に向けられた有形力の行使のこと

○「業務上過失致傷罪」(211条)の「業務上」とは
「仕事の上で」という意味ではない!

○「脅迫罪」(222条)は本人かその人の親族に害を与えると
告知しなければ該当しない→友達や知り合いでは該当しない

○「強要罪」(223条)=義務のないことを行わせること

○「名誉毀損罪」VS「表現の自由」との調整を図る目的で
戦後になって「230条の2」が生まれた
→「公共の利害」、「公益目的」、「真実の証明」の
三つの要件の下では違法性が阻却される(230条の2の1項)
・違法性がたとえ阻却されなくてもそれが真実だと信じていたときは
「違法性の錯誤」として違法性が阻却される場合がある(誤想防衛と同じ)

○「名誉毀損罪」(230条)と「侮辱罪」(231条)との違いは
事実を摘示するのかしないのかの差

○刑法での「信用」とは経済的信用に限る

<財産罪>
☆財産罪の分類方法には「占有」に注目する!
・占有が移転するか、移転しないか
・被害者の意思に反しての移転か、瑕疵ある意思に基づく移転か

☆「財物」の意義に関しては「有体性説」VS「管理可能性説」
通説は管理可能性説の中の「物理的管理可能性説」
→単なる情報のようなものは財物とは認められない!

☆財産罪の保護法益は「占有説」が通説
→判例占有説ではひったくり犯人からバッグを取り戻すのは
窃盗罪の構成要件に該当するが自救行為として違法性は阻却

☆「窃盗罪」(235条)の客体は「財物」しかなく「財産上の利益」は
客体にはならないので財産上の利益を盗んでも窃盗罪には該当しない!
→最初から意図しないで無銭飲食すれば刑法では無罪になる場合がある
・「財産上の利益」も客体になるのは「強盗罪」(236条)、
「詐欺罪」(246条)、「恐喝罪」(249条)、「背任罪」(247条)だけ
 →これらは「2項犯罪」と呼ぶこともある

☆財産罪総論では「保護法益」と「不法領得の意思」が論点になる

○窃盗罪の成立のために必要な「不法領得の意思」・・・
・「所有権者として振る舞う意思」(不可罰的な使用窃盗と区別するため)
・「物の経済的用法に従って使用、処分する意思」(毀棄罪と区別するため)
→黙って友達の消しゴム使った&チャリ乗ったは窃盗罪にはあたらない

○死者に占有は無いので死者からの窃盗というのはありえないが
判例では被害者を殺害した者自らが殺害直後に財物を奪取した場合には
窃盗罪が成立すると考えられている
(死者が生前有していた占有を侵害したという説明)

○「強盗罪」(236条)は暴行、脅迫を手段とするところが特徴
→殴った後で物を取る意思が生じた場合は強盗罪ではなく暴行罪&窃盗罪
反抗を抑圧する状態になった後に物でも取ってやろうと思って取った場合は
強盗罪にはならない→刑の重さが違うので裁判で争われる争点になるだろう

○「強盗致死傷害罪」(240条)で被害者を死亡させた時は
「死刑又は無期懲役」の日本の刑法では珍しくとても重たい刑罰

○単に人を騙す罪というのは日本にはない!
→財産上の利益を侵害しない限り無罪

○「横領罪」(252条)の保護法益=「委託信任関係」
→信頼を裏切る場合は刑罰が重い
・種類は「単純横領」、「業務上横領」、「占有離脱物横領」

○「社会的法益に対する罪」の代表・・・
「放火罪」(108条以下)、「偽造罪」(148条)

☆「公共の危険」=「不特定または多数人の生命、身体、財産に対する危険」
→放火罪は社会的法益に対する罪なので
現住建造物放火罪の場合は殺人罪よりも重たい

○放火罪をいつ既遂とするかは「独立燃焼説」が通説

○「偽造罪」(148条)の保護法益=「文書の公共的信用、社会的信用」
→成立には「行使の目的」が必要

○日本の偽造罪では「形式主義」(作成名義の真実性を確保する)を原則にして
例外的に「真実主義」(内容の真実性を確保する)を取り入れている

○国家的法益に対する罪の代表は「内乱罪」(77条)

○「偽証罪」(169条)は「法律で宣誓した証人」だけがその対象になる

○「賄賂罪」(197条)の保護法益=「公務員の職務に対する信頼」
→成立には不正なことをやる必要はない

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