伊藤真 『伊藤真の民事訴訟法入門』 日本評論社  1998

らぶナベ@進路決めたので気分は爽快、蒼天に航路はあるって感じっす(^^)

さて、『伊藤真の民事訴訟法入門』伊藤真著(日本評論社)1998年初版。
民法入門に続いて読んだ伊藤真シリーズ。
読んで感じた最大のことは民事訴訟法、刑事訴訟法のいわゆる手続法は
攻防戦をするシステムなので判決はその戦いの結果にすぎないということだ。
「どちらがどう勝った?」、「どのような攻防があったのか?」という
視点で見るとどんな難解な部分も十分理解できることに改めて気がついた。
『大戦略』『信長の野望』を持ち出して考えれば余裕、余裕(^^)

以下、理解に苦労したり記録の価値があると思った箇所・・・
☆民事訴訟法の定義とは「私的紛争の公権的解決」。
→私的vs公的のせめぎあいという視点が重要。

☆民事訴訟法の判決根拠プロセス・・・
・「その権利が過去に発生したか?」→「現在まで消滅していないか?」
・・・の二つをクリアした時に「権利がある」と結論づける一種のパズル。
・訴訟物の有無←権利の有無←要件事実の有無←証拠の有無。

☆「訴訟上の請求」=「訴訟物」。

☆「訴訟要件」を満たす上で特に重要なもの二つ・・・
「訴えの利益」と「当事者適格」。

☆民事訴訟での「訴え」とは裁判所に対して要求するもの。
→権利の存在を裁判所に認めてもらうだけで被告に要求するものではない!

○民訴の目的はある権利がいま存在しているかどうかを明らかにする、
刑訴は権利があることだけでなく犯罪事実があるかどうかを明らかにする。
→民事訴訟法の「訴訟物」は「権利」、刑事訴訟法の「訴訟物」は「事実」。

○民事訴訟法の大目的二つ・・・
・「紛争解決」→事実関係は曖昧でもよい。
・「手続保障」→少数者保護と既判力維持のため。

○当事者とは判決の宛名人になる者。

○「時効の中断」とは振り出しに戻ること。(単に止まる訳ではない)

○訴訟の主体の違い・・・
・「当事者能力」=そもそも当事者になれるのかという一般的な資格。
・「訴訟能力」=民法上の権利の主体にはなれるが一人では
訴訟行為ができない人のための制度(未成年者や禁治産者など)。

○訴え自体が不適当として却下する判決が「訴訟判決」、
適当となれば「本案判決」に入る。
(ここまでは手続法での判断)
本案判決にはその是非を下す「認容判決」、「棄却判決」がある。
(これは実体法での判断)

○既判力は判決の当事者にしか効力を生じないのが原則だが
例外として「対世効」がある。(形成の訴えなど)

○当事者能力は一般的能力だが「当事者適格」は訴訟物ごとの個別能力。

○「弁論主義」三つのテーゼ・・・
・第一テーゼ
「裁判所は当事者の主張しない事実を資料として採用してはいけない」
 →あくまでも当事者が主導権を握るのが原則。
・第二テーゼ
「裁判所と当事者間に争いがない事実は
そのまま判決の資料として採用しなければならない」
 →必ずしも真実でなくてよい、形式的真実主義。
・第三テーゼ
「当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する際には
必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない」
 →第二テーゼとの違いは主張レベルと立証レベルとの差。

○「口頭弁論」は必ず書面で準備しなくてはいけない。
→実際の裁判ではにはものの一分もかからないで終わってしまう。

○口頭弁論の中でその事実に対して一つ一つ認めるのが「自白」、
訴訟物レベルで認めるのが「請求の認諾」。
→刑訴の自白とはまったく意味が違う!

○「挙証責任」=「それを証明することによって利益を受ける人が負う」。

○既判力の標準時になるのは「事実審(一審と二審)の口頭弁論終結時」。

○「既判力の遮断効」の修正の判例判断・・・
・取消権の主張→X
・相殺権の主張→○
・建物収去土地明渡請求訴訟で負けた賃借人による建物買取請求権の主張→○

○訴訟客体の複数・・・
・「単純併合」
 →各請求を単に同列にして審判を求めること。
・「選択的併合」
 →各請求のどれか一つが認容されれば他を解除条件に審判を求めること。
例:所有権に基づく返還請求と占有権に基づく返還請求の同時審理など。
(旧訴訟物理論のため)
・「予備的併合」
 →各請求に優先順位をつけて審判を求めること。
例:目的物引渡権が認められなければ代金支払請求権を求めるなど。

☆共同訴訟の違い・・・
・「通常共同訴訟」→判決が当事者ごとバラバラの判断になっても良い。
・「必要的共同訴訟」→判決を統一しなくてはいけない。

○必要的共同訴訟の中で全員で訴えなくてはいけないのが
「固有必要的共同訴訟」(土地の複数遺産分割確認の訴えなど)、
一人でも訴えられれば「類似必要的共同訴訟」(会社設立無効の訴えなど)。

○「独立当事者参加訴訟(三当事者訴訟)」は三つ巴で争うこと。
→改正でその中の「片面的独立当事者参加」も認められるようになった。

○訴訟中に実体法上の変更があるのが「訴訟の承継」。
→任意的な当事者変更の場合には実体法上の権利関係は変更しない。

○「上訴」は判決が確定する前の話、「再審」は判決が確定した後の話。
「抗告」は判決の決定と命令に対する簡単な抗議。

この本をamazonで見ちゃう

1999 12/18
法学、民事訴訟法
まろまろヒット率3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です