山岸俊男 『社会心理学キーワード』 有斐閣 2001

『プロジェクトX』に取り上げられた当事者と会った、
らぶナベ@出来事メモ(2003/2/4)にアップしてます。

さて、『社会心理学キーワード』山岸俊男編(有斐閣双書)2001年初版。
前に読んだ『図解雑学 社会心理学』がちょっと軽すぎたので
念のために買ってきて読んでみた社会心理学入門書。
社会心理学で使われるキーワードを網羅的に100個紹介していて、
通読すればテキストになるけど辞書としても使える便利な一冊。
目的ごとにキーワードを分類した道具箱まで用意されてあって至れり尽くせり。
テキストや辞書としてだけでなく何気なく感じていた普段の現象や
それとなく知っていた言葉についてのちゃんとした説明や分析が読めるので
日常生活の出来事を通して感じたことをまた別の視点で振り返るきっかけにもなる。
(ここらへんが社会心理学を知ることの短期的なメリットかな?)

ちなみにこれで4月までに認知科学、言語学、社会心理学の入門書を
一通り読むという課題をクリアしたことになる。
小さくても自分で作って自分で超えたことの達成感はやっぱりうれしいものだ(^^)

以下チェックした箇所(一部要約&重要と感じた順)・・・

☆社会心理学=「社会的存在としての人間の心の性質を研究する学問」
 G.W.オルポートによれば「個人の思想・感情・行動が、
 他の人間の現実の存在、あるいは想像や暗黙のうちに仮定される存在によって、
 どのように影響されるかを理解し、説明することを企画する科学」<1>

☆心と社会とは、お互いが相手を生み出しつつ相手によって
 生み出されるという意味で相互構成的な関係
 →社会的・文化的な環境とは独立したかたちで心を理解するには大きな限界
 →ここに社会心理学の存在意義がある<2>

☆社会心理学の役割(デュルケム)
 心理学=個人の判断に影響を与える要因の解明
 社会学=社会的事実の上に影響を及ぼすような諸原因の解明
 →心理と社会的事実が「どのような相互関係にあるか」を
  解明するのが社会心理学の役割<82>

☆人間の「自己概念」(J.C.ターナー)
 ・個人的アイデンティティ=特定の他者との親密で永続的な人間関係に基づく
  独自の自己記述
 ・社会的アイデンティティ=所属する集団や社会的カテゴリの一員であることを
  認識して生まれる自己記述<75>

☆「社会的交換理論」=物質的・社会的・精神的な資源の交換の視点で
  個人間や集団間の関係を見ること
 →進化心理学者は社会的交換課題こそが、性選択の課題とともに、
  人間の脳と心の進化によって最も重要な適応課題だと考えている<35><96>

○「沈黙の螺旋」(spiral of silence)
 =一般に認められないと認知された意見は公共の場で発言されにくくなり、
  一般に認められていると認知された意見は公共の場で発言されやすいので
  少数意見と多数意見の差はどんどん開いていくこと(E.ノエル-ノイマン)<100>

○「情報伝達の2段階説」(ラザースフェルド)
 =メディアが伝えた情報を集団内のオピニオンリーダーが
  中継して広めるという考え<93>

○対人関係の「SVR理論」(マーステイン)
 S段階=相手から受ける刺激(stimulus)に魅力を感じる段階
  ↓
 V段階=相手と価値(value)を共有する段階
  ↓
 R段階=お互いの役割(role)を補い合う段階<63>

○「近接因」=その現象や行動に直接に対応している心の性質(ピーマン嫌い)
 「究極因」=その現象や行動の近接因についての説明(なぜピーマンが嫌い)
 →「メタ理論」はどんな種類の説明を究極因として受け入れるかについての信念<4>

○メタ理論の種類
 ・「心メタ理論」=心のはたらきに見られる規則性を解明
 ・「情報処理メタ理論」=その規則性がいかなる情報処理のメカニズムを
             通して生み出されるかを解明 
 ・「適応メタ理論」=上記のようなHOWではなくWHYを解明<5>

○研究方法の種類
 ・「実験研究」=結果解釈が明確だが外的妥当性が低い
 ・「調査研究」=結果が一般化できるが結果解釈が難しい<6>

○実験の種類
 ・「風洞型実験」=特定の状況のモデルを作って
  そこで人がどう行動するかを調べる(外的妥当性重視)
 ・「理論検証型実験」=理論に関連しない夾雑物を全て排除して
  実験操作と結果の関連性を明確化する(内的妥当性重視)
 →「構成概念妥当性」=具体的な変数の操作や測定が
   理論変数と正しく対応している程度のこと<7>

○M.シェリフの実験結果=希少資源をめぐる競争が集団間の葛藤を引き起こす
 →葛藤低減には単なる集団間の接触ではなく上位目標を達成するための
 「協力的相互依存」が必要<8>

○強力な不公平感を生み出す利己的な「相対的剥奪感」発生の条件
 (1)個人がAを望んでいる
 (2)他社がAを手に入れているのを知る
 (3)自分もAを手にい入れる資格がると感じる
 (4)Aを手に入れることは不可能でないと考える
 (5)Aを手に入れないのは自分が悪いからだと思えない(W.G.ランシマン)<15>

○「フォールス・コンセンサス理論」
 =自分の特性・意見・行動は一般的で適切なもので、
 自分と違うそれらは一般的ではなく不適切であるとみなす傾向(L.ロス)<25>

○「エミック」=当事者の観点から現象や行動を理解しようとするアプローチ
 「エティック」=普遍的な観点から現象や行動を理解しようとするアプローチ
 (人類学より)<34>

○「ステレオタイプ化」=合理的な理由なしにステレオタイプにまつわる情報を
 そのメンバーにも当てはまると過剰適用してしまう単純化された認知
 →個人の中で自動的・無意識的に生じるので効果が隠れたものになりやすい<46>

○社会心理学の「帰属」
 =他者の行動からどうしてその行動が生じたのかという原因を考える推論<49>

○「感情」=身体的変化とその自己認知、そして外的刺激の認知と
      状況の認知が合成した一種の複合状態
 →感情を意識的に感じるという感情体験は主観的な経験なので、
  生じている出来事の一側面だけを指し示しているにすぎないことに注意<51>

○「援助行動」の原因
 ・苦境に陥っている人を観察することで生じる不安や不快感を軽減するため
 ・苦境に陥っている人に対する共感的関心
 →後者の原因から来る援助行動は継続すると考えられる<66>

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2003 2/8
社会心理学
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