スーザン・ブラックモア、垂水雄二訳 『ミーム・マシーンとしての私』 草思社 上下巻 2000

『マヤ文明展』でマヤ暦のTシャツ(略して”マヤT”)を買ってしまった、
らぶナベ@展示側の戦略に簡単に乗ってしまう良い顧客です(^^;

さて、『ミーム・マシーンとしての私』上下巻
スーザン・ブラックモア著、垂水雄二訳(草思社)2000年初版。
技術、文化、考え方や理念などのも一種の遺伝子のように、
それ自体が人から人へと媒介していくという考え方=「ミーム論」の本。
(もともとはドーキンスの『利己的な遺伝子』から)

内容は第1の自己複製子=遺伝子に続く第2の自己複製子=ミームが、
人間の言語や脳を形づくり、そして「自己」というものもミームの複合体
「自己複合体(selfplex)」だという仮定をしているかなり挑戦的な一冊。
すごく面白い切り口なんだけど大部分が仮説や仮定の話を前提にしているので、
もうちょっと証拠がないと簡単には納得できない感じがした。
(物証の重視が訴訟法の原則だす(^^))

ただ、僕は『利己的な遺伝子』を読んだときにもメモしたように、
このミーム論という考え方には・・・
1:文化や考え方の普及・発展の不作為性が強調される点と、
2:何かを伝えたいとか表現したいという欲求が本能的なんだと説明できる点で、
(遺伝子を残す→性的衝動へ、ミームを残す→表現的衝動へ)
かなり興味を持っている。
こういう視点でミーム論を扱った本があれば教えてちゃぶだい。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○ミーム=非遺伝的な手段、特に模倣によって伝えわたされると考えられる文化の一要素
 from “The Oxford English Dictionary” of “meme=An element of a culture
 that may be considered to be passed on by non-genetic means, esp. imitation.”
<序文>

○私たちを特別なものにしているのは模倣の能力であるというのが本書の主題
<1 奇妙な生き物>

○私たちの観念が私たち自身の創造したものであり、
 私たちのために働いていると考えるかわりに、それらが自律的なミームであり、
 自らがコピーされることのみのために働いていると考えなければならない
<1 奇妙な生き物>

○その科学理論が有効であるかどうかの基準=
 1:その理論は他の競合する理論に比べてより簡潔ないし包括的に説明できるかどうか
 2:検証可能な予測を導くことができ、その予測が正しいと証明できるかどうか
<1 奇妙な生き物>

○ダーウィンの自然選択=変異・淘汰・保持(遺伝)が要件
 →この三つがそろっていればその種は増加する傾向を持つ
 →ダーウィン主義は「心の助けなしに混沌から構造をつくりだす図式」(Dennet1995)
<2 ミームとダーウィン主義>

○ミーム理論の要点は、ミームを独立した自己複製子として扱うことにある
 →遺伝子のではなく、ミームの複製のためにミーム淘汰が観念の進化を駆動する
  (これが従来の大半の文化的進化の理論からミーム学を分かつ大きな相違)
<3 文化の進化>

○人が考えることを止められないことへの解答=ミームの「雑草理論」
 =除草した庭はすぐに植物が生え、そこには遺伝子の生存競争が始まる
 →空っぽの心にはミームが入り込んで来て、脳内でミームの生存競争をおこなう
<4 ミームの視点から見る>

○「模倣」の定義=ある行為の仕方を、それがなされたところを見て覚える学習
 (Thorndike 1898)
 →他者の観察を通じて環境について学ぶ「社会的学習」(Heyes 1993)とは違う
<4 ミームの視点から見る>

○成功する自己複製子の条件=忠実度・多産性・長寿(Dawkins 1976)
<4 ミームの視点から見る>

○言語の機能=うわさ話→うわさ話は毛づくろいの代用(Dunbar 1996)
 →うわさ話も毛づくろいも社会的集団の結束を維持する機能を果たす
<8 ミームー遺伝子の共進化>

○ミームが生まれて人々が模倣しあうことによって、
 より高度な忠誠度・多産性・寿命のミームが駆動して
 言葉を生み、人間の脳を巨大化させた
 (言語の機能も、巨大な脳もミームのためにある)
<8 ミームー遺伝子の共進化>

○ミームが発生すると生まれる過程=
 1:「ミーム淘汰」(あるミームが他のミームの犠牲のもとに生き残る)
 2:「ミーム模倣力の遺伝的淘汰」(最良の模倣者をよりよく模倣できるものが
   より大きな繁殖性向度を持つ)
 3:「最良の模倣者とつれあいになることの遺伝的淘汰」
<9 社会生物学の限界>

○芸術的な能力と創造性が異性を引きつけるディスプレイとして
 性淘汰を受けてきたという主張があるが(Miller 1998)、
 その理由は創造性と芸術的な表出はミームをコピーし、使い、拡める方法であり、
  すぐれた模倣者の印だから
<10 セックス、セックス、セックス>

○利他主義のトリック=
 1:利他的な行動は自分自身のコピーを拡め、私たちをより利他的にする
 2:利他主義はその他のミームが拡まるのを助ける
 →利他的な好ましい人に入り込んだミームは意地悪な人に入り込んだミームよりも
  よりコピーされやすいだろうという単純な考えに立脚
<13 利他主義のトリック>

○宇宙人による誘拐がミームとしてなぜ普及するのかについて
 1:睡眠麻痺という恐ろしい個人的体験に答えを与えてくれる
 2:西洋人に訴えかけるところがある(神に代わる強大な存在としての宇宙人)
 3:センセーショナリズムに敏感なマスコミと視聴者の存在
 4:反証不可能性が高い(陰謀説によっても防御)
<14 ニュー・エイジのミーム>

○宗教がミームとして成功した理由=
 1:反証不可能性と脅しと約束によって守られている
 2:普及のために美・真理・利他主義のトリックを用いている
 3:人間の心と脳は宗教的な観念にとりわけ感受性をもつように形づくられている
<15 ミーム複合体としての宗教>

○宗教と科学との違い=検証を要求するかどうか(これが科学の核心)
 →宗教は理論を構築した後はそれが検証されることを妨げる
<15 ミーム複合体としての宗教>

○情報は淘汰を受ける自己複製子
 →進化的なアルゴリズムが実行され、それがデザインを作り出す
 (デザインは全面的に進化的アルゴリズム遂行の結果)
<16 インターネットのなかへ>

○伝達が何よりも重要なミームの視点では日本語の複雑な文字体系が生き残るか疑問
<16 インターネットのなかへ>

☆自己は巨大なミーム複合体=「自己複合体(selfplex)
 →ミームにとっては自己の内部に入り込める観念=「私の」考えになれるものが勝者
 →自己はミームの最大の保護者であり、ミーム的社会が複雑であればあるほど、
  自己という保護の内部に入り込もうと戦っているミームがより多く存在している
<17 「私」という究極のミーム複合体>

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2003 6/2
自然科学、進化論、ミーム論
まろまろヒット率★★★

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