リーダーとしての心得を著した「やってみせ、いってきかせ、やらせてみ、
ほめてやらねば人は動かぬ」の言葉が印象深く、一度は伝記を読んでみたいと
思い続けていたので無理矢理時間をつくって読んだ山本五十六の本。
本の記述の仕方自体は著者が非常に丹念に資料を調べ上げて、
山本五十六を快く思っていない人々(それが海軍の主流派)からの証言も
丹念に記述している。
これはやたらと美化しすぎてしまう傾向にある伝記の中では
好感がもてる書き方だ。この本を読んだ素直な感想は
「こんなやつに日本海軍まかせたらあかんわ」だ(^^;
普通、山本五十六は旧帝国軍人の中では合理的な思考を持ち、
決断力に富んでいたとの評価があるが僕はそうは思えない。
開戦に乗り気ではなかったのは確かだが、それを命をかけてでも
止めてやろうという意識もなく、そうかと思うと安易な無駄死を
あえて選んだ。状況にただ流されることにまかせてしまうという選択が
彼の人生、仕事の転機には非常に多い。
山本五十六のような立場の人間がほんとうに開戦に反対ならば
もっと反対する手段があったはずだ。
それがずるずると開戦時の指導者となり(これは近衛文麿、昭和天皇など
当時の指導者すべてに言えるかもしれないが)、真珠湾攻撃では
アメリカの生産力のおそろしさを知りながら南雲中将の第二次攻撃中止を
黙認。あげくのはてはミッドウェイ海戦では、いきあたりばったりな作戦を
強力に推進、前線司令部に作戦の意図を徹底させず
終始曖昧な態度で敗北の主な原因をまねく。
指導者としてひじょうにむらっ気があり、かつ個人に対する感情を
公務に持ち込むところはほかの帝国軍人と何らかわらない。
そして何より、「1年か1年半はあばれてみせる」と言ったように
博打打ち的な視点がついに抜けなかった。
僕はこんなリーダーの元では働きたくないぞ(^^)
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1997 12/3
歴史
まろまろヒット率3