伊藤真 『伊藤真の憲法入門』 日本評論社 1999(第2版)

最近複数の友人から指摘されていることによると僕という人間は
マニュアル車で例えるとトップギアとローギアしかなくて
どうやら2速や3速というものが無いみたいっす。
僕のことをけっこう知っている女性によれば僕を見ていると
「かなりカッコ良い時」か「かなりキモイ時」の二つに一つしかなくて
いわゆる「普通の時」というものが無いらしい。
何かを運営していたり決断したり大局で物事を考えていたりする時は
トップにギアが入ってるけどその他の時は見事にダメダメ人間らしいっす。
ローの時の僕の姿しか知らない人や逆にトップの時の姿しか知らない人には
(知り合いの半数以上がその分類に入るだろう)僕という人間が
かなり誤解されているだろうから「普通の時もおぼえろ」と言われている、
らぶナベ@よく考えたらそれって余計なお世話やん(^^;っす

さて、本題の『伊藤真の憲法入門』伊藤真著(日本評論社)1999年第2版。
この本を読んでみて感じたことは憲法は六法の中で一番馴染み深いが
その分やたらと深いところもあるように思える。
どうしても議論が抽象的になってしまうから憲法と向き合う時には
自分自身の価値判断を決断して接していくことが必要になってくるだろう。
また、憲法のもっとも重要な点としては憲法が国民にではなく
国家を制約しているという点とその存在理由の第一を
人権(≒自由)においている点だろう、統治はその手段でしかない。
そしてその第一の存在理由を規制することになる
公共の福祉の適用が議論の中心になってくる。
そういう意味で議論の的は簡単に絞れるが抽象的議論になってしまうので
けっこうやっかいなものだろう、憲法学者ってやっかいな人間が多いし(^^;
そしてこの憲法自体がかなりさくさくっと作られたものなので
条文解釈にあまりこだわり過ぎるとちょっと間違うような気もする。
(不思議なポジションにある第97条のエピソードが有名)
第9条の解釈に関しては特にこのことを強く感じた。

以下、チェックした点・・・
☆人権と統治の関係は目的と手段の関係(第13条)
→政治は自己目的ではない
≒自由主義と民主主義も目的と手段の関係にある。

○人権の概念・・・
「固有性」、「不可侵性」、「普遍性」

○ある個人の人権を制限するものは他の個人の人権でしかありえない。
→対立する人権を調整するための実質的公平の原理が「公共の福祉」

☆公共の福祉の種類・・・
・「自由国家的公共の福祉」→人権が生まれながらにもっている制約
・「社会国家的公共の福祉」→経済的自由についてのみ認められる制約

☆公共の福祉の審査方法・・・
「違憲審査基準」に関しては「二重の基準理論(double standard)」を使う。
・経済的自由権に制限をしている法律には緩やかな審査基準を適用する。
・精神的自由権を制限している法律には厳しめな審査基準を適用する。
→政治部門と司法部門の役割分担の発想!
精神的自由のような民主制の過程の下で自己回復が難しい問題には
司法は積極的に関与するが経済的自由のような高度に政治的判断が
必要な問題には司法は消極的にしか関与しない。

○厳しい審査基準の種類・・・
・「事前抑制禁止の理論」
・「明確性の理論」←「萎縮効果」を防ぐため
・「明白かつ現在の危険の基準」
・「より制限的でない他の選びうる手段の基準」
=☆「LRA(Less Restrictive Alternative)の基準」→もっとも重要!

○穏やかな審査基準・・・
・「明白性の原則」
→誰が見ても明白に違憲だとする時にのみ違憲判断を下す

○公共の福祉の種類の性格・・・
・自由国家的公共の福祉=「消極的内在的制約」(厳格な合理性の基準で判断)
・社会国家的公共の福祉=「積極的政策的制約」(明白性の原則で判断)

○公共の福祉による規制を審査する基準の厳しさの段階・・・
「精神的自由権に対する制約」の基準が一番厳しく、
 →「LRAの基準」
「経済的自由権に対する消極的な制約」が次に厳しく、
 →「厳格な合理性の基準」
「経済的自由権に対する積極的な制約」の基準がもっとも穏やか。
 →「明白性の原則」

☆違憲審査の違い・・・
・「付随的違憲審査制」←私権保障型(日本、アメリカなど)
・「抽象的違憲審査制」←憲法保障型(ドイツ、イタリアなど)

○人権問題を考える上での視点・・・
・そもそも誰の人権が問題になっているのか?
・どのような人権が問題になっているのか?
・誰によって制約されているのか?
・その制約は許されるのか?←もっとも重要な点!
・どこで救済されるのか?(政治部門か司法部門か)

☆法=社会規範=一定の価値観
その法律がどんな価値観に基づいて作られたのかが重要、
同時に自分自身の価値判断も必要になる。

○民事訴訟法は公法(裁判の手続を定めているため)

○憲法は国家権力の側を規制するもの(第99条)、
国民に憲法を守れとは憲法には一言も書いていない。
→ドイツ憲法では国民にも憲法を守ること(憲法忠誠)を強制している。

☆憲法の特質・・・
「自由の基礎法」(大目標)
「制限規範性」(手段)
「最高法規制」(手段)

○「法の支配」(現在の日米)VS「形式的法治主義」(戦前の独仏)
=「正しい法に従う」VS「法にはすべて従う」

○表現の自由(第21条)を支える価値・・・
「自己実現」、「自己統治」

○人身の自由の中で最も重要な条文が第31条(適性手続の保障)。

○生存権は第25条に規定されている。

○「法律上の争訟」であっても裁判所で適性な判断を下せないと
思われる問題は「統治行為」の理論によって受け付けないことがある。
→政治部門と司法部門の役割分担!

☆地方自治は第92条で「制度的保障」を受けている。

○地方自治の本旨・・・
「住民自治」、「団体自治」

○憲法に条文が無くても(超憲法的)国民による「抵抗権」と
国家による「国家緊急権」は認められているとするのが通説。

○第9条は2項の「前項の目的を達するために」の意味の
取り方によって解釈が違ってくる。

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