ペットが飼えない一人暮らしなので野良猫の手懐け方を教わっている、まろまろ@目下まふまふ練習中です。
さて、『風の群像―小説・足利尊氏』杉本苑子著(講談社文庫)上下巻2000。
室町幕府を開いた足利尊氏の生涯をえがいた歴史小説。
足利尊氏が生きた南北朝時代は、僕にとって関心の高い時代の一つだ。
権威が崩れ、悪党などの異形の新勢力が台頭し、婆娑羅文化に代表される闊達な文化が生まれた興味深い時代。
そんな南北朝時代だけど、この時代を取り上げた物語は南朝側の視点に立つものが多い。
特に足利尊氏に関しては南北朝時代の主役の一人なのに、物語に取り上げられることが少ない。
たとえば歴代の武家政権を開いた源頼朝(鎌倉幕府)、足利尊氏(室町幕府)、徳川家康(江戸幕府)の三人の中でも、
足利尊氏は一番マイナーな存在になっている。
・・・っと思っていたら足利尊氏を取り上げた歴史小説を発見したので手に取った一冊。
この本を読む前の足利尊氏に対しては「とても複雑でとらえどころのない人物」という印象を持っていた。
器量が大きくて大盤振る舞いな一方、とても小心で精神的に不安定だというイメージがあったが、
読んでみるとこの小説でもそのイメージそのままになっていた(w
中でも観応の擾乱での迷走ぶりと立ち回りの醜さは、読んでいて気持ちが悪くなるほど良く表現できていた。
「これでよく天下取れたな」という印象が、この小説でも生々しくえがかれている。
また、この小説では弟の足利義直の評価が高く、加えて『太平記』ではいつも悪役にされる高師直がカッコ良くえがかれているのが好感が持てた。
足利尊氏が物語の主役になりにくいのは、やはり歴史的な評価が戦前と戦後で揺らいだということだけでなく、
この複雑怪奇な性格(一説には精神疾患説がある)から来ているんだろうとあらためて感じた一冊。
2006 10/6
歴史、小説
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