内田貴 『民法3―債権総則・担保物権』 東京大学出版会 1996

内田貴の『民法』シリーズの最後の一冊、これですべて読破!
まだ『民法4』があるらしいがこれはまだ未刊だし家族法なので
民法のメインである財産法を取り上げたこの1~3巻で
民法を読み終えたと言っても良いだろう。
内容は民法の中でもっとも実務的な(だからこそややこしい)
担保物権を中心に記述している。
前に読んだ2冊と同じようにとりあえず長い、長い!
集中力が切れそうになる後半部分にややこしい抵当権や非典型担保
などの記述があるのは嫌がらせのか?(^^;
とりあえず学術書の中では最長の本として記録しておこう。

以下、チャック&まとめた箇所・・・
<第1章 序説>
○契約から発生する債権の注意事項・・・
・民法の債権は成立または効力発生の要件の視点から規定されているので
債権によっては契約の解釈でその内容を明確にする必要がある
・契約からは中心的債権・債務=「給付義務」とは別に様々な義務
=「付随義務」が発生するがその法的性質や理論的位置づけが
大きな論争点になっている

☆「担保」とは金銭債権の弁済を確保する手段

<第2章 債権入門>
○下級審裁判例を中心に付随義務として様々な新しい契約義務が
認められている(信義則を根拠にすることが多い)・・・
情報提供・助言義務、契約交渉継続義務、契約関係継続義務、
安全配慮義務、損害軽減義務、再交渉義務など
これらの義務をいかに契約法理論に取り込んでいくかが
契約法に課せられた大きな課題とされている

○これまでの契約上の義務発生は当事者の意思か法律の規定を
根拠としていたが新しい付随義務の根拠は必ずしも当事者の意思に
還元できないものになっていて債権法と契約法に対して
根本的な変革を迫る考えとされている
←現実の取引の多くは様々な規範意識を共有する取引共同体の中で
行われていて当事者の意思もこうした共同体に内在する規範に
拘束されているのに近代法的な契約観は取引現実を社会関係から
孤立して捉えているため弊害が生まれたのではないか
新たな契約法上の義務はこれらの内在的な規範の法の次元への反映と
見るべきではないか=「関係契約理論」

○債権の分類・・・
引渡債務(与える債務)・行為債務(為す債務)、
結果債務・手段債務、種類債権(不特定物債権)・特定物債権

○種類債権が特定される時点は持参債務、取立債務、送付債務によって違う

○引渡債務の目的物が特定すると債務者の保管義務が加重されて
特定物と同じく善管注意義務を負う(400条)
→特定後滅失について債務者に帰責事由が無ければ特定物と同じ
債権者主義(534条)が適用され一方債務者に帰責事由があれば
履行不能の債務不履行責任を負うことになる
また、特定の効果として特約が無い限り特定によって目的物の
所有権が移転するとされている(判例)

○種類債権には原則として特定まで履行不能がないが「制限種類債権」には
履行不能がある(条文にはないが契約の解釈で決まる)

☆債権の目的の一般的要件=適法性・社会的妥当性、可能性、確実性
→民法総則の法律行為とほぼ重なる

○客観的な経済価値のある目的物に限って保険がかけられるようにする
損害保険契約(商630条)はいかなる主観的価値も自由に
契約の目的物にできるとする民法399条の例外規定

○債権と請求権の違い・・・
実体法と訴訟法が未分化だったローマ法では権利とは訴訟可能性
=「訴権」でありその後実体法と訴訟法が分化していくにつれて
実体法上の権利と訴訟上の権利が明確に区別されるようになった
それにともなって両次元に分化した訴権を媒介する概念として
ヴィントシャイトが考え出したのが「請求権」
→訴訟上の請求がなされるにはまず実体法上の権利が存在しなければならい
(請求権は物権からも債権からも生じるのはこのため)

<第3章 弁済による債権の実現>
☆「弁済」=正常な経過による債権の実現
日常語と違って法律の弁済は金銭の支払いに限らず引渡や登記も含まれる
→債務の本旨に従った給付をなすことが弁済で履行と同じ意味になる

☆第三者による弁済が有効な場合は債務者の債務は消滅して
弁済者が債務者に対して求償する関係が残る=「代位弁済」

○差押と弁済が競合した時、第三債務者は差押債務者に弁済しても
差押債権者との関係では弁済の効力を主張できない(481条)

○「転付命令」=差押債権者に被差押債権を券面額(差押えられた債権の

名義価格)で移転して債権の弁済があったものと扱う制度(民事執行法159条)
転付債権が存在する限りその差押債権者が優先的に弁済を受けることができる
ただし第三債務者の無資力の危険は差押債権者が負う

○受領権限のない者への弁済も有効な弁済と扱う例外・・・
「債権の準占有者」(478条)、「受取証券の持参人」(480条)
→478条の善意・無過失の立証責任は弁済の有効を主張する側(弁済者)
にあるが480条では弁済の効力を否定する側(真の債権者)にある
真正な受取証書を持っていることにそれだけ強い推定力を認めている
(478条は銀行預金の払戻をめぐってよく問題になる)

○預金担保貸付における相殺では名義変更などで預金者と貸付の相手方が
異なる場合でも478条の類推適用によって銀行を保護した判例がある
(最判昭和48年3月27日)
→多くの場合478条は真の債権者から請求を受けた債務者の抗弁として
機能する=債務者の援用とともに効果が確定する

○インフレによる価格変動があっても金銭債務は券面額を支払えばよい
という「名目主義」がとられている(最判昭和36年6月20日)

○弁済受領者の義務・・・
受取証書を交付すること(486条)
債券証書がある時に全部弁済を受けた場合はこれを返還すること(487条)

○弁済による代位が認められる場面=法定代位&任意代位

○任意代位が認められるための要件・・・
・債権者の承諾→銀行取引約定書ひな型には「代位権不行使特約」がある
・誰が代位弁済したのかを原債権者から債務者に通知するか
債務者が代位弁済を承諾したのでなければ債務者との関係で
任意代位を対抗できない
→弁済による代位は債権譲渡に類似している
また、債務者以外の第三者に対抗するためにはこの通知・承諾が
「確定日付ある証書」をもってなされることが必要

○債権者の協力義務・・・
・全部弁済を受ければ「債券証書と担保物」を代位者に交付する
・「担保保全義務」を負う
→銀行取引ではこの担保保全義務の免除を保証人と銀行との特約で定めている
(疑問を呈する学説も多い)

○代位者が複数のとき=人的担保は頭数で物的担保は財産価格に応じて
負担部分を分配する(501条但書)

○弁済の提供は債権者に関しても信義則上の協力義務があるとされる

○受領遅滞(413条)の効果=債務不履行の責任が発生しない、
双務契約の場合は債権者の同時履行の抗弁権がなくなる、
特定物の引渡における注意義務の軽減、増加費用の負担、危険の移転、
受領遅滞は供託の原因となる
→受領遅滞の効果のほとんどは弁済の提供の効果と同じ

○債権者に契約上の債務として受領義務を認めるべき場合があり
受領義務を果たさなければ債権者に通常の契約上の義務違反として
損害賠償の問題が生じ場合によっては解除事由ともなることがあるとされる
(最判昭和46年12月16日)

○「弁済供託」の要件=債権者が弁済の受領を拒絶、債権者の受領不能、
債権者不確知(494条)

<第4章 債務不履行>
○債権の効力の展開→
裁判手続で実体法上の権利の存否を判定できる「訴求力」
→その確定判決を債務名義として執行手続で実現できる「執行力」
→執行力の中には債権の内容をそのまま強制的に実現する「貫徹力」、
債務者の一般財産に強制執行して債権の内容を実現する「掴取力」

○債権の効力は最も弱いものから「給付保持力」、「訴求力」、「執行力」
→自然債務は給付保持力しかない
(カフェー丸玉女給事件:大判昭和10年4月25日)

○行為債務
直接強制は憲法18条で禁止されている強制労働になるから許されない
それゆえ他人にやらせて費用を債務者から取立る「代替執行」(414条)と
罰金を課して債務者の履行を経済的に強制する「間接強制」
(民事執行法172条)がある
→通説では間接強制は債務者の人権に関わるのでこれを極力さけて
代替執行すべきだとされていたが疑問が呈されている

○救済方法(723条)として問題になる謝罪広告は判例では
一定限度で強制履行が可能とし代替執行を認めている
(最大判昭和31年7月4日)

○債務不履行の用語としての使い方は統一されないため
債務不履行の事実のみが要件の「強制履行」(帰責事由は必要ではない)と、
帰責事由が要件とされている「解除・損害賠償」、の二つに分けて考える

☆特に種類物債権の場合は債務不履行の被害者だからといって
損害の発生を座視していれば強制履行は認められず
また損害賠償も制限される=「損害軽減義務」
→日本ではまだ正面から肯定されていないが
国際動産売買ウィーン条約でも採用されている

☆損害賠償請求権が発生する要件(415条)・・・
債務不履行の事実、債務者の帰責事由、損害の発生・因果関係

○債務不履行では中心的な給付義務以外に広範な信義則上の義務が
発生することが認められているが
その一つが「安全配慮義務」(最判昭和50年2月25日)
→契約責任としての安全配慮義務は特定の当事者間の
特別な社会的接触関係を基礎として認められる義務なので
社会生活上発生する他人に対する一般的な安全配慮義務とは異なる
(最判昭和58年5月27日)

☆契約責任と構成するか不法行為責任と構成するかの違い・・・
・「時効」は契約構成が有利→10年vs3年(ただし加害行為20年)
・「立証責任」は契約構成がやや有利だが実質上はあまり変わらない
・「遅延損害金の起算日」は不法行為が有利
・「遺族固有の慰謝料請求権」は不法行為が有利(相続人には違いは小さい)
・「相殺」も不法行為が有利
・「弁護士費用の請求」は違いはない

○安全配慮義務をめぐる裁判例は
労働災害・公務災害関連と学校事故が多い

☆安全配慮義務は大数的には不可避的な事故について
そのコストをいかに分配すかという側面が強い
→労働場や学校のようにある程度の危険を伴う「場」を提供している
主体に対してそこで生じた事故被害についてのコストを負担させ
(労働者や学生一人一人に損失分散の負担を負わせるよりもはるかに効率的)
保険で分散させる役割を担わせて安全対策のための
インセンティヴを与える制度として捉えられる=「事故法」

☆帰責事由の立証責任は債務者側にある
→債務者側が免責のために帰責事由がないことを立証するためで
原告が立証すべき事実という意味での「要件」ではないので
不法行為における過失の立証責任とは逆

○「履行補助者の過失」=被用者的補助者(債務者自身が指揮・命令できる者)
と独立的補助者(独立して事業をおこなう者)がある

○損害賠償の範囲の確定=「損害賠償の範囲」と「損害の金銭評価」

○契約違反に対する損害賠償を契約締結時に当事者が予見しえた範囲に
限定すべきとした「ハドリー事件」(英法)が416条の源流

☆「通常損害」に加わる「特別損害」で問題となる予見可能性の解釈
・予見する主体は「債務者」(判例)
・予見可能性を判断する時期は「履行期もしくは不履行時」
(契約締結説ではなく不履行時説:大判大正7年8月27日)

○419条が定めた金銭債務についての特則
=債務不履行の事実(履行遅滞)を立証すれば損害の立証は不要
(帰責事由だけでなく不可抗力さえ免責事由にはならない)
→金銭債務では損害の立証のなしに賠償がとれる

○賠償額の予定があるからといって「当然に」
解除や履行の請求ができなくなるわけではない(420条2項)

<第5章 第三者による債権侵害>
○引き抜きによる不法行為を認めるかどうかは転職の自由を考慮して
相当悪質な場合にのみ不法行為の成立を認める判例がある
(ラクソン事件:東京地判平成3年2月25日)

<第6章 金銭債権の履行確保に関する諸制度>
○金銭債権の履行確保(金融取引法)は法律と現実との最も生々しい接点
魑魅魍魎が徘徊する世界を法律がいかに規制しているかを見ることは
民法の典型的な機能を見る機会になる

○本来の給付(金銭)の代わりに別の給付(土地など)をもって行う
「代物弁済」(482条)は抜け駆け的弁済に用いられることが多い

☆正攻法による執行を維持するため抜け駆け的債権回収を抑制する機能・・・
・責任財産を保全する制度
→「仮差押・仮処分」(民事保全手続)、「債権者代位権」(423条)
・抜け駆け的債権回収が行われた場合の事後処理的制度
→「債権者取消権(詐欺行為取消権)」(424条)

<第8章 債権譲渡>
○債権回収の手段としての債権譲渡を正攻法の手続に則って行うのが
「転付命令」(民事執行法159条)

○所有する複数の債権を一括して譲渡しこれを担保に融資を受けるのが
「譲渡担保」←包括的な担保権の設定が可能かについては議論がある

○転付命令(強制執行)と譲渡禁止特約が競合した時に(466条2項但書)
譲渡禁止特約に対抗できるのは相手が悪意か重過失に限る
(最判昭和48年7月19日)

☆対第三者対抗要件は確定日付ある証書による譲渡人から債務者への通知、
または確定日付ある証書による債務者の承諾(467条2項)
→債権の譲渡では不動産と違い債務者を情報センターにして債務者が
登記所の役目を担うので債務者への通知または債務者の承諾が対抗要件になる

○確定日付ある証書は公正証書と内容証明郵便がよく使われる
また確定日付と到達時が分離した場合判例は到達時説を採用している

○物の譲渡とは違う債権譲渡特有の論点=
債務者に対する対抗要件問題と「異議を留めない承諾」にかかわる問題

○債権者の変動=「債権譲渡」、債務者の変動=「債務引受」

☆債務引受の三種・・・
・「免責的債務引受」(債務が同一性を保ちつつ新債務者に移転する)
→債権者が害される可能性が大きいので債権者の同意なしには認められない
・「併存的(重畳的)債務引受」(新債務者がもとの債務者と並んで
債務者になる→実質は人的担保)
→債権者に有利なのでもとの債務者と引受人の合意で可能
・「履行の引受」(債務者はもとのままだが引受債務者が
もとの債務者に代わって弁済する義務を負う)
→債権者には関係ないので債務者と引受人間だけで契約できる

○不動産賃貸借契約の賃貸人の地位移転は賃借人の同意なしで移転できる
(最判昭和46年4月23日)
→新賃貸人が賃借人に賃料請求するための対抗要件は
目的物に対する登記の移転

<第9章 相殺>
☆相殺は簡便な決済手段だけでなく債権担保としての機能を果たし
優先的な債権回収を可能にする手段となる

☆相殺する側の債権=「自動債権」、相殺される債務=「受動債権」
(反対債権)

☆相殺の効果は相殺を為すに適した状態=「相殺適状」まで遡及する

○受動債権とすることができない債権=不法行為による損害賠償債権、
差押の禁止された債権、差押を受けた債権

○相殺の担保的効力をめぐってはかつての制限説から511条の文言通り
両債務の弁済期を問題とすることなく相殺の効力を認める
「無制限説」に判例が移行(最大判昭和45年6月24日)

○転付命令との関係で相殺の担保的機能をどこまで保護するかが
争点になった判例は相殺が衝突する事例(相殺vs逆相殺)だったが
相殺適状の後先ではなく相殺の意思表示の後先で決する旨の判示
(最判昭和54年7月10日)

<第10章 責任財産の保全>
☆強制執行の引当になる債務者の財産が「責任財産」
→差押がなされない限り債務者の財産は債務者の支配下にあるのが
民法の原則だがその例外として一定の範囲で強制執行の準備のために
債権者が債務者の財産管理権に介入することを認めた
=「債権者代位」と「債権者取消権」=債務者の責任財産を保全する制度

☆債権者代位のメリット・・・
・債権者代位は債務者の「意思を無視して」行使できる
(代替的な手段として代理受領と債権の譲渡があるが
どちらも債務者の同意が必要となる)
・判例は金銭債権を代位行使する場合は代位債権者が結果的に
「優先弁済」を受けることを認めている←責任財産の保全目的を超えるもの
・消滅時効が迫っていても「債務名義が不要」
・催告、取消権、解除権、買戻権などの「執行の目的とならない
債務者の権利」でも代位行使できる
・本来想定されていないようなケースでも「債権者代位権の転用」として
債権者代位が可能←責任財産の保全目的を超えるもの

☆債権者代位の要件(423条)
・被保全債権=金銭債権、履行期の到来
・債務者=無資力、権利未行使
・行使される権利=一身尊属でないこと

☆債権者代位権の転用=「登記請求権」(最判昭和40年9月21日)
「賃借権に基づく妨害排除」(最判昭和4年12月16日)

○履行期の到来の例外(423条2項)=「裁判上の代位」、「保存行為」

○債権者代位権の理論的位置付け=責任財産保全制度説
vs簡便な債権回収手段説vs包括担保権説

○債権者代位権の効果は直接債務者に帰属するので(通説)
代位者はあくまで受領した物を債務者に返還しなければならない
→ただし金銭債権の場合は相殺によって事実上の優先弁済が可能

○代位権行使による既判力は「法定訴訟担当」に
該当するので債務者にも及ぶとするのが判例・通説

○債権者取消権の要件・・・
・債権者側=被保全債権→必ずしも金銭債権に限らない
            債権取得時期(詐害行為前)
・債務者側=客観的要件→詐害行為、
      主観的要件→悪意
・受益者、転得者側→悪意

○債権者代位権とは違い債権者取消権は裁判所に請求しなければならない
(424条1項本文)

☆債権者取消権の効果を決定づける判例(大連判明治44年3月24日)は
取消訴訟は「形成訴訟」で財産の回復を求めるかどうかは債権者の自由で
効果は相対的にのみ生じる=「取消の相対的効力」ので
債務者を被告とする必要はないとしている(債務者に当事者適格はない)

○債権者が取り消しうる範囲・・・
物が不可分な場合には取消債権者の債権額を超える場合でも原則として
現物返還が認められる(最判昭和30年10月11日)
ただし抵当権登記の末梢によって現物返還が不当になる場合には
価格賠償のみが認められる

<第11章 保証>
○資力や信用の劣る企業者に信用を与え金融機関からの融資を
用意にするための保証=「債務保証」(信用保証協会が担う)

☆保証の従たる債務・・・
・「附従性」(保証債務は主たる債務に附従する)
「成立における附従性」(主たる債務がなければ成立しない)
「内容における附従性」(主たる債務より重くなることはないなど)
「消滅における附従性」(主たる債務が消滅すれば消滅する)
・「随伴性」(債権譲渡の際に保証債務は主たる債務とともに移っていく)
・「補充性」(主たる債務者が履行しないときに始めて履行が可能)
←補充性には保証人に抗弁権が与えられている「催告の抗弁権」(452条)
、「検索の抗弁権」(453条)
(合意で予め補充性を排除するなら「連帯保証」になる)

☆主たる債務とは独立に債権者に生じた損害を填補することを目的とした
契約を「損害担保契約」→449条は附従性の例外としてこれを認めたもの

○保証債務の内容は主たる債務と同一でなくてもよく
保証契約の解釈によって導かれるので不代替的な債務の保証も可能
→ただし保証債務の重さは主たる債務より大きくなることはない

○債務契約が債務不履行により解除された場合には(法定解除)、
請負人の前払返還債務(原状回復義務)にも保証が及ぶ
(最大判昭和40年6月30日)

○補充性の抗弁権とは債権額100万円のうち80万円は取れたはずなのに
債権者が放置したために後で執行した時は50万円しか得られなかったという
場合には保証人は50万円を支払う必要はなく抗弁権行使直後に執行すれば
負担したであろう20万円の限度で弁済すればよいとするもの
→補充性における「債権者の協力義務・配慮義務」

○保証人が主たる債務者に代わって弁済した場合は当然に
主たる債務者に対して弁済額全部を求償できる

☆求償の違い・・・
・委託を受けて保証人になったとき
→保証人に損害が生じないよう完全に求償できる(459条1項)
・委託を受けないで保証人になったとき
→自ら進んで保証人になったのだから弁済した当時に主たる債務者が
利益を受けた限度で求償できる(462条1項)
・主たる債務者の意志に反して保証人になったとき
→保証人の権利は最も薄弱で主たる債務者が求償の時点で
利益を受けている限度でのみ求償できる(462条2項)

☆委託を受けた保証人特有の権利・・・
「求償権の事前行使」(460条)と求償しうる範囲は459条2項が準用されて
法定利益だけでなく避けられなかった費用その他の損害賠償も得られる
→委託を受けない保証人の求償権には利息、費用、損害賠償は含まれない

☆保証人が二人以上いる場合=「共同保証」は保証人の数に応じて
債務額を分割されるのが原則=「分別の利益」(456条)
特約で全額について債務を負担する共同保証をすることも可能=「保証連帯」
→実際には分別の利益のない共同保証が圧倒的に多い

○共同保証人が弁済すれば主たる債務者に対して求償権を有するのは
当然だが共同保証人間でも求償することが認められている

○継続的保証=「根保証」の種類→信用保証、身元保証、
不動産賃貸借から生じる賃借人の債務保証

○身元保証は身元保証法で規制されている
→身元保証法の特色・・・
・身元保証の存続期間の上限を5年に制限
・使用者には被用者が業務上不適任又は不誠実であったり任務又は任地変更で
保証人に危険が及ぶ場合には遅滞なく身元保証人に通知する義務がある
・上記のような事実がある場合に身元保証人に解約告知権あり
・保証責任の限度を定めるにつき裁判所に広い裁量権あり

<第12章 多数当事者の債権債務関係>
☆ひとつの債権・債務に相続などで複数の当事者が生じた場合は
分割可能である限り債権も債務も頭割りするのが民法の原則
=「分割債権・分割債務」(427条)
→ただし不可分性や別段の意思表示があるときや法律の規定があるとき、
特別の慣習があるときは427条の適用は排除される

○組合でも権利能力なき社団でもない団体が融資を受けるのが
合意によって連帯債務が生じる典型的な場合
→連帯債務が成立すると団体構成員はそれぞれ独立に債務を負う
債権者は誰にどれだけ請求しようと自由

☆連帯債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響しないのが原則
=「相対的効力」(440条)だが例外は「絶対的効力事由」(434条~439条)
→保証の場合主たる債務者に生じた事由は原則全ての保証債務に影響するが
(附従性)、保証人に生じた事由は原則主たる債務に影響しない。
この一方通行が保証の特色だが連帯債務は双方で影響し合う
絶対的効力事由が多い

○法律が連帯債務である場合でも債権の効力を強めるべきとするときには
絶対的効力事由を制限する解釈をすべきだとされている
このような連帯債務は本来民法が規定する連帯債務そのものではないので
「不真正連帯債務」(全部義務)と呼ばれる
(不真正連帯債務にも求償関係はある)

○連帯債務における無資力のリスク負担部分は債権者との関係では
原則として平等であり債権者が実際の負担部分に対して悪意
または重過失の場合にのみ主張できるとされる

<第13章 抵当権>
☆典型担保物権→約定担保物権=質権、抵当権
       →法定担保物権=留置権、先取特権
・非典型担保物権→仮登記担保(代物弁済予約)、譲渡担保、所有権留保
(非典型担保→代理受領など)

☆担保物権の代表格の抵当権は目的物の占有を設定者のもとに
とどめたままの担保=「非占有担保物権」
→登記・登録による公示の可能な物に限って抵当権の設定が可能

○登記がなされていればたとえ設定者がその建物を第三者に譲渡しても
抵当権は建物にくっついて移転する=「追及力(効)」

○抵当権設定者は債務者自身である必要はなく債務の責任のみを負う
設定者を「物上保証人」

☆抵当権は目的物を売却した代金から優先弁済を受けることができる
=「優先弁済的効力」→留置権以外の担保物権全てが持っている効力
(留置権には「留置的効力」)

○抵当権の及ぶ範囲は370条が規定・・・
・土地が目的物の場合には抵当権の範囲から建物が除外される
・「付加一体物」
→抵当権設定時に存在した従物に関しては付加一体物に含まれる
借地上のガソリンスタンド店舗建物に対する抵当権が設定当時から
存在している地下タンク、ノンスペース型計量器、洗車機などの
設備にも及ぶことを認めた判例がある(最判平成2年4月19日)

○抵当権は借地権に及ばないので抵当物権の買受者を立法的に保護するために
借20条により地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることが可能

○たとえ物上代位権が認められても必ず抵当権者が優先できるとは
限らないので(304条)実際には抵当権者は抵当権設定の際に
火災保険金債権(停止条件付債権)に質権を設定していくことが多い=債権質

☆抵当権は非占有担保物権だが先取特権と性質の同一性を認めて
賃料への物上代位が肯定されている(最判平成元年10月27日)

☆日本は土地と建物が別個の不動産とされているので抵当権の目的物に
関しても特別な手当が必要となる=「法定地上権」、「一括競売」

○民法は自己借地権を認めてないので競売による買受人や建物所有者を
保護するために法律上当然に地上権が発生することを認めた
=「法定地上権」(388条)

○土地と建物は別個の不動産なので更地に抵当権が設定された後で
建物が建った場合にはその所有者が土地所有者自身であろうと
第三者であろうと建物を収去する前提で抵当権を
実行するのが原則だが、抵当権設定後に設定者が建てた建物を
土地とともに競売する=「一括競売」(389条)が認められている
→ただし優先弁済は土地の価格についてのみ行える

☆抵当権に劣後する賃借権は抵当権の実行とともに覆るが
抵当権の設定された不動産を借りてしまった賃借人の保護のため
短期に限って設定者の賃貸権限を保証した「短期賃貸借制度」(395条)がある
しかしこの制度は民法典の中でもっとも弊害の多い制度の一つとされている
濫用=「詐害的短期賃借権」

○短期賃貸借の要件・・・
・登記→賃貸借が登記されることはまずないので判例は特別法上の
対抗要件でもよいとした(借地権は建物登記、借家は占有)
・602条の期間を超えないこと→ただし抵当権者に損害を与える賃貸借に
ついては抵当権者は裁判所にその解除判決を求めることができる(395条)
(一種の債権者取消権)

○詐害的短期賃借権に対する対抗手段として抵当権者自らが
短期賃借権の設定を受ける「併用賃借権」があるが
これは判例により法的な意味は失われたので(最判平成元年6月5日)
実務では占有がなかったり形だけの占有しかない短期賃借権には
競売手続の中で「引渡命令」(民事執行法83条)という扱いが一般的

○抵当権は通常の物権と同じく侵害に対して物権的請求権が認められている
(最判昭和6年10月21日)
また第三者に対しても即時取得されていない限りでの返還請求権を認めている
→ただし抵当建物に不法占拠者がいても普通に使用収益する限り
妨害排除はできない

☆抵当不動産の所有権を取得した者=「第三取得者」はいつ抵当権が実行され
所有権を失うかわからない不安定な地位におかれるため
抵当権者の主導で第三取得者のために抵当権を消滅させる「代価弁済」と
(利用されることは少ない)
第三取得者の主導で抵当権を消滅させる「滌除」がある
→抵当権を買い取る制度でこれに応じなければ債権者は一ヶ月以内に
「増加競売」の請求をしなければならない

☆抵当権の処分=転抵当、抵当権の譲渡・放棄、
抵当権の順位の譲渡・放棄、抵当権の順位の変更
(順位の変更以外は被担保債権と切り離して抵当権によって把握された
担保価値だけを融通し合うもので存続における附従性の例外)

○転抵当(375条)は設定者の承諾がある場合=「承諾転抵当」だけでなく
承諾が無くても可能=「責任転抵当」

☆転抵当の対抗要件は原抵当権の登記につける「付記登記」(375条2項)だが
債務者や保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者に対しては
原抵当権者から債務者への「通知または債務者の承諾」が要件(376条1項)

○ひとつの債権を担保するために複数の不動産に抵当権を設定している
「共同抵当」をひとつずつ競売するのを「異時配当」、
同時に競売するのを「同時配当」

<第14章 質権>
○質権には留置的効力と優先弁済権を有しているが占有担保物権としての
限界がありここに譲渡担保が生み出される素地がある

○質権者が質物をさらに質入れすることを「転質」

<第15章 法定担保物権>
☆先取特権の類型・・・
・一般先取特権→総財産へ(306条)
・動産先取特権→特定動産へ(311条)
・不動産先取特権→特定不動産へ(325条)

○先取特権の中心的効力は抵当権と同じく目的物を強制的に換価することが
可能な優先弁済権を有すること

○先取特権は公示のない担保物権であり一般担保物権は目的物の特定すらない
という点で担保物権としては取引の安全に対する配慮に欠けるとされている
しかし特定の債権に政策的な理由から優先弁済権を与えるべきだとする
要請から特別法によって認められた先取特権は多くまた増加している
(この点に関してドイツ法は制限しているが日本の民法はフランス法を継受)

<第16章 非典型担保>
☆非典型担保の類型・・・
・予め所有権を移転→消費賃借上の債権が存続=「譲渡担保」(主に動産)
       →消費賃借上の債権が存続せず=「売渡担保」(主に不動産)
・弁済のない場合に所有権移転→「仮登記担保」(不動産)
・所有権を売主に留保→「所有権留保」(主に動産)

☆譲渡担保の特色=所有権移転の形式をとる、単純な売買ではなく
消費賃借契約が併存していて債務を弁済すれば所有権が戻る
→経済的目的と法律上の形式にギャップのある譲渡担保をどのように
法律構成するかをめぐっては争いがある

☆仮登記担保=「代物弁済の予約」や「停止条件付代物弁済契約」
(債務不履行が停止条件)を予め結び債務の弁済を怠ると債務者の
土地建物の所有権を債権者に移転する形態の担保
(将来の所有権移転請求を保全するために仮登記をする)
→仮登記担保法が制定されて抵当権に対して持っていた
うま味がなくなってしまったので利用は減少したと言われる

☆所有権留保=電気製品や車などの割賦販売で使われる売主が代金債権を
担保する方法として目的物の引渡後も所有権を売主のところに
留保しておくものだが割賦販売法が規制している←代表的な消費者保護立法

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