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さて、『多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ』本村凌二著(岩波新書)2005。
メソポタミアのシュメールからはじまって、エジプト、パレスチナ、ギリシア、ローマと、
実に四千年間を通して多神教から一神教への転換に注目した歴史書。
著者が言うように人類の文明は五千年で、そのうちの四千年は古代に分類されている。
その四千年間の古代人の心性に変化に踏み込もうとした意欲的な一冊。
読んでみると、一神教の誕生と普及にはアルファベット(表音文字)の誕生と普及が関係しているとしている。
一神教が台頭してくる紀元前1000年前後には、ちょうどアルファベットの普及、
古代のグローバリゼーションによる危機と抑圧という環境の変化があり、
そして神の声を失った人々の心性の変化(詳しくは本書(^_-))が、
一神教を受け入れる素地となってきたという主張をしている。
複雑化、多様化する文明はある時点から単純化に転じる傾向があり、
アルファベットという”技術”の普及がその原動力となった・・・
何か現代にも通じるものがあるような気がした。
以下はチェックした箇所(一部要約)・・・
○ひしめきあう神々のなかでもわが民の神を至高の存在とする意識と
少ない文字種であらゆることを表記しようとする意識とは底流ではつながっているのではないだろうか
→「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」(ヨハネによる福音書)
<第3章 神々の相克する世界>
○言語とはいわば、この世の現実をなにか象徴的なもので置きかえて表現する方法
<第4章 敬虔な合理主義者たち>
○アルファベットの誕生と普及、危機と抑圧、神の声を見失った人々の心性が一神教を受容する土台になった
<第6章 普遍神、そして一神教へ>
○いわば複雑になるばかりの文明はある時点から単純化に転じる傾向がある
→なかでも文字の単純化とその普及は画期的で認識能力の革命
→あらゆる音声を記すことのできるアルファベットによって全能の神の姿が人々の脳裏に浮かんできても不思議ではない
<エピローグ 宗教と道徳>
2006 1/30
歴史、宗教史
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